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第2章 グランタリア大陸東部編
59.育毛剤と脱毛剤!
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サイゾウとオルデンの犠牲により、脱毛剤と毛生え薬が完成した。
薬を塗る部分を間違えると大変なことになるから店舗では売らないことに決めた。
でもせっかくできた薬だから、誰にも試さないというのはもったいないよね。
だから僕は、エレノアと相談するため、魔法学園に薬を持っていくことにした。
魔法学院の午前中の授業が終わり、僕は完成した薬をエレミアに見せる。
すると彼女は不思議そうに首を傾げた。
「何これ?」
「できたてほやほやの試験薬、脱毛剤と毛生え薬だよ」
「毛生え薬って、どれくらい効果があるの?」
「薬を塗ると一瞬で毛がボーボー」
「脱毛剤は?」
「薬を塗ると、瞬く間にツルツルになる」
「それってもう劇薬じゃない!」
エレミアは薬の瓶を持って顔を青ざめさせる。
そして、疑問が湧いたように僕に問いかけた。
「永久にボーボー? 永久にツルツル?」
「……たぶん薬で生えた毛は、寿命がきたら抜けるとは思う。薬で脱毛した毛も時が経てば、また生えてくるんじゃないかな…… その辺りは実験してないからわからないけど……」
「……それじゃあ、危険すぎて商品化できないわね。わかったわ、協力してあげる」
そう言ってエレミアは悪戯っ子のような笑みを見せ、毛生え薬と脱毛剤を手に取り、カイロスのほうへと歩いていく。
「新しい整髪剤を昨日買ったの。すごく良かったから、カイロスも試してみない?」
「エレミアありがとな。今日もビンビンに髪を立たせまくるぜ」
何も事情を知らないカイロスは薬を受け取り、決め顔でツンツン髪に薬を塗っていく。
「その薬、栄養剤にもなってるから、頭皮にも塗ったほうがいいわよ」
「おうわかったサンキューな」
エレミアの言葉に大きく頷いて、カイロスは両手の指で、ガシガシと薬を塗り込んだ。
その瞬間にパラパラと髪の毛が落ち、見る間にツルツル頭へと変わっていく。
「うおー、俺の髪の毛がー!」
「これ毛生え薬だから、早く使って」
「うおー!」
カイロスはエレミアの手から薬を受け取り、必死に毛生え薬を頭皮に塗り込む。
するとたちまちの内に、髪の毛がボーボーと生え、床に着くほど伸びていった。
「なんだこれ? せっかく朝早くから決めてきた髪のセットがー!」
「キャハハ、この薬ホントによく効くのね。めちゃ面白ーい」
……カイロスって完全にオモチャにされてるよね……同じ男として同情するよ……
僕、エレミア、カイロスの三人の様子を見ていたグレースが、興奮した様子でカイロスから脱毛剤を奪った。
「ねえシオン、この薬は全身に効くのかしら?」
「試したことないけど、どこにでも効くはずだよ」
「ちょっと借りていいかしら」
グレースが真剣な眼差しで効いてくるので僕は大きく頷いた。
するとグレースは大事に薬を抱えて教室から出ていく。
しばらくすると、どこかから教室へ帰ってきたグレースが、顔を赤くして僕達のほうへ歩いてきた。
そして、興奮したようにエレミアに声をかける。
「エレミア、私の腕を見て、この薬の効果で私の全身、ツルツルになったのよ」
女の子が全身ツルツルって……想像してはいけません。僕はまだ十歳だからね。
腕を見せて興奮するグレースに、エレミアは首を傾げる。
「グレース、今、全身ツルツルなの?」
「……うん……」
言われている意味に気づいたグレースは、両手で顔を隠してうんと頷いた。
するとエレミアはグレースの手から薬を取り上げ、足早に教室を出ていく。
その様子を呆然と見ていると、少し経って興奮した二人が教室に戻ってきた。
「シオン、この脱毛剤、すごいわ。気になる部分の毛が抜けて、ツルツルになったの。今の私は生まれたての赤ちゃんみたいにツルツルよ」
……女の子が教室でそんなことを大声で言ったらダメだよ……聞いててこっちが恥ずかしくなる……
「絶対にこの脱毛剤を売った方がいいわ。これで毛深い女の子の悩みが一気に解消されるもの」
「でも、ちょっと効きすぎるから、危険だと思うんだけど……」
「それなら薬師の店に卸せばいいわ。私が父上に頼んで信用のおける薬師の店を紹介してあげるから」
このエクストリア世界では薬を扱う職業は、錬金術師や薬師の仕事と決まっている。
薬師ならお客様にちゃんと用法と要領を説明するから安心だけど……エレノアがその気なら、それでもいいかな……
「じゃあ、毛生え薬のほうは僕が預かるよ」
そう言って僕が泣き崩れているカイロスから毛生え薬をもらうと、その薬をエレミアが横から奪い取る。
「この薬は私が持ってる。ちょっと父上で試してみたいから。最近、父上って忙しすぎて髪の毛が薄くなってきたみたいなの」
……エレミアの父上って、イシュガルド帝国の皇帝だよね……政務が忙しすぎて、毛が抜けるなんて……同じ男として悲しくなる……
床へ視線を向けると、四つん這いになったカイロスがまだ泣いていた。
その姿に申し訳なく感じた僕は、鞄から整髪剤を取り出してカイロスの手に握らせる。
「これ新しく開発した整髪剤だから」
「……整髪剤」
僕の言葉を聞いて、カイロスは希望に目を輝かせて、髪に整髪剤を塗り込んでいく。
すると天井にぶつかるほどの長さのツンツン髪となった
