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第二章
40. 愛しい人が消えた夜 2 -王太子視点-
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「それか、魔力の存在しない場所か。」
ボソッと呟いた声は、かすかに聞こえるか聞こえないかの声量にも関わらず、アレクの耳にはしっかりと届いていたようだった。
「それは、ありえないだろ。《世界の成り立ち》の授業にもあるように、この世界の地盤は魔力が流れ、循環し、魔力が溜められている。それに人の血には魔力が含まれているし、血液とともに全体に張り巡らされている。アルも習ってるはずだろ?」
アレクの言う通りである。
この世界に魔力のない場所など存在しないのだ。
けれど、私は見逃さなかった。
私が呟いたと同時に父上の顔が一瞬だけ強ばったのだ。そっと目を父上に向ける。
これは後で話さなければいけないことがありそうだ。
父上だけが反応するに、きっと王家の秘密とやらが関わってくるのだろう。
なら、私にも聞く権利はあるはずだ。
とりあえず、今できることをしなければ…
「あぁ、そうだね。今言ったことは気にしないでいいよ。もしもの話だしね。そんな場所がないことを祈ってるよ。」
最後の一文は父上に向けた言葉でもある。
もし、その場所が存在し、リリがそこにいるとしたのなら、私にそれを話さなかった父上を恨んでのことだ。
このことを考えると、〝魔力が存在しない場所〟にリリがいる可能性が高い。
そうすると、流石に見つけるには困難を極める。
「とりあえず、やれることをやろう。」
そうだ。難しくても、いま、私達がやれることを…
「リリが侯爵邸を去った時間、目撃情報や転送魔法を使われていないことから考えて、国外にいる可能性は低い。休憩なしに移動するとしても、王都から半径約30キロ圏内が妥当だろう。隣国までかなりの距離がある。見つかりにくいところに潜伏するにしても、リリがいるからな……野宿である線は薄い。」
右手の人差し指を机の上にリズム良く叩きつける音が響く。
全員の顔は至って真剣であり、一刻も早くリリの居場所を突き止めようと地図から目を離すものは誰もいない。
彼女がいると予想される場所を今まで机を叩いていた人差し指で円を描くように指していく。
「野宿である可能性を除くと、潜伏はこの場所、あるいはここ。ここ_____________。」
とざっと20程だろうか。
かなり多いが、これでも人が多いところや、ある一定の賑わいをみせる集落や町、村を除いた結果だ。
人がいるところには必ず、衛兵の派出所がある。
リリのことは魔法を使い、全ての派出所に探すよう触れを出している。
遠縁の派出所とはいえ、この国の衛兵は優秀なものばかりだ。時間はかかろうとも、見つけることはできるだろう。
「では、第三魔法騎士団中心に20箇所を含めた周辺の捜索に当たる。」
我国の騎士団は、スルビアナ王国と同様に、用途によって第一から第五までに別れている。
我国の方が歴史は古く、騎士団の成り立ちも早いため、どちらかと言うと、向こうがこちらと同じ制度を作ったのだ。
ちなみに第三騎士団は盗犯や行方不明などといった、捜索というものにちなんだ特異な隊である。
大事のように見えるが、捜索は国民などには一切知らせておらず、騎士団は、入隊前の騎士の近いにより、守秘義務や王族の命令は必ずと言っていいほど守るよう訓練されている。
命令に関して言えば、正当に講義することや様々な理由により自身は従えないと主張することは可能である。
とりあえず、こんな感じだが、一応水面下での動きなのだ。
上級貴族には、、多分この騒ぎは伝わっているだろうが、仕方の無いことだ。
全員が部屋から退出し、父上と2人きりになった。
「父上、私に何か言うことがございますよね?」
疑問形で問うてみるが、さっさと吐け。と強制的な雰囲気を醸し出しながら笑みを向ける。
「あ、あぁ……いや、 でもな…」
「そういうのはいいのです。父上しか反応しないということは国家機密なのでしょう。私も王族であり、王太子です。いずれ知る必要はあるかと。それが少し早くなっただけです。」
