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第三章 王立学院中等部二年生
180 スタンピードの始まり③
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Side:アシェル13歳 秋
ゴーン、ゴーンと時計台の鐘の音が二回響いた。
前衛と後衛の交代の時間だ。
魔物を引き連れたままでも良いので結界まで走って戻れば、後衛部隊と交代要員がそのまま魔物を引き受けてくれる手はずになっている。
「マリク、あんたはここら辺の連中が逃げ遅れてないか、見てから戻ってきなさい。あたしが向こう三つ、マリクが真ん中二つ、アシェルが向こう三つ、出来る?」
撤退するために最前線で戦っていたアシェルは、キルルとマリクと合流した。
そしてキルルから出された指示に頷く。
「分かりました。マリク、僕らのパーティーと、アル兄様のところはアル兄様入れて学生6人、ガルドと赤騎士タンクだからよろしくね。キルル様の方は……分からないです。」
「おっけー。」
「こっちは把握してるから大丈夫よ。よろしくね。」
手短に言葉を交わし、それぞれ持ち場に散っていく。
キルルとアシェルのことは、きっとマリクが説明してくれるだろう。
後退する時は魔物に背中をみせてしまうことになるので、実力があっても負傷する恐れがある。
戦場を横切りながら、全員が無事後退できているかを確認していく。
どこもタンク役の騎士はゆっくりと魔物の注意を惹きながら後退しているのに、6人組の方がどういうタイミングで引けば良いのか分かっていないようだ。
まずは一番遠かったパーティーの助っ人に入る。
「これは僕がやるから、君達は結界に走って。君達がいつまでもここに居たら、タンクが戻れないでしょ。ちゃんと守ってあげるから、こっちは見ずにさっさと走る。」
生徒達の相対していたポイズンビーの胴体を真っ二つにして、6人全員を結界へ走らせる。
虫は生命力が弱いので、さっさと討伐してしまった方が楽だ。
幸い赤騎士が二人で器用にポイズンビーやオークたちの攻撃を上手く捌いているので、その隙に大型の魔物の頸動脈から切り裂いていく。
「これで少しは弱るでしょ。あとは……君達は数が多いだけなんだから、さっさと死んでよね。それに、どうせなら緑にしてよね。黄色と赤なんて有り余ってるんだからさっ。」
なぜこれだけ押し寄せているのに、ここには黄色と赤のポイズンビーしかいないのだろうか。
まだハニービーにもお目にかかれていない。せっかくなら、今回のスタンピードで出て来てくれたらいいのにと思う。
しっかりと脆い関節に刃を一閃し、すぐにこと切れてくれる胴体を『ストレージ』に放り込む。
要らない部分は邪魔にならないのなら戦場に転がしておけば、このあとに後衛部隊が掃除してくれるはずだ。
「これで下がれますか?」
「えぇ、助かりました。アタッカーが下がらないと、私達も下がれませんでしたので。」
「メイディー殿が先に下がってもらえれば、私達も後を追います。」
「僕は他を見に行くので。ちゃんと結界まで下がってくださいね。」
「はっ!」
「お気をつけて。」
アシェルがまだ残ることを知ると、赤騎士二人は迅速に撤退に移る。
この様子なら無事に戻れるだろう。
二つ目のパーティーもやはり6人組が上手く後退できないので、タンク役の赤騎士も下がれない状態だ。
魔物を連れていても良いから、とにかく結界まで下がれという指示が通っていないのだろうか。
こうやって前衛がいつまでも残っていると、大型の魔法が使えない上に、結界付近で前線を維持し続けなくてはいけなくなる。
さらには結界付近で処理する魔物が増えて、極大魔法での殲滅範囲から外れるので悪循環でしかない。
「鐘の音が聞こえなかったの?早く下がって。これは僕がやるから。」
「だが、魔物の量が——。」
「何のために盾持ちが居るの?良いから振り返らずにさっさと走る。もたもたしてしわ寄せが来るのは、この騎士たちと後衛なんだからね。」
口ごたえをしようとしたのは高等部一年生だ。ここは中等部三年生と高等部一年生の寄せ集めのようだ。
「でも——。」
「あーもう、うるさいな。そこの男子生徒。コレ担いで帰って。」
『拘束』で両手両足、そして猿轡までした男を、もう一人の高等部一年生の生徒に預ける。
