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第三章 王立学院中等部二年生
204 話し合いと婚約式④
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Side:アシェル14歳 春
実家に戻った日から、きっかり一週間後。
三月一日にメイディー家とテイル家の面々は、王都の北北西エリアにある大聖堂へとやってきていた。
全く神様へのお祈りをしたことが無いアシェルは、産まれて初めて大聖堂の中へ入った。
沢山の長椅子が並び、高い位置にあるステンドグラスがカラフルな光で床を彩っている。
大聖堂というと、教会のようなものだろうと思っていたのだ。
確かキリスト教は十字架に磔にされたキリストか、聖母マリアの像があるはずだ。宗派で変わると聞いた事がある。
だが、沢山の神々がいると言われているこの世界の大聖堂は、メインの聖堂の中に神を模したものは置かれていなかった。
でもそうなると民はどこに向かって祈りを捧げるのかと、キョロキョロと壁際の装飾なんかを確認していく。
好きな神に祈れるように、複数の装飾やモチーフ的なものがあるのかと思ったが、そう言ったものは見当たらなかった。
「アシェル、どうしたの?……孤児院が隣にあるし、落ち着かないかしら?」
キョロキョロする姿が気になったのだろう。
いきなりメアリーに話しかけられて跳ねた心臓を抑えながら、アシェルは疑問を口にする。
メアリーは神に祈ることがあるらしいので、アシェルの疑問に答えてくれそうな気がする。
「こっちの孤児院は聖堂がセットですけど、施設はそうじゃありませんでしたから。そうじゃなくて、皆どこに向かって祈りを捧げるんだろうと思いまして……。」
「どこへ?神様によ??」
どうもアシェルの質問は上手く通じなかったらしい。
きっとリリアーデなら分かってくれただろうが、こればかりは仕方ないことだ。
「その……神様の姿を模した銅像や、モチーフなどは無いのですか?前世ではお祈りといえば、そういう自分の信じる神様を模したものへ祈りを捧げるものだったので。」
「そうだったのね。そうね……アシェルの質問に答えるとするなら、王族と四大公爵家、四大辺境伯爵家の家紋が、そのモチーフにあたることになるのかしら。大体は、祈りを捧げたい神が加護する家の家紋を思い浮かべるように言われるわ。それと、一番前にあるテーブルの奥に、植木鉢があるのが判るかしら?」
丁寧に質問に答えてくれたメアリーに促されるように、アシェルは大聖堂の奥へと眼を凝らす。
確かに、植木鉢の中に小さな盆栽のような。何か樹木が植わっているのが見える。
「えぇ、分かります。」
「あれが人の誕生を司る、生命の神の使いが現世でとった姿だと言われているわ。各地にある聖堂の数だけ、あの植木鉢があるの。お世話をしなくても枯れず、でも大きく育つこともないものよ。神託が下る時は、朝日が昇るころに一枚だけ、金色の葉っぱがつくの。それを使って神官様が、儀式の中で生命の神の神託をお受けになるのよ。だから、そうね……普段聖堂に来た時のお祈りでは、あの植木鉢に向かってお祈りする人が多いんじゃないかしら。家でするお祈りは、その領地を統括する加護持ちの家紋よ。……これで答えになったかしら?」
アシェルの知りたいことをしっかり説明してくれたのに、メアリーは少しだけ不安そうだ。
お互い、こんなに沢山の言葉を交わしたことが無いので、こんなちょっとしたコミュニケーションも手探り状態だ。
「はい、ありがとうございます、メアリーお義母様。説明を聞くまで、あの植木鉢はただの飾りだと思ってました。」
アシェルがにこりと微笑んでお礼を言うと、メアリーがようやくほっと息を吐いた。
もしかして、どんどん質問されると思っていたのだろうか。
「アシェルのお役に立てたようで良かったわ。さぁ、婚約式が行われる儀式の間まで行きましょう。」
そういえばと周囲を見渡すと、大聖堂のメインホールにはアシェルとメアリーだけになっていた。
少しだけ先を歩くメアリーに、アシェルは付いていく。
「メルの婚約式のために来たのに、申し訳ありません。」
