氷の王子様と微笑みの男装令嬢

芯夜

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第三章 王立学院中等部二年生

136 入学式③

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Side:アシェル13歳 春



同学年でクラスメイトのアシェル達四人と、クリストファーだけのテーブルになる。

「えへへ、お隣失礼しますね、アシェル様。」

アシェルの隣をしっかりシオンが陣取り、アークエイドの隣にノアールが座る。

「どうぞ。皆同じ側の方が資料が見やすいもんね。」

「シオンだけズルいな。僕もそっちに——。」

「兄様は学年が違うでしょ。そっちで大人しくしててください。」

シオンにじろりと睨まれ、クリストファーはやれやれと肩をすくめた。
睨むと言っても、小動物のような可愛さのあるシオンが睨んでも全く怖くはないのだが。

「なんか……こうも上から一列に並べられてると、少しショックを受けちゃうね……。」

「アシェがショックを受けてるのって武術でしょ?だって、魔法学は一番上に名前があるもんね。それに、武術だって僕より上だし。」

ノアールはそう言って励ましてくれるが、ノアールが受けている授業は槍術だけだ。
三つある武術系の中でマイナーな槍術は、全学年合同なくらい受講生が少ない。
そんな槍術だけの評価では、正当な評価とは言い難い。

「そうは言うけど、確かに剣術で力負けする人ばかり上位なんだよね。中には勝てる人はいるけど……武術三つの総合順位だよね。やっぱり今年は体術取ろうかな。」

武術でも野外実習に出れるボーダーは越えているのだが、普段剣術で勝てる生徒よりも下に自分の名前があるのは悔しい。

「相変わらず負けず嫌いだな……。とりあえず仕事を進めるぞ。」

「まずは先生がここ以上ならって人をどれくらい残して、どうバランスよくパーティーを作るかですよね。同じくらいの実力で組ませるのか、フォローできるように組ませるのかで、かなり変わってきますよね。」

「そうだね……実習場所ってどこなんだろう?」

シオンの言葉にノアールが頷き、素朴な疑問を口にした。

名簿ばかりに目がいってたが、三枚目の用紙が全学年の実習場所と日時が書かれた用紙だ。

「魔の森か……しかも、いきなり二の森か。同レベルじゃなく、フォローできた方が良いだろうな。」

「やっぱり魔の森なんだ……。それだったら、アスノームとフレイム地方出身の子は、なるべくシルコットかウェンディー地方出身、もしくは魔の森に行った経験がある生徒と組まないときついと思うよ。僕らの方とフレイムの方は森が少ないから、森の中を歩くことに慣れてない可能性が高いから。」

言われてみれば、確かにノアールと双子の弟のエトワールは、魔の森では活動がしにくそうだった。
二人は海上で戦う方が慣れているそうだ。

「アシェル様達は冒険者活動で魔の森に行ったことがあるんですよね?どんな感じなんですか?」

「僕は2回しか行ってないし、一の森までで詳しくないからパス。」

ノアールにパスを回されたアークエイドはアシェルを見る。
いつものごとく視線でパスを回したのだが。

「アシェ?何か気になることがあるのか??」

用紙を見つめたまま何かを考えこんでいるアシェルは、アークエイドの声にハッと我に返った。

「あ、ごめん。何の話してた?」

「シオンが二の森の様子を聞きたいそうだ。だが、何を考えていた?」

アークエイドに問われるが、アシェルは考えていたことを口にしていいのか迷う。

まだ何も発表はないし、調査中だと聞いているからだ。

「アークも一緒に居たでしょ。口にしていいのか……ほら、冬休みにカドラス卿が。」

これだけで伝わってと心で念じながら、ヒントだけを口にする。

「……そうだな。姉上と会長に確認してくる。少し待っててくれ。」

ロバートが、魔法庁の調べで魔の森の様子がおかしいらしいと言っていた。
現在調査中だが、王都組の冒険者パーティー【宵闇のアルカナ】に指名依頼を出す状況になるかもしれないと。

まだ原因や安全性ががはっきりしてないのに、不慣れな学生を連れて魔の森に行ってもいいものだろうか。

冒険者達は、魔の森の突然の地形変化などや死も覚悟の上で、生計を立てるために活動している。

だが、王立学院生は違う。
中には領地を守る為に、ゆくゆくは前線に立つ生徒もいるかもしれないが、基本的には戦いとは無縁の生活だ。

「ねぇ、アシェ。エトのお父さんがどうしたの?」

様子のおかしさを感じてノアールが尋ねてくるが、アークエイドが戻ってくるまで答えることができない。

「冬休みに低品質のポーション売ってる人を報告したから、その流れでカドラス卿に会ったんだけど……まだ公けになってことなんだ。」

「なるほど。それでアークがアビー様達に確認に行ったんだね。分かった、アークが戻ってくるのを待ってるよ。」

アシェルの意思は正しく伝わり、隣の応接セットの片隅で話しているアークエイド達を見守る。
最初はユリウスとアビゲイルの三人で話していたのに、結局上級生達全員が会話に参加していた。

数分で話がついたのか、アークエイドとユリウス、アビゲイルがこちらへやってくる。

「アシェル君、思い出してくれてありがとう。アークエイド君から聞いたが、生徒会は聞いていない情報だった。先生と魔法庁に確認を取ってくるから、一応パーティー割だけ決めておいてくれるかい?結果次第では無駄になってしまうかもしれないけど。」