「ふふ、何、解除しようとしてるの?君に僕のバインドが解けるわけないでしょ。メイディーを馬鹿にしないでくれる?あ、結界に戻ったら、アン兄様かアル兄様に解いてもらってね。」
「お手数をおかけしてすみませんでした。メイディー殿ありがとうございます。ほら、全員走るぞ!」
男を預かってくれた生徒はぺこりと頭を下げてから、残りのメンバーを引き連れて結界に向かって走ってくれる。
あのうるさい男がリーダーのつもりだったのかもしれないが、もう一人の高等部一年生の方がしっかりしているのではないだろうか。
それにうるさい男以外は、撤退するタイミングを見極めようとしていた。
指示が通ってなかったのはあの男だけだったのだろう。
「助かりましたっ。我々は大丈夫です。」
「メイディー殿もお下がり下さい。」
「僕はもう一つ見に行くから。……といっても、あっちは下がってるだろうから、少しだけ減らしてあげるよ。足が速いのと毒持ちは邪魔でしょ。」
せめて魔物の量を減らしてから一緒に後退するつもりなら、厄介なものから対応してくれていたら良かったのに、何故かうるさい男がやってたのはゴブリンやオークだ。
下がるに下がれないパーティーメンバーは、きっちりポイズンビーやフォレストウルフから対応しようとしていたのに。
動物型の魔物の頸動脈を切って周り、足が速いものは両前脚にも切りつけておく。
これで速く走ることは出来ないだろう。
それからポイズンスパイダーとポイズンビーの関節を貫いていく。
よく見れば9番のかなり毒性の強いポイズンスパイダーも混じっていて、そいつは上手く生徒達に近づけないように騎士が立ち回っていたようだ。
「そいつはっ、こちらで対処しますっ!」
「大丈夫だよ。」
どんなに強い毒を持っていても、毒を出す場所に触らなければ良いだけの話だ。
しっかりとポイズンスパイダーに止めを刺して『ストレージ』に仕舞ったアシェルを見て、赤騎士二人はホッとした表情になる。
タンク役なので攻撃も出来ないし、生徒にぶつけるわけにもいかないしで、引き離すのが精一杯だったのだろう。
「要らぬ心配でしたね。正直なところ助かりました。」
「我々では、魔物たちを捌きながらアイツを遠ざけるのが精一杯でして。」
「あんなに言うこと聞かないのが混じってるのに、よく頑張ってくれたと思いますよ。さぁ、もう撤退も問題ないですよね?無事結界まで戻ってくださいね。」
「ありがとうございます。」
「メイディー殿も、無事に戻っていらしてくださいね。」
二人の赤騎士が短く敬礼した後、背後を警戒しながら結界へ向かって走っていく。
ウルフやタイガーの足を潰したのを見ていたので、じりじり下がるより走った方が早いと判断したのだろう。
そのままエラートやシオン達のいた場所を見に行ったが、ここはきっちり後退していた。
もう一度アシェルが来た方を見て、騎士たちが撤退したことを確認する。
赤服の騎士なので、平原で目立って見やすいのは良いことだと思う。
アシェルを追ってくる足が速い魔物の脚だけを切りつけ、結界まで真っすぐに走れば、アロー系の魔法や弓矢での攻撃がアシェルの隣を通り過ぎていく。
全てを無視して結界を潜れば、アークエイドが迎えてくれて『クリーン』までかけてくれた。
「アシェ、無事か?」
「僕は大丈夫だよ。マリクとキルル様は?」
「あたしらは戻ってるよ。っていっても、あたしもさっき戻ってきたところだけどね。」
「俺はやることなかったしねー。」
キルルもさっき戻ってきたということは、やはりアシェルが見た場所と同じように撤退できていなかったのだろう。
「ねぇ、これ本当に撤退指示の説明ちゃんとしてる?それとも、王立学院生が馬鹿なの?それとも耳が悪いの??」
不機嫌さを隠しもしないアシェルに、キルルが苦笑する。
「見に行って正解だったってことだね。まぁどれだけ説明されてても、経験がない人間は指示の重要性を理解してないから、こんな風になりがちなんだよ。新兵は特にね。撤退しやすいようにわざわざ盾役の騎士を配置してるのに、モニアの配慮はことごとく無視されてるわけだけど。」
「なのに、騎士を配置してなかったエトとダリル先輩が守っている場所は、きっちり指示に従えてたわけですね……。」
「うちは二組はダメだったわね。アルフォードの隣のパーティーは、アルフォードの様子を見てきっちり撤退したみたいだけど。」
「明日は大人しく撤退してくれますかね?」
「どうだろうねぇ。スタンピードで撤退できるなんてありがたいことなんだから、さっさと撤退すれば良いのにねぇ。」
