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一、記憶喪失と過保護な夫 1
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頭痛い。
がんがんして、物凄く痛い。
割れるように痛い。
もう、人生初ってくらい、とにかく痛い。
これは、戒められる孫悟空もかくや、だわ。
あれ?
あの輪っかの名前、何だっけ・・・。
「エミィ!?エミリア!気が付いたのか!?」
目を閉じたまま孫悟空の頭を思い出していたら、すぐ傍で男のひとの声がした。
割と大きな声だけれど、痛む頭には響かない優しい声。
よく知っているような気がするけど、誰だっけ?
うーん・・・駄目。
思い出せない。
それに、エミリアって誰?
というか、私って誰?
でも、何だか懐かしい響きの名前。
それにこの、優しい声が好き。
誰か、なんて分からないのに。
あ、目を開けられそう。
自分のなかに堪らない違和感を覚えつつ重い瞼を開けば、超絶男前が触れ合いそうなほどすぐ近くで覗き込んでいて、思わず悲鳴をあげそうになる。
「ああ!エミィ、僕の命。よかった。本当によかった・・・バート!エミィが目覚めた!医師を早く!」
「はいっ」
「あ・・の・・こほっ・・いたっ」
優しい声が焦燥を含み、誰かが急ぎ去って行く気配がする。
なにごと?
状況が全く分からず、ともかく何が起こっているのか聞こうと思えば、喉に引き攣れるような痛みが奔った。
「エミィ、無理はするな。ほら、水だ。飲めるか?ん?」
すると、超絶男前な彼は即座に優しく私を支え、何か柑橘の香りがする美味しい水を飲ませてくれる。
それは感動を呼ぶほどに丁寧な心の籠った動作で、私は痛む頭と同じくらいの強さで感激した。
凄い。
超絶男前なのは顔だけじゃなくて、中身もなんて。
「ありがとう・・ございます。ところで、あの。こちらは?貴方はどちら様でしょうか?」
「どちら様、って・・・っ!エミィ!?僕が判らないのか!?」
とにかく頭が痛いので、失礼とは思いつつも再び横にならせてくれたことに感謝しつつ言えば、超絶男前な彼が驚愕に目を見開いた。
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