「良いのよ。旦那様もテイル家の皆様も、メイディーのことはよく知っていらっしゃるから。わたくしが残っていたのは、大聖堂に関してはわたくしが一番詳しいからだわ。道案内もだけれど、きっとわたくしならアシェルの疑問に答えられるだろうって旦那様は言っていたけれど……。何度も足を運んでいたわたくしが一番適任だったと言うだけで、特別詳しい訳ではないのよ。だからアシェルの疑問が、わたくしの答えられるもので良かったわ。」
「そうだったんですね。僕の為にすみません。」
「だから、アシェルは気にしなくて良いのよ。アシェルは家族に遠慮しすぎなのよ。……それはきっと、わたくしにも言えることだけれど。でも、この前アシェルの話を聞いて、旦那様に伝えるだけでなく、もっとわたくしも積極的に関わるべきだったと思ったわ。」
夫婦喧嘩で何か結論が出たのだろうか。
アシェルの話した内容は、きっとメアリーの思う教育方針とは違っていて、前世の記憶がさらにややこしくさせていたのだろう。
更にアベルはアシェルのメイディーらしさを抑えようとしてきたことが無いどころか、アシェルの考える限り、メイディーらしくなるための教育をされていた。
そしてアシェルはそれを嫌だと思ったことが無いし、自分の本質を磨いていただけだ。
もしアシェル達の知らないところで、アシェル達の為に色々と考えてアベルと話し合っていたのだとしたら、確かに喧嘩の原因にもなるだろう。
「メアリーお義母様も覚える事や、やらなくてはいけないことが沢山あったと思いますし。それこそ気になさる必要はないかと。」
「アシェルはわたくしのことも気遣ってくれるのね。……ごめんなさいね。きっと初めて会った時から、怯えさせてしまっているわよね。違うことは分かっているのに、わたくしにもどうにもできないの。——さぁ、着いたわ。この先が婚約式を行う儀式の間よ。」
後ろを歩くアシェルにはメアリーの表情は見えなかったが、きっと初めて会った時のことと、そしてドレスの時のことを謝られていることは分かった。
そして、そのことに悩んでいそうなことも。
メアリーの瞳に時々映り込む嫉妬の色が、何故宿るのかを知れるかと思ったのに。詳しい話を聞く前に会場についてしまったようだ。
メアリーとは初めてこんなに長く話したし、二人っきりだったのも初めてのことだ。
もしかしたら、今後メアリーと話す機会が増えれば、何故アシェルに嫉妬しているのか。その理由を知ることが出来るのだろうか。
神官たちが開いてくれた扉を潜ると、真っ白で中央に祭壇と思しき白い塊だけがある広い空間だった。
その白い塊の下だけが円形に高さがあって、雛段になっている。
儀式と言っていたし、あの雛段の上が婚約する二人と神官が立つ場所なのだろう。
何処に照明があるのか分からないが、全部が綺麗な真っ白な部屋はとても明るい。
白すぎて、僅かな光でも明るく感じているだけなのだろうか。
「あ、アシェ。この部屋は大丈夫かい?式自体はそんなに時間がかかるものじゃないんだけど。」
「もし嫌だったら、婚約式の間だけでも外に居るか?儀式の間があるのは知ってたけど、流石に中に入るのは初めてだから。分かってたらちゃんと教えておいたんだけど。」
アシェルがNMの毒に侵されていた時に、真っ白な部屋が嫌いだと言っていたからだろう。
アレリオンとアルフォードが心配して駆け寄ってきてくれた。
確かに一人でこの部屋に居ろと言われたら、とても不安で怖かっただろう。
病院の白さとも、薫が見ていた灰色の世界とも違う。
ただただ白すぎるだけの空間なのに、何故こんなにも不安になるのだろうか。
でも今日は、メルティーとマリクの大事な婚約式だ。流石に家族の一員として、婚約式に参加しないわけにはいかない。
誤算だったのが、部屋が白くて、式というよりも儀式らしいということだけだ。
アシェルは神様の前で公的文書を作って終わりとか、そういうものだと思っていたのだ。
「いえ、メルの大事な時に、僕だけ同席しないわけにはいきません。僕だけ外に出たら、事情を知らないニクス様やキルル様に心配をかけてしまうかもしれませんし。……ただ……手を……繋いでもらってても良いですか……?もし不謹慎なのだとしたら、近くに居て頂けるだけでも良いので。」
