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第一章 非公式お茶会
29 アルフォードお兄様と城下町デート③
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Side:アレリオン18歳 秋
グレイニールの視察に付き合った先でたまたまアシェル達に出会い、一緒にお茶をできて良かったと喜んでいた矢先。
まさかこんなところでアシェルがパニックを起こすとは思っていなかった。
アシェルを取り囲んでいたご令嬢達は、全て王立学院で見たことのある顔だ。
アルフォードにアシェルの避難を任せて口を開く。
「で、君達、何様のつもりなの?」
普段穏やかな笑みを浮かべ、優しい言葉しか聞いたことのないご令嬢達は、普段とは違うアレリオンの姿と空気に震え上がる。
吊り上がった眦を和らげることなく、その表情に見合った冷ややかな声だ。
この5人の中で一番爵位の高い伯爵家の令嬢が、声を震わせながら口を開いた。
「さ、先程も申しましたわ、ご忠告差し上げただけと。」
「へぇ、ご忠告?伯爵家風情が王家と公爵家の行動にご忠告なんて、偉くなったもんだね。」
薄ら笑いを浮かべて言えば、ますますご令嬢達は震えあがる。
「伯爵家に子爵家に男爵家……よくそんな偉そうなことが言えるね。」
「そ、そんなっ!わたくしたちはアレリオン様達のことを思って……!」
「私は君に名で呼ぶことを許した覚えはないんだけど。」
「っ!」
王立学院は身分を問わず過ごすように指導されているので、学院内で呼ばれる分には黙認してきた。しかしここは学院外だ。
なによりアシェルに無礼を働いた令嬢達に、親し気に名前で呼ぶことを許すつもりはない。
「我が家の大事な妹を傷つけた罪は重いよ。それぞれ覚悟しておくんだね。」
そっけなく言うと、令嬢達の顔がサーッと青ざめた。
小さく「亜麻色の髪」「義妹」という呟きが聞こえる。
恐らくメルティーと勘違いしているのだろうが、それを正してやるつもりはなかった。
呆然とした令嬢達を放置し、足早に馬車へ向かう。
頭の中は令嬢達の実家の事業に関して考えていた。
どう落とし前をつけてくれようかと。
馬車の中で、アシェルはアルフォードにしがみついてぐすぐすと泣いていた。
アシェルが泣くのは、こういうパニックを起こした時だけだ。赤子の時のように。それ以外で泣いているところを見たことがない。
うわごとのように怖い、助けてと言っている。
赤子の時に泣かせてしまった時も、心の中で助けを求めていたのかもしれない。
アルフォードは大丈夫だよ、と言い聞かせているが、声は届いているだろうか。
「アル……状態は良くないみたいだね。」
「あぁ。」
短く返ってきた答えと、先程アルフォードを振り払ったアシェルを思って、思わず顔が歪む。
「申し訳ありませんが、このままメイディー邸に帰らせてもらっても?」
「構わない。心配だし私達もついていかせてもらおう。」
視察を抜ける形になるのでグレイニールの確認を取れば、一緒に邸まで来てくれるらしい。
その隣に座るアークエイドの顔を見ても、大丈夫だと分かるまで帰りはしないだろうことを感じ頷いた。
邸に戻ると、そのただならぬ様子に使用人達が慌てだした。
ただ兄妹で出かけただけのはずなのに、まさか泣いて戻って来るとは誰も思わないだろう。
それも泣いているのはいつも笑顔を絶やさないアシェルだ。
「今戻った。ウィリアム、サーニャ、イザベル、エリック、アイザック以外は通常通りの仕事に戻れ。」
一瞬騒然としていたものの、アレリオンの一声でさっと使用人たちが散開する。
下位貴族の使用人であればこうはいかないが、流石公爵家に仕える使用人達だ。
「アシェルお嬢様……。」
いつもの様子からは想像できないシェルの姿に、そんなアシェルを始めて見たイザベルが困惑している。
それはアレリオン付き侍従のエリックとアルフォード付き侍従のアイザックも同じだろう。
昔のことを知っているウィリアムとサーニャは落ち着いているように見えるが、悲しそうな表情は隠しきれていない。
そこへ騒ぎを聞きつけたメルティーもやってきた。
「お帰りなさいませ。……アシェ義姉様にいったい何が?」
異様な雰囲気に眉根を寄せるメルティーに、アルフォードが問いかける。
「前にメルには言っただろ。メアリー義母上は?」
「今日はお茶会に誘われてていないわ。」
得心したといわんばかりのメルティーは、兄妹の後ろに立つ人影に声をかける。
「お客様、失礼いたしました。十分なおもてなしもできませんが、応接間にご案内させていただきますわ。」
すっとカーテシーをしたメルティーに、グレイニールは断りをいれる。
