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第31話 暗号解読

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影を登り始めて約二時間。
俺とエリスは金属の円盤の上に辿り着いた。

地上からは確認できなかったが、円盤の上部外周には幾つもアンテナのような突起物があり、崖に幅約五メートルほどの金属製の扉が設置されていた。

両手でアンテナを握って、力任せに強度を計ってみる。
全く曲がることもなく、これなら使えそうだ。

スマホから縄梯子を二つ召喚し、エリナと二人でアンテナに結びつけて、地上へと落す。

「おーい、登ってきていいぞ!」

円盤に寝転び、端から顔を出して眼下へ向かって大声で叫ぶ。
地上では皆が上を見上げて手を振っていた。

「じゃあ、扉を調べよう」

「はい」

扉の横に金属の板がはめ込まれている。

あれに触れれば扉が開くのか?

金属の板に手を置くと、板の上部に文字が浮かんできた。
そして板の下方に、キーパッドが現れた。

「書かれている文字が読めないな」

「この文字は古代文明で使用されていた神代文字だと思います」

「読める?」

「旦那様から教えてもらったことがあります」

神代文字を見ながら、エリスが眼鏡をクイと持ち上げる。

神代文字の読み方なんて庶民は知らないぞ。
ジルベルトさん、やはり俗人ではないよな。

「おかしいです。文章になっていません」

「暗号になってるのかもな。とにかく文字を読んでみてくれ」

「わかりました。『ぬそらけひも』と書かれています』

全く意味不明な、言葉の羅列だな。
ランダムで文字が浮かび上がってきてるのか。

ということは言葉の意味から暗号を解読するのは無理そうだ。
言葉が一文字ずつズレているのかもしれない。

「少し試してみよう」

俺は色々とアイデアを考え、それをエリスに伝えてキーパッドへ入力してもらう。

「全くわからん」

俺が呟くと、文字が微かに輝いた。
その変化に驚いた俺はエリスに問いかける。

「今、何かした?」

「はい。『全くわからん』と入力しました」

「どういうことだ? 変化が現れたということはヒントなのか?」

これはお手上げだ。
ベルフィ達が登ってくるのを待とう。

円盤の中央で俺とエリスが『ナゾメイト』を食べていると、ベルフィとルディが登ってきた。
その後にダントン、ルーナ、シャナ、テットの四人が到着した。

「あれ、アレッサは?」

「アレッサは下で待ってるって言ってたわ」

ルディは肩を竦ませ、残念そうな表情を浮かべる。

『アビスの谷』を超える時、縄梯子が切れたことを気にしているのか。

普段のアレッサは粗雑にしているが、そう装っていることも多い。
仲間のことを考えて、身を引いてくれたんだろう。

「ブレイズとライルは?」

「突然、ブレイズが登らないと言い出したんです」

「私達二人がガッポリとお宝を取ってくればいいって。そうすれば勝負に勝てると言っていました。ライルはブレイズと一緒に地上に残っています」

ルーナとシャナが不思議そうに首を傾げる。

アレッサが一人になると思って、ブレイズは残ったのかもな。
意外と良いところもあるじゃないか。

俺は手早く全員に、謎の神代文字について説明する。
するとルデイが胸の前で両手を組んで、楽しそうに微笑む。

「私が暗号解読をしてみていい?」

「いいぞ。俺では解けないみたいだからな」

「僕も手伝おう」

「私も一緒に」

ルディ、ベルフィ、エリスの三人は金属板へと歩いていく。
俺、ルーナ、シャナ、テットの四人は周囲で、暗号解読を観察することにした。

それからしばらく、ルディ達の色々な文字を入力して試していく。
そしてルディが何かに気づいたようだ。

「123933194119と入力してみて」

「わかりました」

エリスが素早く入力すると、板に浮かぶ文字が消え、「ガガガー……ガガガーー」と金属の扉が両側へと開いた。

「さすがルディだな。どうやって解読したんだ?」

「ノアが「全くわからん」と言った時、文字が輝いたってエリスから聞いたから、気になってたんだよね。だから「わからない」って言葉で色々と考えてたのよ。それで「支離滅裂」を数字に置き換えてみたらビンゴだったみたい」

なるほど、数字暗号だったわけか。

「よく思いついたな」

「背が低いからって、子供扱いしないでよね」

無意識にルディの頭を撫でようとして、彼女に払い除けられる。
すると強烈な視線を感じ、周りを見回すと、エリスとテットがジッと俺を見据えていた。

エリスの前でマズかったかもな。
テットがルディに片想いしているのを忘れてたよ。

髪をかいて、皆に号令をかける。

「扉は開いた! 中に入ってみようか!」

全員で扉の裏側に入っていくと、内部が金属板で作られた大きな空間が広がっていた。

奥の壁にはモニターらしきものが設置されており、その下にコントロールパネルがある。
その他に装置のようなものは何もない。

まるで倉庫か格納庫のようだな。

「次は俺達が操作するぜ」

突然にテットが走り出し、パネルに両手を置く。
するとモニターが起動し、軍帽と軍服を着けたイケメンの姿を映し出した。

「クロノピア空軍 第1航空団 第3整備中隊 格納庫、管理者ロイドです。 あなた達の所属を教えてください」

「なんだこれ? 壁の男が映って喋りはじめたぞ!」

驚いて退くテットの横を歩いて、俺はモニターの前に立つ。

古代文明は滅びているはずだ。
ということは、この男は生きていないはず。
管理者ということはAIか。

「クロノピアとは国名か?」
 
「はい、そうです。 クロノピア蒼光国です」

「たぶん、その国はもう存在しないぞ。 何年前から格納庫は使用されていないんだ?」

「約八百年ほど前から私は一人です」

「だとすると、その頃には国が滅んだのかもな」

俺の言葉にロイドは黙り込む。
その表情はとても悲しそうだ。

このAIには寂しいと思う気持ちはあるらしいな。

俺がモニターを見つめていると、テットが恐る恐る隣に並んできた。

「あの男は誰だ? どこにいる?」

「たぶん、あれは格納庫を管理するための人工知能だ」

「人口知能? 何だそれ?」

あ……この異世界にはAIは前世の日本のような科学はないかったんだよな。
どう説明すればいいんだろ?

俺が悩んでいると、ルディが後ろから走ってきた。

「へえ! 壁の中にいるホムンクルスなのね。 さすが古代文明の遺跡だわ」

「そうそう、それだそれ!」

俺は思わず大声をあげ、コクコクと頷く。

この異世界には錬金術師がいるんだった。
知らない者達からすると、未知の技術である人口知能もホムンクルスも大差だろ。

するとロイドが泣きながら、画面いっぱいに顔を近づける。

「私はこれから、どうすればいいんでしょうか?」
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