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11.ドワーフ族の集落
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『プリミチブの樹海』に入り、ドワーフ族を探し始めて五日後、樹海の奥深くの深い谷の間に、彼等の集落を発見した。
今、僕の目の前には、集落から出てきたドワーフ達が武器を手にして立っている。
一人のドワーフが前に一歩出て、ジロジロと僕達を観察する。
「平地に住む人族がワシ等に何の用だ?」
「ドワーフ族の噂を聞いたんだよ『プリミチブの樹海』の奥深くに住むドワーフ族は地下都市を作って、そこで生活してるって。それで会ってみたくて来たんだ」
「ふん、何時の頃の話をしてるんだ。地下都市など神話の時代に崩壊しておるわい。今は樹海の中で幾つかの集落に分かれて静かに暮らしているだけだ。今時、そんな噂を信じるバカがいたとはのう。地下都市の金銀財宝を狙っても、今はそんなものはないぞ。全ては神話の時代だ」
あー、やっぱり地下都市の噂は本当じゃなかったんだな。
少し残念だけど、ドワーフ族とも会えたし、落ち込むほどではないよね。
「いやいや、お宝なんて狙ってないよ。ただ地下都市まで建設してしまうという、ドワーフの技術力を見たいと思ったんだ。その技術のほうが金銀よりも価値が髙いからね」
「ほう、人族にしては正当な価値をわかっているではないか」
「僕達はドワーフ族の技術について知りたくてここまで来たんだ。少し話を聞かせてもらえないかな。謝礼として酒を進呈しよう」
「酒か。酒をもらえるなら話は早い。ワシで良ければ話してやろう。皆の者、こいつ等はワシ等に酒をくれるという。悪い奴等ではなさそうだ。」
僕と話していたドワーフは振り返り、後ろにいた多くの同胞へ声をかける。
集まってきたドワーフ達は、「酒」という言葉を聞いて、笑顔で集落までの道を開けてくれた。
やはり前世の記憶にあった、ラノベの知識にでてきたように、ドワーフ族は無類の酒好きらしい。
僕達はドワーフ達に囲まれながら、門を潜って彼等の集落の中へと入った。
僕と話してくれたドワーフは、ドルタンと言い、この集落の長の息子で、今は長代行をしているという。
ドルタンの家に案内されると、玄関に一メートルを超える鈍色の大戦斧が飾られていた。
この大戦斧は長の家系に伝わる家宝なのだそうだ。
居間に通された僕達はそれぞれに絨毯の上に座る。
僕の目の前に座ったドルタンは、ウキウキした表情を浮かべ、何か言いたそうな雰囲気だ。
それを察した僕は、背嚢から酒の樽を取り出してドルタンの前に置いた。
この樽は、ドワーフ達と会うことを想定して、王都で大量に買い入れした酒樽の一つだ。
「まずは約束通り、お酒をプレゼントするよ」
「おお、人族の酒を飲むのは何年振りか」
ドルタンは樽の蓋を強引に開け、樽を両手に持って一気に酒をあおる。
そして樽をドンと置いて、恍惚の表情を浮かべた。
「美味い!」
「それは良かった。王都から持ってきたかいがあるよ。まだまだ酒はあるから、遠慮はいらないからね」
「それはありがたい。では宴会を開く前に話をしようではないか。先ほども聞いたが、お前達は何をしに来たのだ?」
「まずはこれを見てほしいんだ」
ドルタンの問いに頷き、僕は背嚢の中から数枚の羊皮紙を取り出し、それを彼に見せる。
これは王都を出発する前に描いた、機械の見取り図とイメージ画だ。
それを見たドルタンは、興味深そうにウンウンと何度も頷く。
「これは何かのカラクリ機械か。色々と知らぬ部品が使われておるようだわい」
「これはイメージ画だからね。色々な部品は歯車だよ。様々な形の歯車を組み合わせることで、動力を伝えて機械を動かすんだ」
