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第三章 王立学院中等部二年生
184 終わりは突然に②
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Side:アシェル13歳 秋
バフをかけながら中央の陣営を突っ切ったあと、アシェルは一番近い騎士たちの元へと走った。
アシェル達の陣営は中央が一番魔物が多いので中央に強い駒を配置してあるが、左右の陣営はそれぞれ中央の陣営寄りの方が魔物が多い。
「第三騎士団長で間違いないですか?」
青騎士の制服には記章がいくつも付いている。
青騎士の中でも位が高いのは明白だ。
青騎士二人の捌いた魔物の首に刃を閃かせながら問えば、返事が返ってくる。
「そうだ。援軍のアシェル殿で間違いないか?」
「えぇ、合ってます。どうしたらいいですか?」
「出来れば一番向こう端から前線を押し上げて貰いたい。指定の位置まで行けば、騎士が教えてくれる。徐々にこちらへ戻ってきてくれると嬉しい。」
「分かりました。とりあえず、ここの蜘蛛だけ先にやってしまいますね。それと、騎士のお二人にだけ『防御力向上』を。いずれ切れるものなので、過信はしないでください。」
「助かる。」
短くやり取りを終え、アシェルはポイズンスパイダーだけに狙いを定めて魔物の群れに突っ込んでいく。
ここを守る冒険者パーティーに、騎士団員も一人混じっている。
戦力不足を補うためだろうか。それとも鍛錬も兼ねているのだろうか。
蜘蛛毒だけは即効性があるので、片手で数えられる程度ならアシェルが片付けておいた方が安全だろう。
倒したいポイズンスパイダー達に目星を付けて、空へ飛び跳ねて真上からブロードソードを突き刺す。
脆い関節を貫いて上下にバラせば、すぐにでも『ストレージ』に仕舞えるので虫系は楽だ。
毒はあるが、その毒牙の位置にさえ注意すれば難しい相手ではない。
蜘蛛だけを片付けて、指示された一番右端のパーティーを目指す。
「邪魔しないで。」
速度向上をかけて走っているのだが、匂いで気付くのか。時折フォレストタイガーやフォレストウルフが躍り出て来たり、アシェルについて来ようとする。
助っ人に来て迷惑をかけるわけにもいかないので、そういったパレード状態の魔物にはしっかりと致命傷を与えてから走る。
魔物たちに一撃でも与えておけば、誰かが横やりを入れたり不用意に近づかない限りアシェルをターゲットにするので、移動するルートさえ気を付ければ迷惑を掛けずに済むだろう。
一番左端のパーティーが見えたところで、連れていた魔物たちを殲滅する。
大体は失血で弱っているが、手っ取り早くストレージに仕舞えるように、頭を切り落としてしまうのが一番だ。
「ウルフは良いけど、さすがにタイガーを普通に一撃でってのは無理だよね。はぁ……もっと筋肉が欲しいな。」
足りない膂力は、結局飛び跳ねて体重と重力でどうにかするしかない。
隙が増えるだけなのであまり跳ねない方が良いのだが、アシェルの腕では何度か切りつけないといけないことを考えると、短時間で処理できるこの方が合理的だ。
なんせ命の灯火を懸命に輝かす魔物たちとゆっくりと戯れて遊ぶ暇もないほど、魔物たちは沢山湧いてくるのだから。
「終わり……っと。」
アシェルに付いてきた最後の一体を『ストレージ』に仕舞いこむ。
タンク役の騎士団員も、ここを守る冒険者パーティーも。アシェルの存在には気付いていたが、持ち場を離れずに討伐を続けてくれていた。
下手に手伝いにくるより、その方がずっとありがたい。
「第一騎士団長の命により、助っ人に来たアシェルです。この一帯を周りますので、所定の位置まで行けたら教えてください。」
「伝達は聞いております。声を掛けさせていただくので、それまでは戦いやすいように戦っていただけたら。」
「近くで倒さなくて良いんですか?」
アシェルからしたら願ってもない申し出だが、前線の押上げをするなら騎士団員の傍で戦闘するのがベストかと思っていた。
こうしてやり取りをしている今現在も、騎士団員の周囲では冒険者たちが頑張って魔物を倒している。
もちろんアシェルも剣を振るっている。
「こちらに合わせて頂くよりも、二つ名持ちには自由に動いてもらった方が効率が良いので。前から流れてくる魔物の数が減れば、前線の押上げは問題なく出来ます。」
「そう?じゃあ、良い位置まで行けたら、コレ鳴らしてくれますか?真ん中のボタンを押してください。その音なら、戦いに夢中になってても聞こえるから。もし気付かなかったら、二つ名でも叫んでください。」
