現代知識チートからの王国再建~転生第三王子は王国を発展させたい!~二大強国に挟まれた弱小王国の巻き返し!

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!

文字の大きさ
2 / 51

2.脳筋のアデル兄上

しおりを挟む
僕とエミリア姉上は軽装の鎧を装備して王宮の中を急いでいると、廊下の角からローランド兄上とシルベルク宰相が姿を現した。

僕はシルベルク宰相の前に立って首を傾げる。

「シルベルク宰相がいたのに、どうしてアデル兄上は出兵したの?」

「間が悪く、ドルムント辺境伯が登城していていたのですよ。あやつとバンベルク騎士団長がアデル殿下を焚きつけましてな。ローランド王太子と私が止めているにも関わらず、無視して強引に騎士団を動かしたのです」

ドルムント辺境伯もバンベルク騎士団長もアデル兄上を推す派閥に属している。
辺境伯はバルドハイン帝国との国境沿いに領地を持つ大貴族だ。
頻繁にバルドハイン帝国軍が国境に出没することを、イライラと不快に思っていたに違いない。

王宮騎士団とは、クリトニア王国の軍事の要といっていい兵団だ。
だからこそ、軽々とは王宮騎士団を動かすことはできない。
そのことがバンベルク騎士団長には不満だったのかもしれないな。

シルベルク宰相の話しでは、アデル兄上達が出兵してから二日も経っているという。
そんな重要な話しなら、ローランド兄上が僕に言うはずだけど?

「あれ? 全く知らなかった」

「イアンには部屋で話したけど」

いつも色々な弱音を言ってくるので、ついつい聞き流してしまったのかも。
こんなことなら、しっかりと聞いておいたらよかった。

「とにかく僕とエミリア姉上で説得してきます」

僕はエミリア姉上の手を取り、王城の一階にある王族専用厩舎へ向かう。
すると五人の王宮騎士団の兵士が馬を用意して待っていた。

王宮騎士団は王城の警護もあるため、全員で出兵することはない。
彼等は王宮騎士団の居残りの兵達だ。
一人の兵士が歩み出て、僕達の前で胸に手を当てて礼をする。

「私は王宮騎士団のクライスと申します。お二人を護衛いたします」

「僕と姉上のことお願いします」

王宮騎士団は歩兵を連れているので、それほど先には行っていないはずだよね。
僕とエミリア姉上は馬車に乗り込み、クライス達に護衛されながら、王城を出発した。

そして途中で休憩を挟みながら五時間ほど進むと、太陽が西に沈んできた。
僕達は一番近い街で一泊することにして、宿のベッドに寝転んで体を休める。
するとエミリア姉上が扉を開けて、部屋に入ってきた。

「あなたまで巻き込んでしまってゴメンね」

「ノア大丈夫。アデル兄上のことが心配だし」

「私の前では、もっと子供らしくしていいのよ。まだ十歳なんだからね」

エミリア姉上は優しく微笑み、僕を両手で優しく抱き込む。

そう……僕が普通の十歳児よりも大人びているのには理由がある。
それは僕が前世の日本の記憶を持つ転生者だからだ。

僕が五歳の時、王城の階段でつまずいて下まで転がり落ちた。
その際に激しく頭を打ち、血を流して倒れたらしい。

意識不明の状態が三日も続き、その時の混濁した意識の中で、日本の情報が前世の記憶となって、色々と流れてきてきたんだ。

だから僕は前世の日本の記憶を持っている。
でも、日本で暮らした個人的な情報はないけどね。

それからの僕は受け応えが微妙に大人びたモノになってしまったのだけど。

僕の体から離れたエミリア姉上が悔しそうに表情を歪める。

「ドルムント辺境伯やバンベルク騎士団長、武闘派の地方貴族達も、アデルを国王に擁立して、クリトニア王国をバルドハイン帝国に負けないぐらいの強国にしたいらしいけど。そんなの上手くいくはずないわ」

「僕もそう思うよ」

「私達は家族で争いたくないのに」

「たぶんアデル兄上のことだから、あまり深く考えていないんだと思う」

「それだとやっぱり、アデルはバカよね」

そう言って、エミリア姉上は手で口を押さえてプププと笑う。
それに釣られて、僕も一緒に笑ってしまった。

それからしばらく雑談して、姉上が一緒に寝たいというので、僕達は同じベッドで眠った。

久しぶりに姉上と一緒のベッドだから、何だか恥ずかしくて、なかなか眠れないよ。

僕達が王宮騎士団に追いついたのは、王城を出てから三日目の昼過ぎだった。

馬車から降りた僕とエミリア姉上を見て、アデル兄上は驚いた表情をし、ドルムント辺境伯とバンベルク騎士団長は苦々しい表情を浮かべる。

「イアンとエミリア姉上じゃないか。こんな所までどうしたんだ?」

「あなたを止めに来たに決まってるじゃないの! アデルのバカ!」

「イテテテテ、姉上、耳を引っ張らないでくれ! 千切れてしまう!」

エミリア姉上が強引にアデル兄上の耳たぶを引っ張る。
慌てて姉上から強引に離れた、アデル兄上は片耳を両手で押さえ怯んだ表情をする。

「王宮騎士団といえば王国の代表する軍隊よ。その王宮騎士団がバルドハイン帝国軍と対峙すれば、帝国も本気になるわ。そうなったら軍事強国のバルドハイン帝国に勝てるはずないでしょ。バカなの」

「バカ、バカいうな! 俺にだって考えがあるんだ! バルドハイン帝国軍を全て蹴散らせればいいんだろ!」

アデル兄上のことだから深く考えていないと思ったけど、やっぱり脳筋なんだね。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

悪役令嬢と弟が相思相愛だったのでお邪魔虫は退場します!どうか末永くお幸せに!

ユウ
ファンタジー
乙女ゲームの王子に転生してしまったが断罪イベント三秒前。 婚約者を蔑ろにして酷い仕打ちをした最低王子に転生したと気づいたのですべての罪を被る事を決意したフィルベルトは公の前で。 「本日を持って私は廃嫡する!王座は弟に譲り、婚約者のマリアンナとは婚約解消とする!」 「「「は?」」」 「これまでの不始末の全ては私にある。責任を取って罪を償う…全て悪いのはこの私だ」 前代未聞の出来事。 王太子殿下自ら廃嫡を宣言し婚約者への謝罪をした後にフィルベルトは廃嫡となった。 これでハッピーエンド。 一代限りの辺境伯爵の地位を許され、二人の幸福を願ったのだった。 その潔さにフィルベルトはたちまち平民の心を掴んでしまった。 対する悪役令嬢と第二王子には不測の事態が起きてしまい、外交問題を起こしてしまうのだったが…。 タイトル変更しました。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第2巻発売中です!】 逞しく成長したリューク、そしてジーナ、ユフィオ、キスティーが大活躍します! 皆様どうぞよろしくお願いいたします。 【書籍第3巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。アニスもレムも超カワで、表紙もカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【2024年10月23日コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

処理中です...