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12.ドワーフ族のエミー
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宴会があった次の日、クライス達は二日酔いで倒れていた。
リアムとルーネも調子が悪そうで、居間でゴロゴロと転がっている。
エミリア姉上は昨日の酔い方が恥ずかしかったようで、僕と顔を合わさないように別室に隠れてしまった。
僕はドルタンから「ちょっと一緒に来い」と言われて、二人で家を出た。
集落の中を歩くと、外にいるドワーフ達が笑顔で手を振ってくれる。
集落に着いた時は、あれだけ僕達を警戒していたドワーフ達も、昨日の宴会で打ち解けてくれたようだ。
ドルタンと二人で集落の端まで歩いていくと、一軒の土壁でつくられた大きな家に到着した。
ドルタンは頑丈な扉を蹴飛ばし「入るぞ!」と怒鳴って、家の中へ入っていく。
続いて扉を潜ると、家の中には色々なガラクタが散かっていた。
ドルタンはドタドタとガラクタとかき分けながら奥へ進み、ガバッと毛布を掴んで引き剥がした。
すると驚いたドワーフの女子が飛び起きてドルタンに文句をいう。
「いきなり何をするのよ! 昨日は夜中まで作業していて、さっき寝たばかりなのに!」
「そう怒るな。お前にとびっきりの客を連れてきてやったぞい。カラクリ機械について詳しい奴だ」
「それは本当なの?」
勢いよく僕の方へ顔を向け、女子が走って近づいてくる。
そして僕の手を強引に握って、満面の笑みを浮かべた。
「私の名はエミー、カラクリ機械について語りあかしましょう」
ドルタンの説明では、ミリーは集落で一番の器用者で、道具作りについては右に出る者はいないという。
そしてカラクリ機械を作ることが大好きで、自分で発案した道具を色々と作っているそうだ。
エミーが自作の道具を手に抱えて僕に見せる。
「この道具はゼンマイを巻くと、箱の下の車輪がクルクルと回るわけ。街に行った時に馬車を見て思いついたのよ」
それはまさしく、前世の日本の記憶にあった自動車のオモチャに似た道具だった。
エミーがゼンマイを巻いて手を放すと、四角い箱が僕の方へ走ってくる。
「スゴイよ! これってスゴイ発明だよ!」
「私の道具の素晴らしさをわかってくれる人がいたなんて、こんなに嬉しいことはないわ」
「是非、僕と一緒に王都へ来てほしい」
「行く、行く。カラクリ機械が作れるなら、どこへだって行くわ」
僕とエミーが手を握り合って喜んでいると、ドルタンが嬉しそうに大声を出す。
「実にめでたいぞい! 今日は宴会だ!」
ドワーフ達の宴会は三日三晩続き、リアム、ルーネ、クライス達は酷い二日酔いとなり、宴会の後にぶっ倒れた。
エミリア姉上は自分の酔い方を恥じて、酒は一滴も飲まなかった。
僕はそもそも未成年だから食べるの専門で、酒は飲んでいないけどね。
クライス達が寝込んでいる間に、ドルタンとエミー主導により、ドワーフ族の中から道具作りが好きな二十人が選ばれ、僕達に同行して王都へ向かうことになった。
しかし、ドルタンは集落の長の代行なので、僕達と一緒には行けないらしい。
ドワーフの集落に来てから一週間が経ち、旅の準備を整えたドワーフ達を連れて、僕達は王都へ戻るため出発した。
複雑に入り組んでいる樹海を、ドワーフ達は庭のように歩いていく。
何度も魔獣達に襲われたけど、二十人を超える大所帯ということもあり、難なく魔獣達を討伐して樹海の中を進んでいった。
そして集落を出てから五日後、僕達は『プリミチブの樹海』を抜けた。
街道を歩いてベアケルの街へ向かうと、外壁の大門の前にベルドさんが冒険者達を連れて立っていた。
「『プリミチブの樹海』からドワーフ達がゾロゾロと出てきたと冒険者から報告があったから来てみたが、やはりお前達だったか」
「はい。ドワーフ達の集落を見つけたんですよ。それで一緒に樹海を抜けてきたんです」
「そうだろうとは予想がつく。しかし、街の中へドワーフ達を引き入れるのは禁止だ」
「どうしてですか?」
「考えてもみろ。樹海から出てきたドワーフ共が、そんなに大勢で街の中へ入ったら、血の荒い冒険者達を刺激することになるだろうが。絶対に揉め事が起きるに決まってる。ギルドマスターとしてそんな事態になるのは看過できん」
ドワーフ族は王国内にも住んでいるが、希少な亜人であることには変わらない。
それが大勢で街の中に入れば、否が応でも目立つよね。
そうなれば好奇心を持った冒険者がちょっかいをかけるかもしれない。
冒険者を預かるギルドマスターとしては無用な争いを避けたいと思うのは理解できる。
僕はベルドさんに向けて指を一本立てる。
「申し出はわかりました。無理に街の中へ入ることはしません。ただ酒と食料の援助をお願いします。樹海を踏破してきたばかりで、ドワーフ達も疲れているので」
「それぐらいならお安い御用だ。酒と食料は手配してやる」
ベルドさんとの話し合いが終わり、ドワーフ達の共にいるエミーの元へ向かう。
そしてベアケルの街へ入れない理由と、酒と食料はもらえることを伝えると、エミーは嬉しそうに顔を綻ばせる。
「私達はドワーフよ。だから空地や草原で寝るなんて慣れてるわ。だから街に入れないなんて平気よ。それより酒をタダでもらえるなんてラッキーね。今日は夜通し宴会だね」
