氷の王子様と微笑みの男装令嬢

芯夜

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第三章 王立学院中等部二年生

179 スタンピードの始まり②

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Side:アシェル13歳 秋



アシェルの配置位置に移動すると、既にアークエイドとマリク、デューク、ジンが揃っている。
ここにキルルも加えた6人が、一つの戦力としてのまとまりだ。

パーティーが負傷や休憩で三人以下になった時点で、そのパーティーは前線から下がって補給エリアに戻ることになっている。

タンク役の騎士団達とは別に、常時この小さな戦力が6つ以上前線に出て戦うことになるらしい。

そして左隣のグループは、王立学院の上級生たちとアルフォードだ。

「皆お待たせ。アル兄様も、バッファー兼戦闘員って事で良いんですよね?」

「あぁ。俺達の位置が大体真ん中だから、アシェはそっち半分をお願いな。俺らはほぼずっと稼働するから、無理しすぎんなよ?」

「分かってますよ。アル兄様こそ、魔力枯渇には気を付けてくださいね?加護持ちじゃないんですから。」

「分かってるよ。こんなところで枯渇したらシャレにならないからな。そろそろ見えるな。」

「僕も、皆さんにバフをかけてきますね。」

アルフォードとの会話を終えて、まずは自身にかけたあと、自分達から一番遠いパーティーから『攻撃力向上アタック』と『防御力向上プロテクト』をかけていく。

最後にアシェルのパーティーメンバーにかければ完了だ。

「ふぅ……。キルル様とマリクは速度向上クイックも要りますか?」

「おや、貰っても良いのかい?クイックありなんて何年ぶりだろうねぇ。」

「要るー。やっぱり、あったほーがたのしーよねー。」

「うーん。アークエイド殿下がアプローチしてないのなら、是非マリクの相手にって思うけどねぇ。そーしたら三人でパーティーを組めるし、アベルがしてくれてたみたいに、いつもバフを貰えるんだろう?冒険者業にバフは魅力的だよねぇ。ねぇ、アシェル。うちのマリクなんてどうだい?嫁入りでも婿入りでも、なんでもいーんだけど。」

「テイル夫人!バフを貰うためだけに、しれっとアシェとマリクをくっつけようとしないでくれ。」

「あははっ。良い反応だよ。モニアより大人しいけど、やっぱり王族だねぇ。さっきアシェルがクラスメイトと触れ合ってても何も言わないから、てっきりもう振られたか諦めたのかと思っていたけど。」

「まだ明確な返事は貰ってない。それは戦闘前に小言を言うのもどうかと思っただけだ。」

楽しそうに笑うキルルに、アークエイドが少しむくれて見せる。
キルルは本音半分、冗談半分でアークエイドを揶揄ったということだろうか。
もしかしたら過去に、グリモニアにも同じようなことをしていた可能性はある。

アシェルが先程ファンサービスと称して遊んでいたのを、アークエイド達はしっかり見ていたらしい。
確かにすぐに飛んでこないのも小言を言われないのも珍しいことだが、アークエイドなりに配慮してくれた結果のようだ。

「モニアならお構いなしに飛んでいってるよ。辛うじて異性と話して許されるのは、アベルとロバートだけだったからねぇ。アンジーは無視していたけどね。」

「父上……話を聞けば聞くほど、王族の血が濃すぎるな……。」

「他にも教えてあげようか?アレはなかなか王族の特徴がしっかり出てたと思うわよ。なかなかモニアの話しなんて聞けないでしょう?」

アークエイドも大概嫉妬深いと思うのだが、そのアークエイドから見てもグリモニアは嫉妬深いし独占欲が強いということだろうか。

アークエイド以上の存在が居ることが、アシェルには信じられない。
そういえば学院生活で何度もアンジェラの部屋へ夜這いしに行っていたとか聞いたなと思うと、確かにアークエイドは大人しく見えるのかもしれない。

