氷の王子様と微笑みの男装令嬢

芯夜

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第三章 王立学院中等部二年生

186 終わりは突然に④

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Side:アシェル13歳 秋



イザベルが借りてくれている小さなテントにイザベルと二人で入る。

中に入れば椅子が一脚置いてあって、そこに座るように促される。

アシェルが座っている間に、イザベルがテントの中にさらに仕切りを作ってくれる。
誤って誰かが入ってきた時に、すぐにアシェルの姿を見られないようにするためだ。

「これでよし。アシェル様、お召し物を脱いでいただけますか?」

「うん。ベルが気にしているのは、一番下のやつでしょ?」

「当たり前です。……あぁ、やっぱりかぶれてますね。毎日ヒールを使ってたんですか?」

しっかり胸潰しまで外して上半身だけ裸になったアシェルを、イザベルが観察していく。

「うん。さすがに汗もかくし、締め付けてるから痒くなってくるし。毎晩ヒールをかけてたから、酷くはなってないと思うけど……。」

「恐らく本日できたものでしょうね。出来れば夜だけでも外しておいて欲しいのですが、そういう訳にも参りませんしね。」

「でも、ヒールでとりあえずは良くなるから。こういう時は魔法があって良かったと思うよ。」

もし魔法がなかったら、毎日肌荒れの痛痒さと格闘しなければならなかっただろう。

いくら適宜クリーンで身体を綺麗にしてても、日中はほぼずっと汗を吸った胸潰しで身体を覆っている状態なので、どうしても肌荒れしてしまうのだ。

「もうそろそろスタンピードも終わるのでしたら、かっちりしたものではなく簡易的な方に変えますか?一応準備はしておりますが。」

「変えちゃって大丈夫かな?バレない??」

「ベストホルスターは着けたままですよね?でしたら、そこまで目立たないかと思います。ついでに一枚、吸湿性の良い肌着もかませましょう。」

「じゃあお願いしようかな。」

イザベルは『創傷治癒ヒール』で肌荒れを治してくれた後、手際よくアシェルの着替えを手伝ってくれる。

いつも肌に直接胸潰しを付けているのだが、浴衣の下に着る肌襦袢のように、半袖で肌触りの良いTシャツのようなものを着せられる。
その上から幅広のゴムバンドのような胸潰しを付け、シルエットを整えてくれ、シャツ、ベストと順番に着こんでいく。

「如何ですか?他の使用人達と交流する時間があったので、こういったものを挟むと少しだけお肌に優しいと聞いて、取り寄せてみたのですが?」

こんな肌着あったんだなと思っていたが、どうやらスタンピード中に話を聞いて、わざわざ取り寄せてくれたらしい。

「ありがとう、ベル。肌触りはとても良いよ。効果があるかは、同じような状況になってみないと分からないけど、汗は吸ってくれると思う。」

「乾きやすい布だそうですので、しばらく使ってみて良さそうでしたら、いくつか用意しましょう。もう少し早く届けば良かったのですが、届いたのが今日のお昼でしたので。」

「それで今日誘ってくれたんだね。ベルは毎日魔力を使って、補給班でも働いて、疲れてない?夜はちゃんと眠れてる?」

ずっとイザベルのことは心配だったのだが、夕食の用意をして一緒に食べてくれる以外は、すぐにどこかに行ってしまって働いているようだった。

アシェルも魔物の解体依頼を出さないといけないし、結局イザベルとゆっくり喋るタイミングが無かったのだ。

「私は大したこともしていませんし、魔力も身体に不調が出る手前までしか使っておりませんから。補給部隊の人間は、割としっかり眠っている人間が多いんですよ。私もしっかり眠らせていただいています。普段野営をするかどうかの違いもあると思いますが、アシェル様の結界がしっかりしているのと、周囲に騎士団も居るので安全だと思っている人が多いようです。それに睡眠時間は寝ていないと、日中に影響が出ますからね。」