「ですよね。戦いたいならパーティーメンバーや騎士を巻き込まずに、一人で頑張って欲しいです。」
「お話し中のところ失礼するよ。」
「テイル夫人、マリク殿、撤退の最終確認ありがとうございます。アシェもありがとうな。」
キルルとアシェルで愚痴を言い合っていると、二人の兄の声がする。
「別に必要なことをやったまでのことよ。こういうのは適材適所でしょう。」
「僕も同じくです。」
「それでもかなり助かりました、ありがとうございます。それでアシェ……アレはどうしたら良いの?」
「あっ、アン兄だけずるいぞ。」
アレリオンの腕に包まれたと思ったら、背中からアルフォードが抱き着いてくる。
二人の兄に挟まれてサンドイッチ状態だ。
アークエイドに綺麗にしてもらっていて良かったと思いながら、アレリオンの言葉に首を傾げる。
「アレ?」
「僕かアルに、解除を依頼しろって言ったんだろう?」
「あー……煩い高等部一年の男子生徒ですね。バインドで縛り上げても、大人しくするどころか抵抗してましたので。お兄様達なら良いようにして下さるかなと。前線から居なくなれば良かっただけなので。」
「あいつめっちゃ怒っててさ。まだ無駄な抵抗してるんだよな。なんかそんな奴のバインド解いてやるのも癪に障るし。」
「かと言って、前線で働くアシェにずっと魔力を使わせるのもなんだから、メルに代わってもらったらどうかなって。メルは特に魔力を使う予定が無いから、なんならスタンピード中ずっと拘束もできるよ。」
「僕はどちらでも良いですよ。とりあえず、あのパーティーからあの人は弾いた方が良いと思います。煩い上に、魔物が多くて撤退できないみたいなことを言いたそうだったのに、あの人自体は撤退の役には全く立ってませんでしたから。アレはパーティーメンバーの方が可哀想です。」
アシェルの辛口評価に、アレリオンとアルフォードはよしよしと頭を撫でて慰めてくれる。
こうしていると、ささくれだった心が癒されるから不思議だ。
「じゃあやっぱり、頭が冷えるまで大人しくしておいてもらおうね。」
「高等部一年なら、もう少し判断力がありそうなものなんだけどな。アシェ、お疲れ様。」
「貴方たち。いい加減イチャつくのは止めなさい。ここは学院じゃないのよ?」
呆れ声のアビゲイルの声がする。
声がした方を見れば、近くにアビゲイルが立っていた。
時折魔法の光で照らされる小麦肌のアビゲイルは、ワンレンな漆黒の髪の毛も相まって妖艶に見える。
ローブを着ていて身体のラインは見えないが、それでもエキゾチックな不思議な魅力があると思う。
「アビー。今日のお役目終了か?別にイチャついてないからな。可愛いアシェを労わって、ついでに癒されてるだけだ。」
「別にアシェを可愛がるのに、場所は関係ないだろう?」
「えっと、イチャついては無いと思いますよ?」
三者三様の答えにアビゲイルが大きなため息を吐いた。
その溜息を聞いたアークエイドとグレイニールは苦笑するしかない。
「姉上……だから言うだけ無駄だと言っただろう。」
「特にアンは、この前アシェル殿と充電できなくて鬱憤が溜まっていたからね。これくらいなら良しとしないと。」
「このくらいって……。」
「グレイ兄上は、恐らく生徒会室みたいなのを言っている。」
「あー……あれよりはマシなのかしら。」
王家の三兄弟が話している傍ら、未だにくっついたままのアシェル達にドンっと衝撃が走る。
「お義兄様達、お疲れ様です。でも、わたくしだけ除け者は寂しいですわ。」
「ありがとう、メル。メルもお疲れ様。」
「ありがとな、メル。」
「じゃあメルも一緒にぎゅってしようか。アシェと一緒に中においで。」
二人の腕が緩まったので、アシェルはメルティーを腕の中に包み込む。
それをアシェルの後ろからアレリオンが、メルティーの後ろからアルフォードが包んで、四人でサンドイッチだ。
「……増えたわ。メイディーは何処に行っても平常運転なのね。」
「まさかメルティーが、こんなところで加わるとは思わなかったが。」
「まぁ、アンたちは嬉しそうだし、良いこと……なのかな?」
王家の三兄弟が苦笑して解散しても、しばらくむぎゅむぎゅとお互いの体温を感じながら、ちょっとした雑談を行う。
先程のバインドの引継ぎも、メルティーが快諾してくれた。
「アシェル様、アレリオンお義兄様、アルフォードお義兄様、メルティー様……公衆の面前で何をやってらっしゃるんですか。」