「いや、こちらも無理を言ってついてきたのだ、気を使わないでいただけると助かる。」
それより、とアシェルの方を見やる。
ぶつぶつと呪詛のように呟きながら、涙を浮かべたその眼の焦点は合っていない。
「ここまでなると、もう今の状況は分かっていないと思う。アークエイド殿下、最初から気付いているでしょう?アシェの手前、先程はシェリーと呼びましたが。」
「えぇ。」
アレリオンの言葉に小さく返事が返ってくる。
「さぁ、アシェ、着替えておいで。いつまでもこの格好はよくないだろ。ほら、サーニャもイザベルもいるから。」
アルフォードが抱えていたアシェルを降ろし立たせようとするが、嫌々と首を振って離れようとしない。
「いやっ、たすけてっ。こわいよぉ……きらいに、ならないでぇ……たすけて、おにぃさまぁ……。」
ぐすぐすと涙を流しながらか細い声でしがみ付くアシェルの背中を、大丈夫だよとアルフォードは撫で続ける。
アルフォードがどうしたものかと悩んでいると、サーニャがそっとアシェルを抱き締めた。
「アシェルお嬢様、アルフォード様に手を繋いでいただきましょう。そうすれば怖くないでしょう?」
優しくゆっくり言い聞かせるようにサーニャが喋る。
そしてアシェルの手をとってアルフォードと繋がせた。
その手はぎゅっと強く握られる。
「アルフォード様、そのままアシェル様のお部屋まで来てくださいませ。眼を閉じていただいている間に、アシェル様のお着替えをさせていただきます。」
「分かった。」
アルフォードは頷いて、サーニャとイザベルと共にアシェルの部屋へ向かった。
「殿下達はこちらへどうぞ。応接間にご案内しますわ。」
メルティーが両殿下を応接間に案内する。
護衛代わりにエリックとアイザックもついていかせた。
後に残ったアレリオンは、事の次第をウィリアムに話す。
「——というわけだ。」
「承知いたしました。すぐに調べましょう。」
「あぁ、頼む。」
ウィリアムは礼をしてその場を去った。
アレリオンはその背中を見送って応接間へと向かった。
「お待たせしました。」
応接間に行くと既に紅茶が出されていた。
ソファに座るとすかさずエリックがお茶を淹れてくれる。
アレリオンが座ってもしばらく静寂が続いた。
意を決してアークエイドが口を開く。
「アシェは……大丈夫なのか?」
カツラと瞳の色を変える魔道具を外した第二王子姿のアークエイドに、アレリオンは軽く首を振って答える。
「大丈夫、とは言い難い状態です。少し兆しがあっても、今まではここまで酷くなることが無かったので。」
普段は無表情に見えるアークエイドの表情が、分かりやすいほど困惑で揺れている。
「前の大き目の兆しは、わたくしとお母様がこの家に来た時と言ってましたわよね?」
メルティーが確認するように口にする。
アレリオンとアルフォードが王立学院に入るにあたって、メルティーには幼少期のことを話してあった。
もしもの時に近くにいるのはメルティーだけだからだ。
「あぁ。あの時はすぐに問題なくなったんだよ。でも今日は……アルを一度拒絶した。そのあと離れないし、泣いてるだけまだマシだとは思うけど。正直、最悪な気分だ。」
苦々しい思いを乗せて大きくため息を吐く。
せっかく笑ってくれるようになったのに、何てことをしてくれたんだという気持ちが治まらない。
通夜のような空気の中、扉が開いてアルフォードが入ってきた。
その胸の中にはズボン姿に着替えたアシェルが納まっている。
「着替えたら少し落ち着いたみたいで、そのまま寝たよ。」
そう言いながらアルフォードは、アレリオンの隣に腰を下ろした。
小さな子がしがみ付いて寝ているような状態のアシェルの頭をゆっくり撫でてやる。
アシェルの顔も、しがみ付かれているアルフォードの服も涙でぐしょぐしょだ。
「メイディー家の長女が表向き三男扱いなのは、それが原因か?」
ズバリ核心をついてくるグレイニールの言葉に、アレリオンは苦笑を漏らす。
「当たらずとも遠からずってところかな。最初は後妻のメアリー義母上に好かれようとしてだね。赤ん坊の時からやたらと人の視線に敏感なんだ。一時期は……本当に酷かった。」
誰も口を開かないのでアレリオンは続ける。
「非公式お茶会の件もあってね、本人が男装するというならそっちの方が都合が良かったんだ。割と性にもあってたみたいだしね。ただ、最近はドレス姿でもあまり人の視線を気にしないようになっていたんだ。アシェ次第だけど、本当は来年の学院入学は男装をやめさせて、令嬢として入学させたかったんだけど……。」
「無理だろうな。」
アレリオンの言葉を引き継いだグレイニールの言葉に苦笑する。
誰がどう見ても、その結論しか導き出されないだろう。