『ストレージ』からサーバントベルのような試作品を取り出す。
そのスイッチを騎士団員に渡し、アシェルは片耳だけのイヤホンのようなものを耳に装着する。
理論上は離れていても、きちんとこの子機に呼び出し音が鳴るはずだ。
ならなかった場合、名前を呼ばれるよりも不本意な二つ名の方が分かりやすいだろう。
どうせ二つ名が付くなら、アシェルもキルルのような無害そうな二つ名が良かった。
他にもこんな物騒な二つ名持ちが居るのか、是非名簿一覧を見せて欲しいくらいだ。
「分かりました。お気をつけて。」
「貴方たちもね。『防御力向上』かけておくけど、時間で切れるから過信はしないで。」
近くで魔物を倒す冒険者たちが二つ名とアシェルの装いから予測したのか、【血濡れの殺人人形】という単語を口にする。
色が違うのによく分かるものだと思う。
アシェルは写真などで顔と名前を覚えるのは得意だが、普段関わりのない人だと髪色や瞳の色などが変わってしまうと気付かない自信がある。
アシェルはやっぱり血まみれだが、それはそこらへんにいる冒険者たちだって一緒だ。
返り血や煤で身体や顔は汚れてしまっている。
やっぱりポーションたっぷりのベストやベルト、レッグホルスターがいけないのだろうか。
だが幼少期から外出には必ず装着していたこれらがないと、安心して外出できない。
外したとしても、最低でも一つは残しておきたい。
そんなどうでも良いことを考えながら、一人で魔物の群れに突っ込んでいく。
冒険者たちがどの程度の強さなのか聞いておけば良かった。
健斗のやっていたゲームのようにレベルという強さの指標のようなものがあれば便利なのだが、残念ながらアシェルの今いる世界には無い。
経験値と呼ばれるものは実際に体験したことから咄嗟の判断に繋がったりするので、目には見えない形で積み重なってはいると思う。
ただゲームのレベルアップのように、数字が上がればそれだけで強くなるみたいなシステムは無いだけだ。
「後続に流す指示とベア……ウルフとタイガーもいけるかな?んー……タイガーは三の森だし、一の森と二の森の分まで流そうか。さぁ、僕と『一緒に遊ぼう』?」
にこりと微笑んだアシェルは言葉に魔力を乗せ、こちらへ来るように意識を向けさせる。
殺気を出さない選択的な挑発のつもりだが、成功したようだ。
イメージに魔力を添えてやれば形になるので、魔法とは本当に使い勝手が良いものだと思う。
アシェルが倒すつもりの魔物だけが輪になって寄ってくる。
傍から見たら王都へ行進していた魔物が踵を返すなど、不思議な光景だろう。
だがこれならアシェルは魔物たちを選り分けて突撃する必要も、大きく移動して体力を消耗することもない。
今の騎士団員たちの位置からも十分距離を取ったので、ここで魔物たちと戯れていれば、いずれ連絡が来るだろう。
「ふふ、皆、呼べば素直に来てくれるんだね。素直な子は好きだよ。時間いっぱい、僕を楽しませてね。」
地を蹴り腕を振るい、時には魔法も使いながら魔物たちを屠っていく。
脆い虫相手はあまり楽しいと思えないが、やはり動物型の——特に巨体の魔物は素晴らしい生命力だ。
命の灯を必死に輝かせる姿が、そしてアシェルに傷を負わせようとする必死さが、生きようとする生命の強さを感じさせる。
——薫には欠けていた、生にしがみついて生きようとする強さだ。
もしかしたらアシェルにも欠けているのかもしれない。
だからこそ、この最後の瞬間まで輝く姿が尊く見えるし、アシェル自身が今生きていることを実感させてくれるのではないかと思う。
これが無いものねだりというのだろうか。
まるで演舞のように動くアシェルの姿を、どれだけの人が目で追えたのかは分からない。
遠目に分かるのは絶えず降りやまない血の雨と、暴れる魔物たち。そして定期的に魔物の死体が消えて、追加の魔物が誘われるかのようにその輪に入っていくことだけだ。
結局アシェルが計8パーティーの前線押し上げに付き合うのに、2時間近くかかってしまった。
バフかけ直しのタイムリミットギリギリだ。
順繰りバフをかけ直して戻り、また昨日のように好きなように魔物の討伐を始めた。
周囲に気を遣わなくて良い分、思う存分身体を動かせるし、少しくらい討ち漏らしたとしてもアークエイドたちが居るので気楽だ。
キルルはアシェルよりも遅く戻ってきて、アシェルの元までバフをかけて貰いにやってきた。
やはり、あるとないとでは大違いだそうだ。
アシェル自身も、バフのありがたさを実感している。
今度バフ有りと無しでどれくらい変化があるのかや、デバフの効果などをじっくり実験してみたいなと、心の片隅に書き留めておく。
