氷の王子様と微笑みの男装令嬢

芯夜

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第三章 王立学院中等部二年生

181 スタンピードの始まり④

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Side:アシェル13歳 秋



たっぷりと五人で充電して、アレリオンから順番にキスを落として離れていく。

年齢順なのでイザベルもアシェルとメルティーの頬にキスをしてくれ、アシェルはメルティーの頬にキスをして全員での充電完了だ。

イザベルが使用人として邸で働き始めてから一切こうやって充電させてくれなくなったので、本当に久しぶりの五人での充電タイムだった。

イザベルだけは疲れ切っていたが、充電してご機嫌な兄妹は四人揃って件の男子生徒の元を訪れる。
その間にイザベル、エリック、アイザック、マルローネの四人が配膳してくれるそうだ。

男子生徒には、抱えて逃げてくれた生徒が傍についてくれていたようだ。
迷惑をかけっぱなしで申し訳なくなってくる。

「とりあえず、喋れるように猿轡だけは取りますね。」

アシェルが四肢の拘束はそのままに、黙らせるために付けた猿轡だけ解除すれば、その男子生徒に睨まれる。

「くそっ、いきなり何しやがるんだっ。いくら公爵家だからって、やって良いことと悪いことがあるだろ!」

「ちょっと……メイディーの三男殿は、俺らを助けてくれたんだよ。あのままじゃ撤退できなかっただろ。」

「俺達の実力なら、倒せただろ。それを邪魔しやがって。」

どうもこの男とアシェルや宥めてくれている生徒とでは、情報の認識に齟齬が発生しているようだ。

床に転がる男の傍にしゃがみ、アシェルはにっこりと笑う。

「ユグドラ殿は、今回のスタンピードの説明をちゃんと聞いていらっしゃいましたか?どうも私達が認識している指示と、ユグドラ殿が認識している指示は意味が違うようですが。」

「はぁ?馬鹿にしてんのか??鐘の音が鳴ったら撤退だろ。撤退するには魔物を減らしてからじゃないと、危ないだろうが。」

口の悪いユグドラ侯爵令息に、その場の空気がピリッとしたものに変わる。

付添ってくれているマートル侯爵令息も気付いているのに、この空気の元凶である本人だけが気付いていないのは、呆れを通り越して笑いたくなってくる。

貴族は誰が何と言おうと家格が全てに影響してくる。
王立学院内は身分を笠に着てはいけないが、ここは学院外だと分かっているのだろうか。
メイディーの人間はあまり権力を笠に着ない方だが、それでもユグドラ侯爵令息は言葉がなっていない。

「そうだね。鐘の音が鳴ったら、魔物を引き連れたままで良いから結界まで戻れ。これが私達前衛組に出された指示だよね。なのに、どうして討伐を続けようとしたんですか?ユグドラ殿一人が撤退しないだけで、パーティーメンバーも全員撤退できなくなりますよね。」

「何言ってんだ、あんなに沢山の魔物を連れて戻れるわけないだろ。」

「でしたら、もう少し撤退するための動きをするべきでしたね。他のパーティーメンバーのように。正直言って、ユグドラ殿だけですよ。撤退するために魔物の頭数を減らすのに、全く貢献できていなかったのは。」

「何言ってやがる!ちゃんと減らしてただろうがっ!」

飛び掛かってきそうな勢いでビチビチと床で跳ねているユグドラ侯爵令息は、起き上がってきたりしないようにマートル侯爵令息が取り押さえている。
巻き添えを食ってしまっただけのマートル侯爵令息は、真面目で面倒見の良い性格なのだろう。