「あぁ、無理だろうね。仮にアシェの幼馴染達が受け入れたとしても、周りはそうじゃないだろう。確実に悪意に晒される。アシェは女性の扱いは上手いようだから、こんな状態になってしまうのなら男装させたままの方がましだよ。アシェが望むなら普通のご令嬢として学院に通ってもいいと思うけど、多分望まないだろうし。」
流れる銀髪を優しく撫でる。着替えた時に魔道具は外しているようだ。
「さて、アークエイド殿下。君はうちのアシェが好きだというけれど、君にアシェを守る力はあるのかい?今までどんなに大切に、愛情を注いで育ててきても。一度のミスでこうやって落ちてしまう。手遅れになって落ちるところまで落ちてしまえば、もしかしたらもう二度と笑ってはくれないかもしれないんだ。トラウマを抱えた子を支えるというのは、生半可な覚悟ではできないんだよ。」
きっと今でないとアシェルの不安定さは伝わらないだろうと、不敬を承知で語り掛ける。
一人の兄として、ただの恋愛感情だけの男に、大切な妹を預けるわけにはいかなかった。
これから先もきっと、このパニック状態に陥ることがあるだろう。トラウマとはそういうものだ。
「俺は……。」
アークエイドが言い淀む。
こんな状態になることを初めて知ったのだ。その反応は正解だ。
むしろここで無責任に、覚悟も守る力もあると言わないだけ及第点だろう。
「すぐに答えを出す必要はないよ。ただ覚えておいてほしい。アシェの心は案外脆いのだと。気にかけておいてほしい。もし手に負えないと思ったときは、私達兄妹を呼んでくれればいいから。」
こくんと頷いたのを確認して、アレリオンは柔らかく微笑んだ。
少し頼りない気もするが、今はこれでいい。
「さぁ、アシェは寝たからもう大丈夫。起きる気配もうなされている気配もないしね。グレイ、アークエイド殿下、王家の馬車までうちの馬車でお送りします。」
「あぁ、突然押しかけて悪かったな。」
「いえ、こちらこそ。こちらの都合で申し訳ありませんでした。」
まだ心配そうなアークエイドを馬車に詰め込み、グレイニール達を見送った。
========
Side:アシェル11歳 秋
頭が重い、そしてすごく圧迫感があるというか重たい。
昨日どうしたんだっけ?と重たい瞼を開くと、そこには銀色のふさふさのまつげがあった。
あまりの近さに心臓がドキリと跳ねる。
慌てて首を反対に回すと、今度は茶褐色でさらさらの髪の毛。
(なんでお兄様達に挟まれて寝ているのかしら。)
重たい原因は、二人の腕に抱きこまれるように寝ていたからのようだ。
身動きすると二人の兄を起こしてしまいそうで、大人しく頭だけを働かせる。
(昨日はアル兄様と街に出かけて、そこでグレイニール殿下一行に出会ってカフェでお茶をして……そうだ。そこでご令嬢達に囲まれて……取り乱してアル兄様の手を払ってしまったわ。それから泣いて……。)
その先のことはあまりにも曖昧で、覚えてるとは言い難かった。
ただ、ずっと優しく抱きしめられていた事だけは覚えている。
(つまりお兄様達が一緒に寝てるのは、わたくしのせいな訳で……。)
きっとしがみついて離さなかったのだろうということが申し訳なく心が沈む。
そういえばいつの間に着替えたのか、昨日のワンピースではなくズボンにシャツ姿だ。
曖昧過ぎる記憶を一生懸命探っていると、目の前で銀色のふさふさが震えた。
ぼんやりと開かれたアメジスト色の瞳にアシェルが映る。
「あしぇ……おちついた?」
アルフォードの寝起きは悪いのだろうか。まだ少しぼんやりとした口調で心配される。
その声で起きたのか、アシェルの背中側の温もりが身動ぎしたのを感じる。
「んっ……アル、アシェ……起きたの?おはよう。」
アレリオンの声は寝起きでもいつもの優しい声だ。
「おはよう、ございます。アン兄様、アル兄様。」
挨拶をしたアシェルの声は少しかすれていた。
いったいどれだけ泣いたのだろうか。
羞恥で顔が熱を持つ。
前後から挟まれるようにぎゅっと抱き締められた。
呟くように「良かった。」と聞こえてくる。
「あの、心配かけてごめんなさい。」
「大丈夫だよ。僕らこそごめんね。男の中に女の子一人じゃ目立つよね。」
「俺達の配慮が足りなかった。」
「そんなこと!あれは……あれは僕がしっかりしていれば、問題なかったはずです。」
お互いが謝りあうような形になって申し訳なくなってくる。
兄達からしたら何故アシェルがあんなに取り乱したのかすら分からないはずなのだ。
それなのに心配させて気に病ませてしまっている。
(お兄様達のせいではないのに、なんて説明したらいいのかな。)
言葉に詰まっていると、ふんわりと頭を撫でられる。