アークエイドは隣の部屋でも夜這いしてくることは無かったし、泊る時もちゃんとアシェルの許可を取ってから泊りに来ている。アシェルがダメだと言えば、大人しく部屋に戻っている。
つまり今の状態でも、ちゃんとアシェルに配慮してくれているということだ。

「えっと……俺には全くわかんねぇ次元の話が進んでるんだけど、これって俺聞いてよかったやつなのか?王族って一目惚れ体質だって、女たちから聞いたことあるぜ。故郷の領主がそうだったから、別に同性婚に偏見があるわけでもないけどよ。三角関係なわけ?」

「俺はアシェとは友達だからねー。アシェだってそう思ってるでしょー?」

「うん。僕は別に誰かを“特別な好き”とは思ってないし、結婚したい相手も居ないし。」

「ジン、気にするな。そんな複雑なものじゃないから。現状アークの片思いだ。」

「で、当のアシェルは男女問わず抱きしめて甘いセリフを吐いて、キャーキャー言われてたって事だろ?アシェルも周りの子達も、普通にソレを受け入れてたし……。魔道具使っててもそうだけど、本来の色のアシェルはそれより美人だから、アークは大変だな。こんだけ美人でスマートに口説ける男なんて、男女問わず引く手数多だろ。」

領主がと言っていたが、どうやらジンは恋愛対象の性別がどうであろうとあまり気にしないようだ。
そしてジンもバッチリ、さっきアシェルがファンサービスをしながら遊んでいたのを見ていたらしい。

「そんなことないと思うよ。あくまでもあれはファンサービスだし。誰彼構わず口説き文句を言ったりしないからね?あの方が先輩たちが喜んでくれるから。」

「演技でも俺には無理だわ……っていうか、ああいうのはイケメンに限る、だろ。俺がやったら張っ倒されそうだ。」

「ジン。アシェの言うことは鵜呑みにするな。普段からクラスメイトの女生徒に、あたかも口説いているような甘いセリフを吐くのがアシェだ。」

「ちょっと、デューク。別に僕は口説いてないってば。」

「アシェは誰にでも同じように言うから、クラスメイトも口説かれてるとは思ってないと思うけどな。それでもあれは普通、口説いてるって言うんだぞ。アークも気が気じゃないだろうな。」

「えー。僕はそんなつもりないのになぁ。」

こうしてお喋りしている間に、ようやく第一波がやってくる。

やはりフォレストウルフやフォレストタイガーなどの、足が速い魔物ばかりだ。

アシェル達の頭上を水魔法と光魔法が飛んでいくのが見える。

きっと後続の魔物たちへの攻撃だろう。

「来たね。ふふ、久しぶりにたっぷり暴れさせてもらうよ。」

「かーさんに負けないようにしないとなー。」

「純血にハーフが敵う訳ないでしょう?まぁ、でも頑張りなさい。じゃあ、一足お先に出させてもらうよ。」

「俺もー。」

トンと地面を蹴ったキルルとマリクの姿が、あっという間に遠くへ消える。

「まぁ、連携は無理だと思っていたが……。ジンは無理をしないでくれ。厳しいと感じたら少し下がって休んでくれても構わない。デュークは魔法を使わなくても良いように、魔法が必要だと判断したら俺が使う。使ってほしいものがあったら言ってくれ。アシェは時々バフのかけ直しに行くんだよな?その時は、俺に一言声を掛けていってくれ。穴が開かないようにフォローする。それぞれ下がるタイミングは自己判断で良い。怪我だけはしないでくれ。」