うぅ……また酒を飲むのか。
ドワーフ族はどれだけ宴会好きなんだよ。
リアムとルーネも調子が悪そうで、居間でゴロゴロと転がっている。
エミリア姉上は昨日の酔い方が恥ずかしかったようで、僕と顔を合わさないように別室に隠れてしまった。
僕はドルタンから「ちょっと一緒に来い」と言われて、二人で家を出た。
集落の中を歩くと、外にいるドワーフ達が笑顔で手を振ってくれる。
集落に着いた時は、あれだけ僕達を警戒していたドワーフ達も、昨日の宴会で打ち解けてくれたようだ。
ドルタンと二人で集落の端まで歩いていくと、一軒の土壁でつくられた大きな家に到着した。
ドルタンは頑丈な扉を蹴飛ばし「入るぞ!」と怒鳴って、家の中へ入っていく。
続いて扉を潜ると、家の中には色々なガラクタが散かっていた。
ドルタンはドタドタとガラクタとかき分けながら奥へ進み、ガバッと毛布を掴んで引き剥がした。
すると驚いたドワーフの女子が飛び起きてドルタンに文句をいう。
「いきなり何をするのよ! 昨日は夜中まで作業していて、さっき寝たばかりなのに!」
「そう怒るな。お前にとびっきりの客を連れてきてやったぞい。カラクリ機械について詳しい奴だ」
「それは本当なの?」
勢いよく僕の方へ顔を向け、女子が走って近づいてくる。
そして僕の手を強引に握って、満面の笑みを浮かべた。
「私の名はエミー、カラクリ機械について語りあかしましょう」
ドルタンの説明では、ミリーは集落で一番の器用者で、道具作りについては右に出る者はいないという。
そしてカラクリ機械を作ることが大好きで、自分で発案した道具を色々と作っているそうだ。
エミーが自作の道具を手に抱えて僕に見せる。
「この道具はゼンマイを巻くと、箱の下の車輪がクルクルと回るわけ。街に行った時に馬車を見て思いついたのよ」
それはまさしく、前世の日本の記憶にあった自動車のオモチャに似た道具だった。
エミーがゼンマイを巻いて手を放すと、四角い箱が僕の方へ走ってくる。
「スゴイよ! これってスゴイ発明だよ!」
「私の道具の素晴らしさをわかってくれる人がいたなんて、こんなに嬉しいことはないわ」
「是非、僕と一緒に王都へ来てほしい」
「行く、行く。カラクリ機械が作れるなら、どこへだって行くわ」
僕とエミーが手を握り合って喜んでいると、ドルタンが嬉しそうに大声を出す。
「実にめでたいぞい! 今日は宴会だ!」
ドワーフ達の宴会は三日三晩続き、リアム、ルーネ、クライス達は酷い二日酔いとなり、宴会の後にぶっ倒れた。
エミリア姉上は自分の酔い方を恥じて、酒は一滴も飲まなかった。
僕はそもそも未成年だから食べるの専門で、酒は飲んでいないけどね。
クライス達が寝込んでいる間に、ドルタンとエミー主導により、ドワーフ族の中から道具作りが好きな二十人が選ばれ、僕達に同行して王都へ向かうことになった。
しかし、ドルタンは集落の長の代行なので、僕達と一緒には行けないらしい。
ドワーフの集落に来てから一週間が経ち、旅の準備を整えたドワーフ達を連れて、僕達は王都へ戻るため出発した。
複雑に入り組んでいる樹海を、ドワーフ達は庭のように歩いていく。
何度も魔獣達に襲われたけど、二十人を超える大所帯ということもあり、難なく魔獣達を討伐して樹海の中を進んでいった。
そして集落を出てから五日後、僕達は『プリミチブの樹海』を抜けた。
街道を歩いてベアケルの街へ向かうと、外壁の大門の前にベルドさんが冒険者達を連れて立っていた。
「『プリミチブの樹海』からドワーフ達がゾロゾロと出てきたと冒険者から報告があったから来てみたが、やはりお前達だったか」
「はい。ドワーフ達の集落を見つけたんですよ。それで一緒に樹海を抜けてきたんです」
「そうだろうとは予想がつく。しかし、街の中へドワーフ達を引き入れるのは禁止だ」
「どうしてですか?」
「考えてもみろ。樹海から出てきたドワーフ共が、そんなに大勢で街の中へ入ったら、血の荒い冒険者達を刺激することになるだろうが。絶対に揉め事が起きるに決まってる。ギルドマスターとしてそんな事態になるのは看過できん」
ドワーフ族は王国内にも住んでいるが、希少な亜人であることには変わらない。
それが大勢で街の中に入れば、否が応でも目立つよね。
そうなれば好奇心を持った冒険者がちょっかいをかけるかもしれない。
冒険者を預かるギルドマスターとしては無用な争いを避けたいと思うのは理解できる。
僕はベルドさんに向けて指を一本立てる。
「申し出はわかりました。無理に街の中へ入ることはしません。ただ酒と食料の援助をお願いします。樹海を踏破してきたばかりで、ドワーフ達も疲れているので」
「それぐらいならお安い御用だ。酒と食料は手配してやる」
ベルドさんとの話し合いが終わり、ドワーフ達の共にいるエミーの元へ向かう。
そしてベアケルの街へ入れない理由と、酒と食料はもらえることを伝えると、エミーは嬉しそうに顔を綻ばせる。
「私達はドワーフよ。だから空地や草原で寝るなんて慣れてるわ。だから街に入れないなんて平気よ。それより酒をタダでもらえるなんてラッキーね。今日は夜通し宴会だね」
うぅ……また酒を飲むのか。
ドワーフ族はどれだけ宴会好きなんだよ。
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