「ねぇアシェ。来年には王立学院に入学するだろう。貴族子女が集まるから本来なら、男装は止めて女の子として通ってもらうのがいいと思うんだ。」
「はい。」
アレリオンの言葉に頷く。
王立学院がいくら平等を謳っていても、そこは貴族社会の縮図だ。
学院で仲良くなった者とは、大人になってからも縁は強く続くだろう。非公式お茶会を主催しているアンジェラ達のように。
婚約者がいない者は、相手を探していたりもする。
アシェルも婚約者は決まっていない。
結婚適齢期を考えたら、学院卒業までにいい人を作るか、家の為になる政略結婚の相手と婚約してほしいはずだ。
「でもね、昨日の状態を見てしまうと。僕としては男装で通った方がいいんじゃないかと思うんだ。きっとアシェが女の子だからって、幼馴染達の態度は変わらないと思う。でも、周囲はそうじゃない。きっと昨日みたいなことが起こってしまう。」
確かに幼馴染達は驚きこそすれ、受け入れてくれる気がする。
だが、それを見た周りの反応は想像するまでもなく最悪だろう。
嫌な想像に身体をぶるりと震わせると、二人から抱き締められる強さが少し強くなった。
「それにね。……アシェはそんなつもりはないかもしれないけど、アシェの男装は一種の自分を守る為のバリアなんじゃないかと思うんだ。」
「バリア……?」
「そう。女の子として過ごしている時は、すごく人目を気にしているだろう。アシェは気付いてないかもしれないけど。でも男の子として過ごしている時はあまり気にしてないか、受け流せているように思うんだよね。」
言われてみるとそうかもしれない。
弱くて守られるような女の子ではなく、誰かを守れる男の子という意識になっている気がする。
「そう……なのかも?」
自信はないが、いつも傍で見守ってくれているアレリオンが言うのならそうかもしれない。
「ふふ、よく分かってないって感じだね。とりあえず、学院へは男の子の格好で通えるように手配しておくよ。」
「ありがとうございます、アン兄様。」
「さ、落ち着いたならそろそろ起きようぜ。メルもイザベルも心配してるから、元気な笑顔を見せてやってくれ。」
アシェルの目の前で、真剣な表情で話を聞いていたアルフォードの顔が笑顔になる。
と同時に、抱き締められる腕から解放され、左右に寝ていた兄達が起き上がった。
釣られるようにアシェルも起き上がれば、タイミングよく扉の叩かれる音がする。
許可を出すと「失礼します。」とイザベルが入ってきた。
「アシェル様、おはようございます。」
そう言いながら、洗面器の中で絞ったタオルを渡される。
タオルはひんやり冷えていた。
「少し瞼が腫れてますので、冷やしておいてくださいね。」
「ありがとう、ベル。」
ありがたく目の上に乗せると、腫れた瞼にその冷たさが気持ちよかった。
「さぁ、アレリオンお義兄様、アルフォードお義兄様。起きられたならお部屋にお戻りください。旦那様からは朝起きるまでの許可しかいただいてませんからね。」
「あはは、イザベルはしっかり者だね。仕方ない、退散しようか。」
「またあとでな、アシェ。」
二人はうーんと伸びをしたあと部屋を出て行った。
入れ替わりでメルティーがやってくる。
「アシェお義兄様、もうお加減は大丈夫ですの?」
「あぁ、メル、おはよう。お父様やメルも知ってるのか……泣き姿なんて恥ずかしいから忘れて?」
この調子だと邸の者皆に知れ渡ってそうだと、内心がっくりしながら苦笑する。
「あら、泣くのも大事ですわ。涙で外に流した方がすっきりすることもありますもの。ですから昨日のアシェお義兄様は、涙で不要なモノを洗い流しただけですわ。恥ずかしがることは無いのです。」
「ふふ、ありがとう、メル。そう思ったら恥ずかしいのも少しマシかな。」
ベッドサイドに腰掛け、ぬるくなったタオルをイザベルに渡す。
「少し充電させて?」
「まぁ、アシェお義兄様が甘えん坊ですわ。」
おいでと腕を広げれば、メルティーは少し笑いながら腕の中に納まってくれる。
ぎゅっと抱き締めればその温もりが心地いい。
「メルは可愛いなぁ。」
「お義兄様達がたっぷり可愛がってくれるからですわ。」
「三人分だからね。」
軽口をたたき合い笑いながら、頬にキスをしてメルティーを解放する。
「ありがとう。着替えたら食堂に行くよ。」
「早めに降りてきてくださいね。お義兄様達は学院に戻らないといけないから、あまり遅くなると嘆かれますわよ。」
「戻りたくないって、アル兄様が駄々こねそうだね。」
また笑いあってメルティーは部屋をでていった。
「さぁ、お着替えを用意してますのでこちらを。そのあと御髪を整えますからね。」
「うん、よろしく、ベル。」
心配してくれながらも、いつもと変わらない様子で接してくれる家族に感謝しながら、アシェルのいつも通りの一日は始まった。
