初恋は溺愛で。〈一夜だけのはずが、遊び人を卒業して平凡な私と恋をするそうです〉

濘-NEI-

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 短い銀髪の男の人は、仕上げに小指に取ったリップを塗ってくれて、私を可愛い女の子にしてくれた。
「樹貴さん……だったんですか」
「あの時もプリンセスにしてあげたでしょ。ほら、今だって世界一可愛いよ」
「そんな」
「再会したのは偶然だけど、俺は中華屋さんで見掛けた時から気付いてたよ。君は世界一可愛くて俺の好みだからね」
 樹貴さんはあの時も勇気をくれたけど、今日はもっとすごい物をくれた。
 嬉しくて溢れる涙を樹貴さんが丁寧に拭ってくれて、泣かないでよとキスをすると、落ちた口紅も拭ってからメイクを直してくれる。
 ちょうどメイクを終えた頃にドアがノックされて、プランナーさんが私たちを呼びに来た。
「さあ行こうか、俺のプリンセス」
「はい。魔法使いさん」
 私が彼にどんなに愛されてるか、今までだって分かってるつもりだったけど、私はまだまだ樹貴さんを分かってるないのかも知れない。
 だけど彼を知るための日々はこれから続いていく。
「香澄ちゃん?」
「愛してますよ、樹貴さん」
「うわ、可愛い。すぐベッドに連れて行きたい」
「もう、披露宴がまだでしょ」
 くだらないやり取りで笑い合うと、披露宴会場の扉が開いてスポットライトが私たちを照らす。
 今、私は世界で一番愛されてる花嫁だ。
 招待客で溢れ返る会場を樹貴さんのエスコートで進んでいくと、真理恵さんを含めた私の同僚の席の横を通り過ぎ、スマホを構えた真理恵さんにウインクしてみせる。
「今のが真理恵さんです」
「ああ、一番の仲良しの人だね」
 樹貴さんの職場の人たちが座るテーブルを回った時も、綺麗だと言われてスマホを向ける人に笑顔を浮かべる余裕が出てきた。
「綺麗だってさ。やっぱりね」
「お世辞ですよ」
「そんなことないよ」
 今日は特別に許可が降りて祖母だけでなく祖父も駆け付けてくれている。父も母も、兄夫婦もとても優しい笑顔で手を叩いて迎え入れてくれている。
「お祖父様、来られて良かったね」
「はい。嬉しいです」
 そしてもちろん親族のテーブルには、菜穂ちゃんや友梨さん、そして小さな子を抱く遥香さんの姿もあった。
「ここを通るのはなかなか恥ずかしいね」
「確かに、そうかも知れません」
 会場をぐるりと練り歩いてから、高砂に到着すると、ゆっくりと一礼してから着席して、いよいよ披露宴が始まった。
「食べてる時間ないって言ってたよね」
「そうですね。来賓のお相手がありますからね」
 来賓のスピーチが終わって乾杯を済ませると、食事が始まり、私たちはプランナーさんの説明を聞きながらバタバタと食事をとり、入れ替わり立ち替わり訪れる来賓と挨拶をする。
 そしてしばらくしてから、続いて行われるケーキ入刀の準備に入ると、やっと二人きりで話すタイミングにくだらない話をして緊張を和らげる。
「ファーストバイトは、食べ切れないくらい大きい方が盛り上がるそうですよ」
「あんまりオジサンを虐めないでね」
 そうして披露宴は滞りなく進み、樹貴さんの会社の人が使ってくれた本格的な紹介映像には、会場から感嘆の息が聞こえてくるほどだった。
「うん。良いね。そのドレスも似合ってる」
「ありがとうございます。樹貴さんと色味を合わせて正解でしたね」
 お色直しを挟んでも会場の賑わいが衰えることもなく、無事にキャンドルサービスを終えて高砂に戻ると、これまた樹貴さんの会社の方が企画してくださった催しで大いに盛り上がった。
「香澄ちゃん大丈夫? 疲れてない」
「平気です。体力には自信があるので」
 そして祝電が読み上げられると、今日は参加出来なかった遠方の友だちから寄せられたあたたかい言葉に、幸せを噛み締める。
 披露宴も終わりが近付き、私と樹貴さん、それぞれが両親への感謝の手紙を読み上げて、花束贈呈を終えると、私たちは会場を出てお見送りの準備に取り掛かる。
 用意したミニブーケとお菓子の詰め合わせをカゴいっぱいに詰めて、会場の外で待機していると、まずは早速樹貴さんの仕事関連のお客様が退席して会場から出てきた。
 企業の会長の妻として、背筋を伸ばして皆様にご挨拶をしていくと、後半になって友人や同僚とも挨拶を交わす。
「香澄ちゃん、今日は本当に綺麗よ」
「香澄、素敵な披露宴だったよ」
 友梨さんと菜穂ちゃんが二人で声を掛けてくれて、また近いうちにお茶会をしようと約束する。
 この日のために駆け付けてくれた遥香さんとも、ようやく直接顔を合わせることが出来て、可愛らしいお子さんともちゃっかり握手をした。
 そうして来賓の見送りを終えると、ようやく披露宴が全て終了した。
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