儀式の間と名付けられた部屋で執り行うくらいなのだから、厳かなものかもしれない。
そうなると手を繋いで参列など、小さな子供くらいしか許されないだろう。
それでも自分という存在が消えて無くなりそうな不安感に、優しい兄達を困らせるだけかもしれない我儘を言ってみる。
その我儘は聞き入れられ、左右から手を握られた。
優しい温もりに、少しだけ不安感が拭われた気がした。
「不謹慎なわけないだろう?遠慮なんてしなくて良いんだよ。」
「手を繋いでた方が落ち着くなら、その方が良いしな。ただ、無理はするなよ?」
「ありがとうございます。」
アシェルがにこりと微笑めば、ようやく二人は安心したようだ。
メルティーもマリクも白を基調とした正装をしていて、マリクは緊張しているのか耳も尻尾もピンと立っている。
メアリーはテイル夫妻に挨拶に行っていて、アベルは神官と何かを話しているようだった。
そのアベルが、何故かこちらへとやってくる。
「アシェ。気分が悪くなったりはしていないかい?」
不安ではあるが、どこか不調が出ているわけではない。
そのよく分からない質問に首を傾げていると、アベルが説明してくれる。
「神官から確認されたんだが、前世の記憶がハッキリと残っている記憶持ちほど、この空間は苦手みたいなんだ。授け子であれば、そんなことはないらしいんだけどね。毎年数名は病院に運ばれるようだし、私も患者から話を聞いた事がある。すっかり失念していたよ。アシェはしっかり記憶が残っているだろう?直ぐに倒れるほどではないかもしれないが、あまり顔色も良くない。」
顔色に関しては元々色白なため、この空間では余計に顔色が悪く見えているだけなのではないかと思う。
ただ、同じような記憶持ちが病院に運ばれるような状態になるという話は、アシェルを余計に不安にさせる。
「体調は問題ないです。ただ……不安感はあります。」
アシェルが素直に告げれば、アベルは「やっぱりそうか。」と呟いた。
「マリク殿は、アシェが記憶持ちだと知っているんだろう?それは神官やニクスとキルルに伝えてはダメかい?出来れば、アシェは婚約式の間は外で待っていたほうが良いと思うんだ。」
「話すのは、お父様が話した方が良いと判断されたなら構わないです。……でも、メルの婚約式です。僕だって、どなたかと婚約することになれば、ここで婚約式をするんですよね?だったら当事者の時に何かあるよりは、一度どんなものかを見ておくのは悪くないと思うのですが……。」
アシェルの言葉に、アベルは首を振る。
「いいや、記憶持ちの場合は儀式を行わない。婚約式はするが、当事者だったとしても記憶持ちは儀式に参加しないことになっているようだよ。ほんの僅かな記憶や、もう記憶が薄れてほとんど何も思い出せない場合を除いてね。」
神官と何かを話していたのは、その辺りのことを確認してくれていたのだろう。
わざわざ儀式をするほど婚約式は大切な事なのに、当事者であっても参加しないことになっているということは、それだけ今まで不具合があったということだろう。
メルティーの大切な節目なので参加したいという気持ちはあるが、無理やり参加してメルティーやマリク達に迷惑を掛けたくはなかった。
「僕が記憶持ちであることを話してくださって構いません。神官様が、僕は参加しない方が良いと言うのであれば、それに従います。」
「すまないね、アシェ。少し確認してくるから、待っていてくれるかい?もしここに居るのが辛いようなら、部屋の外に出ていても良いからね。」
アベルはまた神官の元へと戻っていく。
今度はテイル夫妻やメアリーも交えて、大人達で相談するようだ。
だが先程アベルから聞いた話を考えると、アシェルが婚約式に参加するのは難しいだろう。
「アシェ、大丈夫かい?」
アベルの話を聞いて、アレリオンやアルフォードも不安になったのだろう。
また心配そうに声を掛けられる。
「えぇ。お父様にも言いましたけど、現状どこかに不調が出ているわけじゃありませんから。でも、記憶持ちって案外不便なんですね。もし僕が参加できなかったら、婚約式がどんな感じだったかだけでも教えて貰えますか?」
