『天界の封印在庫』は万能です!!

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!

文字の大きさ
32 / 42

第32話 遺跡の中

しおりを挟む
ロイドはAIだが思考も感情もありそうだ。
突然に訪問してきた者に、国は既にないと聞かされれば誰でも驚くよな。

「ロイドは今までの同じで、ここの管理者を続ければいい。動けるボディはないんだろ?」

「ありません」

「ここにいる間は俺達が話し相手になってやるよ」

「それなら、私がロイドとお喋りしてもいいでしょうか?」

パネルの前まで歩き、ルーナが目をキラキラと輝かせる。

ロイドは容姿端麗の金髪イケメンだ。
軍装も似合っているし、口調も優しく丁寧。

ルーナが気に入るのもわかるが、相手はAIだぞ。
人口知能を知らない彼女はそのことを理解しているのだろうか?

「私もお話ししたいです」

「それじゃあ、私も」

「わかった、わかった、俺との話しが終ったら、幾らでもロイドの相手をしてやってくれ」

ルーナとルディも彼と話したいようだ。
イケメンは世界線を超えて、異世界でもモテるらしい。

するとベルフィがロイドへ声をかける。

「少しの間、ここに滞在するつもりなんだ。ゆっくり休める部屋はあるかな?」

「はい、あります。通路を開けますのでお待ちください」

ロイドは頷き、指でパネルを操作する。
たぶんCGだけど、よくできてるよな。

すると広間の横の壁に扉が現れ、音もなくスーッと開いた。

「格納庫には、整備班が駐在する小部屋があります。ご自由にお使いください。階段を下りていくと大浴場も完備されていますので、そちらもよろしかったらどうぞ」

「風呂? 湯舟のお湯は大丈夫なのか?」

「湯は格納庫からパイプを地下に伸ばし、源泉から汲みあげて常に循環させています」

それって、まさか温泉のことだよな!
異世界に転生してから三年。

ベルトラン王国では風呂は、貴族が使う贅沢品とされている。
街の高級宿には風呂が設置されているが、安宿や住人達の家に風呂はない。

生れ変ってからは、宿の個室の中で一人、裸になって布で体を拭き、何度も風呂を夢見てきた!
俺は興奮して通路に向かって走ろうとすると、エリスに手を掴まれた。

「待ってください。ここで休むのならアレッサ達を呼んだほうがいいです」

「んだんだ。俺もそう思うだ」

ダントンも同じ意見のようだ。

地上で待っている三人だけ、休めないのは可哀そうだな。
それに後で、アレッサが拗ねるに決まってる。

「ロイド、地上に下りる通路はないのか?」

「ございます。八百年間、使用しておりませんが。今、エレベータの扉を開きます」

次の瞬間に通路とは逆の横壁が動き、扉が現れて両側へと開く。

走っていって俺がエレベータ乗ると、扉が閉まり「ウィーン」と小さな駆動音が聞こえる。
そして動きだしたかと感じた瞬間に、停止した。

そして両側に扉が開くと、ブレイズがアレッサに投げ飛ばされる場面だった。
地面にはライルが倒れている。

「あれ? どうしてノアが崖から出てくるの?」

「それより何をして遊んでたんだ?」

「暇だったから、二人に稽古をつけてあげてたのよ」

アレッサは楽しそうに満面に笑む。

ブレイズ達、問答無用で、彼女に付き合わされてたんだろうな。

「円盤の上に広間があったんだ。今日はそこで休むから一緒に来てくれ」

「はーい!」

アレッサは元気よく答えると、グタッとしているブレイズとライルを両肩に担ぎ、巨大メイスを手に持って、エレベータへ乗り込んできた。

三人が中に入ると、扉が自動で閉まり、エレベータが上昇する。
先ほどもそうだが、ロイドが操作しているようだ。

扉が開くと、アレッサがブレイズとライル、二人の体を床に下し、ルディの元へと走って行く。

「ルディ!」

「はいはい。苦しいから抱きしめないでね」

二人はハイタッチを交わして実に楽しそうだ。
 
テットは慌てて倒れているブレンズ達の元へ走っていく。
ルーナとシャナは胸の前で両手を合わせ、ロイドに夢中だ。

「俺達は部屋に行こう! 『獅子の咆哮』もキチンと休めよ!」

俺は片手を上げ、『不死の翼』の仲間と一緒に通路に向かう。
予想以上に廊下は長く、奥まで進んでいくと、沢山の扉が並んでいた。

目的の個室のようだ。

扉を開けて室内に入ろうとすると、アレッサに声をかけられた。

「ノア、休憩した後にね」

「了解」

室内に入ると十畳ぐらいの広さで、セミダブルのベッドが設置されていた。