グレイニールの視察に付き合った先でたまたまアシェル達に出会い、一緒にお茶をできて良かったと喜んでいた矢先。
まさかこんなところでアシェルがパニックを起こすとは思っていなかった。
アシェルを取り囲んでいたご令嬢達は、全て王立学院で見たことのある顔だ。
アルフォードにアシェルの避難を任せて口を開く。
「で、君達、何様のつもりなの?」
普段穏やかな笑みを浮かべ、優しい言葉しか聞いたことのないご令嬢達は、普段とは違うアレリオンの姿と空気に震え上がる。
吊り上がった眦を和らげることなく、その表情に見合った冷ややかな声だ。
この5人の中で一番爵位の高い伯爵家の令嬢が、声を震わせながら口を開いた。
「さ、先程も申しましたわ、ご忠告差し上げただけと。」
「へぇ、ご忠告?伯爵家風情が王家と公爵家の行動にご忠告なんて、偉くなったもんだね。」
薄ら笑いを浮かべて言えば、ますますご令嬢達は震えあがる。
「伯爵家に子爵家に男爵家……よくそんな偉そうなことが言えるね。」
「そ、そんなっ!わたくしたちはアレリオン様達のことを思って……!」
「私は君に名で呼ぶことを許した覚えはないんだけど。」
「っ!」
王立学院は身分を問わず過ごすように指導されているので、学院内で呼ばれる分には黙認してきた。しかしここは学院外だ。
なによりアシェルに無礼を働いた令嬢達に、親し気に名前で呼ぶことを許すつもりはない。
「我が家の大事な妹を傷つけた罪は重いよ。それぞれ覚悟しておくんだね。」
そっけなく言うと、令嬢達の顔がサーッと青ざめた。
小さく「亜麻色の髪」「義妹」という呟きが聞こえる。
恐らくメルティーと勘違いしているのだろうが、それを正してやるつもりはなかった。
呆然とした令嬢達を放置し、足早に馬車へ向かう。
頭の中は令嬢達の実家の事業に関して考えていた。
どう落とし前をつけてくれようかと。
馬車の中で、アシェルはアルフォードにしがみついてぐすぐすと泣いていた。
アシェルが泣くのは、こういうパニックを起こした時だけだ。赤子の時のように。それ以外で泣いているところを見たことがない。
うわごとのように怖い、助けてと言っている。
赤子の時に泣かせてしまった時も、心の中で助けを求めていたのかもしれない。
アルフォードは大丈夫だよ、と言い聞かせているが、声は届いているだろうか。
「アル……状態は良くないみたいだね。」
「あぁ。」
短く返ってきた答えと、先程アルフォードを振り払ったアシェルを思って、思わず顔が歪む。
「申し訳ありませんが、このままメイディー邸に帰らせてもらっても?」
「構わない。心配だし私達もついていかせてもらおう。」
視察を抜ける形になるのでグレイニールの確認を取れば、一緒に邸まで来てくれるらしい。
その隣に座るアークエイドの顔を見ても、大丈夫だと分かるまで帰りはしないだろうことを感じ頷いた。
邸に戻ると、そのただならぬ様子に使用人達が慌てだした。
ただ兄妹で出かけただけのはずなのに、まさか泣いて戻って来るとは誰も思わないだろう。
それも泣いているのはいつも笑顔を絶やさないアシェルだ。
「今戻った。ウィリアム、サーニャ、イザベル、エリック、アイザック以外は通常通りの仕事に戻れ。」
一瞬騒然としていたものの、アレリオンの一声でさっと使用人たちが散開する。
下位貴族の使用人であればこうはいかないが、流石公爵家に仕える使用人達だ。
「アシェルお嬢様……。」
いつもの様子からは想像できないシェルの姿に、そんなアシェルを始めて見たイザベルが困惑している。
それはアレリオン付き侍従のエリックとアルフォード付き侍従のアイザックも同じだろう。
昔のことを知っているウィリアムとサーニャは落ち着いているように見えるが、悲しそうな表情は隠しきれていない。
そこへ騒ぎを聞きつけたメルティーもやってきた。
「お帰りなさいませ。……アシェ義姉様にいったい何が?」
異様な雰囲気に眉根を寄せるメルティーに、アルフォードが問いかける。
「前にメルには言っただろ。メアリー義母上は?」
「今日はお茶会に誘われてていないわ。」
得心したといわんばかりのメルティーは、兄妹の後ろに立つ人影に声をかける。
「お客様、失礼いたしました。十分なおもてなしもできませんが、応接間にご案内させていただきますわ。」
すっとカーテシーをしたメルティーに、グレイニールは断りをいれる。
「いや、こちらも無理を言ってついてきたのだ、気を使わないでいただけると助かる。」
それより、とアシェルの方を見やる。
ぶつぶつと呪詛のように呟きながら、涙を浮かべたその眼の焦点は合っていない。