「はぁ、お前はリリアナ嬢の言うことになると途端にせっかちになる。そういうところは直した方が良いと思うがな。」
父上は掌をおでこつけため息をこぼす。
父上は、昔から私に重荷を背負わせようとしなかった。自分自身が重荷を持って育ったからだそうだ。
子供は子供らしく、甘えて欲しいというような男である。今回もきっとそうだ。
普段はいい父親であり、尊敬できる父親であると思っているが、私の今の気持ちは全く違う。
___そんなことより、早くしてくれないかな?
こんな感じである。
父上は覚悟を決めたように話し出す。
「存在するんだ。この大陸上に魔力が存在しない場所が。正確には存在せるというよりも、存在させると言う方が正しい。作れるんだ。いくらでも。ただし、その技術はだいぶ前に廃れた。その技術を生み出せるものはこの世にいないんだ。」
それから大分長い話しを聞くと原理はこうだった。
魔力を無効化する魔法石を3つ以上配置する。その石らは互いに結びつき、面をつくる。そしてその内側だけを魔力の存在しない空間へと変える。地脈の魔力回路はその空間がまるでこの世に存在しないかのように絶縁体となり、跳躍伝導を引き起こす。だから、見た目では魔力がないなんて一向に気づかれない。
魔力をそこで使わない限りだが…何せその空間では魔法は使えないのだから。
そう考えれば全ての現状に納得がいった。
リリに持たせたブレスレットが反応しないのも、第三魔法騎士団の捜索魔法に反応しないのも全てが。
これが本当だとしたら、犯人はその魔法石を作り出せるというのか…
その時だった。
_____________________っ!!!!
リリのブレスレットの位置情報が探知された。
「父上!!!!たった今、ブレスレットよりリリの場所が分かりました!!至急ここへ!!」
探知された場所を地図の上から乱雑に指し、真っ先にリリの元へ転移する。
「アル!!」
父上の静止の声が聞こえた気がするが、そんなことは言ってられないのだ。
私の命よりも大切な…大切な………君の元に………
その後、私が消えた執務室から父上は飛び出し、近くにいた騎士に、第三魔法騎士団と共に第一魔法騎士団を私が指した場所に大急ぎで向かわせたらしい。転送魔法やらを酷使してだが…
探知されたリリの居場所は私が示した20箇所のうちの1つの近隣だった。
ボソッと呟いた声は、かすかに聞こえるか聞こえないかの声量にも関わらず、アレクの耳にはしっかりと届いていたようだった。
「それは、ありえないだろ。《世界の成り立ち》の授業にもあるように、この世界の地盤は魔力が流れ、循環し、魔力が溜められている。それに人の血には魔力が含まれているし、血液とともに全体に張り巡らされている。アルも習ってるはずだろ?」
アレクの言う通りである。
この世界に魔力のない場所など存在しないのだ。
けれど、私は見逃さなかった。
私が呟いたと同時に父上の顔が一瞬だけ強ばったのだ。そっと目を父上に向ける。
これは後で話さなければいけないことがありそうだ。
父上だけが反応するに、きっと王家の秘密とやらが関わってくるのだろう。
なら、私にも聞く権利はあるはずだ。
とりあえず、今できることをしなければ…
「あぁ、そうだね。今言ったことは気にしないでいいよ。もしもの話だしね。そんな場所がないことを祈ってるよ。」
最後の一文は父上に向けた言葉でもある。
もし、その場所が存在し、リリがそこにいるとしたのなら、私にそれを話さなかった父上を恨んでのことだ。
このことを考えると、〝魔力が存在しない場所〟にリリがいる可能性が高い。
そうすると、流石に見つけるには困難を極める。
「とりあえず、やれることをやろう。」
そうだ。難しくても、いま、私達がやれることを…
「リリが侯爵邸を去った時間、目撃情報や転送魔法を使われていないことから考えて、国外にいる可能性は低い。休憩なしに移動するとしても、王都から半径約30キロ圏内が妥当だろう。隣国までかなりの距離がある。見つかりにくいところに潜伏するにしても、リリがいるからな……野宿である線は薄い。」
右手の人差し指を机の上にリズム良く叩きつける音が響く。
全員の顔は至って真剣であり、一刻も早くリリの居場所を突き止めようと地図から目を離すものは誰もいない。
彼女がいると予想される場所を今まで机を叩いていた人差し指で円を描くように指していく。
