氷の王子様と微笑みの男装令嬢

芯夜

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第二章 王立学院中等部一年生

48 アシェルのとある一日

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Side:アシェル12歳 春



王立学院の一日は朝のホームルームから5時限まであり、その間に必修科目や自身の選択科目の授業に出て、6年間の中で必要単位を取るようになっている。
とはいえ、家で家庭教師がついていた者ならば、実際に単位が足らなくなることはまずないと思っていい。
場合によっては家庭教師の授業の方が高度な内容なため、特に中等部の間は復習になることが多い。



8時30分にホームルームがあるため、それまでに教室に集まり、担任の先生から伝達があれば聞く。

一コマ90分授業で、一限目が9時~10時30分、二限目が10時50分~12時20分。

二限目と三限目の授業がある場合、ここで昼食の時間になる。

三限目が13時30分~15時、四限目が15時20分~16時50分、五限目が17時10分~18時40分までで、この後に委員会活動や研究室での活動などが行われる。



アシェルは鳴り響く目覚まし時計を止め、うーんと伸びをする。
少し早くに目覚めているのだが、目覚ましはいつも7時に鳴るようにセットしてある。

洗面を済ませ、制服に袖を通す。
そうして朝ご飯のトーストを焼いていると、コンコンと扉を叩く音の後にガチャリと鍵を開ける音が鳴り、イザベルが入ってくる。

「おはようございます、アシェル様。」

「おはよう、ベル。朝ご飯にしようか。」

二人揃ってトーストを食べ、そのあとにイザベルに髪の毛を綺麗に整えてもらう。
香油を薄くのばしながら丁寧にブラッシングされ、首の後ろで一つに結んでもらう。

それからホームルームの為に移動するのだ。

自室を出たアシェルはそのまま、隣の部屋の扉をノックする。
隣の部屋と言っても長い廊下の真ん中あたりなので、すぐ隣という感覚はない。

ノックをすれば制服を着たアークエイドが出てくる。

「アシェ、イザベル、おはよう。」

「おはよう、アーク。」

「おはようございます、アークエイド様。」

アークエイドの使用人たちの『いってらっしゃいませ。』という合唱を背中に受けながら、中等部一年Aクラスに向かう。

教室の一番奥の隅の方がアシェル達がいつもいる席だ。
大体三人が一番乗りなため、自由席になっている座席を人数分確保する。

教室には続々とクラスメイトが集まり、幼馴染達が揃い、時間になると担任が入ってきてホームルームが始まる。

大体何も伝達事項はないし出席確認されるわけでもないので、厳密には何かあった時に伝言がもらえる相手がいれば出席しなくてもいいのだろうが、アシェル達は必ず出席するようにしていた。



今日の一限目は数学で必修科目のため、教室の半分ほどのクラスメイト達がぞろぞろと大講堂の一つへ移動する。

必修科目はA・Bクラス合同の授業になるため、一部の生徒を除いたほぼ全員が参加となる。
一部の生徒はその時間に他の選択科目を受講している生徒で、そういう生徒は別日に設けられた数学の時間に出席するのだ。

必修科目は週に三コマあるので、そのどれかに出席することになる。

極まれにであるが、上級生が落とした単位を取る為や、前年度取らなかった・取れなかった科目を受講したくて一緒に受ける場合がある。
中等部1年~高等部3年までの一年ごとにカリキュラムのレベル設定がされているので、時折このようなことが起こるのだ。

槍術がこの時間に被るので、エラートとノアールとエトワールと別れ、アシェル達も大講堂へ移動する。

一限目の90分授業を受けた後は二限目だ。

必修の歴史を受けるクラスメイトと別れ、アシェルとアークエイドは錬金の授業が行われる実験室へ移動する。

錬金の授業では、アシェルがメイディー家出身ということで、実技ではいくつかの手技を監督する側に回ることが多い。
流石に教師に頼まれては断れないし、二人の兄達も同様だったようだ。

物心ついた時から錬金に慣れ親しんだアシェルには予測もできないような失敗例もあって、ある意味勉強になる。

授業が終われば食堂で昼食を摂る。
歴史の授業が終わったタイミングと重なれば、幼馴染達とイザベルと揃って食事を摂ることもあるのだが、食堂はいつも込み合うので合流できないことも多々ある。

三限目は魔法学の予備枠のみ、四限目は選択授業の生物学だけ、五限目はマナーの予備日と選択授業の予備日になっている。
そのため午後からの授業に用がない者は半日暇になるため、このままのんびり喫茶店にいく生徒や、寮に戻る生徒、敷地内の商店街に出掛ける生徒も多い。

生物学を選択しているアシェルとリリアーデは昼食の後、喫茶店でお茶をして時間を潰し、生物学を受けるために移動する。

喫茶店ではやたらと話しかけられるが、にこやかに対応している。
リリアーデと二人きりでお茶をすることが多いのでデートかと思われるようだが、相手が婚約者持ちなシルコットの加護持ちであることが分かると、途端に疑惑が晴れるようだ。
浮気と噂されるよりマシであるが、正直。知人ですらない他人の恋路など放っておいてほしいと思わなくもない。

