愛されなかった少女は溺愛王太子についていけない

小端咲葉

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第二章

42.暗闇の敢行 2 -悪魔視点-

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『まほうがつかえないんだよ。』 

その声を聞き、思わず聞き返す。

「魔法が使えないなんてあるのか?」

『あるよー。』

「本当か?」

そんな場所など聞いたことがない。
小さな子ですら知っているのだ。魔力は世界を廻っていると。魔力がないと世界は生きられないのだ。
そんな場所があるのなら、観光名所にでもなっているのではないだろうか。どこかの国が全力で隠していない限りは。

『ほんとうだよ。』
『うそじゃないよ。』
『ぼくもそれしってるー。』

精霊たちが口々に言う。

そんなに知ってるなら、最初から教えてくれればいいのに。
きっと精霊のことだから、知っていても今まで忘れていたのだろうが。
けれどさっさと教えて欲しい。
クロが関わっているのかもしれないのなら、生きているのかもしれないが、五体満足とはいかない可能性だってある。今たまたま生きているが、いつでも殺せるように喉元を掴まれているのと変わらないのだから。

「どこにある。」

真剣な声に返ってきたのは想像もしていない答えだった。

『じぶんでつくるの。』
『つくるのよー。』
『ぽいぽいって。つくるのぉ~。』

理解ができない。誰か教えてくれないだろうか。
この精霊達の言葉を。

「どうやって?」

『ん~。』
『わかんない。』
『しってる?』
『しらない、しらない。』

なんかこいつらと話してると頭がおかしくなりそうだ。

「じゃあ、作られた場所は分かるか?」

『かぜちゃんたちは?』
『かぜちゃんたちにきくの。』
『きいた?』

「風ちゃん?」

俺が首を捻ると精霊達も同じように、首を捻る。
それだけでなく、精霊達はさっきから俺の動作を真似している。
普段なら可愛らしいと思ったかもしれないが、今はそんなこと思っている暇はない。

『わたしがかぜちゃん!』
『ぼくもかぜちゃん!』
『かぜちゃんてをあげてー』
『『はーーーい』』

誰かがそういうと精霊達はぽつぽつと所々で手を挙げる。
共通点があるといえば全員が緑に近い色の光を発していることだろうか。
薄い緑、濃い緑、青に近い緑や黄色と間違うほどの緑。緑といっても様々である。

『かぜちゃんたちは、ぼくたちよりはやいの』
『びゅーんって!』

そういえば聞いたことがある。
風の噂。いつの間にかどこからか分からないが、凄まじい速さで噂が広まる。それは風の精霊の仕業らしい。他にも何かを運んでくれるのは風の精霊だと様々な本に書いてある。

精霊にも属性は存在するらしいが、本当かどうかは分からなかった。あくまでもこの国の学者が立てた仮説である。
こういう話を聞くと、本当に属性はあるらしい。

それに、この国にはそれぞれの魔法属性における御伽話が存在するのだ。

例えば風の属性。
風の精霊が、風ちゃんと呼ばれているのは始めて知ったが。

“探し物をするなら風の精霊に聞きなさい。
ほら、次の日には、あなたの枕元に。”

あくまで御伽話であるので、小さい頃は信じるが、大人になるとそんなのは嘘だとそんな御伽話あったなくらいなものである。

「……頼めるか。」

『まほうがなくて、むずかしいの。』
『でも、びびってしたらわかるかも!』
『なんだっけびびって。』
『あれだよ。“かん”だっていってた。』
『ん~。とりあえず、やってみよ~』

精霊も勘に頼ったりするのか…

とりあえず、勘だろうがなんだろうが、情報はほしい。

すると、ひとりの風の精霊が話す。

『かぜちゃんのひとさがし~。かぜちゃんはまほうがつかえないとこをさがすこと!!ほかのかぜちゃんにあったら、ひとさがし、つたえること!じゃあ!!いくぞ~』
『『『おーーーーー』』』

そしてその場にいた風の精霊は飛び散った。

_____________________________

どれくらい時間が経った頃だろうか。
辺りは暗くなり、家の灯りが王都を照らしている状態だ。

『あったーーーー!!』
『あったよーーーー。』

俺も個人的に探し回ってはいたが、見つけられなかった。

「どこだ!?!」

反射的に大きい声が出る。

『こっちーーー』

精霊が飛んでいく方へ一直線について行った。
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