「殲滅だったとしても、どうでも良い雑魚から倒すのはお勧めしませんよ。普通は、負傷時のリスクが高い魔物からです。そして撤退なら、足が速いものから潰すのは基本ですよね?今回は魔物を連れて行っていいので、やるべきことは足が速い魔物の両脚にしっかりと傷をつけることです。なんのために騎士が配置されていると思っているんですか?無駄な負傷者を減らして、こんな風に交代をさせるために、わざわざ最前線で盾を持っているんですよ。彼らの護衛対象は貴方たちなんです。剣を持たせれば貴方より強い騎士が、貴方たちを守る為に剣を振るえずにいたんです。自分達が致死毒を受けるリスクを冒してでも、二人で上手く立ち回って、恐らく貴方たちでは対処できない魔物を遠ざけていたんです。毒持ちの処理と足が速い魔物の脚を切った後の騎士の判断は、早くて的確でしたよ。援護に行った私まで含めてきっちり撤退しようとしてくれた、とても良い方たちでした。そんな方々を、パーティーメンバーを危険に晒していた自覚はありますか?そしてパーティーが一つ戻ってこないだけで、結界前の前線が混雑して崩れる可能性を考えていましたか?自分勝手に指示を解釈することで、貴方一人の身勝手な行動が何百人という人間の命を脅かしていたんです。その自覚はありますか?」

「俺はそんなつもりじゃっ!それに撤退の基本なんて知らないっ!」

「はぁ……貴方は今まで、何を学んできたんですか?そしてその頭は飾りですか?貴方は一から十まで、事細かに説明を受けないと何もできない幼児ですか?とりあえず、スタンピードの間はここで大人しくしていてください。」

「なっ。何の権限があって——。」

「残念ながら、王命だよ。勅書もあるけれど、見たいかい?」

「お、王命……?」

アレリオンが口にした言葉にユグドラ侯爵令息が、そしてそれを取り抑えているマートル侯爵令息もぽかんと口を開ける。
アシェル達はさっきの充電中に聞いていたので驚きはしない。

「ここの管轄はグレイが責任者だから、グレイの命令だけでも十分だったんだけどね。納得しない可能性があるから王命の方が良いだろうって、グリモニア陛下に勅命を出してもらったんだよ。」

「王太子と仲が良いからって卑怯だぞ。うっ。」

「ふぅん。君はグレイやグリモニア陛下が、私情で勅命を出したと思ったってことだよね。——国を守る人間が私情で命令なんか出す訳ねぇだろ。てめぇが戦場に立つと大勢を危険に晒すと判断されただけだ。死にてぇなら一人で野垂れ死にやがれ。——って言うわけで、この王命は身勝手なものではなくて、きちんと効力のあるものだよ。このエリアの騎士を統括する第一騎士団長にも、しっかり伝達済みだしね。」

ユグドラ侯爵令息が卑怯だと言った瞬間、アレリオンが殺気を放って部屋の温度が下がった。

そして物凄く口の悪いアレリオンの言葉は、アシェルは初めて耳にしたし、アルフォードやメルティーも驚いているので初めて聞いたのだろう。

いつもの口調に戻ったところで殺気も納まったが、どうやらユグドラ侯爵令息はアレリオンの地雷を盛大にぶち抜いたらしい。

ノートン伯爵令嬢といいユグドラ侯爵令息といい、親がろくでなしだと子供の教育にまで影響するのだろうか。
ユグドラ侯爵令息の場合は、おつむの弱さも関係していそうだが。

「マートル殿、付き添いをしてくれてありがとうね。今日はもうゆっくり休んで。明日には一人、他の人員を補充するから、そのつもりでいておくれ。それと、メル。アシェとバインドを代わってあげて。」

アレリオンの言葉に、マートル侯爵令息は深々と礼をしてテントを出て行く。

「少し位置をずらすね。」

「いいえ、そのままで大丈夫ですわ。アシェ義兄様がバインドを解いたら締めあげますので。」

「分かった。」

メルティーのバインドを視るために『探査魔法サーチ』を使う。

メルティーが使った『拘束バインド』が一回り大きくアシェルのバインドを覆ったのを確認して、アシェルのバインドに流れる魔力を切れば、メルティーのバインドがしっかりユグドラ侯爵令息の四肢を拘束した。