「りょーかい。まぁ、無理しない程度に頑張るわ。」

「アシェが抜けてもマリクとテイル夫人が居れば、ここは崩れなさそうだけどな。」

「分かったよ。僕も久しぶりに暴れてくるね。」

それぞれアークエイドの言葉に返事を返して、それぞれ目を付けた魔物を狩るために地面を蹴った。

既にそこかしこで戦闘が始まっている。

マリクとキルルの進路の邪魔にならないルートを見つけて、アシェルもブロードソードを振るう。

どんどんおかわりが来ているので、今日は一体一体とゆっくり遊ぶ時間は無い。

一体につき二撃ずつ、首に左右から切りつける形で頸動脈を切り裂いていく。
今日はバフがかかっているので、一度で十分な深さを切りつけることが出来た。
さすがにバターのように切る程の力はないが。

相変わらず返り血を浴びることになるが、気にすることなく魔物の群れの中を舞う。
この血の臭いで進路をアシェルに変えてくれるなら好都合なくらいだ。

「あぁ、残念だなぁ。ごめんね、一人一人ゆっくり相手をしてあげられなくて。」

ウルフもタイガーも、フォレストベアほどではないが、最期の悪あがきで綺麗な命の灯火を煌めかせる。
スタンピードの影響なのか、いつもよりもしぶといし動きも激しい。

アシェルはこの命の煌めきを見るのが好きだ。
一生懸命に今の生を生きているのが伝わってくる。

ちらりとパーティーメンバーを見ればマリクとキルルの独壇場という感じで、アークエイド達まで流れる魔物はかなり間引かれている。

アークエイド、デューク、ジンはその流れてきた魔物を、確実に屠っている。

デュークもジンも力がある方なので、いくつもウルフとタイガーの首が転がっていた。
胴体は戦闘の邪魔にならないように、アークエイドが回収しているのだろう。

他のパーティーもある程度倒しては、邪魔になりそうな遺体はストレージに放り込んでいるようだ。

かく言うアシェルも、きっちり灯火の消えた塊から回収している。
足元に転がっていたら邪魔だからだ。そのままにしていたら小山が出来てしまうだろう。

陽が落ちるまでがアシェル達の活動時間だ。

視界が悪くなれば剣術は戦いにくくなるので、そうなる前に魔法使い組と交代して休憩をとることになる。

それまでに負傷者が出るリスクを減らすために、アシェルは定期的にバフのかけ直しにも走らなければならない。

もし前線のパーティーが交代する時には、新しく入るパーティーは結界付近でアレリオンにバフを貰ってから参加することになる。

アシェルがやるのは、一定時間でかけ直しに走れば良いだけなので、自身への強化のかかり具合を目安に少し余裕をもって移動する。

「アシェーそれもらおーか?」

「マリク。お願いしていい?そろそろバフのかけ直しに行きたかったんだよね。」

「おっけー。」

戦闘開始から一時間半。

そろそろバフのかけ直しに行きたいと思っていたタイミングで、マリクが加勢に来てくれる。

グルゥゥと低く喉を鳴らしてマリクが威嚇して挑発すれば、ウルフもタイガーもマリクへと攻撃対象を変える。
これは獣人ならではの挑発の仕方らしい。

ゆっくり交代しながらタゲの切れなかった魔物だけを屠って、新しい魔物に絡まれる前にアークエイドの元へ走る。

「アーク、僕は一旦離れる。僕が持ってたのは、今マリクがやってくれてるから。」

「あぁ、見ていた。気を付けてな。」

「お互いにね。ここには最後に戻ってくるから。じゃ。」

必要な事だけを伝えて、まずは一番離れたパーティーに魔法をかけるために走る。

どうしても途中で魔物に絡まれるので、絡んできた魔物の首に切りつけて、息絶えるまで引き連れたまま走る。
プチパレード状態だ。

まだ戦っている顔ぶれは変わっていないようなので、上手く前線の維持は出来ているのだろう。

バフのかけ直しは声を掛けないので、連れている魔物のターゲットが移らないように注意しながら、魔法を飛ばしていく。

