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第一章 非公式お茶会
18 駄々をこねる次兄は可愛い
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Side:アシェル8歳 春
王立学院中等部の入学式を翌日に控えた日の夜。
談話室で3人の兄妹が寛いでいた。
「学院になんか入学したくない。」
目の前でプイっと顔を逸らされ、その動きでふわふわの銀髪が揺れた。
「アル兄様……そうは言っても、13の歳から王立学院に通うのは貴族の義務でしょう。」
アルフォードはいつもお兄ちゃんしてくれるので、アシェルの前でこんな風に駄々をこねるのはとても珍しかった。
珍しいどころか、初めて見たのではないかと思う。
「なんで全寮制なんだ……。」
がっくりと肩を落とす姿に、2年前。長兄のアレリオンが王立学院に入学する時もかなり落ち込んでいたよなと思い返す。
物分かりのいいアレリオンらしく、落ち込むだけで不平不満を言うようなことはなかったが。
「アルお義兄様、安心してくださいませ。アシェお義姉様の面倒は、わたくしがしっかり見ておきますわ。」
ふふん、と胸を張って答えるメルティーに呼ばれた通り、今のアシェルはドレス姿だ。
メルティーは女装か男装かに合わせて呼称を使い分けてくれる。
アレリオンが学院に入学する前もそうだったが、今回もアルフォードたっての希望で今日までの一週間、ドレス姿で過ごしていた。
「えっと……メルの面倒はわたくしがちゃんとみるから安心して、だと思うのだけれど。」
1歳差とはいえ、アシェルは曲がりなりにもメルティーのお義姉ちゃんだ。
面倒を見られるのは何か違う気がする。
「そういうことじゃないんだっ。可愛い妹達を置いて学院にいかなきゃいけないんだぞ?6年間の間に変な虫がついたらどうするっ!可愛い可愛い妹達の成長を横で見れなくなるんだぞっ!?」
「そんなこといって、どうせアン義兄様と一緒で長期休暇の度に。普通のお休みでも都合がつけば帰っていらっしゃるでしょ。成長が見れないなんてことはありませんわ。」
「わたくしの場合、普段は男装ですし、まず出会いがないかと……。むしろ貴族としては嫁き遅れの心配の方が。まぁ結婚願望もないのでいいのですけど。」
「わたくしは政略結婚でも構いませんけど、お相手はちゃんと選んでくださいませね。女性の適齢期はあっという間に過ぎてしまいましてよ。」
「アシェ~、メル~。……結婚なんて、そんな悲しいこと……。」
アシェルとメルティーの割と現実的な反応に、アルフォードの眼が潤んだ。
父親譲りのぱっちり垂れ目が潤んで、普段の快活な様子が身を潜めていると。
いくらズボン姿だろうと前世の記憶があるアシェルから見れば、アルフォードは女の子にしか見えない。
(見た目もだけど、駄々をこねて子供らしいアル兄様も可愛いわ……。)
前世と合わせて精神年齢は20代後半のアシェルからは、微笑ましいやり取りだ。
特に前世の記憶が曖昧で、アシェル自身こんな風に駄々をこねた覚えがないので余計に微笑ましく感じる。
「アルお義兄様、いい加減妹離れなさいませ。さすがに愛が重たいですわ。」
「重たい……アシェはそうは思わないよな?」
アルフォードはメルティーの一言にショックを受けたようで、おずおずとアシェルに尋ねる。
「今のアル兄様は可愛いと思いますわ。」
可愛いって何が?とアルフォードが首を傾げている。
思わず考えていたことが口に出てしまい、違った、と言い直す。
「メルの言いたいことも分かりますわ。でもお兄様達と同じで、メルが結婚となると、わたくしも取り乱す自信がありますわね。邪魔はしないけれど、少なくとも相手のことは徹底的に調べ上げますわ。変な男や家に、大切で可愛いメルをあげたくないですもの。」
「アシェは分かってくれるか!」
パァァとアルフォードの顔が輝いた。
そこからはアシェルとアルフォードで、メルティーのどこが可愛いやら思い出話やらのトークが盛り上がる。
そんな様子を見ながら、ソファに深く身体を預けたメルティーはぼそっと呟いた。
「そうでしたわ。……我が家は皆、過保護すぎるほどシスコン・ブラコンを拗らせてますものね……。」