イザベルの呆れたような声が聞こえて声のした方をみれば、既にローブからお仕着せ姿に着替えたイザベルが立っている。
「ベルもお役目終了かな?お疲れ様。ベルも入る??」
「入りませんっ!せめてテントの中でなさってくださいませ。」
「それはテントの中なら、ベルをぎゅってさせてくれるってこと?」
「そういうわけでは、ひゃっ!?」
アシェルの言葉を否定しようとするイザベルの腕が、アルフォードに引かれてメルティーとの間に押し込まれる。
「良いから、たまにはイザベルも一緒に充電しような。お疲れ様。」
「イザベルもお疲れ様です。ふふ、こうやって五人で充電するのは、とても久しぶりですわ。」
「イザベルは倦怠感や頭痛は出てない?もし出てるなら魔力を分けてあげるよ。」
「あぁ、もう!お義兄様達は強引ですのよ!こんな公衆の面前で、兄妹の中にわたくしが混ざってたらおかしいでしょうっ。恥ずかしいので離してくださいませっ!」
イザベルは顔を真っ赤にしてアルフォードの胸をポカポカと叩いているが、アシェル達から見たらそんなイザベルも可愛いだけだ。
普段侍女として一歩引いた姿が多いので、どうしてもこうやって困らせて、素のイザベルを見たくなってしまう。
「だってベルはいっつも恥ずかしいって言って、僕らにギュッとさせてくれないでしょ?昔はよくこうやってたのに。」
「そうだね。それでサーニャに見つかって、揃って怒られるまでがセットだったけどね。」
「サーニャもそんなに気にしなくて良いのにな。イザベルも俺らの可愛い義妹なのに。」
「イザベルのことも、本当のお姉様だと思ってますわ。イザベルだけ、いっつも充電に参加してくれないんですもの。こんな時くらい良いんじゃないかしら?」
「こんな時だからこそ、ご自重くださいませっ。お義兄様達には、緊張感とか羞恥心とかないんですの!?」
「んー魔物が強くなってる訳じゃないし、数が多いだけでしょ?前のNMみたいなのが大挙して押し寄せてくるっていうなら、少しは緊張感もあるかもだけど。」
「なんで羞恥心なんだ?」
「別に何も恥ずかしいことはしてないよね。」
「わたくしにはイザベルが言うことが、少しは分かるけれど……お義兄様達の無事なお姿を見たら、安心せずにはいられませんわ。」
「メルティー様は充電で安心されているのですね……。アシェル様とお義兄様達は、もう少し羞恥心や状況を見て行動してくださいませっ。そして、わたくしを巻き込まないで下さいませ!」
「そんな寂しいこと言わないでよ。ベルは僕らとこうしてるのは嫌?」
「僕らは、イザベルともこうしていたいんだけどな。」
「イザベルに嫌な思いをさせたくないけど……俺らの腕の中が嫌って言われると悲しいな。」
「もう、分かりましたわっ。分かりましたし、嫌ではありませんからっ。もうお好きになさってくださいませ。」
イザベルの意見を全く聞くつもりの無い三人は、イザベルからしっかり言質を取って、むぎゅむぎゅと充電しながらイザベルの頭を撫でたり髪の毛を触ったりする。
メルティーですら、イザベルの髪の毛を触っている。
メイディーの四兄妹プラス乳兄妹の塊は、見慣れていない者が見たら不思議な光景だろう。
だがその付近に椅子やテーブルを引っ張り出して食事の準備を始めているのは、幼馴染達にその親、兄妹、生徒会役員にファンクラブの人間だ。
愛でて歓喜の声を上げることはあれど、既にアビゲイルは軽い注意を終えた後のため、誰も止める者はいなかった。
実際には初めて目にするであろう親たちはそういうものだと聞いているのか、大人な対応をしているのか、驚きを見せる者も水を差す者も居ない。
アークエイドも巻き込まれたイザベルは可哀想だと思うが、この兄妹の充電行為はお互いの無事の確認や安心するためでもあるのだろうとメルティーの言葉で感じたので、何も言わずにそっとしている。
アシェルは少しイライラしていたようだが、この様子ならもう大丈夫だろう。
この落ち着くための相手がアークエイドになって欲しいところだが、アシェルがアークエイドで充電してくれるようになるには、気長に向き合っていかないといけないのだと思う。
イザベルは兄のどちらかを好いているのではないかと勝手に予想しているのだが、今の状況からはよく分からない。
好いていようが好いて無かろうが、こんな場所で抱きしめられたら誰だって赤面するだろう。——普通の感覚の持ち主なら。