この世界には、まだまだアシェルの知りたいことが溢れている。
今日もスタンピードは終わらない。
バフをかけながら中央の陣営を突っ切ったあと、アシェルは一番近い騎士たちの元へと走った。
アシェル達の陣営は中央が一番魔物が多いので中央に強い駒を配置してあるが、左右の陣営はそれぞれ中央の陣営寄りの方が魔物が多い。
「第三騎士団長で間違いないですか?」
青騎士の制服には記章がいくつも付いている。
青騎士の中でも位が高いのは明白だ。
青騎士二人の捌いた魔物の首に刃を閃かせながら問えば、返事が返ってくる。
「そうだ。援軍のアシェル殿で間違いないか?」
「えぇ、合ってます。どうしたらいいですか?」
「出来れば一番向こう端から前線を押し上げて貰いたい。指定の位置まで行けば、騎士が教えてくれる。徐々にこちらへ戻ってきてくれると嬉しい。」
「分かりました。とりあえず、ここの蜘蛛だけ先にやってしまいますね。それと、騎士のお二人にだけ『防御力向上』を。いずれ切れるものなので、過信はしないでください。」
「助かる。」
短くやり取りを終え、アシェルはポイズンスパイダーだけに狙いを定めて魔物の群れに突っ込んでいく。
ここを守る冒険者パーティーに、騎士団員も一人混じっている。
戦力不足を補うためだろうか。それとも鍛錬も兼ねているのだろうか。
蜘蛛毒だけは即効性があるので、片手で数えられる程度ならアシェルが片付けておいた方が安全だろう。
倒したいポイズンスパイダー達に目星を付けて、空へ飛び跳ねて真上からブロードソードを突き刺す。
脆い関節を貫いて上下にバラせば、すぐにでも『ストレージ』に仕舞えるので虫系は楽だ。
毒はあるが、その毒牙の位置にさえ注意すれば難しい相手ではない。
蜘蛛だけを片付けて、指示された一番右端のパーティーを目指す。
「邪魔しないで。」
速度向上をかけて走っているのだが、匂いで気付くのか。時折フォレストタイガーやフォレストウルフが躍り出て来たり、アシェルについて来ようとする。
助っ人に来て迷惑をかけるわけにもいかないので、そういったパレード状態の魔物にはしっかりと致命傷を与えてから走る。
魔物たちに一撃でも与えておけば、誰かが横やりを入れたり不用意に近づかない限りアシェルをターゲットにするので、移動するルートさえ気を付ければ迷惑を掛けずに済むだろう。
一番左端のパーティーが見えたところで、連れていた魔物たちを殲滅する。
大体は失血で弱っているが、手っ取り早くストレージに仕舞えるように、頭を切り落としてしまうのが一番だ。
「ウルフは良いけど、さすがにタイガーを普通に一撃でってのは無理だよね。はぁ……もっと筋肉が欲しいな。」
足りない膂力は、結局飛び跳ねて体重と重力でどうにかするしかない。
隙が増えるだけなのであまり跳ねない方が良いのだが、アシェルの腕では何度か切りつけないといけないことを考えると、短時間で処理できるこの方が合理的だ。
なんせ命の灯火を懸命に輝かす魔物たちとゆっくりと戯れて遊ぶ暇もないほど、魔物たちは沢山湧いてくるのだから。
「終わり……っと。」
アシェルに付いてきた最後の一体を『ストレージ』に仕舞いこむ。
タンク役の騎士団員も、ここを守る冒険者パーティーも。アシェルの存在には気付いていたが、持ち場を離れずに討伐を続けてくれていた。
下手に手伝いにくるより、その方がずっとありがたい。
「第一騎士団長の命により、助っ人に来たアシェルです。この一帯を周りますので、所定の位置まで行けたら教えてください。」
「伝達は聞いております。声を掛けさせていただくので、それまでは戦いやすいように戦っていただけたら。」
「近くで倒さなくて良いんですか?」
アシェルからしたら願ってもない申し出だが、前線の押上げをするなら騎士団員の傍で戦闘するのがベストかと思っていた。
こうしてやり取りをしている今現在も、騎士団員の周囲では冒険者たちが頑張って魔物を倒している。
もちろんアシェルも剣を振るっている。
「こちらに合わせて頂くよりも、二つ名持ちには自由に動いてもらった方が効率が良いので。前から流れてくる魔物の数が減れば、前線の押上げは問題なく出来ます。」
「そう?じゃあ、良い位置まで行けたら、コレ鳴らしてくれますか?真ん中のボタンを押してください。その音なら、戦いに夢中になってても聞こえるから。もし気付かなかったら、二つ名でも叫んでください。」
『ストレージ』からサーバントベルのような試作品を取り出す。
そのスイッチを騎士団員に渡し、アシェルは片耳だけのイヤホンのようなものを耳に装着する。
理論上は離れていても、きちんとこの子機に呼び出し音が鳴るはずだ。