本当は近くでかけた方が魔力の消費は抑えられるのだが、致命傷を与えているとはいえ、キャパオーバーになるかもしれない魔物を連れたまま近づくのは憚られる。

「まずは一つ目っと……そろそろ一旦減らしておかないと増えすぎちゃうかな。」

さすがに戦地を血塗れで移動すれば、餌が目の前を横切っていくようなものなので釣れすぎるようだ。

どうせ汚れるのだが『クリーン』をかけて一旦身綺麗にした後、今居る団体様の対処をする。

そろそろホーンラビットやゴブリンなども混じってきている。

さすがにアシェルについてきているのは足が速い魔物だけだが、注意しておかなければそろそろ虫系も大挙してやってくるだろう。

空には時々、かなり後方から魔法が飛んでいるのを見るので、グリモニアのいる結界付近から飛ばしているのかもしれない。

さっさと次のパーティーへと向かう為に、真っ赤な血液が滴る首を力任せに切り落としていく。
といっても、やはり力不足感は否めないので飛び跳ねて重力と体重をかけて、アシェルの胴体よりも一回り大きな首を確実に落としていく。

処理した胴体を邪魔にならないように適宜『ストレージ』に放り込み、ひと段落付いたらまた次のパーティーへと向かう。

アシェル達はあまりにも自由に戦うからかタンク役の騎士はいなかったが、各パーティーに二人ずつはタンク役を割り当てているようだ。

「おい、アシェ!そいつら連れてこいっ。」

二つ目のパーティーのバフ更新をし、残りはアシェル達のパーティーとシオン達のパーティーになったところで、シオン達のタンク役をしているエラートから声がかかる。

シオン、イザーク、ミルル、ティエリア、あと二人は中等部三年生だ。
野外実習で見た顔なので間違いないだろう。
もう一人の盾役はダリルだ。

ミルルは獣人の血がどうのといっていたが、まさかティエリアまで武術枠で前線に出ているとは思わなかった。

「近づいてもらって大丈夫ですよ。遠距離なんて魔力の無駄です。」

「俺ら、これでも割とやる方だと思ってるんで、遠慮しないでください。」

きっちり剣を振るいながらシオンとイザークも近づいて良いと言ってくれたので、言葉に甘えて連れているウルフとタイガーごと合流する。

「ごめんね、ありがとう。」

「良いって。それより怪我はしてねぇよな?」

「マリクより遅い奴から、攻撃貰う訳ないでしょ。」

「はは、それもそうだな。お前らの相手は俺だぜ、よそ見すんなよ。」

エラートの殺気に魔力が混じる。
これはマリクが唸り声で魔物を挑発するように、エラートに魔物の攻撃を集中させるために魔法で『挑発』したのだ。

これで魔物たちはアシェルや周囲の人間よりも、エラートに向かっていくようになる。

ストレージと身体強化以外にクリーンすらまともに扱えないエラートが、挑発を使えるようになっていることに驚く。

「いつ使えるようになったの?」

「アシェが寝込んでる間に、親父に徹底的に仕込まれた。ガルドも一緒だったから、もっと効果は弱いけど使えるぞ。タンク役で沢山の魔物相手に盾で攻撃捌くなら、これが必須なんだとよっ。一体ずつ切りつけていくわけにもいかねぇからな。」

「まぁ、確かにこんなに多いとね。負傷した場合は、相方が同じようにして続きを引き受けてくれるわけだ。」

「そういうことだ。アシェが連れてきたやつは、だいぶ弱ってんな。」

「まぁ、それなりに血を失ってるんじゃないかな。頸動脈切って走ったら溢れ出るよね。」

喋りながらもエラートは、丁寧に盾で魔物たちの攻撃を捌いていく。

捌かれた魔物は、二人一組の生徒達が、一体ずつ確実に倒していく。
危うげなく倒しているので、今のところ戦力的には十分だろう。

ある程度捌き切ったのを確認してから、シオン達にバフをかけ直す。
タンク役へもバフをかけるので、エラートとダリルにも近づいてきちんと更新しておいた。
近づいて魔法を使えるだけで、かなり魔力消費量が違う。