確かに使用人達の朝は早く、夜は遅い。
主人の起きる前に起きて、主人が寝た後に眠るのだ。

眠る時にしっかり身体を休めないと、日中のパフォーマンスに影響が出るのだろう。

「私のことよりも、アシェル様はお眠りになれていますか?」

「僕はキルル様のお陰で、毎日熟睡してるよ。外がチカチカしてるのも尻尾で遮ってくれるから、夜中に起きることもないし。」

「そうですか。体調が良さそうとは思っていましたが、テイル夫人に感謝しなくてはいけませんね。今夜はどうされるのですか?」

「うーん……さっきの話、いい加減決着ついたかな?意見が分かれすぎてて、どうして良いのか分からないんだよね。」

「なるほど。そろそろ決着はついてるのではないかと思いますよ。私は片付けをしますので、アシェル様は先にお戻りくださいませ。」

「良いの?」

「はい。片付けが終わりましたら、私は他の仕事に向かいますので。」

「ありがとう、ベル。今日もゆっくり休んでね。それとコレが終わったら、ちゃんと休みとってよ?」

「えぇ、分かっております。」

イザベルの返事を聞いたアシェルはテントを出て行く。

残されたイザベルはテントの中を片付けながら、小さなため息を吐く。

今夜寝るか寝ないかは、どうやらアシェルがどうしたいかではなく、周囲がアシェルに何を望んでいるのかで決まるらしい。

アシェルらしい決め方ではあるが、錬金や知識欲を満たすための意思表示はハッキリとするのに、こういったアシェル自身があまり興味ないものに関しては、周囲の意見で行動が決まる。

小さい頃だって、いつもイザベルがしたいことを優先してくれていた。
イザベルの希望を優先してくれるのなら毒薬の味見を止めて欲しいところだが、それは錬金関連なので止めてくれることは無かったが。

スタンピードが終わって解散になる前に、アシェルがしっかり眠れるようにしてくれたキルルにお礼を言いに行こうと思う。



アシェルが食事をしていたテーブルに戻ると、アークエイドだけが座っていた。

「終わったか?」

「うん。シャツから下は新しいのに着替えさせてもらったよ。それより、今夜はどうしたら良いの?」

「語り明かすことになった。もう全員テントに移動してる。」

「そっか。待っててくれてありがとう。」

アークエイドと連れ添って、借りているというテントに向かう。

テントはキャンプで使うようなものではなく、モンゴルとかで見れそうな、円形の少し大きな天幕だった。

中に入ると壁側を背もたれに、既に集まったメンバーが座って待っていた。
しっかりした作りのようで、壁にもたれることが出来るようだ。

デュークも居るし、イザークも連行されてきたようで一緒に座っている。
シオンが居ないのはファンクラブ会員ではないからだろうか。

「皆さん、お待たせしました。」

「いらっしゃい。さぁ、空いてるところに座ってくださいな。」

ティエリアに促され、二人分空いた場所にアークエイドと座る。
いつものようにぴったりと寄り添って座ったからか、ティエリア達のテンションが少し上がったのが分かる。

「全員集まりましたわね。さぁ、今日は語り明かしますわよ。」

「でもティエリア先輩。今日は何話しますか?連日たっぷりお話してるのに、ネタの供給があまりないんですよねぇ。」

「アシェル様の雄姿は速すぎて見えませんし、アルフォード様は遠すぎるし、アークエイド殿下は退屈そうですものね。アレリオン様に至っては、前衛組からは見えませんし。」

「わたくしは見えるんですど、ティエリア先輩がどんどん魔物を連れてくるから、じっくり見れないだけですよ。」

「だって、ミルルさんだけ見えるなんてズルいじゃない。それに、よそ見してる暇なんて無いくらい湧いてくるんだもの。」

アークエイドが退屈そうだったのは、確実にアシェル達三人が暴れまわっていたせいだろう。

「あら、アークエイド殿下はあまり働いてませんの?」

「そういう訳じゃないですよ、ユーリ先輩。役回り的に仕方なかったんじゃないかなと思いますよ。最前線でSランク冒険者のテイル夫人と、マリク君とアシェル君が戦っていたので……同じパーティーメンバーはやることが無かっただけだと思います。雑魚は後ろに流す指示でしたしね。」