壁に棚が埋め込まれていて、引き出しを開けてみると、様々な衣服が密封状態で置かれている。

他の段の引き出しには、鞄や革袋なども入っていた。
捜せば色々な物がありそうだ。

横の扉を開けると小さなダイニングがあり、その奥には、じょうご型のトイレもあった。

俺は部屋に戻り、武装を解いて、引き出しの中の衣服に着替える。
前世の日本のジャージに似た素材の運動着で動きやすい。

「ふー、今日も色々なことがあったな」

ゴロンとベッドに横になっていると、ロイドの音声が聞こえてきた。

「個室はいかがでしょうか?」

「快適だが、どこかから見ているのか?」

「室内の映像は確認していません。しかし、健康状態の確認のため、各センサーが起動しています。何かご用がありましたら、発声していただければ、お応えいたします」

「わかった。ありがとう」

俺が礼を言うと、室内が静かになった。

温泉に行こうか?

そういえばアレッサに呼ばれていたな。
できればゆっくりと湯舟に浸かりたいから、先に彼女の用件を済ませておこう。

俺はゆっくりとベッドから立ち上がり、扉を開て通路に出る。

「どこに行くんですか?」

突然声をかけられ、顔を横に向けると、エリスが大きな鞄を持って立っていた。
彼女も運動着に着替えている。

「ちょっとアレッサに呼ばれていてね。それより何かあったの?」

「いいえ……個室にダイニングがあったので料理をしようと……それで食材があれば分けてほしくて……お願いできますか」

「もちろんだよ。ちょっと待ってて」

俺は上着のポケットからスマホを取り出し、肉、野菜、調味料、ソースなどを召喚する。
エリスはそれらの食材を鞄に詰め込み、ジーっと俺を見る。

「ありがとうございます……個室に戻りますね。料理ができたらお呼びします」

「部屋の中でロイドを呼ぶと、各部屋に伝えてくれると思うよ。楽しみに待ってる」

「……では、ごゆっくりと」

クルリと体を反転させ、エリスはスタスタと通路を去っていった。

妙な間があったような?
それに少し不機嫌だったような気がするけど?

首を捻りながら、彼女の後ろ姿を目で追う。
それからアレッサの部屋の前まで歩き、扉をノックして室内へと入った。

するとベッドに腰かけたアレッサがニッコリと微笑む。

「来てくれたのね。遅くなるようなら私からノアの部屋に行こうと思っていたわ」

彼女の口調が変っている。
これは真剣に話を聞いたほうが良さそうだな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。 故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。 一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。 「もう遅い」と。 これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。 絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。 一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。 無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!

デバフ専門の支援術師は勇者パーティを追放されたので、呪いのアイテム専門店を開きます

夏見ナイ
ファンタジー
支援術師ノアは、敵を弱体化させる【呪物錬成】スキルで勇者パーティを支えていた。しかし、その力は地味で不吉だと疎まれ、ダンジョン攻略失敗の濡れ衣を着せられ追放されてしまう。 全てを失い、辺境の街に流れ着いたノア。生きるために作った「呪いの鍋」が、なぜか異常な性能を発揮し、街で評判となっていく。彼のスキルは、呪いという枷と引き換えに、物の潜在能力を限界突破させる超レアなものだったのだ。本人はその価値に全く気づいていないが……。 才能に悩む女剣士や没落貴族の令嬢など、彼の人柄と規格外のアイテムに惹かれた仲間が次第に集まり、小さな専門店はいつしか街の希望となる。一方、ノアを追放した勇者パーティは彼の不在で没落していく。これは、優しすぎる無自覚最強な主人公が、辺境から世界を救う物語。

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

処理中です...