「そんなの当たり前だろ。」
「……僕、結婚式まで参加できないってことは無いですよね?もし体調が悪くなる可能性があっても、メルやマリクの結婚式には出たいです。」
「それは心配しなくても良いと思うよ。王都で結婚式をする場合は、大聖堂のメインホールで行うから。最初に入った場所だね。あそこなら大丈夫そうだったかい?」
「えぇ、あそこは綺麗だなと思っただけでしたから。」
「なら心配は要らないな。父上達も話が終わったみたいだ。」
アルフォードの言葉に大人達の方を見れば、神官も伴ってこちらへとやってくる。
メルティーとマリクは司祭役となる神官と打ち合わせをしているようで、既に雛壇の上に居た。
「メイディーのご子息様が記憶持ちとのことですが、どなたでしょうか?」
「僕です。」
神官の問いに名乗りをあげれば、神官が目の前へとやってくる。
「非常に申し訳ないのですが、ほとんど完璧に前世の記憶をお持ちだと聞きました。何が起こるか分からないため、婚約式への参加を辞退していただかなくてはいけないのです。」
「父からそう聞きました。無理を言うつもりもありません。」
「ご理解いただきありがとうございます。それともう一つ。儀式に必要になりますので、こちらに血を一滴だけ、頂いでも良いでしょうか?」
どんな儀式内容なのか分からないが、家族の血が必要らしい。
神官の言葉に頷いて差し出された針で人差し指に穴を開け、そこから垂れてきた血の雫を、水のようなものが張られた銀椀の中へ落とす。
儀式だと言っているし、聖杯だったりするのだろうか。
「ありがとうございます。後程もう一人神官が参りますので、控室へとご案内いたしますね。」
「いえ、こちらこそありがとうございます。」
神官と二人、お互いに頭を下げ合って、神官は案内人を呼ぶためか儀式の間を出て行った。
「アシェル。あたしたちにまで教えてくれてありがとうね。ただ、今も無理をしていたりはしないかい?」
「キルル様、今は特になんともありません。ありがとうございます。でも、折角の婚約式に水を差してしまって申し訳ありません。」
「アシェル殿が気にすることではないよ。身体の方が大事だからね。これから親戚になるのだし、遠慮や我慢はしなくて良いからね。それと今度、アシェル殿のいた世界ではどんな魔道具があったのか教えてくれるかい?面白そうなものがあれば、新商品として開発できるかもしれないからね。」
商魂逞しいニクスに、ふふっと笑いが零れる。
二人はアシェルが記憶持ちだと知っても、今までと変わりなかった。
神官も記憶持ちがという話をするくらいだし、書物に残っていないだけで、案外記憶持ちだと言うことは隠すような事でもないのかもしれないと思えてくる。
特に【シーズンズ】で行われる会話は、記憶持ちだとばらしてしまった方が楽しくお喋りできるのかもしれない。
「ニクス様も、ありがとうございます。魔法が存在しなかったので魔道具とは少し違いますが、僕の話が役に立ちそうであれば喜んで。」
「約束だよ。あぁ、どんなものがあったのか、今から楽しみだなぁ。」
ニクスの青灰色で細い尻尾が、ゆらゆらと楽しそうに揺れている。
本当に獣人の気持ちは、獣的身体的特徴に如実に現れるようだ。
「ニクス。お前だけズルくないか?私だって、アシェの話をもっと聞きたいのに。」
「なんだ。アベルだって一緒に聞けばいいじゃないか。何度も話させるより、その方が効率的だろう?」
「それもそうだね。アシェ、ニクスに話をする時は、私も同席して構わないかい?」
「えぇ、勿論です。」
そんないつもと変わりない様子のアベルとニクスに、二人の妻はどんな時もマイペースねと苦笑する。
アシェルの元へ案内の神官がやってきて、アシェルは一人退室した。
綺麗で清潔感のある控室に通され、紅茶や茶菓子まで振舞われる。
案内してくれた神官によると少なからず記憶持ちは居て、それを隠して儀式に参加するとパニック症状を起こしたり、酷いと意識を失ったりするらしい。
原因は分からないが、そういった症状を起こす者には決まって前世の記憶があり、大聖堂側もそれを未然に防ぐために確認をしているそうだ。