メイディーの三兄弟の手が空かなければ外で食事が摂れない三人の王族に合わせて、周囲もそれぞれ紅茶やコーヒーを飲みながら交友を深めて、メイディーの兄妹たちが満足するまで時間を潰した。
ゴーン、ゴーンと時計台の鐘の音が二回響いた。
前衛と後衛の交代の時間だ。
魔物を引き連れたままでも良いので結界まで走って戻れば、後衛部隊と交代要員がそのまま魔物を引き受けてくれる手はずになっている。
「マリク、あんたはここら辺の連中が逃げ遅れてないか、見てから戻ってきなさい。あたしが向こう三つ、マリクが真ん中二つ、アシェルが向こう三つ、出来る?」
撤退するために最前線で戦っていたアシェルは、キルルとマリクと合流した。
そしてキルルから出された指示に頷く。
「分かりました。マリク、僕らのパーティーと、アル兄様のところはアル兄様入れて学生6人、ガルドと赤騎士タンクだからよろしくね。キルル様の方は……分からないです。」
「おっけー。」
「こっちは把握してるから大丈夫よ。よろしくね。」
手短に言葉を交わし、それぞれ持ち場に散っていく。
キルルとアシェルのことは、きっとマリクが説明してくれるだろう。
後退する時は魔物に背中をみせてしまうことになるので、実力があっても負傷する恐れがある。
戦場を横切りながら、全員が無事後退できているかを確認していく。
どこもタンク役の騎士はゆっくりと魔物の注意を惹きながら後退しているのに、6人組の方がどういうタイミングで引けば良いのか分かっていないようだ。
まずは一番遠かったパーティーの助っ人に入る。
「これは僕がやるから、君達は結界に走って。君達がいつまでもここに居たら、タンクが戻れないでしょ。ちゃんと守ってあげるから、こっちは見ずにさっさと走る。」
生徒達の相対していたポイズンビーの胴体を真っ二つにして、6人全員を結界へ走らせる。
虫は生命力が弱いので、さっさと討伐してしまった方が楽だ。
幸い赤騎士が二人で器用にポイズンビーやオークたちの攻撃を上手く捌いているので、その隙に大型の魔物の頸動脈から切り裂いていく。
「これで少しは弱るでしょ。あとは……君達は数が多いだけなんだから、さっさと死んでよね。それに、どうせなら緑にしてよね。黄色と赤なんて有り余ってるんだからさっ。」
なぜこれだけ押し寄せているのに、ここには黄色と赤のポイズンビーしかいないのだろうか。
まだハニービーにもお目にかかれていない。せっかくなら、今回のスタンピードで出て来てくれたらいいのにと思う。
しっかりと脆い関節に刃を一閃し、すぐにこと切れてくれる胴体を『ストレージ』に放り込む。
要らない部分は邪魔にならないのなら戦場に転がしておけば、このあとに後衛部隊が掃除してくれるはずだ。
「これで下がれますか?」
「えぇ、助かりました。アタッカーが下がらないと、私達も下がれませんでしたので。」
「メイディー殿が先に下がってもらえれば、私達も後を追います。」
「僕は他を見に行くので。ちゃんと結界まで下がってくださいね。」
「はっ!」
「お気をつけて。」
アシェルがまだ残ることを知ると、赤騎士二人は迅速に撤退に移る。
この様子なら無事に戻れるだろう。
二つ目のパーティーもやはり6人組が上手く後退できないので、タンク役の赤騎士も下がれない状態だ。
魔物を連れていても良いから、とにかく結界まで下がれという指示が通っていないのだろうか。
こうやって前衛がいつまでも残っていると、大型の魔法が使えない上に、結界付近で前線を維持し続けなくてはいけなくなる。
さらには結界付近で処理する魔物が増えて、極大魔法での殲滅範囲から外れるので悪循環でしかない。
「鐘の音が聞こえなかったの?早く下がって。これは僕がやるから。」
「だが、魔物の量が——。」
「何のために盾持ちが居るの?良いから振り返らずにさっさと走る。もたもたしてしわ寄せが来るのは、この騎士たちと後衛なんだからね。」
口ごたえをしようとしたのは高等部一年生だ。ここは中等部三年生と高等部一年生の寄せ集めのようだ。
「でも——。」
「あーもう、うるさいな。そこの男子生徒。コレ担いで帰って。」
『拘束』で両手両足、そして猿轡までした男を、もう一人の高等部一年生の生徒に預ける。
「ふふ、何、解除しようとしてるの?君に僕のバインドが解けるわけないでしょ。メイディーを馬鹿にしないでくれる?あ、結界に戻ったら、アン兄様かアル兄様に解いてもらってね。」
「お手数をおかけしてすみませんでした。メイディー殿ありがとうございます。ほら、全員走るぞ!」