「また魔力操作精度が上がったんじゃない?凄く上手だよ。維持は少し大変だけど、頑張ってね。」

「ありがとうございます。これくらいどうって事ありませんわ。」

よしよしとメルティーの頭を撫でれば、可愛い顔がはにかむ。
本当に我が家の末っ子は可愛い。

「さて、そろそろ食事にしようか。そろそろグレイたちが、お腹を空かせて限界になっちゃうからね。」

「アビーに遅いって怒られそうだな。」

「アークや皆も待ってくれてたから、謝らないとですね。」

「え、あ、おいっ。俺はっ。」

「貴方はスタンピードが終わるまでそのままですわ。大丈夫よ。グリモニア陛下がお世話係を用意してくれているらしいから、ゆっくりしていてくださいませ。失礼しますわ。」

ぞろぞろとテントを出て行くメイディーの兄妹たちの最後尾に居たメルティーが、しっかりカーテシーを披露してからテントを出た。

メイドを一人付けてくれるらしいので、食事は大丈夫だろう。
排泄はもしかしたらスライムを入れられるのかもしれないが、アシェル達には関係のないことだ。

小走りに展開された食卓へ戻れば、しっかり食事の準備は整っていた。

「アル、遅いわ。もうお腹ペコペコよ。貴方が味見するって言うから待ってるんだからね。」

「悪いな、アビー。それに皆さんまで、お待ちいただいてありがとうございます。」

「お待たせしました。アークも、皆もごめんね。」

「遅くなってしまい申し訳ありません。」

「コンラート騎士団長たちまでお待ちいただいたんですね、申し訳ありません。グレイ、勅命のことはしっかり伝えてきたからね。」

「手間をかけたな。少し学院の教育の仕方も、内容を見直さないといけないかもしれないな。」

メイディーの四兄妹が揃ったことで、グレイニールの号令のあと食事が始まる。

並んでいる食事は各種おにぎりの山に具だくさんの味噌汁。
そして串焼きになった肉や野菜たちだ。塩もタレも用意されていて、好みの方を食べられるようになっている。

三兄弟はしっかりそれぞれの王族の隣に座って、アルフォードとアシェルの間にはメルティーが座っている。

「あぁ……美味しいお味噌汁が飲めるなんて、残ったかいがあるわ。」

「リリィも自分で作れば良いだろう?作り方は知ってるんだから。」

「知ってるけど、私に出来るのは顆粒出汁での作り方よ。本格的な出汁の取り方なんて知らないわ。」

「悪いけど、何言ってるかさっぱりだからな?」

リリアーデが美味しそうに味噌汁を飲んでいるが、確かに一般家庭で昆布や鰹節を使って一から出汁を取る家は稀だろうなと思う。
万能で美味しい顆粒出汁は、忙しい主婦の味方だ。

アシェルも皆で食事をする時になんとなくで味噌汁を作っているが、きちんと出汁が取れているとは言い難い。
実験の要領でこれくらいの抽出なら美味しいかも、という液体の作り方を覚えて、それぞれ個別に抽出した出汁を混ぜ合わせているだけだからだ。
顆粒出汁が存在するのならアシェルも欲しい。

「はぁ……皆様とこうして食卓を囲めるなんて……夢を見ているようですわ。」

「お姉様も、わざわざ領地を出てきたかいがありましたわね。でも、お義兄様が悔しがってるんじゃないんですの?」

「夫も参加したがってたけれど、決闘に勝ったのはわたくしだわ。さすがに領地の運営を、お義父様に丸投げしてくるわけにはいかないでしょう?」

「お姉様もお義兄様も、熱烈なファンですものね。わたくしも語り合える旦那様が欲しいわ。」

「ふふふ、毎日楽しいわよ。帰ったらたっぷり自慢してやるわ。」

「さすがにそれはお義兄様が可哀想じゃないかしら。でも、喜ぶ可能性もあるわね。」

ティエリアは学院卒業と同時に結婚が決まっていると聞いていたが、どうやら旦那もファンクラブ会員だったらしい。

そして今回のスタンピードに参加するために、夫婦で決闘したことも驚きだが、それにティエリアが勝ったというのにも驚きだ。
だからこそ前衛組として参加していたし、動きも滑らかだったのかもしれない。

「ふふ、凄く賑やかだね。皆でキャンプしてるみたい。おにぎりは半分こずつね。」

「ありがとう。大半が緊迫感というよりも、旅行や遊び感覚だろうな。まぁ、緊張でガチガチになるよりは良い。正直なところ、うちの前衛三人が選り好みした後の魔物退治は退屈だぞ。」