そして少しゆとりのある今のうちに、マナポーションも飲んでおいた。
アシェル達のパーティーには盾役が居ないので、今飲んでおいた方が安全だ。

「もう後は任せて大丈夫?」

「アシェル様が連れてきたのは弱っているので、増えた内に入りませんよ。任せてください。」

「俺もシオンと同意見です。こっちは良いんで、アシェル君は戻ってください。」

「アシェル様やアークエイド様の雄姿を近くで見れるなんて、やはり前線に出て正解でしたわ。アルフォード様も目を凝らせば見えますし。」

「ティエリア先輩っ。ちゃんと動けるんですから、よそ見しないで下さいよー。」

「あら、それだけ痛めつけたらミルルさんなら余裕でしょう?」

「私だって、アシェル様たちの雄姿をゆっくり眺めたいです。」

「眺めすぎないように、わたくしがここに居るのよ。さぁ、次に行きますわよ。」

ティエリアの剣捌きもなかなかのものだ。
そして、まさかのミルルのお目付け役だったらしい。

ミルルはグローブに爪のついたクローを使っているようだ。
重心を低くして飛びかかる瞬間は、四足歩行の獣のようだ。これで獣人の特徴が出ていないのが不思議なくらいである。

「皆さんも無理はしないで下さいね。交代の時間までにあと一度は来ますので。」

「おう。次はまっすぐこっちに連れて来いよ。」

「ありがとう、エト。」

自分には魔物がくっついてきていないのを確認して、アークエイド達三人の場所に戻る。
思ったよりも暇そうだ。

「お待たせ、大丈夫そう?」

「大丈夫どころか、テイル夫人とマリクが暴れまくってる。流れてくるのはホーンラビットくらいだぞ。」

「やっぱりSランク冒険者は凄いな。領地にはAランクパーティーが居るが、こうやって見ると戦力の差を実感するよ。【月夜の白銀】は単身でSランクだからな。」

「俺らもうちょっと戦わなくて大丈夫か?ガルドとか、めっちゃ敵捌いてるんだけど。」

どうも隣のアルフォード達のチームのタンク役がガルドのようで、頑張っている姿が見える。
もう一人のタンク役は赤騎士なので、もしガルドが負傷したり取りこぼしてもフォローできるようにだろう。

「多分マリクとキルル様は、討伐を楽しんでるから大丈夫だよ。……はい、皆もバフかけ終わり。もう一回だけ、後衛との交代までにバフをかけて回るから、その時はまた声を掛けるね。僕の獲物残ってるかな?ジェネラルも混じってると良いな。バッファローにも上位種居たりするかな?もし居るなら、どんな味がするのか気になるよね。」

普段の討伐と違って倒したからと言って倒した人のモノになるわけではないが、報奨金が支払われる時に現物を希望することもできる。
倒せば情報は手に入るので、貴重な肉は知っている人だけが希望できる代物だ。

アシェルは金銭より、美味しい食材や珍しい素材の方が欲しい。

「アシェルから見たら、魔物は飯かよ……まぁ、瘴気を浄化して食えるように出来るし、そんなもんか。バッファローには上位種が居るぞ。魔の森では目撃例がないが、尻尾が1本じゃなくて複数あるらしい。違いはそこと、肉の脂のノリが多くてとろける美味さだそうだ。二本と三本が確認されてて、三本のは霜降りって言うらしい。」

「へぇ、居るんだ。せっかくなら全部出てきてくれないかな。そしたら食べ比べできるよね。ふふ、混じってたら良いな。僕も遊んでくるね。」

「暴れるのは良いが、ほどほどにしておけよ。いつもより魔力を使ってるんだからな。」

「さっきエトのところで、マナポーション飲んできたから大丈夫だよ。二人にかけ直すより先に、キルル様とマリクに追いつかないとか……『速度向上クイック』。また後でね。」

