現代知識チートからの王国再建~転生第三王子は王国を発展させたい!~二大強国に挟まれた弱小王国の巻き返し!

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!

文字の大きさ
11 / 51

11.ドワーフ族の集落

しおりを挟む
『プリミチブの樹海』に入り、ドワーフ族を探し始めて五日後、樹海の奥深くの深い谷の間に、彼等の集落を発見した。

今、僕の目の前には、集落から出てきたドワーフ達が武器を手にして立っている。
一人のドワーフが前に一歩出て、ジロジロと僕達を観察する。

「平地に住む人族がワシ等に何の用だ?」

「ドワーフ族の噂を聞いたんだよ『プリミチブの樹海』の奥深くに住むドワーフ族は地下都市を作って、そこで生活してるって。それで会ってみたくて来たんだ」

「ふん、何時の頃の話をしてるんだ。地下都市など神話の時代に崩壊しておるわい。今は樹海の中で幾つかの集落に分かれて静かに暮らしているだけだ。今時、そんな噂を信じるバカがいたとはのう。地下都市の金銀財宝を狙っても、今はそんなものはないぞ。全ては神話の時代だ」

あー、やっぱり地下都市の噂は本当じゃなかったんだな。
少し残念だけど、ドワーフ族とも会えたし、落ち込むほどではないよね。

「いやいや、お宝なんて狙ってないよ。ただ地下都市まで建設してしまうという、ドワーフの技術力を見たいと思ったんだ。その技術のほうが金銀よりも価値が髙いからね」

「ほう、人族にしては正当な価値をわかっているではないか」

「僕達はドワーフ族の技術について知りたくてここまで来たんだ。少し話を聞かせてもらえないかな。謝礼として酒を進呈しよう」

「酒か。酒をもらえるなら話は早い。ワシで良ければ話してやろう。皆の者、こいつ等はワシ等に酒をくれるという。悪い奴等ではなさそうだ。」

僕と話していたドワーフは振り返り、後ろにいた多くの同胞へ声をかける。
集まってきたドワーフ達は、「酒」という言葉を聞いて、笑顔で集落までの道を開けてくれた。

やはり前世の記憶にあった、ラノベの知識にでてきたように、ドワーフ族は無類の酒好きらしい。

僕達はドワーフ達に囲まれながら、門を潜って彼等の集落の中へと入った。

僕と話してくれたドワーフは、ドルタンと言い、この集落の長の息子で、今は長代行をしているという。

ドルタンの家に案内されると、玄関に一メートルを超える鈍色の大戦斧が飾られていた。
この大戦斧は長の家系に伝わる家宝なのだそうだ。

居間に通された僕達はそれぞれに絨毯の上に座る。
僕の目の前に座ったドルタンは、ウキウキした表情を浮かべ、何か言いたそうな雰囲気だ。

それを察した僕は、背嚢から酒の樽を取り出してドルタンの前に置いた。
この樽は、ドワーフ達と会うことを想定して、王都で大量に買い入れした酒樽の一つだ。

「まずは約束通り、お酒をプレゼントするよ」

「おお、人族の酒を飲むのは何年振りか」

ドルタンは樽の蓋を強引に開け、樽を両手に持って一気に酒をあおる。
そして樽をドンと置いて、恍惚の表情を浮かべた。

「美味い!」

「それは良かった。王都から持ってきたかいがあるよ。まだまだ酒はあるから、遠慮はいらないからね」

「それはありがたい。では宴会を開く前に話をしようではないか。先ほども聞いたが、お前達は何をしに来たのだ?」

「まずはこれを見てほしいんだ」

ドルタンの問いに頷き、僕は背嚢の中から数枚の羊皮紙を取り出し、それを彼に見せる。
これは王都を出発する前に描いた、機械の見取り図とイメージ画だ。

それを見たドルタンは、興味深そうにウンウンと何度も頷く。

「これは何かのカラクリ機械か。色々と知らぬ部品が使われておるようだわい」

「これはイメージ画だからね。色々な部品は歯車だよ。様々な形の歯車を組み合わせることで、動力を伝えて機械を動かすんだ」