かく言うメルティーも傍から見れば十分ブラコンなのだが、それを指摘する人はいない。
こうしてアルフォードの王立学院入学前夜は過ぎた。
王立学院中等部の入学式を翌日に控えた日の夜。
談話室で3人の兄妹が寛いでいた。
「学院になんか入学したくない。」
目の前でプイっと顔を逸らされ、その動きでふわふわの銀髪が揺れた。
「アル兄様……そうは言っても、13の歳から王立学院に通うのは貴族の義務でしょう。」
アルフォードはいつもお兄ちゃんしてくれるので、アシェルの前でこんな風に駄々をこねるのはとても珍しかった。
珍しいどころか、初めて見たのではないかと思う。
「なんで全寮制なんだ……。」
がっくりと肩を落とす姿に、2年前。長兄のアレリオンが王立学院に入学する時もかなり落ち込んでいたよなと思い返す。
物分かりのいいアレリオンらしく、落ち込むだけで不平不満を言うようなことはなかったが。
「アルお義兄様、安心してくださいませ。アシェお義姉様の面倒は、わたくしがしっかり見ておきますわ。」
ふふん、と胸を張って答えるメルティーに呼ばれた通り、今のアシェルはドレス姿だ。
メルティーは女装か男装かに合わせて呼称を使い分けてくれる。
アレリオンが学院に入学する前もそうだったが、今回もアルフォードたっての希望で今日までの一週間、ドレス姿で過ごしていた。
「えっと……メルの面倒はわたくしがちゃんとみるから安心して、だと思うのだけれど。」
1歳差とはいえ、アシェルは曲がりなりにもメルティーのお義姉ちゃんだ。
面倒を見られるのは何か違う気がする。
「そういうことじゃないんだっ。可愛い妹達を置いて学院にいかなきゃいけないんだぞ?6年間の間に変な虫がついたらどうするっ!可愛い可愛い妹達の成長を横で見れなくなるんだぞっ!?」
「そんなこといって、どうせアン義兄様と一緒で長期休暇の度に。普通のお休みでも都合がつけば帰っていらっしゃるでしょ。成長が見れないなんてことはありませんわ。」
「わたくしの場合、普段は男装ですし、まず出会いがないかと……。むしろ貴族としては嫁き遅れの心配の方が。まぁ結婚願望もないのでいいのですけど。」
「わたくしは政略結婚でも構いませんけど、お相手はちゃんと選んでくださいませね。女性の適齢期はあっという間に過ぎてしまいましてよ。」
「アシェ~、メル~。……結婚なんて、そんな悲しいこと……。」
アシェルとメルティーの割と現実的な反応に、アルフォードの眼が潤んだ。
父親譲りのぱっちり垂れ目が潤んで、普段の快活な様子が身を潜めていると。
いくらズボン姿だろうと前世の記憶があるアシェルから見れば、アルフォードは女の子にしか見えない。
(見た目もだけど、駄々をこねて子供らしいアル兄様も可愛いわ……。)
前世と合わせて精神年齢は20代後半のアシェルからは、微笑ましいやり取りだ。
特に前世の記憶が曖昧で、アシェル自身こんな風に駄々をこねた覚えがないので余計に微笑ましく感じる。
「アルお義兄様、いい加減妹離れなさいませ。さすがに愛が重たいですわ。」
「重たい……アシェはそうは思わないよな?」
アルフォードはメルティーの一言にショックを受けたようで、おずおずとアシェルに尋ねる。
「今のアル兄様は可愛いと思いますわ。」
可愛いって何が?とアルフォードが首を傾げている。
思わず考えていたことが口に出てしまい、違った、と言い直す。
「メルの言いたいことも分かりますわ。でもお兄様達と同じで、メルが結婚となると、わたくしも取り乱す自信がありますわね。邪魔はしないけれど、少なくとも相手のことは徹底的に調べ上げますわ。変な男や家に、大切で可愛いメルをあげたくないですもの。」
「アシェは分かってくれるか!」
パァァとアルフォードの顔が輝いた。
そこからはアシェルとアルフォードで、メルティーのどこが可愛いやら思い出話やらのトークが盛り上がる。
そんな様子を見ながら、ソファに深く身体を預けたメルティーはぼそっと呟いた。
「そうでしたわ。……我が家は皆、過保護すぎるほどシスコン・ブラコンを拗らせてますものね……。」
かく言うメルティーも傍から見れば十分ブラコンなのだが、それを指摘する人はいない。
こうしてアルフォードの王立学院入学前夜は過ぎた。
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