「ここまでなると、もう今の状況は分かっていないと思う。アークエイド殿下、最初から気付いているでしょう?アシェの手前、先程はシェリーと呼びましたが。」
「えぇ。」
アレリオンの言葉に小さく返事が返ってくる。
「さぁ、アシェ、着替えておいで。いつまでもこの格好はよくないだろ。ほら、サーニャもイザベルもいるから。」
アルフォードが抱えていたアシェルを降ろし立たせようとするが、嫌々と首を振って離れようとしない。
「いやっ、たすけてっ。こわいよぉ……きらいに、ならないでぇ……たすけて、おにぃさまぁ……。」
ぐすぐすと涙を流しながらか細い声でしがみ付くアシェルの背中を、大丈夫だよとアルフォードは撫で続ける。
アルフォードがどうしたものかと悩んでいると、サーニャがそっとアシェルを抱き締めた。
「アシェルお嬢様、アルフォード様に手を繋いでいただきましょう。そうすれば怖くないでしょう?」
優しくゆっくり言い聞かせるようにサーニャが喋る。
そしてアシェルの手をとってアルフォードと繋がせた。
その手はぎゅっと強く握られる。
「アルフォード様、そのままアシェル様のお部屋まで来てくださいませ。眼を閉じていただいている間に、アシェル様のお着替えをさせていただきます。」
「分かった。」
アルフォードは頷いて、サーニャとイザベルと共にアシェルの部屋へ向かった。
「殿下達はこちらへどうぞ。応接間にご案内しますわ。」
メルティーが両殿下を応接間に案内する。
護衛代わりにエリックとアイザックもついていかせた。
後に残ったアレリオンは、事の次第をウィリアムに話す。
「——というわけだ。」
「承知いたしました。すぐに調べましょう。」
「あぁ、頼む。」
ウィリアムは礼をしてその場を去った。
アレリオンはその背中を見送って応接間へと向かった。
「お待たせしました。」
応接間に行くと既に紅茶が出されていた。
ソファに座るとすかさずエリックがお茶を淹れてくれる。
アレリオンが座ってもしばらく静寂が続いた。
意を決してアークエイドが口を開く。
「アシェは……大丈夫なのか?」
カツラと瞳の色を変える魔道具を外した第二王子姿のアークエイドに、アレリオンは軽く首を振って答える。
「大丈夫、とは言い難い状態です。少し兆しがあっても、今まではここまで酷くなることが無かったので。」
普段は無表情に見えるアークエイドの表情が、分かりやすいほど困惑で揺れている。
「前の大き目の兆しは、わたくしとお母様がこの家に来た時と言ってましたわよね?」
メルティーが確認するように口にする。
アレリオンとアルフォードが王立学院に入るにあたって、メルティーには幼少期のことを話してあった。
もしもの時に近くにいるのはメルティーだけだからだ。
「あぁ。あの時はすぐに問題なくなったんだよ。でも今日は……アルを一度拒絶した。そのあと離れないし、泣いてるだけまだマシだとは思うけど。正直、最悪な気分だ。」
苦々しい思いを乗せて大きくため息を吐く。
せっかく笑ってくれるようになったのに、何てことをしてくれたんだという気持ちが治まらない。
通夜のような空気の中、扉が開いてアルフォードが入ってきた。
その胸の中にはズボン姿に着替えたアシェルが納まっている。
「着替えたら少し落ち着いたみたいで、そのまま寝たよ。」
そう言いながらアルフォードは、アレリオンの隣に腰を下ろした。
小さな子がしがみ付いて寝ているような状態のアシェルの頭をゆっくり撫でてやる。
アシェルの顔も、しがみ付かれているアルフォードの服も涙でぐしょぐしょだ。
「メイディー家の長女が表向き三男扱いなのは、それが原因か?」
ズバリ核心をついてくるグレイニールの言葉に、アレリオンは苦笑を漏らす。
「当たらずとも遠からずってところかな。最初は後妻のメアリー義母上に好かれようとしてだね。赤ん坊の時からやたらと人の視線に敏感なんだ。一時期は……本当に酷かった。」
誰も口を開かないのでアレリオンは続ける。
「非公式お茶会の件もあってね、本人が男装するというならそっちの方が都合が良かったんだ。割と性にもあってたみたいだしね。ただ、最近はドレス姿でもあまり人の視線を気にしないようになっていたんだ。アシェ次第だけど、本当は来年の学院入学は男装をやめさせて、令嬢として入学させたかったんだけど……。」
「無理だろうな。」
アレリオンの言葉を引き継いだグレイニールの言葉に苦笑する。
誰がどう見ても、その結論しか導き出されないだろう。
「あぁ、無理だろうね。仮にアシェの幼馴染達が受け入れたとしても、周りはそうじゃないだろう。確実に悪意に晒される。アシェは女性の扱いは上手いようだから、こんな状態になってしまうのなら男装させたままの方がましだよ。アシェが望むなら普通のご令嬢として学院に通ってもいいと思うけど、多分望まないだろうし。」