男を預かってくれた生徒はぺこりと頭を下げてから、残りのメンバーを引き連れて結界に向かって走ってくれる。
あのうるさい男がリーダーのつもりだったのかもしれないが、もう一人の高等部一年生の方がしっかりしているのではないだろうか。
それにうるさい男以外は、撤退するタイミングを見極めようとしていた。
指示が通ってなかったのはあの男だけだったのだろう。
「助かりましたっ。我々は大丈夫です。」
「メイディー殿もお下がり下さい。」
「僕はもう一つ見に行くから。……といっても、あっちは下がってるだろうから、少しだけ減らしてあげるよ。足が速いのと毒持ちは邪魔でしょ。」
せめて魔物の量を減らしてから一緒に後退するつもりなら、厄介なものから対応してくれていたら良かったのに、何故かうるさい男がやってたのはゴブリンやオークだ。
下がるに下がれないパーティーメンバーは、きっちりポイズンビーやフォレストウルフから対応しようとしていたのに。
動物型の魔物の頸動脈を切って周り、足が速いものは両前脚にも切りつけておく。
これで速く走ることは出来ないだろう。
それからポイズンスパイダーとポイズンビーの関節を貫いていく。
よく見れば9番のかなり毒性の強いポイズンスパイダーも混じっていて、そいつは上手く生徒達に近づけないように騎士が立ち回っていたようだ。
「そいつはっ、こちらで対処しますっ!」
「大丈夫だよ。」
どんなに強い毒を持っていても、毒を出す場所に触らなければ良いだけの話だ。
しっかりとポイズンスパイダーに止めを刺して『ストレージ』に仕舞ったアシェルを見て、赤騎士二人はホッとした表情になる。
タンク役なので攻撃も出来ないし、生徒にぶつけるわけにもいかないしで、引き離すのが精一杯だったのだろう。
「要らぬ心配でしたね。正直なところ助かりました。」
「我々では、魔物たちを捌きながらアイツを遠ざけるのが精一杯でして。」
「あんなに言うこと聞かないのが混じってるのに、よく頑張ってくれたと思いますよ。さぁ、もう撤退も問題ないですよね?無事結界まで戻ってくださいね。」
「ありがとうございます。」
「メイディー殿も、無事に戻っていらしてくださいね。」
二人の赤騎士が短く敬礼した後、背後を警戒しながら結界へ向かって走っていく。
ウルフやタイガーの足を潰したのを見ていたので、じりじり下がるより走った方が早いと判断したのだろう。
そのままエラートやシオン達のいた場所を見に行ったが、ここはきっちり後退していた。
もう一度アシェルが来た方を見て、騎士たちが撤退したことを確認する。
赤服の騎士なので、平原で目立って見やすいのは良いことだと思う。
アシェルを追ってくる足が速い魔物の脚だけを切りつけ、結界まで真っすぐに走れば、アロー系の魔法や弓矢での攻撃がアシェルの隣を通り過ぎていく。
全てを無視して結界を潜れば、アークエイドが迎えてくれて『クリーン』までかけてくれた。
「アシェ、無事か?」
「僕は大丈夫だよ。マリクとキルル様は?」
「あたしらは戻ってるよ。っていっても、あたしもさっき戻ってきたところだけどね。」
「俺はやることなかったしねー。」
キルルもさっき戻ってきたということは、やはりアシェルが見た場所と同じように撤退できていなかったのだろう。
「ねぇ、これ本当に撤退指示の説明ちゃんとしてる?それとも、王立学院生が馬鹿なの?それとも耳が悪いの??」
不機嫌さを隠しもしないアシェルに、キルルが苦笑する。
「見に行って正解だったってことだね。まぁどれだけ説明されてても、経験がない人間は指示の重要性を理解してないから、こんな風になりがちなんだよ。新兵は特にね。撤退しやすいようにわざわざ盾役の騎士を配置してるのに、モニアの配慮はことごとく無視されてるわけだけど。」
「なのに、騎士を配置してなかったエトとダリル先輩が守っている場所は、きっちり指示に従えてたわけですね……。」
「うちは二組はダメだったわね。アルフォードの隣のパーティーは、アルフォードの様子を見てきっちり撤退したみたいだけど。」
「明日は大人しく撤退してくれますかね?」
「どうだろうねぇ。スタンピードで撤退できるなんてありがたいことなんだから、さっさと撤退すれば良いのにねぇ。」
「ですよね。戦いたいならパーティーメンバーや騎士を巻き込まずに、一人で頑張って欲しいです。」
「お話し中のところ失礼するよ。」
「テイル夫人、マリク殿、撤退の最終確認ありがとうございます。アシェもありがとうな。」