言うが早いかアシェルの姿が消える。

残された三人は、明らかに遊び相手ではないと判断されて見逃されたであろうホーンラビットやゴブリンなどの小型の魔物を屠っていく。

雑談しながらでも問題ないし、進路を逸れそうなやつはアークエイドが魔法で屠っている。

「アシェルは遊ぶって言ったか?聞き間違い……。」

「じゃないな。」

「きっとテイル夫人やマリクも同じように思ってると思うけど……僕らは考えるだけ無駄だぞ。絶対に同じ感覚にはなれないからな。」

「アシェ的には魔物と戯れて手加減なしで遊べて、さらに美味い魔物が居たら珍しいものが食べれて嬉しい、だろうな。魔物たちを持って帰った方が、報奨金が上がる可能性もある。つまるところ、ただの食材と資金調達だ。」

「スタンピードってなんなんだろうな……。」

「日常的に起こる激しいスタンピードが体験したいなら、是非シルコットに来てくれ。ジンたちくらい実力のある冒険者なら大歓迎だ。」

「メイン拠点は王都だけど、Aにランクアップすることがあればシルコットに行くのも良いかもな。Bにするのは、ビースノート帝国に行ったし。ま、もうしばらく先だな。」

「虫が混じり始めたな。……アントしか流れてこないが。」

アークエイドの言う通り、ホーンラビットと一緒にチラホラとアイアンアントやアシッドアントが混じっている。

明らかに前線で選り分けられた結果だろう。

「なぁ。俺達、三人もここに要るか?」

「要らないかもしれないな。」

「僕も同感だ。」

キルルにマリク、アシェルまで速度向上クイックをかけてしまったので、思う存分暴れまわる三人が動いている姿は目視できない。
狼獣人のキルルやハーフのマリクはもちろん、アシェルもスピードタイプだ。さすがにクイックを使われてしまうと、アークエイド達は目で追いかけることが出来ない。

ちょくちょく魔物が血飛沫を上げたり、ストレージに収納されたのか消えていくので居場所が分かるくらいだ。

かと言って、近場の左右のチームも危うげなく魔物を倒しているところを見ると、手伝いに行っても邪魔になるだけの可能性がある。

タンク役の騎士たちがしっかり魔物を引き付けているし、中央にあたるアークエイド達とアルフォード達の居るこの場所が、本来なら一番魔物が多いのだ。

「明日の方が魔物の総量は増えるだろうけど……後ろで待機している冒険者のことを考えると、明日は僕らは状態異常持ちや後続じゃ厳しい相手だけ倒して、後ろに弱いのは回さないといけないかもだな。」

「何故そう思う?」

「来るか分からない相手を待ち続けるのは、かなり神経を使うんだ。かと言って、来ないからって気が緩んでしまうと、雑魚相手でも命取りになりかねない。長期間続くことを考えると、前線の体力もある程度温存出来て、後続に待機している人間も安全に程よい緊張感が保てる。安全に戦える今のうちに、色々なタイプの魔物との戦闘の経験を積めるというのもデカいな。どうせ後ろに居るのは一の森か、二の森、もしくはダンジョンでも浅い階がメインの連中だろう?咄嗟の時に、相対したことがある魔物かどうかで生存率も変わる。少なくとも、領地ならこうするってだけだが。」

「いや、参考になる。夜に兄上と父上に伝わるようにしてみる。」

「あぁ、よろしくな。とりあえず僕達は、アシェ達のおこぼれを片付けるか。」

デュークはそう話を締めくくったが、正直なところ片付けるようなものでもない。

それこそ、後ろまで流してしまってもいいくらいの敵しか流れてこないのだ。

このペースで暴れて日が暮れるまで体力がもつのかと心配になるが、きっとなるから暴れているのだろう。

三人は黙々と小型の魔物を屠る作業に集中した。
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