「そういうことでしたのね。」

ユーリの疑問にイザークが答えてくれる。
アークエイドがさぼり扱いされなくて良かった。

「だってアーク達のパーティーは、魔の森程度じゃ過剰戦力でしょ?はぁ……うちの領地にも同じくらいの戦力のパーティーが一つ欲しいわ。」

「過剰すぎる戦力だった。大森林の深部相手でも引けは取らないと思う。」

「あら、それは羨ましいわね。わたくしだってそんなパーティーが居たら、領地に欲しいところですわ。エルマン大森林より、ビースノート帝国に隣接している我が家の方が、スタンピードの頻度は少ないと思うけれど。」

「マース山岳は、隣国の冒険者も魔素溜まりの対処してくれますもんね。でも、足場が悪かったり高低差を考えると、どっちがマシかは微妙だわ。ま、何にせよ大魔素溜まり付近は常に人手不足よね。少しおかしいからって放置してたら、すぐスタンピードは起きちゃうし。」

「ですわね。むしろ異常が出始めで頑張って魔物を討伐しないと、手に負えない規模のスタンピードが起きかねませんもの。」

ユーリとリリアーデは揃って小さなため息を吐いた。

ノアールとエトワールも人手不足だから領地に帰省すると言っていたし、辺境では常に人手不足に悩まされているようだ。

「パティさん。是非前世でどんなことをしていたのかや、【シーズンズ】がどんな活動をしているように見えるか、もう一度話してくださらないかしら?イザーク君も聞きたいと思うのよ。」

「良いですよぉ。カナ先輩以外が楽しい話かどうかはわかりませんがぁ。あと皆さん、お話して大丈夫な方って事で良いんですよねぇ?」

「わたくしたちは、文献などからしか知ることが出来ないんですもの。パティさんの話しは楽しいと思いますわ。」

カナリアとパトリシアは、お互いのことを愛称で呼ぶまで仲良くなったらしい。

趣味が同じだと打ち解けやすいのだろう。
打算を抜きにして仲良くなれるのは、とても良いことだと思う。貴族は損得勘定で縁を持ちたがる人間が多いから。

「えっとぉ。まず【シーズンズ】みたいに、実在する人物を題材に同人誌を描く文化はありましたぁ。大体はアイドルという、そうですねぇ。オペラの俳優さんや女優さんのように、実際に生きているけど手の届かない存在、憧れの存在ってところでしょうかぁ。そういう方々を二次元と三次元の狭間という括りで2.5次元って言いますぅ。ちなみに三次元は生きている人たちで、二次元は漫画なんかのキャラクターのことを言いますぅ。こちらには漫画があるのはファンクラブだけみたいなので、そういうものだと思っていてくれたらいいですぅ。」

この話しを始めて聞くイザークは、しっかりメモを取りながらパトリシアの話を聞いている。
メモを取るような内容ではないと思うのだが、生の声を聴ける機会なんてそうそうないので貴重なのだろうか。

「わたくしから見て思うのは、ファンクラブだけの活動なのに凄く内容が多岐にわたっていて、凄いってことですかねぇ。本当にコレ、文献からだけで生徒発祥なんですよねぇ?誰か授け子が居て、そういうものだと教えたとかじゃないですよねぇ?」

「各個人のファンクラブ自体はありましたけれど、創作物を出し始めたのはわたくしが入学した年からですから。今は全員分まとめたファンクラブになったので、以前よりも書き手が増えているし、読み手から書き手になる人もいるしって感じですわね。最初の頃の発行物は、恋愛小説ばかりでしたのよ。」

「6~7年で進化したにしては、物凄い進歩だと思いますよぉ。漫画のクオリティーが高すぎますぅ。」

「分かるわ。しかも全部手書きなのよね。普通はトーンとか使うんでしょう?」

「ですですぅ。トーンも使わずにアナログで、点描もセリフも何もかも手書きですよぉ?執筆時間が凄そうですぅ。でも、カラーイラストがないのは残念ですねぇ。」

パトリシアの言う通り、漫画でイラストは描かれているが全てモノクロだ。

そもそもイラストを描く用の色ペンがあるわけでもないし、絵具と言えば油絵が主で、水彩もあるけれど主流ではない。
画家が使う事があるけれど、あまり一般的に普及しているとは言い難い。