「歯車の形を工夫するのか。そんな発想はしたこともなかったわい」
そういうとドルタンは羊皮紙から顔を上げ、僕をジッと見る。
「ただ地下都市の噂を探しに来たのではなさそうだのう」
「うん。様々なカラクリ機械を作りたいんだ。それには探求心に富む、優秀な職人が必要だろ。人族では繊細な細工は難しい。でも地下都市をつくるほどのドワーフ族の技術力ならできると思って会いにきたんだ」
僕の話を聞いて、ドルタンは膝をバンバン叩いて大笑いする。
「ワハハハ、精巧なカラクリ機械をつくるのは人族には無理だわい。ドワーフ族を訪ねて正解だ。お前はなかなか見所があるのう。ワシ達が協力してやってもよい。ただし」
「酒だろ。半年に一回、定期的に酒を供給するよ」
「ワハハハ。なんと敏い子供だ。気に入った」
ドルタンはニカッと笑って、僕に手を差し伸べる。
その手を僕が握ると、隣でエミリア姉上が安堵したように大きく息を吐いた。
話し合いは終わり、ドルタンの提案で今夜は宴会となった。
多くのドワーフ達が料理を手にドルタンの家に集まってくる。
そして僕達の目の前には見たこともない魔獣の肉を調理した料理が並んだ。
それにしても肉、肉、肉だね。
ドワーフ族は野菜を食べないのかな?
居間に集まったドワーフ達は手に手に酒の入った小樽を持って、ドワーフ族に伝わるという踊りを踊る。
それにつられて酔いが回ったリアムとルーネもドワーフ族に混じって踊っていた。
クライス達は、ドワーフ達に囲まれ、グイグイと酒を飲まされていた。
明日は確実に二日酔いだろうな。
僕の隣で料理を食べていたエミリア姉上が突然に動きを止める。
そして僕の顔を両手で掴み、目から涙を零して抱き着いてきた。
「イアン、これ以上、大人にならないで! いつまでも私の可愛い弟でいて!」
驚いて、エミリア姉上が座っていた場所を見ると幾つも酒の小樽が転がっている。
どうやら酒を飲みすぎて変な妄想をしているみたいだね。
それにしても、エミリア姉上が泣き上戸だったなんて知らなかったよ。
今、僕の目の前には、集落から出てきたドワーフ達が武器を手にして立っている。
一人のドワーフが前に一歩出て、ジロジロと僕達を観察する。
「平地に住む人族がワシ等に何の用だ?」
「ドワーフ族の噂を聞いたんだよ『プリミチブの樹海』の奥深くに住むドワーフ族は地下都市を作って、そこで生活してるって。それで会ってみたくて来たんだ」
「ふん、何時の頃の話をしてるんだ。地下都市など神話の時代に崩壊しておるわい。今は樹海の中で幾つかの集落に分かれて静かに暮らしているだけだ。今時、そんな噂を信じるバカがいたとはのう。地下都市の金銀財宝を狙っても、今はそんなものはないぞ。全ては神話の時代だ」
あー、やっぱり地下都市の噂は本当じゃなかったんだな。
少し残念だけど、ドワーフ族とも会えたし、落ち込むほどではないよね。
「いやいや、お宝なんて狙ってないよ。ただ地下都市まで建設してしまうという、ドワーフの技術力を見たいと思ったんだ。その技術のほうが金銀よりも価値が髙いからね」
「ほう、人族にしては正当な価値をわかっているではないか」
「僕達はドワーフ族の技術について知りたくてここまで来たんだ。少し話を聞かせてもらえないかな。謝礼として酒を進呈しよう」
「酒か。酒をもらえるなら話は早い。ワシで良ければ話してやろう。皆の者、こいつ等はワシ等に酒をくれるという。悪い奴等ではなさそうだ。」
僕と話していたドワーフは振り返り、後ろにいた多くの同胞へ声をかける。
集まってきたドワーフ達は、「酒」という言葉を聞いて、笑顔で集落までの道を開けてくれた。
やはり前世の記憶にあった、ラノベの知識にでてきたように、ドワーフ族は無類の酒好きらしい。
僕達はドワーフ達に囲まれながら、門を潜って彼等の集落の中へと入った。