キルルとアシェルで愚痴を言い合っていると、二人の兄の声がする。
「別に必要なことをやったまでのことよ。こういうのは適材適所でしょう。」
「僕も同じくです。」
「それでもかなり助かりました、ありがとうございます。それでアシェ……アレはどうしたら良いの?」
「あっ、アン兄だけずるいぞ。」
アレリオンの腕に包まれたと思ったら、背中からアルフォードが抱き着いてくる。
二人の兄に挟まれてサンドイッチ状態だ。
アークエイドに綺麗にしてもらっていて良かったと思いながら、アレリオンの言葉に首を傾げる。
「アレ?」
「僕かアルに、解除を依頼しろって言ったんだろう?」
「あー……煩い高等部一年の男子生徒ですね。バインドで縛り上げても、大人しくするどころか抵抗してましたので。お兄様達なら良いようにして下さるかなと。前線から居なくなれば良かっただけなので。」
「あいつめっちゃ怒っててさ。まだ無駄な抵抗してるんだよな。なんかそんな奴のバインド解いてやるのも癪に障るし。」
「かと言って、前線で働くアシェにずっと魔力を使わせるのもなんだから、メルに代わってもらったらどうかなって。メルは特に魔力を使う予定が無いから、なんならスタンピード中ずっと拘束もできるよ。」
「僕はどちらでも良いですよ。とりあえず、あのパーティーからあの人は弾いた方が良いと思います。煩い上に、魔物が多くて撤退できないみたいなことを言いたそうだったのに、あの人自体は撤退の役には全く立ってませんでしたから。アレはパーティーメンバーの方が可哀想です。」
アシェルの辛口評価に、アレリオンとアルフォードはよしよしと頭を撫でて慰めてくれる。
こうしていると、ささくれだった心が癒されるから不思議だ。
「じゃあやっぱり、頭が冷えるまで大人しくしておいてもらおうね。」
「高等部一年なら、もう少し判断力がありそうなものなんだけどな。アシェ、お疲れ様。」
「貴方たち。いい加減イチャつくのは止めなさい。ここは学院じゃないのよ?」
呆れ声のアビゲイルの声がする。
声がした方を見れば、近くにアビゲイルが立っていた。
時折魔法の光で照らされる小麦肌のアビゲイルは、ワンレンな漆黒の髪の毛も相まって妖艶に見える。
ローブを着ていて身体のラインは見えないが、それでもエキゾチックな不思議な魅力があると思う。
「アビー。今日のお役目終了か?別にイチャついてないからな。可愛いアシェを労わって、ついでに癒されてるだけだ。」
「別にアシェを可愛がるのに、場所は関係ないだろう?」
「えっと、イチャついては無いと思いますよ?」
三者三様の答えにアビゲイルが大きなため息を吐いた。
その溜息を聞いたアークエイドとグレイニールは苦笑するしかない。
「姉上……だから言うだけ無駄だと言っただろう。」
「特にアンは、この前アシェル殿と充電できなくて鬱憤が溜まっていたからね。これくらいなら良しとしないと。」
「このくらいって……。」
「グレイ兄上は、恐らく生徒会室みたいなのを言っている。」
「あー……あれよりはマシなのかしら。」
王家の三兄弟が話している傍ら、未だにくっついたままのアシェル達にドンっと衝撃が走る。
「お義兄様達、お疲れ様です。でも、わたくしだけ除け者は寂しいですわ。」
「ありがとう、メル。メルもお疲れ様。」
「ありがとな、メル。」
「じゃあメルも一緒にぎゅってしようか。アシェと一緒に中においで。」
二人の腕が緩まったので、アシェルはメルティーを腕の中に包み込む。
それをアシェルの後ろからアレリオンが、メルティーの後ろからアルフォードが包んで、四人でサンドイッチだ。
「……増えたわ。メイディーは何処に行っても平常運転なのね。」
「まさかメルティーが、こんなところで加わるとは思わなかったが。」
「まぁ、アンたちは嬉しそうだし、良いこと……なのかな?」
王家の三兄弟が苦笑して解散しても、しばらくむぎゅむぎゅとお互いの体温を感じながら、ちょっとした雑談を行う。
先程のバインドの引継ぎも、メルティーが快諾してくれた。
「アシェル様、アレリオンお義兄様、アルフォードお義兄様、メルティー様……公衆の面前で何をやってらっしゃるんですか。」
イザベルの呆れたような声が聞こえて声のした方をみれば、既にローブからお仕着せ姿に着替えたイザベルが立っている。
「ベルもお役目終了かな?お疲れ様。ベルも入る??」
「入りませんっ!せめてテントの中でなさってくださいませ。」