ならなかった場合、名前を呼ばれるよりも不本意な二つ名の方が分かりやすいだろう。
どうせ二つ名が付くなら、アシェルもキルルのような無害そうな二つ名が良かった。
他にもこんな物騒な二つ名持ちが居るのか、是非名簿一覧を見せて欲しいくらいだ。
「分かりました。お気をつけて。」
「貴方たちもね。『防御力向上』かけておくけど、時間で切れるから過信はしないで。」
近くで魔物を倒す冒険者たちが二つ名とアシェルの装いから予測したのか、【血濡れの殺人人形】という単語を口にする。
色が違うのによく分かるものだと思う。
アシェルは写真などで顔と名前を覚えるのは得意だが、普段関わりのない人だと髪色や瞳の色などが変わってしまうと気付かない自信がある。
アシェルはやっぱり血まみれだが、それはそこらへんにいる冒険者たちだって一緒だ。
返り血や煤で身体や顔は汚れてしまっている。
やっぱりポーションたっぷりのベストやベルト、レッグホルスターがいけないのだろうか。
だが幼少期から外出には必ず装着していたこれらがないと、安心して外出できない。
外したとしても、最低でも一つは残しておきたい。
そんなどうでも良いことを考えながら、一人で魔物の群れに突っ込んでいく。
冒険者たちがどの程度の強さなのか聞いておけば良かった。
健斗のやっていたゲームのようにレベルという強さの指標のようなものがあれば便利なのだが、残念ながらアシェルの今いる世界には無い。
経験値と呼ばれるものは実際に体験したことから咄嗟の判断に繋がったりするので、目には見えない形で積み重なってはいると思う。
ただゲームのレベルアップのように、数字が上がればそれだけで強くなるみたいなシステムは無いだけだ。
「後続に流す指示とベア……ウルフとタイガーもいけるかな?んー……タイガーは三の森だし、一の森と二の森の分まで流そうか。さぁ、僕と『一緒に遊ぼう』?」
にこりと微笑んだアシェルは言葉に魔力を乗せ、こちらへ来るように意識を向けさせる。
殺気を出さない選択的な挑発のつもりだが、成功したようだ。
イメージに魔力を添えてやれば形になるので、魔法とは本当に使い勝手が良いものだと思う。
アシェルが倒すつもりの魔物だけが輪になって寄ってくる。
傍から見たら王都へ行進していた魔物が踵を返すなど、不思議な光景だろう。
だがこれならアシェルは魔物たちを選り分けて突撃する必要も、大きく移動して体力を消耗することもない。
今の騎士団員たちの位置からも十分距離を取ったので、ここで魔物たちと戯れていれば、いずれ連絡が来るだろう。
「ふふ、皆、呼べば素直に来てくれるんだね。素直な子は好きだよ。時間いっぱい、僕を楽しませてね。」
地を蹴り腕を振るい、時には魔法も使いながら魔物たちを屠っていく。
脆い虫相手はあまり楽しいと思えないが、やはり動物型の——特に巨体の魔物は素晴らしい生命力だ。
命の灯を必死に輝かせる姿が、そしてアシェルに傷を負わせようとする必死さが、生きようとする生命の強さを感じさせる。
——薫には欠けていた、生にしがみついて生きようとする強さだ。
もしかしたらアシェルにも欠けているのかもしれない。
だからこそ、この最後の瞬間まで輝く姿が尊く見えるし、アシェル自身が今生きていることを実感させてくれるのではないかと思う。
これが無いものねだりというのだろうか。
まるで演舞のように動くアシェルの姿を、どれだけの人が目で追えたのかは分からない。
遠目に分かるのは絶えず降りやまない血の雨と、暴れる魔物たち。そして定期的に魔物の死体が消えて、追加の魔物が誘われるかのようにその輪に入っていくことだけだ。
結局アシェルが計8パーティーの前線押し上げに付き合うのに、2時間近くかかってしまった。
バフかけ直しのタイムリミットギリギリだ。
順繰りバフをかけ直して戻り、また昨日のように好きなように魔物の討伐を始めた。
周囲に気を遣わなくて良い分、思う存分身体を動かせるし、少しくらい討ち漏らしたとしてもアークエイドたちが居るので気楽だ。
キルルはアシェルよりも遅く戻ってきて、アシェルの元までバフをかけて貰いにやってきた。
やはり、あるとないとでは大違いだそうだ。
アシェル自身も、バフのありがたさを実感している。
今度バフ有りと無しでどれくらい変化があるのかや、デバフの効果などをじっくり実験してみたいなと、心の片隅に書き留めておく。
この世界には、まだまだアシェルの知りたいことが溢れている。
今日もスタンピードは終わらない。
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