「あれ、流石にバレてるか。」

この話し方だとアシェルだけでなく、どうやらマリクとキルルも同じように選り好みしていたようだ。
小さいものを相手にするのは、的が小さいしあまり楽しめないしでスルーしていたのだ。

流石に毒持ちを流すつもりはないが、虫は生命力が弱いし、アントなら痛いだけなので良いかと流していた。

「バレるも何も、小さいのとアントしか流れてこないんだぞ。マリクもテイル夫人もアシェも……思う存分暴れられて楽しいのは分かるが、全部討ち取るか、もう少し流してくれ。他の加勢にも行けないし、かと言って三人で小物ばかり相手にしても戦力過多だ。」

「えーと……どっちが良い?担当エリアのやつを全部討ち取れるかどうかは、マリクとキルル様にも聞かないとだけど。あ、この串美味しいよ。はい。」

「やれってゆーなら出来るよー。アシェのクイック貰ってるから、殲滅は問題ないしねー。」

「同じく。ちまちましたのを相手にするのは面倒だから、ほったらかしてただけだしねぇ。それにあの程度なら、そのまま後続に流してしまっても良いでしょう?」

「テイル夫人の言う通り、弱くて数が多いだけだから流してしまっても問題はない。というよりも、今日デュークと話して、少しは流すべきだという話をしたところだ。明日までには、どの魔物を後ろに流すかの指示が出ると思うぞ。」

「ごめんね、アーク達も遊びたかった?明日は交代する??」

幼なじみの中で口数が少ないほうのアークエイドとデュークが喋るなんて、よっぽど暇だったのだろう。
ジンだって喋りはするが、ガルドと比べるとあまり喋らない方だ。

「今の話でなんでそうなった?別に交代したいとは思ってないし、アシェ達と同じ働きをしろと言われても無理だ。アシェ達が遊び疲れたというなら交代するが、そうじゃないなら好きなだけ遊んでくれ。こういう時じゃないと、アシェも思いっきり遊べないだろう?」

「だって、三人ともあんまり喋らない方なのに、お喋りするくらい暇だったんだなって。だから、僕らばっかり楽しんで申し訳ないなって思ったんだ。」

「なるほどな。別に俺達のことは気にするな。」

「うん、ありがと。アークは次どれ食べたい?」

アシェルとアークエイドの会話を聞いていた、マリク以外の幼馴染達三人は苦笑する。

「アシェにとってスタンピードは、思いっきり遊べる遊技場みたいね。誰もアプローチしてないなら、うちの弟たちの誰かと結婚してほしいくらいだわ。」

「リリィがそう言いたい気持ちは分かるが……。すでに一名不服そうだぞ。」

「リリアーデ様。アシェル様を遠くに連れていこうとしないで下さいね?ナイトレイかメイディーに居てくれないと、卒業した後にお会いできなくなっちゃいます。」

「ミルトンの領地があるのはメイディーだっけ。でも、シオン君は跡継ぎじゃないから、婚約者次第でしょう?」

「政略結婚の可能性が高いのはメイディー地方の他家か、他地方でも王都で暮らしているような貴族ですから。アシェル様をシルコットに連れていかれると困ります。」

「アシェはモテモテね。どちらにしても、アシェのお兄さん達が許してくれないと思うわ。二人とも笑顔だけど、あれ、アシェが警告してる時の表情と一緒だもの。さすが兄妹だわ。」

リリアーデが肩をすくめてみせた視線の先には、にこにことリリアーデを見ているアレリオンとアルフォードが居る。
にこにこしているのはあくまでも表面上で、知っている人にはこれ以上不快にさせることを言ってはいけないことが分かる。大量の地雷が埋まった平原に、ぽつんと立っている気分だ。

「アシェが自分から結婚したいって言うまで、どんな申し入れでも政略結婚はさせないからね。ずっと我が家に居てくれても、ちゃんと面倒は見るつもりだから。……見させてくれるかどうかは置いておいてね。」

「さっきのは、アシェが来てくれたら大森林のスタンピードも、少しは被害がマシになるだろうなって思っただけですわ。アシェが我が家の弟達を気に入るとは微塵も思ってませんので、ご安心くださいませ。わたくしだって、アシェの意思に反して連れていったりは嫌だわ。」

