氷の王子様と微笑みの男装令嬢

芯夜

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第一章 非公式お茶会

19 ぽかぽかお昼寝

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Side:アシェル9歳 春



小春日和の昼下がり。

王宮と離宮に挟まれた広大な庭園の木陰に腰掛け、アシェルはのんびりと日光浴をしていた。

ぽかぽか陽気が心地よい。

「今日もいい天気だね。」

「たまにはのんびりもいーねぇー。」

マリクは気持ちよさそうに蕩けた顔で、身体を丸くするようにして転がっている。

耳も尻尾もふにゃっとしてて脱力中だ。

「ふぁ~あ。眠みぃ……なぁアーク。流石にココで昼寝したらヤバい?」

大きな欠伸をしたエラートは芝生の上で大の字になり、青く澄み渡った空を仰いでいる。

それを見たアークエイドが素っ気なく答えた。

「もう寝てるようなものだろ。人払いされたエリアだから、昼寝くらい問題ないぞ。」

アシェルにぴったり寄り添うように、木の根元に脚を伸ばして座っているアークエイドは、その素っ気ない物言いに反して表情は柔らかかった。
馴染みのない者から見れば、いつもの感情の乗ってない表情なのだが。

「お昼寝タイムでもいいんじゃない?動き回るのも楽しいけど、たまにはゆっくりとさ。」

そういうアシェルも、先程から眠たくて仕方がない。

兄達から優しく頭を撫で続けてもらっているような心地良さだ。

「ほんとー?俺もー限界。おやすみー。」

「……俺もちょっと寝るわ、おやすみ。」

言うが早いか、サッと目を閉じた2人からスヨスヨと穏やかな寝息が聞こえてきた。

その幸せそうな寝顔を見て、ふふっと笑い声を漏らす。アシェルも目を閉じ身体を木の幹に預けた。

のだが、アークエイドから頭だけぐっと引き寄せられる。

何事かと目を開けると、そっぽをむいて少し耳を赤らめたアークエイドの肩に、アシェルの頭が寄りかかるように乗せられていた。

「首を痛めるぞ。寝るなら肩を貸してやる。」

ぶっきらぼうな物言いだが、アークエイドなりの親切を有難く受け取る。

「ありがと、肩借りるね。アークも眠たくなったら僕に寄りかかっていいからね?」

「本を読んでるつもりだが……その時は有難く借りることにする。おやすみ、アシェ。」

いつもより心なしか柔らかく聞こえる声音と、本に視線を落とすアークエイドを横目に再び瞼を閉じた。




 ========




Side:アンジェラ35歳 春



アンジェラとキルルは、サロンと間続きになっている応接間のソファーに座りお喋りをしていた。

年に一度はサマンサとフィアフィーも一緒だが、毎月必ず居る保護者はこの2人だけだ。
最近では午前中だけ、アシェルの義母のメアリーも同席している。

サロンにいる間は子供達の会話に耳を傾けながら、社交界での噂などについてお喋りをしていた。
いわゆる当たり障りのない会話だ。

午後は大体二人とも応接間で過ごしている。

サロンと間続きの応接間は、大きな窓から見えるテラスは共有だ。
近くで子供達が遊んでいればその姿が見えるので、二人はソファーで横並びに座っている。

応接間のローテーブルにはいくつかの書類が置かれ、二人の話す内容は政治的なものや商売的なものになっていく。
アンジェラは王妃としての仕事を。キルルは商業ギルドに勤める旦那の代わりに、領地に関する仕事をしていることが多い。

子供には聞かせられない話をぽつぽつと喋りながら書類を捌いていく。

「ねぇ、アンジー、あれ見て。」

キルルの声に書類から顔を上げれば、その声がさすものを見ることができた。

「あらあら、静かだと思ったら皆でお昼寝中ね。」

芝生に寝転がったエラートとマリク。木の幹に背中を預け、お互いが頭を寄せ合って寝ているアークエイドとアシェルの姿に、大人二人のふふふと笑いがこぼれた。

「微笑ましいねぇ。……で、アークエイド君とアシェルの仲はどんな感じなの?こうして見てるといー感じに見えるけど。」

揶揄うようなキルルの声にさっぱりよ、と答える。

「全く意識してもらってないわね。なんせアシェルが男の子として振舞ってるし、まさか女の子だってバレてるなんて思ってもないみたいなんだもの。」

「あらあら、可哀想に。」

キルルはくすくす笑いながら続ける。

「ってことは、マリクも女の子だって気付いてるのも分かってないわねー。狼獣人は鼻が利くからすぐに分かっちゃうのに。」

「わたくしとしては、アシェルをマリクに取られちゃわないか心配だわ。凄く懐いてるでしょ?」

「あー、あれは本当に懐いて甘えてるだけね。恋愛感情じゃないわ。逆に積極的にエラート君を連れ出して、なるべく二人っきりにさせようとしてるくらいよ。」

「あら、単にエラートとノリが合うんだと思ってたわ。」

「それもあるわね。」

二人でふふふと笑い合う。

仲良くお昼寝する子供達はどんな夢を見ているのだろうか。

そんなことを話しながら二人は、いつも通り書類を捌く作業に戻るのだった。
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