流れる銀髪を優しく撫でる。着替えた時に魔道具は外しているようだ。
「さて、アークエイド殿下。君はうちのアシェが好きだというけれど、君にアシェを守る力はあるのかい?今までどんなに大切に、愛情を注いで育ててきても。一度のミスでこうやって落ちてしまう。手遅れになって落ちるところまで落ちてしまえば、もしかしたらもう二度と笑ってはくれないかもしれないんだ。トラウマを抱えた子を支えるというのは、生半可な覚悟ではできないんだよ。」
きっと今でないとアシェルの不安定さは伝わらないだろうと、不敬を承知で語り掛ける。
一人の兄として、ただの恋愛感情だけの男に、大切な妹を預けるわけにはいかなかった。
これから先もきっと、このパニック状態に陥ることがあるだろう。トラウマとはそういうものだ。
「俺は……。」
アークエイドが言い淀む。
こんな状態になることを初めて知ったのだ。その反応は正解だ。
むしろここで無責任に、覚悟も守る力もあると言わないだけ及第点だろう。
「すぐに答えを出す必要はないよ。ただ覚えておいてほしい。アシェの心は案外脆いのだと。気にかけておいてほしい。もし手に負えないと思ったときは、私達兄妹を呼んでくれればいいから。」
こくんと頷いたのを確認して、アレリオンは柔らかく微笑んだ。
少し頼りない気もするが、今はこれでいい。
「さぁ、アシェは寝たからもう大丈夫。起きる気配もうなされている気配もないしね。グレイ、アークエイド殿下、王家の馬車までうちの馬車でお送りします。」
「あぁ、突然押しかけて悪かったな。」
「いえ、こちらこそ。こちらの都合で申し訳ありませんでした。」
まだ心配そうなアークエイドを馬車に詰め込み、グレイニール達を見送った。
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Side:アシェル11歳 秋
頭が重い、そしてすごく圧迫感があるというか重たい。
昨日どうしたんだっけ?と重たい瞼を開くと、そこには銀色のふさふさのまつげがあった。
あまりの近さに心臓がドキリと跳ねる。
慌てて首を反対に回すと、今度は茶褐色でさらさらの髪の毛。
(なんでお兄様達に挟まれて寝ているのかしら。)
重たい原因は、二人の腕に抱きこまれるように寝ていたからのようだ。
身動きすると二人の兄を起こしてしまいそうで、大人しく頭だけを働かせる。
(昨日はアル兄様と街に出かけて、そこでグレイニール殿下一行に出会ってカフェでお茶をして……そうだ。そこでご令嬢達に囲まれて……取り乱してアル兄様の手を払ってしまったわ。それから泣いて……。)
その先のことはあまりにも曖昧で、覚えてるとは言い難かった。
ただ、ずっと優しく抱きしめられていた事だけは覚えている。
(つまりお兄様達が一緒に寝てるのは、わたくしのせいな訳で……。)
きっとしがみついて離さなかったのだろうということが申し訳なく心が沈む。
そういえばいつの間に着替えたのか、昨日のワンピースではなくズボンにシャツ姿だ。
曖昧過ぎる記憶を一生懸命探っていると、目の前で銀色のふさふさが震えた。
ぼんやりと開かれたアメジスト色の瞳にアシェルが映る。
「あしぇ……おちついた?」
アルフォードの寝起きは悪いのだろうか。まだ少しぼんやりとした口調で心配される。
その声で起きたのか、アシェルの背中側の温もりが身動ぎしたのを感じる。
「んっ……アル、アシェ……起きたの?おはよう。」
アレリオンの声は寝起きでもいつもの優しい声だ。
「おはよう、ございます。アン兄様、アル兄様。」
挨拶をしたアシェルの声は少しかすれていた。
いったいどれだけ泣いたのだろうか。
羞恥で顔が熱を持つ。
前後から挟まれるようにぎゅっと抱き締められた。
呟くように「良かった。」と聞こえてくる。
「あの、心配かけてごめんなさい。」
「大丈夫だよ。僕らこそごめんね。男の中に女の子一人じゃ目立つよね。」
「俺達の配慮が足りなかった。」
「そんなこと!あれは……あれは僕がしっかりしていれば、問題なかったはずです。」
お互いが謝りあうような形になって申し訳なくなってくる。
兄達からしたら何故アシェルがあんなに取り乱したのかすら分からないはずなのだ。
それなのに心配させて気に病ませてしまっている。
(お兄様達のせいではないのに、なんて説明したらいいのかな。)
言葉に詰まっていると、ふんわりと頭を撫でられる。
「ねぇアシェ。来年には王立学院に入学するだろう。貴族子女が集まるから本来なら、男装は止めて女の子として通ってもらうのがいいと思うんだ。」
「はい。」
アレリオンの言葉に頷く。