「リリアーデ嬢がそう言ってくれて良かったよ。」

「アン。それくらいにしておけ。リリアーデ嬢が本気で言ってないことくらい、分かってただろう。」

「言った本人が本気じゃなくても、アシェが本気にしてしまったら困るだろう?この前、家の為に必要なら婚約しても良いとか言ったんだよ?父上はちゃんとしなくて良いって言ってくれたけど、アシェの意思に反した婚約なんて、僕が許さないからね。」

「なるほど。既に何かあった後なんだな。本人は食事に夢中になってて気づいてないだろう。これ以上話題を長引かせる方が、本人に聞かれるリスクが高まるぞ。」

「……そうだね。グレイの言う通り引きさがるよ。ところで、グレイとシルフィード嬢は次は何を食べたい?」

「わたくしは自分で……。」

「シル。アンの味見はしっかりしてもらわないとダメだよ。そうじゃないと、私達はこんな場所で食事なんて出来ないからね。」

グレイニールがアレリオンを窘めてくれて注意が逸れたことに、リリアーデとデュークはホッとした。
そして、グレイニールの婚約者になったシルフィードにまで、メイディーの過保護が発動するのかと苦笑する。

だが、シルフィードにも少なからず毒殺のリスクがあると言われれば、姉と兄としては大人しくメイディーの好意に甘えておいて欲しいと思う。
やはり大事な妹には安全に過ごしてもらいたい。

「はぁ……ノア様にお会いしたいわ。スタンピードなんて無ければ、アスノームに旅行に行くつもりでしたのに。」

「アビー……そんな話聞いてないぞ?」

「だって、言ったらアルは付いてくるって言うでしょう?どうして愛しい人に会いに行くのに、婚約者候補を連れていかなきゃならないのよ。ノア様だって気を使っちゃうわ。」

「付いて行くに決まってるだろ。いくらグレイ殿下とアークエイド殿下ほどじゃないとはいえ、アビーだって危ないんだってことは自覚してくれよ。それに、俺は叔父さんみたいな思いはしたくないからな。」

「想い人との逢瀬にまで付いてくるなんて、ムードぶち壊しよ?メイディーの過保護はどうにかならないのかしら。」

「過保護じゃない、必要なことだ。それに学院内ならある程度アビーの要望通りにしてるだろ?外でくらい、ちゃんと護衛させてくれ。」

「もしノア様に結婚の了承をいただけたら、アスノームまで付いてくるなんて言わないわよね?」

「さすがにそこまではしないから、王都に居る間は俺に守らせてくれ。さすがにアスノームまで行ったアビーを狙ったりはしないだろ。」

「もう、分かってるわよ。それより、アルも早くイイ人を見つけなさいよ。別にノア様と結婚出来なかったからって、絶対アルと結婚しなくても良いんだから。アルに良い人が居るなら、その人と婚約してくれて良いのよ?」

「何度も言ってるけど、そんな相手居ないって。それに婚約するなら、まずはアン兄からだよ。アン兄より先に婚約するとしたら、メルくらいじゃないか?女の子は婚約者を早く見つけてやらないとっていうのは分かるけど、やっぱ嫁には出したくないよな。」

「そんなこと言ってると、メルティーが嫁き遅れますわよ?本来なら、もう婚約者が決まっててもおかしくないんだから。」

「別にずっと邸に居たら良いだろ?アシェもだけど、メルにだって政略結婚させる気は無いからな。」

「メイディーのシスコンブラコンは、どうにかならないのかしら。」

アルフォードとアビゲイルがいつもの調子で言葉を交わしながら、アルフォードは毒味した串類は全て串から取り外し、アビゲイルが食べやすいようにして皿を渡している。
おにぎりも綺麗に半分にされた後、アビゲイルが手掴みで食べなくて良いようにお皿の上だ。

周囲で繰り広げられる会話の内容にも、そんな普段であれば見ることが適わない仕草にも、ファンクラブの面々のテンションは上がる。
これだけで一日の疲れなど吹き飛んでしまう。

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