一番身近なものだと万年筆用のカラーインクになるが、あれはイラスト用のモノと違うだろうし、綺麗に色を塗れるのか分からない。
どちらにせよアシェルに絵心は無いので、試しに使ってみることもできない。

「パトリシア嬢。アナログってどういうことですか??」

「えっとぉ、手書きってことですぅ。わたくしの前世にはパソコンって言うのがあってぇ、デジタルで絵を描いたり、色塗りができてたんですよぉ。原稿用紙が無くてもデータのまま入稿できるので、前世ではよくお世話になってましたぁ。締め切りギリギリに仕上げて入稿できるので、郵送よりも便利なんですよねぇ。」

「えっと……とりあえず、手書きじゃないってことだけ理解しました。パトリシア嬢も何か描かれてたんですか?」

「パティさんは凄く上手なのよ!」

「まぁ、パソコンもペンタブもこっちにはないので、アナログオンリーで描くのなんて数十年ぶりでしたけどねぇ。」

「数十年……なんか時間の単位が違いすぎますね。」

「だってぇ、こっちに来てから絵なんて描いてなかったですしぃ。前世もアナログで描いてたのって10代前半ですよぉ?おばさんでしたのでぇ、20年以上アナログでイラストなんて描いてなかったですからぁ。もしこっちでも漫画を描くのなら、リハビリしないとですねぇ。」

イザークの返事に笑いながらパトリシアが見せてくれたノートには、万年筆で男性や女性が描いてある。
リハビリが必要だと言っているが、かなり上手だ。

リリアーデ曰く二次創作らしいのだが、アシェルには該当するキャラクターは分からない。

「カナ、パトリシアさんの描いた漫画が出来たら、即送って頂戴ね?」

「お姉様は他のモノもすぐ送れって言うでしょう?ちゃんと月一でまとめて送るんで、押しかけてこないで下さいね??」

「卒業して何が残念って、最新刊が最速で読めないことだわ。でも入手元があるだけマシだと思わないとかしら。」

ティエリアは新刊の入手はカナリア頼りらしい。
旦那さんはファンクラブ会員だったようだが、義実家で大量の年齢指定を含む本を持っていて大丈夫なのだろうか。

「ちなみにですけどぉ。ここにいる方々で、これは地雷っていうジャンルとか、カプとかってありますかぁ?お好きなジャンルでも良いんですけどぉ。」

パトリシアの問いに、ティエリアから時計回りに意見を言うことになる。

「わたくしはオールジャンル、ノーマルカプからBLまでなんでも大丈夫ですわ。攻め受けも好みの順番はあるけれど、リバでもいけますわ。」

「わたくしもお姉様と同じで雑食ですね。敢えて言うなら、ノーマルよりBLの方が好きなくらいですわ。」

「俺はBLは生々しく感じちゃうんでちょっと……見なくはないですけど、読むなら日常を描いたやつとか、ノーマル恋愛小説みたいになってるほうが好きですね。」

ティエリア、カナリア、イザークが答え、次にデュークに回ってくる。
凄く困り顔だ。リリアーデに付き合ってここに居るだけだろうから、とばっちりだ。

「僕は特にこれと言って。読むとしたら小説の方が馴染みがある、くらいだ。漫画というのも面白いとは思うが、読み慣れてないから小説の方が情景描写が上手く感じる。」

「だって小説は文字で表現するけど、漫画はイラストに詰め込まれてるのよ。わたくしは断然漫画が良いわ。小説も読まなくはないけど、こっちの娯楽書籍って全部小説でしょう?基本的に雑食で何でもOKだから、せっかくなら漫画を読みたいわ。」

