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第2章 グランタリア大陸東部編

60.シェルダン皇帝陛下との謁見!

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サイフォン魔法学院には一週間に一度、日曜日が休みとなっている。

その日、朝からレミリアとリムルを手伝うつもりで、大通りの店舗に行くと、なぜか豪華な馬車が停止していた。

店舗の中に入ると、ドレス姿のエレミアが立っていた。


「いったい何が起こったの?」


不思議に思ってレミリアに問いかけるけど、彼女も首を傾げる。


「わかりません。先ほどエレミアちゃんが来られて、シオン様が来るのを待っておられたのです」

「エレミア、どうしたの?」

「私と一緒に来て欲しいの。父上が会いたいって」

「レミリアも一緒に来て」


父上ってことは……この帝国の皇帝だよね……これは断れないな……


僕とレミリアはリムルに店を頼んで、エレミアと一緒の馬車に乗り込み、帝都の中央にある城へと向かう。

城の厩舎で馬車から下りると、エレミアに案内され、僕達は謁見の間へと赴いた。

広間の通路には赤い絨毯が敷かれ、玉座にはシェルダン皇帝陛下が座っておられた。

エレミアが姿勢正しく礼をし、シェルダン皇帝陛下に声をかける。


「父上、私の学友で、あの薬を開発した商人、シオンを連れて来たわよ」

「うむ、そちがシオンであるか」

「はい。シオンと申します」


僕とレミリアは片膝を着いて礼をする。

するとシェルダン皇帝陛下は前屈みになり、僕を見て驚いた表情をする。


「誠にそちが毛生え薬を作ったのであるか?」

「はい、私が作りました」

「うむ、大儀である。そちが作った毛生え薬のおかげで、余の髪もフサフサである。よってシオンよ、そちに褒美として準男爵の爵位を与えるである」

「はぁ……爵位……」


爵位を貰えるのは光栄なことだけど……なぜかセレーネ王妃やフィーネ、マリナ女王から怒られる未来しか予想できないぞ……

それに爵位なんて貰ったら、この国に縛られることになるよね……そうなれば気軽に他国で商売ができなくなる……それはちょっと困るかも……


「お言葉を返すようですが、爵位について謹んではお断りいたします。爵位をいただけば、自由に商売ができませんので」

「帝国の爵位はいらぬというのであるか」


僕の言葉を聞いて、シェルダン皇帝陛下は不機嫌な表情を浮かべた。

そこへエレミアが慌てて言葉を挟む。


「それならば父上、毛生え薬と脱毛剤を、薬師の店で販売してもらうようにしてほしいの」

「うむ、それぐらいのこと余には容易いことであるな。良かろう」


シェルダン皇帝陛下は機嫌を直したようで、大きくうんうんと頷いた。

こうしてシェルダン皇帝陛下との謁見が終わり、広間から退出すると、エレミアが大きくため息を吐く。


「さっきはビックリしたわ。いきなり爵位を断るなんて。不敬罪にされてもおかしくなかったわよ。シオンって見た目と違って度胸があるね」

「度胸なんてないんだけど、つい……」


……今までラバネス半島の王家の人達と会ってきたから、感覚が麻痺しているのかもしれないな……今度からは気を付けよう。


謁見があってから一週間後、イシュガルド帝国の王宮の手配で、王都イシュタルで経営している薬師達の店で育毛剤と脱毛剤が販売されることになった。

薬師の店には、髪の毛を求める男達の行列と、脱毛剤を求める女性達の列がズラリと並び、連日すぐに完売となった。


育毛剤の価格は金貨二枚(日本円で約二万円)、脱毛剤の価格は金貨一枚(日本円で約一万円)もするのに、人の毛に対する関心ってスゴイよね。


自分達で薬を作ってたんだけど、作れる数量に限界があるので、工場を建設することにした。

それで姿見の転移ゲートを利用して、ブリタニス王国の王宮のフィーネの部屋を訪れた。

僕の姿を見たフィーネは、頬を膨らませて顔を横へ向ける。


「グランタリア大陸へ行ってから、全然、遊んでくれないわね」

「ごめんよ。今、王都イシュタルの魔法学園に通ってるから、時間が取れなくて、ホントごめん」

「もういいわ。それで今度は何をやらかしたの?」


……やらかしたって……僕が毎回、何か騒動を起こしてるみたいじゃないか……


「ちょっと薬を開発して……」

「薬! どんな薬なの? ちょっと待ってお母様を呼んでくる」


薬と聞いて、クワッと目を見開くと、フィーネは一瞬で部屋を飛び出していった。

しばらく待っていると、廊下をタタタタタと走る音が聞こえてくる。

そしてバタンと大きく音を立てて、セレーネ王妃が現れた。

その後ろに息を切らしたフィーネが続く。


「シオン君が薬を作ったですって! 今度はどんな薬なの?」

「お久しぶりです……」

「挨拶はいいのよ。それより薬の効能を教えて」

「……毛生え薬と脱毛剤です」

「脱毛剤! それはどれほどの効果があるの?」


セレーネ王妃は僕の両肩をガシっと掴んで顔を近づける。


どうしてそんなに真剣な表情なの?……ちょっと怖いんですけど……


「薬を塗った部分はツルツルになります……でも時間が経てば、また生えてきます」

「それで十分よ……それで薬を売り出したいのね?」

「いえ……実は――」


今、サイフォン魔法学院に通っていること、そこでエレミアと出会い、シェルダン皇帝陛下と謁見するまでの経緯を、僕は丁寧に説明した。

それを聞いたセレーネ王妃はフーと大きく息を吐き出す。


「どこへ行ってもシオン君はシオン君なのね……既に王都イシュタルで薬を売り出してることは不問にします。でも、これからは新商品を開発した時は、真っ先に私に相談すること。これだけは約束してね」

「……はい」


どうしてかわからないけどセレーネ王妃に頭が上がらないんだよね……母上が生きてたら、こんな感じなのかな……
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