「それはテントの中なら、ベルをぎゅってさせてくれるってこと?」
「そういうわけでは、ひゃっ!?」
アシェルの言葉を否定しようとするイザベルの腕が、アルフォードに引かれてメルティーとの間に押し込まれる。
「良いから、たまにはイザベルも一緒に充電しような。お疲れ様。」
「イザベルもお疲れ様です。ふふ、こうやって五人で充電するのは、とても久しぶりですわ。」
「イザベルは倦怠感や頭痛は出てない?もし出てるなら魔力を分けてあげるよ。」
「あぁ、もう!お義兄様達は強引ですのよ!こんな公衆の面前で、兄妹の中にわたくしが混ざってたらおかしいでしょうっ。恥ずかしいので離してくださいませっ!」
イザベルは顔を真っ赤にしてアルフォードの胸をポカポカと叩いているが、アシェル達から見たらそんなイザベルも可愛いだけだ。
普段侍女として一歩引いた姿が多いので、どうしてもこうやって困らせて、素のイザベルを見たくなってしまう。
「だってベルはいっつも恥ずかしいって言って、僕らにギュッとさせてくれないでしょ?昔はよくこうやってたのに。」
「そうだね。それでサーニャに見つかって、揃って怒られるまでがセットだったけどね。」
「サーニャもそんなに気にしなくて良いのにな。イザベルも俺らの可愛い義妹なのに。」
「イザベルのことも、本当のお姉様だと思ってますわ。イザベルだけ、いっつも充電に参加してくれないんですもの。こんな時くらい良いんじゃないかしら?」
「こんな時だからこそ、ご自重くださいませっ。お義兄様達には、緊張感とか羞恥心とかないんですの!?」
「んー魔物が強くなってる訳じゃないし、数が多いだけでしょ?前のNMみたいなのが大挙して押し寄せてくるっていうなら、少しは緊張感もあるかもだけど。」
「なんで羞恥心なんだ?」
「別に何も恥ずかしいことはしてないよね。」
「わたくしにはイザベルが言うことが、少しは分かるけれど……お義兄様達の無事なお姿を見たら、安心せずにはいられませんわ。」
「メルティー様は充電で安心されているのですね……。アシェル様とお義兄様達は、もう少し羞恥心や状況を見て行動してくださいませっ。そして、わたくしを巻き込まないで下さいませ!」
「そんな寂しいこと言わないでよ。ベルは僕らとこうしてるのは嫌?」
「僕らは、イザベルともこうしていたいんだけどな。」
「イザベルに嫌な思いをさせたくないけど……俺らの腕の中が嫌って言われると悲しいな。」
「もう、分かりましたわっ。分かりましたし、嫌ではありませんからっ。もうお好きになさってくださいませ。」
イザベルの意見を全く聞くつもりの無い三人は、イザベルからしっかり言質を取って、むぎゅむぎゅと充電しながらイザベルの頭を撫でたり髪の毛を触ったりする。
メルティーですら、イザベルの髪の毛を触っている。
メイディーの四兄妹プラス乳兄妹の塊は、見慣れていない者が見たら不思議な光景だろう。
だがその付近に椅子やテーブルを引っ張り出して食事の準備を始めているのは、幼馴染達にその親、兄妹、生徒会役員にファンクラブの人間だ。
愛でて歓喜の声を上げることはあれど、既にアビゲイルは軽い注意を終えた後のため、誰も止める者はいなかった。
実際には初めて目にするであろう親たちはそういうものだと聞いているのか、大人な対応をしているのか、驚きを見せる者も水を差す者も居ない。
アークエイドも巻き込まれたイザベルは可哀想だと思うが、この兄妹の充電行為はお互いの無事の確認や安心するためでもあるのだろうとメルティーの言葉で感じたので、何も言わずにそっとしている。
アシェルは少しイライラしていたようだが、この様子ならもう大丈夫だろう。
この落ち着くための相手がアークエイドになって欲しいところだが、アシェルがアークエイドで充電してくれるようになるには、気長に向き合っていかないといけないのだと思う。
イザベルは兄のどちらかを好いているのではないかと勝手に予想しているのだが、今の状況からはよく分からない。
好いていようが好いて無かろうが、こんな場所で抱きしめられたら誰だって赤面するだろう。——普通の感覚の持ち主なら。
メイディーの三兄弟の手が空かなければ外で食事が摂れない三人の王族に合わせて、周囲もそれぞれ紅茶やコーヒーを飲みながら交友を深めて、メイディーの兄妹たちが満足するまで時間を潰した。
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