生物学は人体の構造や機能の勉強から、治癒魔法、魔法を使わない手術についてなど、どちらかというと看護や医術の授業になっている。

治癒魔法がここに入るのは、人体の構造や機能を正しく理解・イメージして治癒魔法をかけることが、治療効果を高めるために必要だからだ。
骨折で変な継ぎ目になったりしないためと思ってもらうと想像しやすいかもしれない。

魔法はイメージ力なので、正しい知識をいかに具体的に思い浮かべることができるかはとても重要だ。

五限目は特に予定がないので、授業が終わった後は寮に戻る。

こんな風に大抵の者は午前中に必修や選択科目を詰め込み、午後は最低限の授業だけ出席することが多い。
極まれに、午前中の授業を極力避けて午後に詰め込みたがる人もいるが、それは本当に極まれだ。

基本的には1学科週に1コマだが、剣術、体術、槍術、料理は週に2コマ出席する必要がある。

武術である剣術、体術、槍術は男子生徒が受講することが多い。
エラートは全て、他は得意なものに参加している。
魔法系の授業はエラートは魔法学基礎コースで、後は皆、魔法学中級を受講している。

午後に時間の空いた生徒は、喫茶店や寮の談話室を借りてお茶会をしたりして貴族同士の友好を深めることが多い。
特に武術系の授業を取らない女子生徒は、選択する授業のコマ数が少ないので社交に充てることが多いようだ。

学内行事がある時はその準備に充てられるが、ほとんどの生徒は基本的に授業のコマ数の半分くらいは自由時間になる。

アシェルの五限目が入っているのは月曜日だけなのだが、イザベルは週に三回五限目の授業がある。
そのため、夕食でアシェルの部屋に集まるのは19時30分と決まっていた。

それまでにご飯を作ればいいので、部屋に戻ったアシェルは自室の実験部屋で今日のおさらいをする。
おさらいというよりは、同じ薬を作る際の材料をまず個別で煎じてみてから、それぞれの配合量や温度などを替えてみて、効果や味などを確認していくという作業をするだけである。

アシェルはこの作業が好きで、さらさらと用紙に気付きや改良点などを書き留めていけばあっという間に一時間以上経過してしまう。
五限目を終えて戻ってきたイザベルに呼ばれ、ようやくおさらいという名の実験は終わるのだ。

イザベルの水曜日と金曜日の五限目は料理の授業なので、大体最低でも何か一品持って帰ってくる。
その内容と量を見て、メインディッシュとサラダ、スープを用意して、バケットを出せば夕食の準備は完了だ。



集合時間ピッタリにコンコンと扉を叩く音がし、アークエイドがやってくる。
程なくして同じようにリリアーデとデュークが来て、リリアーデが食器やカトラリーを並べるのを手伝ってくれる。

そうこうしているうちに、オートロックの扉の前で待ち合わせた4人からの呼び出しのリーンリーンという澄んだ音が室内に響き。専用の映像付きインターホンで確認してロックを解除し、やってきた4人を受け入れれば、9人勢揃いの晩御飯の時間だ。

寮内の食堂で朝食や夕食を摂ることもできるのだが、アシェルはどちらも自室で食べている。幼馴染達もほとんど平日の夕食はアシェルの部屋に食べに来ている。

どうしても食堂に行くと目立つ集団な上に、リリアーデという女生徒がいるので、一応男子寮である4号棟の食堂は利用しにくいのだ。
土日や用事があってアシェルの部屋に来れなかった場合だけ食堂は利用されるが、今のところ平日の夕食は全員皆勤賞である。

それにこのオートロックエリアには6部屋あるが、そのうち3部屋は使われていない——つまり、アシェルの身内しかいない状況である。
そのためお喋りの内容が廊下に漏れることも気にしなくていい。

一時間ほどのんびり喋りながら夕食を食べ、皆で食事の後片付けをしてから解散する。

解散した後はアシェルはお風呂に入り、イザベルにたっぷり時間をかけて磨かれる。

身体や髪を洗われ、マッサージされ。ぽかぽか状態の風呂上りには、バスローブ姿でしっかりスキンケアとヘアケアをされる。

自分でやるからイザベルに自室に戻るように促しても、時間をかけて世話をするまで帰らないと言われてしまうので仕方がない。

23時を目前にようやくイザベルが納得する状態にまで仕上げられ、寝間着に着替えて、フカフカの布団に潜り一日を終えるのだ。

アシェルが寝台に入ったのを確認したイザベルは「おやすみなさいませ。」と挨拶をしたあと、戸締りを確認しアシェルの部屋を後にする。
1号棟にある自室に帰ってから寝支度をするのだろうが、その頃にはアシェルは夢の中にいる。
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