初恋は溺愛で。〈一夜だけのはずが、遊び人を卒業して平凡な私と恋をするそうです〉

濘-NEI-

文字の大きさ
14 / 65

4-4

 誰に言うでもなくごちそうさまと呟いて手を合わせると、キッチンに移動して洗い物をしながら考えてみる。
 期間も分からずに美咲と旦那さんに家賃負担させることを考えると、菜穂ちゃんの知り合いなら変な人ではないだろうし、しばらくの間と割り切って居候させてもらうのはありかもしれない。
 ただ自分の中の常識が、それはあまりに非常識だと騒ぐ声がうるさくて敵わない。
「選択できる立場じゃないけど、居候か」
 洗った食器を拭き上げて棚に戻すと、リビングのテーブルの上でスマホが震えていることに気が付いた。
「菜穂ちゃんかな」
 震え続けるスマホを手に取ると、画面には知らない番号が表示されている。
「はい、もしもし?」
『もしもし、香澄ちゃん? 私よ、 友梨ゆり。分かるかな。菜穂子の結婚式の時にスピーチした、ほら、一緒に帝都ホテルでアフタヌーンティー行ったの、覚えてないかしら』
「え、菜穂ちゃんの知り合いって、友梨さんだったんですか」
 私も何度か会ったことがある友梨さんは、人当たりが良くて、確かにこの手の話を二つ返事でOKしてくれそうな印象がある人だ。
 桃乃ちゃんがグズったと言ってはいたけど、私も知ってる相手なら、菜穂ちゃんも事前に相手が友梨さんだって言っておいて欲しかった。
『あれ、菜穂子からまだ連絡来てない? イヤねあの子ったら。ほら、ウチの空き部屋使うって話』
「ちょっとお待ちいただけますか」
 スピーカーに切り替えてスマホを操作すると、菜穂ちゃんからメッセージが届いていて、友梨さんの連絡先と、私の連絡先を伝えたことが書かれている。
「ごめんなさい。菜穂ちゃんからのメッセージ、今見ました」
『そう。あの子ちゃんと連絡してたのね、良かったわ』
「ご連絡いただいて申し訳ありません」
『良いのよ。それより急な引っ越しで、部屋が見付からなくて困ってるって聞いて。うちなんかで良かったら、部屋も余ってるし、とりあえず越して来なさいよ』
「いや、でもご迷惑ですし」
『良いの良いの。うちの親も気ままでね、マンションの方が気が楽だって、祖父母が残した家は誰も住んでなくて、香澄ちゃんが住んでくれたら助かるのよ』
「そういうご事情なんですね」
『ヤダ。菜穂子は本当に何も伝えてないのね』
「はは、菜穂ちゃんなんで」
『ふふ、そうよね。とにかく、次の休みはいつかしら。私も都合を合わせるから、一度家に来て考えてみたらどうかしら』
「本当にお言葉に甘えて良いんでしょうか」
『良いのよ。誰も住まない家は傷むって言うし、一応管理して人は雇ってるけど、香澄ちゃんが住んでくれたら本当に助かるのよ』
「でしたら、お言葉に甘えて一度見に行かせてもらいます」
『うんうん、そうして。人助けだと思って気楽に考えてくれて構わないから。ああ、ごめん。ちび二人がケンカ始めちゃった。賑やかでごめんなさいね』
 スピーカーの向こうから、賑やかなやり取りが聞こえると、静かにしなさいとお母さんの声で叱る友梨さんの声が続く。
「お子さんたちを待たせちゃいけないので、あとはメッセージでご連絡させていただきますね」
『そうしてくれる? 助かる。ありがとう』
「いえ、こちらこそ」
『じゃあ、家を見に来れそうな日を教えてね』
「はい。じゃあ失礼します」
 スピーカーの向こうが一層賑やかになった様子に、つい頬を緩めながら電話を切ると、菜穂ちゃんからのメッセージに返信を送る。
 まさか私も知ってる人だったなんて、そりゃ確かにいくら菜穂ちゃんでも、全く面識のない人の家を借りろなんて言わないだろうけど、それにしてもサプライズが過ぎると思う。
 だから苦情みたいなメッセージになってしまったけど、友梨さんが相手なら安心だし、甘えて一度家を見学させてもらうことになったとメッセージを送った。
感想 1

あなたにおすすめの小説

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました

入海月子
恋愛
有本瑞希 仕事に燃える設計士 27歳 × 黒瀬諒 飄々として軽い一級建築士 35歳 女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。 彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。 ある日、同僚のミスが発覚して――。

ワケあって、お見合い相手のイケメン社長と山で一夜を過ごすことになりました。

紫月あみり
恋愛
※完結! 焚き火の向かい側に座っているのは、メディアでも話題になったイケメン会社経営者、藤原晃成。山奥の冷えた外気に、彼が言い放った。「抱き合って寝るしかない」そんなの無理。七時間前にお見合いしたばかりの相手なのに!? 応じない私を、彼が羽交い締めにして膝の上に乗せる。向き合うと、ぶつかり合う私と彼の視線。運が悪かっただけだった。こうなったのは――結婚相談所で彼が私にお見合いを申し込まなければ、妹から直筆の手紙を受け取らなければ、そもそも一ヶ月前に私がクマのマスコットを失くさなければ――こんなことにならなかった。彼の腕が、私を引き寄せる。私は彼の胸に顔を埋めた……

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?