「歯車の形を工夫するのか。そんな発想はしたこともなかったわい」

そういうとドルタンは羊皮紙から顔を上げ、僕をジッと見る。

「ただ地下都市の噂を探しに来たのではなさそうだのう」

「うん。様々なカラクリ機械を作りたいんだ。それには探求心に富む、優秀な職人が必要だろ。人族では繊細な細工は難しい。でも地下都市をつくるほどのドワーフ族の技術力ならできると思って会いにきたんだ」

僕の話を聞いて、ドルタンは膝をバンバン叩いて大笑いする。

「ワハハハ、精巧なカラクリ機械をつくるのは人族には無理だわい。ドワーフ族を訪ねて正解だ。お前はなかなか見所があるのう。ワシ達が協力してやってもよい。ただし」

「酒だろ。半年に一回、定期的に酒を供給するよ」

「ワハハハ。なんと敏い子供だ。気に入った」

ドルタンはニカッと笑って、僕に手を差し伸べる。
その手を僕が握ると、隣でエミリア姉上が安堵したように大きく息を吐いた。

話し合いは終わり、ドルタンの提案で今夜は宴会となった。
多くのドワーフ達が料理を手にドルタンの家に集まってくる。

そして僕達の目の前には見たこともない魔獣の肉を調理した料理が並んだ。

それにしても肉、肉、肉だね。
ドワーフ族は野菜を食べないのかな?

居間に集まったドワーフ達は手に手に酒の入った小樽を持って、ドワーフ族に伝わるという踊りを踊る。
それにつられて酔いが回ったリアムとルーネもドワーフ族に混じって踊っていた。

クライス達は、ドワーフ達に囲まれ、グイグイと酒を飲まされていた。
明日は確実に二日酔いだろうな。

僕の隣で料理を食べていたエミリア姉上が突然に動きを止める。
そして僕の顔を両手で掴み、目から涙を零して抱き着いてきた。

「イアン、これ以上、大人にならないで! いつまでも私の可愛い弟でいて!」

驚いて、エミリア姉上が座っていた場所を見ると幾つも酒の小樽が転がっている。
どうやら酒を飲みすぎて変な妄想をしているみたいだね。

それにしても、エミリア姉上が泣き上戸だったなんて知らなかったよ。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

悪役令嬢と弟が相思相愛だったのでお邪魔虫は退場します!どうか末永くお幸せに!

ユウ
ファンタジー
乙女ゲームの王子に転生してしまったが断罪イベント三秒前。 婚約者を蔑ろにして酷い仕打ちをした最低王子に転生したと気づいたのですべての罪を被る事を決意したフィルベルトは公の前で。 「本日を持って私は廃嫡する!王座は弟に譲り、婚約者のマリアンナとは婚約解消とする!」 「「「は?」」」 「これまでの不始末の全ては私にある。責任を取って罪を償う…全て悪いのはこの私だ」 前代未聞の出来事。 王太子殿下自ら廃嫡を宣言し婚約者への謝罪をした後にフィルベルトは廃嫡となった。 これでハッピーエンド。 一代限りの辺境伯爵の地位を許され、二人の幸福を願ったのだった。 その潔さにフィルベルトはたちまち平民の心を掴んでしまった。 対する悪役令嬢と第二王子には不測の事態が起きてしまい、外交問題を起こしてしまうのだったが…。 タイトル変更しました。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第2巻発売中です!】 逞しく成長したリューク、そしてジーナ、ユフィオ、キスティーが大活躍します! 皆様どうぞよろしくお願いいたします。 【書籍第3巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。アニスもレムも超カワで、表紙もカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【2024年10月23日コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

処理中です...