「わたくしは小説よりも漫画の方が好きですわね。普通のモノよりも、ちょっぴりハードなものの方が好みですわ。特に地雷もありませんわね。」

ユーリの言うちょっぴりハードとは、どこまでがちょっぴりなのだろうか。
ユーリの描く薄い本はかなりハードな部類なのではないかと思う。

「あれがちょっぴりなのか?」

「あら、殿下。何か不服でして?」

「いや、ユーリ嬢らしい漫画だったとは思う。」

「あら、どういう意味かしら??」

「そのまんまの意味だ。」

アシェルが思っていたことを、アークエイドも思ったらしい。

というよりも、当たり前のようにアークエイドが輪に入っているが、アークエイドはあの書物たちを読んだことがあるような話をしている。

それに、契約魔法で口にする言葉を遮られた人は居なかった。
つまりアークエイドも確実にあの書物を読んでいる、ということだ。最初に同席した時点で気付くべきだった。

「アーク、ユーリ先輩が描いたやつ読んだの?見に行くなら、言ってくれたら一緒に行ってあげたのに。」

「男二人で女子寮に入る方が目立つかと思ってな。」

「まぁ、目立つかもだけど……ちゃんと見つからないように配慮するのは、僕の役目だよ。それにアークが一人で女の子の部屋に行くほうが問題だからね?シャーロット先輩の耳に入ったらどうするのさ。」

今まで変な噂は流れてきていないが、女は噂の好きな生き物だ。
いつアークエイドがどこかのご令嬢にご執心、みたいな噂を流されてもおかしくない。

「なんでそこで、シャーロット嬢が出てくる。」

「だって、婚約者が女の子の部屋をこっそり尋ねるなんて、良い気分にはならないでしょ?」

「だから、候補だって何度も言ってるだろ。」

「うふふ、殿下とアシェル様は仲がよろしいのね。殿下とアシェル様のお好みも是非お聞きしたいわ。」

いつも通りのやり取りを繰り広げるアシェル達に、ユーリが問いかけてくる。

「俺はあまり好みは無い。どんなものか気になって見に行っただけだ。……作者に従姉の名前があったのには驚いたがな。」

「僕も割と何でも見るかなぁ。でも、少し非日常っぽいと創作物って感じがして、より一層楽しめるかも?苦手なカプは……クリストファー先輩とアル兄様のやつ。それ以外は苦手って思ったのは無いよ。」

「あら、どうしてかしら?そういえば、最初の頃も気にしてらしたわね。」

アシェルの答えにティエリアが首を傾げる。
特に好き嫌いを言わず、出された物は片っ端から読んでいたからだろうか。

「アル兄様の描写は良いんですけど……クリストファー先輩が上手そうに描かれているのが違和感で。シナリオ上仕方ないとしても、クリストファー先輩って自分で言うほど上手くないですし。」

あんなに自信たっぷりなクリストファーだが、本当に今まで遊び相手を落とせているのだろうか。
社交界で噂になるくらいには実績があるのだろうが、初心すぎる人間が引っかかっただけではないかと思う。

気が強い男の子を落とすのが好きだと言っていたが、あの程度で快楽堕ちなんてするわけがない。

キスだけなら、受け身なシオンの方が遥かに上手である。

「そこ!そこのところ詳しくお願いしますわ!!」

「アシェル様は何かご存知ですのね!?」

アシェルの言葉に、アーバンレイ姉妹は二人揃って食いついてくる。

「えっと……ご存知って言うか、一度襲われかけた……で良いのかな?」

「ちょっと待って、アシェ!そんな話し聞いてないわよ!?」

「だって、自分から言うような話でもないし。別に隠すような話でもないけど。」

「普通は隠すような話だ。あまり変なことを口にするな。」

「変って……アークが来てくれたおかげで、キスしかしてないし。こなくても適当に逃げ出すつもりだったし。まぁ、ほとんど言葉で言い合いしてただけだしね。」

「それって、乙ゲーだったら萌えるシチュエーション??」

「萌える、のかも?人のこと勝手に押し倒しておいて、キスが下手な上に遊び人扱いされたことを考えると、僕的に全く萌えないシチュエーションだけれど。」

未だにクリストファーは、アシェルのことを遊び人扱いしている気がする。
自分の技術が未熟なだけだというのに。
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