昼休憩が終わり、講義のため教室に入ってきたウェルム先生に「髪の毛が邪魔だ」と、カイロスが怒られたのはいうまでもない。
薬を塗る部分を間違えると大変なことになるから店舗では売らないことに決めた。
でもせっかくできた薬だから、誰にも試さないというのはもったいないよね。
だから僕は、エレノアと相談するため、魔法学園に薬を持っていくことにした。
魔法学院の午前中の授業が終わり、僕は完成した薬をエレミアに見せる。
すると彼女は不思議そうに首を傾げた。
「何これ?」
「できたてほやほやの試験薬、脱毛剤と毛生え薬だよ」
「毛生え薬って、どれくらい効果があるの?」
「薬を塗ると一瞬で毛がボーボー」
「脱毛剤は?」
「薬を塗ると、瞬く間にツルツルになる」
「それってもう劇薬じゃない!」
エレミアは薬の瓶を持って顔を青ざめさせる。
そして、疑問が湧いたように僕に問いかけた。
「永久にボーボー? 永久にツルツル?」
「……たぶん薬で生えた毛は、寿命がきたら抜けるとは思う。薬で脱毛した毛も時が経てば、また生えてくるんじゃないかな…… その辺りは実験してないからわからないけど……」
「……それじゃあ、危険すぎて商品化できないわね。わかったわ、協力してあげる」
そう言ってエレミアは悪戯っ子のような笑みを見せ、毛生え薬と脱毛剤を手に取り、カイロスのほうへと歩いていく。
「新しい整髪剤を昨日買ったの。すごく良かったから、カイロスも試してみない?」
「エレミアありがとな。今日もビンビンに髪を立たせまくるぜ」
何も事情を知らないカイロスは薬を受け取り、決め顔でツンツン髪に薬を塗っていく。
「その薬、栄養剤にもなってるから、頭皮にも塗ったほうがいいわよ」
「おうわかったサンキューな」
エレミアの言葉に大きく頷いて、カイロスは両手の指で、ガシガシと薬を塗り込んだ。
その瞬間にパラパラと髪の毛が落ち、見る間にツルツル頭へと変わっていく。
「うおー、俺の髪の毛がー!」
「これ毛生え薬だから、早く使って」
「うおー!」
カイロスはエレミアの手から薬を受け取り、必死に毛生え薬を頭皮に塗り込む。
するとたちまちの内に、髪の毛がボーボーと生え、床に着くほど伸びていった。
「なんだこれ? せっかく朝早くから決めてきた髪のセットがー!」
「キャハハ、この薬ホントによく効くのね。めちゃ面白ーい」
……カイロスって完全にオモチャにされてるよね……同じ男として同情するよ……
僕、エレミア、カイロスの三人の様子を見ていたグレースが、興奮した様子でカイロスから脱毛剤を奪った。
「ねえシオン、この薬は全身に効くのかしら?」
「試したことないけど、どこにでも効くはずだよ」
「ちょっと借りていいかしら」
グレースが真剣な眼差しで効いてくるので僕は大きく頷いた。
するとグレースは大事に薬を抱えて教室から出ていく。
しばらくすると、どこかから教室へ帰ってきたグレースが、顔を赤くして僕達のほうへ歩いてきた。
そして、興奮したようにエレミアに声をかける。
「エレミア、私の腕を見て、この薬の効果で私の全身、ツルツルになったのよ」
女の子が全身ツルツルって……想像してはいけません。僕はまだ十歳だからね。
腕を見せて興奮するグレースに、エレミアは首を傾げる。
「グレース、今、全身ツルツルなの?」
「……うん……」
言われている意味に気づいたグレースは、両手で顔を隠してうんと頷いた。
するとエレミアはグレースの手から薬を取り上げ、足早に教室を出ていく。
その様子を呆然と見ていると、少し経って興奮した二人が教室に戻ってきた。
「シオン、この脱毛剤、すごいわ。気になる部分の毛が抜けて、ツルツルになったの。今の私は生まれたての赤ちゃんみたいにツルツルよ」
……女の子が教室でそんなことを大声で言ったらダメだよ……聞いててこっちが恥ずかしくなる……
「絶対にこの脱毛剤を売った方がいいわ。これで毛深い女の子の悩みが一気に解消されるもの」
「でも、ちょっと効きすぎるから、危険だと思うんだけど……」
「それなら薬師の店に卸せばいいわ。私が父上に頼んで信用のおける薬師の店を紹介してあげるから」
このエクストリア世界では薬を扱う職業は、錬金術師や薬師の仕事と決まっている。
薬師ならお客様にちゃんと用法と要領を説明するから安心だけど……エレノアがその気なら、それでもいいかな……
「じゃあ、毛生え薬のほうは僕が預かるよ」
そう言って僕が泣き崩れているカイロスから毛生え薬をもらうと、その薬をエレミアが横から奪い取る。
「この薬は私が持ってる。ちょっと父上で試してみたいから。最近、父上って忙しすぎて髪の毛が薄くなってきたみたいなの」
……エレミアの父上って、イシュガルド帝国の皇帝だよね……政務が忙しすぎて、毛が抜けるなんて……同じ男として悲しくなる……
床へ視線を向けると、四つん這いになったカイロスがまだ泣いていた。
その姿に申し訳なく感じた僕は、鞄から整髪剤を取り出してカイロスの手に握らせる。
「これ新しく開発した整髪剤だから」
「……整髪剤」
僕の言葉を聞いて、カイロスは希望に目を輝かせて、髪に整髪剤を塗り込んでいく。
すると天井にぶつかるほどの長さのツンツン髪となった
昼休憩が終わり、講義のため教室に入ってきたウェルム先生に「髪の毛が邪魔だ」と、カイロスが怒られたのはいうまでもない。
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