「野宿である可能性を除くと、潜伏はこの場所、あるいはここ。ここ_____________。」
とざっと20程だろうか。
かなり多いが、これでも人が多いところや、ある一定の賑わいをみせる集落や町、村を除いた結果だ。
人がいるところには必ず、衛兵の派出所がある。
リリのことは魔法を使い、全ての派出所に探すよう触れを出している。
遠縁の派出所とはいえ、この国の衛兵は優秀なものばかりだ。時間はかかろうとも、見つけることはできるだろう。
「では、第三魔法騎士団中心に20箇所を含めた周辺の捜索に当たる。」
我国の騎士団は、スルビアナ王国と同様に、用途によって第一から第五までに別れている。
我国の方が歴史は古く、騎士団の成り立ちも早いため、どちらかと言うと、向こうがこちらと同じ制度を作ったのだ。
ちなみに第三騎士団は盗犯や行方不明などといった、捜索というものにちなんだ特異な隊である。
大事のように見えるが、捜索は国民などには一切知らせておらず、騎士団は、入隊前の騎士の近いにより、守秘義務や王族の命令は必ずと言っていいほど守るよう訓練されている。
命令に関して言えば、正当に講義することや様々な理由により自身は従えないと主張することは可能である。
とりあえず、こんな感じだが、一応水面下での動きなのだ。
上級貴族には、、多分この騒ぎは伝わっているだろうが、仕方の無いことだ。
全員が部屋から退出し、父上と2人きりになった。
「父上、私に何か言うことがございますよね?」
疑問形で問うてみるが、さっさと吐け。と強制的な雰囲気を醸し出しながら笑みを向ける。
「あ、あぁ……いや、 でもな…」
「そういうのはいいのです。父上しか反応しないということは国家機密なのでしょう。私も王族であり、王太子です。いずれ知る必要はあるかと。それが少し早くなっただけです。」
「はぁ、お前はリリアナ嬢の言うことになると途端にせっかちになる。そういうところは直した方が良いと思うがな。」
父上は掌をおでこつけため息をこぼす。
父上は、昔から私に重荷を背負わせようとしなかった。自分自身が重荷を持って育ったからだそうだ。
子供は子供らしく、甘えて欲しいというような男である。今回もきっとそうだ。
普段はいい父親であり、尊敬できる父親であると思っているが、私の今の気持ちは全く違う。
___そんなことより、早くしてくれないかな?
こんな感じである。
父上は覚悟を決めたように話し出す。
「存在するんだ。この大陸上に魔力が存在しない場所が。正確には存在せるというよりも、存在させると言う方が正しい。作れるんだ。いくらでも。ただし、その技術はだいぶ前に廃れた。その技術を生み出せるものはこの世にいないんだ。」
それから大分長い話しを聞くと原理はこうだった。
魔力を無効化する魔法石を3つ以上配置する。その石らは互いに結びつき、面をつくる。そしてその内側だけを魔力の存在しない空間へと変える。地脈の魔力回路はその空間がまるでこの世に存在しないかのように絶縁体となり、跳躍伝導を引き起こす。だから、見た目では魔力がないなんて一向に気づかれない。
魔力をそこで使わない限りだが…何せその空間では魔法は使えないのだから。
そう考えれば全ての現状に納得がいった。
リリに持たせたブレスレットが反応しないのも、第三魔法騎士団の捜索魔法に反応しないのも全てが。
これが本当だとしたら、犯人はその魔法石を作り出せるというのか…
その時だった。
_____________________っ!!!!
リリのブレスレットの位置情報が探知された。
「父上!!!!たった今、ブレスレットよりリリの場所が分かりました!!至急ここへ!!」
探知された場所を地図の上から乱雑に指し、真っ先にリリの元へ転移する。
「アル!!」
父上の静止の声が聞こえた気がするが、そんなことは言ってられないのだ。
私の命よりも大切な…大切な………君の元に………
その後、私が消えた執務室から父上は飛び出し、近くにいた騎士に、第三魔法騎士団と共に第一魔法騎士団を私が指した場所に大急ぎで向かわせたらしい。転送魔法やらを酷使してだが…
探知されたリリの居場所は私が示した20箇所のうちの1つの近隣だった。
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