王立学院がいくら平等を謳っていても、そこは貴族社会の縮図だ。
学院で仲良くなった者とは、大人になってからも縁は強く続くだろう。非公式お茶会を主催しているアンジェラ達のように。
婚約者がいない者は、相手を探していたりもする。
アシェルも婚約者は決まっていない。
結婚適齢期を考えたら、学院卒業までにいい人を作るか、家の為になる政略結婚の相手と婚約してほしいはずだ。
「でもね、昨日の状態を見てしまうと。僕としては男装で通った方がいいんじゃないかと思うんだ。きっとアシェが女の子だからって、幼馴染達の態度は変わらないと思う。でも、周囲はそうじゃない。きっと昨日みたいなことが起こってしまう。」
確かに幼馴染達は驚きこそすれ、受け入れてくれる気がする。
だが、それを見た周りの反応は想像するまでもなく最悪だろう。
嫌な想像に身体をぶるりと震わせると、二人から抱き締められる強さが少し強くなった。
「それにね。……アシェはそんなつもりはないかもしれないけど、アシェの男装は一種の自分を守る為のバリアなんじゃないかと思うんだ。」
「バリア……?」
「そう。女の子として過ごしている時は、すごく人目を気にしているだろう。アシェは気付いてないかもしれないけど。でも男の子として過ごしている時はあまり気にしてないか、受け流せているように思うんだよね。」
言われてみるとそうかもしれない。
弱くて守られるような女の子ではなく、誰かを守れる男の子という意識になっている気がする。
「そう……なのかも?」
自信はないが、いつも傍で見守ってくれているアレリオンが言うのならそうかもしれない。
「ふふ、よく分かってないって感じだね。とりあえず、学院へは男の子の格好で通えるように手配しておくよ。」
「ありがとうございます、アン兄様。」
「さ、落ち着いたならそろそろ起きようぜ。メルもイザベルも心配してるから、元気な笑顔を見せてやってくれ。」
アシェルの目の前で、真剣な表情で話を聞いていたアルフォードの顔が笑顔になる。
と同時に、抱き締められる腕から解放され、左右に寝ていた兄達が起き上がった。
釣られるようにアシェルも起き上がれば、タイミングよく扉の叩かれる音がする。
許可を出すと「失礼します。」とイザベルが入ってきた。
「アシェル様、おはようございます。」
そう言いながら、洗面器の中で絞ったタオルを渡される。
タオルはひんやり冷えていた。
「少し瞼が腫れてますので、冷やしておいてくださいね。」
「ありがとう、ベル。」
ありがたく目の上に乗せると、腫れた瞼にその冷たさが気持ちよかった。
「さぁ、アレリオンお義兄様、アルフォードお義兄様。起きられたならお部屋にお戻りください。旦那様からは朝起きるまでの許可しかいただいてませんからね。」
「あはは、イザベルはしっかり者だね。仕方ない、退散しようか。」
「またあとでな、アシェ。」
二人はうーんと伸びをしたあと部屋を出て行った。
入れ替わりでメルティーがやってくる。
「アシェお義兄様、もうお加減は大丈夫ですの?」
「あぁ、メル、おはよう。お父様やメルも知ってるのか……泣き姿なんて恥ずかしいから忘れて?」
この調子だと邸の者皆に知れ渡ってそうだと、内心がっくりしながら苦笑する。
「あら、泣くのも大事ですわ。涙で外に流した方がすっきりすることもありますもの。ですから昨日のアシェお義兄様は、涙で不要なモノを洗い流しただけですわ。恥ずかしがることは無いのです。」
「ふふ、ありがとう、メル。そう思ったら恥ずかしいのも少しマシかな。」
ベッドサイドに腰掛け、ぬるくなったタオルをイザベルに渡す。
「少し充電させて?」
「まぁ、アシェお義兄様が甘えん坊ですわ。」
おいでと腕を広げれば、メルティーは少し笑いながら腕の中に納まってくれる。
ぎゅっと抱き締めればその温もりが心地いい。
「メルは可愛いなぁ。」
「お義兄様達がたっぷり可愛がってくれるからですわ。」
「三人分だからね。」
軽口をたたき合い笑いながら、頬にキスをしてメルティーを解放する。
「ありがとう。着替えたら食堂に行くよ。」
「早めに降りてきてくださいね。お義兄様達は学院に戻らないといけないから、あまり遅くなると嘆かれますわよ。」
「戻りたくないって、アル兄様が駄々こねそうだね。」
また笑いあってメルティーは部屋をでていった。
「さぁ、お着替えを用意してますのでこちらを。そのあと御髪を整えますからね。」
「うん、よろしく、ベル。」
心配してくれながらも、いつもと変わらない様子で接してくれる家族に感謝しながら、アシェルのいつも通りの一日は始まった。
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