「分かりました。詳しくは僕らも聞いてないんです。お願いします。」

ユリウスがアビゲイルと一緒に生徒会室を出て行く。

「アシェ、ちょっといいか?」

ユリウスと入れ替わるようにアルフォードがやってくる。

「ユリウスが言ったように魔法庁の判断次第だが、まだ何も発表が無いとなると、このまま決行の可能性がある。悪いが、アシェは全学年の日程中、魔の森の手前で良いから待機してもらいたい。出来るか?」

「僕らの学年が一番最後ですよね。授業的には問題ないです。どっちにしても、最終学年の三の森にはお願いしてついていこうと思ってましたから。魔の森なら見回りもできますけど、手前で待機で良いですか?」

アルフォードはアシェルの実力や経験を考慮しながら悩む。

「アシェは三の森までソロで行ったことがあるんだったな……。」

「冬休みに三の森の横断もしましたし、少しくらいなら地形の変化があってもどうにかなります。一番良いのは、朝一番で冒険者から情報を得ることですけど……。魔の森入り口のこのポイントって、教職員が野営するポイントですよね?」

三枚目の日程表には、かなり簡単に書かれた魔の森の川の流れと三つの森、それを囲む山脈が描かれている。
魔の森から王都の城壁に向かって伸びる川の、ちょうど魔の森との境目には赤い印がつけられている。

「あぁ、そうだ。基本的にはそこに教師が待機していて、一泊二日で帰還しない生徒や、救難信号が上がったら救助に向かうことになっている。」

「知り合いの冒険者に、朝一でここまで来てもらえないか頼んでみます。前日までの情報でしたら、彼らが分かると思うので。」

【朱の渡り鳥】にお願いすれば、恐らく快く引き受けてくれるだろう。
安全のためなら、アシェルのポケットマネーを出して依頼してもいい。

「もし状況が分かるなら有り難いな。やっぱり冒険者の方が異変には敏感だからな。じゃあ、もし決行が決まったら頼んでもらえるか?無理に頼む必要はないから。」

「分かりました。とりあえずはユリウス先輩とアビー様待ちですね。組み合わせを決めながら待ってます。」

「あぁ、それと。アシェはアークエイドとパーティーを組むようにしろよ。」

「出来ればそうしたいですけど……過剰戦力になるし、職権乱用になりませんか?」

それはアシェルも考えていたが、アシェルは魔法学の一位でアークエイドもかなり上位。
武術に関してもアークエイドはかなり上で、アシェルもそこそこの順位にいる。

心配ではあるものの、流石に授業で我儘を言うのは止めておこうと考えていたのだ。

「兄上はずっとグレイニール殿下と一緒に組んでたぞ。それに有事の際は、救難信号を出した生徒を救出にいかないといけないかもしれないんだ。武術、魔法、どっちの枠でもいいから、ここはペアにしてくれ。ただ、このペア同士が固まらないようにしてくれよな。」

そう言ったアルフォードは、アシェルの持つ資料に数字を書き加えていく。

「僕とアーク、ノアとトワ、エトとマリク、リリィとデューク……確かに、連携は一番取れる相手ですね。ただ、僕とアークのどちらかと、エトとマリクのどちらかを入れ替えたほうが、バランスが良くないですか?マリクは魔法も上手に使いますけど、バランスを見ると、僕らが魔法寄りで、エト達が武術寄りになってしまいます。エトかマリクになら、アークを預けるのは嫌じゃありませんし。」

双子達はどちらも弟が武術寄りでバランスが取れているが、王都組は偏ってしまっている。
バランスを良くするなら、アシェルとエラート、アークエイドとマリクの組み合わせが一番バランスがいいはずだ。

「どっちにしても4人パーティーにしないとだからな。アシェが駆けつける時に、ついてこれない相手だと困るだろ。アークエイドは夏休みのアシェについてきたんだろ?」

「そういうことですか。そうですね。僕とエトの方がバランスが良いと思ってましたけど、エトだと絶対についてこれないです。」

「ってわけで、あとよろしくな。」

ひらひらと手を振り、アルフォードは隣の応接セットへ戻っていく。

「と、いうことらしいです。」

話を聞いていたクラスメイト達に、一応アシェルの紙を見せる。

「預けるってな……俺は子供か何かか。」

拗ねているように見えるアークエイドだが、きっとシオンにはいつもの無表情に見えているのだろう。
アークエイドの向こうで、ノアールだけが苦笑している。

「僕から見たらまだまだ子供だよ。リリィ的に言うとね。さ、話の続きをしようか。」

「……それはどうにもならないだろ。」

ぼそりと小さな声でアークエイドが呟いた。

既にパーティーメンバー決めのために話し始めたノアールとシオンには聞こえていないようだが、アシェルにはしっかり聞こえた。

しかし、こればかりは仕方ない。

リリアーデ的に言えば、今の年齢プラス精神年齢は前世を足すらしいのだから。
それに足さなくても、20歳目前まで生きた記憶があるのだ。

特にこういう拗ねたような表情を見せるアークエイドは年相応に見える。

可愛い一面を見せたアークエイドに表情を綻ばせながら、アシェルも話し合いに参加した。

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