僕と話してくれたドワーフは、ドルタンと言い、この集落の長の息子で、今は長代行をしているという。
ドルタンの家に案内されると、玄関に一メートルを超える鈍色の大戦斧が飾られていた。
この大戦斧は長の家系に伝わる家宝なのだそうだ。
居間に通された僕達はそれぞれに絨毯の上に座る。
僕の目の前に座ったドルタンは、ウキウキした表情を浮かべ、何か言いたそうな雰囲気だ。
それを察した僕は、背嚢から酒の樽を取り出してドルタンの前に置いた。
この樽は、ドワーフ達と会うことを想定して、王都で大量に買い入れした酒樽の一つだ。
「まずは約束通り、お酒をプレゼントするよ」
「おお、人族の酒を飲むのは何年振りか」
ドルタンは樽の蓋を強引に開け、樽を両手に持って一気に酒をあおる。
そして樽をドンと置いて、恍惚の表情を浮かべた。
「美味い!」
「それは良かった。王都から持ってきたかいがあるよ。まだまだ酒はあるから、遠慮はいらないからね」
「それはありがたい。では宴会を開く前に話をしようではないか。先ほども聞いたが、お前達は何をしに来たのだ?」
「まずはこれを見てほしいんだ」
ドルタンの問いに頷き、僕は背嚢の中から数枚の羊皮紙を取り出し、それを彼に見せる。
これは王都を出発する前に描いた、機械の見取り図とイメージ画だ。
それを見たドルタンは、興味深そうにウンウンと何度も頷く。
「これは何かのカラクリ機械か。色々と知らぬ部品が使われておるようだわい」
「これはイメージ画だからね。色々な部品は歯車だよ。様々な形の歯車を組み合わせることで、動力を伝えて機械を動かすんだ」
「歯車の形を工夫するのか。そんな発想はしたこともなかったわい」
そういうとドルタンは羊皮紙から顔を上げ、僕をジッと見る。
「ただ地下都市の噂を探しに来たのではなさそうだのう」
「うん。様々なカラクリ機械を作りたいんだ。それには探求心に富む、優秀な職人が必要だろ。人族では繊細な細工は難しい。でも地下都市をつくるほどのドワーフ族の技術力ならできると思って会いにきたんだ」
僕の話を聞いて、ドルタンは膝をバンバン叩いて大笑いする。
「ワハハハ、精巧なカラクリ機械をつくるのは人族には無理だわい。ドワーフ族を訪ねて正解だ。お前はなかなか見所があるのう。ワシ達が協力してやってもよい。ただし」
「酒だろ。半年に一回、定期的に酒を供給するよ」
「ワハハハ。なんと敏い子供だ。気に入った」
ドルタンはニカッと笑って、僕に手を差し伸べる。
その手を僕が握ると、隣でエミリア姉上が安堵したように大きく息を吐いた。
話し合いは終わり、ドルタンの提案で今夜は宴会となった。
多くのドワーフ達が料理を手にドルタンの家に集まってくる。
そして僕達の目の前には見たこともない魔獣の肉を調理した料理が並んだ。
それにしても肉、肉、肉だね。
ドワーフ族は野菜を食べないのかな?
居間に集まったドワーフ達は手に手に酒の入った小樽を持って、ドワーフ族に伝わるという踊りを踊る。
それにつられて酔いが回ったリアムとルーネもドワーフ族に混じって踊っていた。
クライス達は、ドワーフ達に囲まれ、グイグイと酒を飲まされていた。
明日は確実に二日酔いだろうな。
僕の隣で料理を食べていたエミリア姉上が突然に動きを止める。
そして僕の顔を両手で掴み、目から涙を零して抱き着いてきた。
「イアン、これ以上、大人にならないで! いつまでも私の可愛い弟でいて!」
驚いて、エミリア姉上が座っていた場所を見ると幾つも酒の小樽が転がっている。
どうやら酒を飲みすぎて変な妄想をしているみたいだね。
それにしても、エミリア姉上が泣き上戸だったなんて知らなかったよ。
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