それでも本人の申告が無く、家族にも打ち明けていない場合が多いので、年に何人も病院送りになるそうだ。
もし仮に記憶持ちが当事者だったとしても、先程のように血を分けて貰って、このように控室待機になるらしい。
案内してくれた後にそう丁寧な説明を受けて、無理に参加しなくて良かったと思ってしまう。
幸せなはずの婚約式で家族が倒れるなど、最悪な記憶になってしまうだろう。
婚約式の儀式自体は30分程度で終わった。
あの聖杯のようなものに本人や家族が血を垂らすだけで、あとは婚約の意志の確認や祝詞のようなものを唱えて終了したらしい。
恐らくだが、その血を垂らす行為に何か意味があるのだろう。
メルティーとマリクには退室したことを伝えていなかったので、婚約式後に謝罪しておいた。
二人ともアシェルの身体の方が大事だからと笑って許してくれた。
そして無事に婚約式が済んだので、各地の貴族たちへメルティーとマリクの婚約が伝わった。
実家に戻った日から、きっかり一週間後。
三月一日にメイディー家とテイル家の面々は、王都の北北西エリアにある大聖堂へとやってきていた。
全く神様へのお祈りをしたことが無いアシェルは、産まれて初めて大聖堂の中へ入った。
沢山の長椅子が並び、高い位置にあるステンドグラスがカラフルな光で床を彩っている。
大聖堂というと、教会のようなものだろうと思っていたのだ。
確かキリスト教は十字架に磔にされたキリストか、聖母マリアの像があるはずだ。宗派で変わると聞いた事がある。
だが、沢山の神々がいると言われているこの世界の大聖堂は、メインの聖堂の中に神を模したものは置かれていなかった。
でもそうなると民はどこに向かって祈りを捧げるのかと、キョロキョロと壁際の装飾なんかを確認していく。
好きな神に祈れるように、複数の装飾やモチーフ的なものがあるのかと思ったが、そう言ったものは見当たらなかった。
「アシェル、どうしたの?……孤児院が隣にあるし、落ち着かないかしら?」
キョロキョロする姿が気になったのだろう。
いきなりメアリーに話しかけられて跳ねた心臓を抑えながら、アシェルは疑問を口にする。
メアリーは神に祈ることがあるらしいので、アシェルの疑問に答えてくれそうな気がする。
「こっちの孤児院は聖堂がセットですけど、施設はそうじゃありませんでしたから。そうじゃなくて、皆どこに向かって祈りを捧げるんだろうと思いまして……。」
「どこへ?神様によ??」
どうもアシェルの質問は上手く通じなかったらしい。
きっとリリアーデなら分かってくれただろうが、こればかりは仕方ないことだ。
「その……神様の姿を模した銅像や、モチーフなどは無いのですか?前世ではお祈りといえば、そういう自分の信じる神様を模したものへ祈りを捧げるものだったので。」
「そうだったのね。そうね……アシェルの質問に答えるとするなら、王族と四大公爵家、四大辺境伯爵家の家紋が、そのモチーフにあたることになるのかしら。大体は、祈りを捧げたい神が加護する家の家紋を思い浮かべるように言われるわ。それと、一番前にあるテーブルの奥に、植木鉢があるのが判るかしら?」
丁寧に質問に答えてくれたメアリーに促されるように、アシェルは大聖堂の奥へと眼を凝らす。
確かに、植木鉢の中に小さな盆栽のような。何か樹木が植わっているのが見える。
「えぇ、分かります。」
「あれが人の誕生を司る、生命の神の使いが現世でとった姿だと言われているわ。各地にある聖堂の数だけ、あの植木鉢があるの。お世話をしなくても枯れず、でも大きく育つこともないものよ。神託が下る時は、朝日が昇るころに一枚だけ、金色の葉っぱがつくの。それを使って神官様が、儀式の中で生命の神の神託をお受けになるのよ。だから、そうね……普段聖堂に来た時のお祈りでは、あの植木鉢に向かってお祈りする人が多いんじゃないかしら。家でするお祈りは、その領地を統括する加護持ちの家紋よ。……これで答えになったかしら?」
アシェルの知りたいことをしっかり説明してくれたのに、メアリーは少しだけ不安そうだ。
お互い、こんなに沢山の言葉を交わしたことが無いので、こんなちょっとしたコミュニケーションも手探り状態だ。
「はい、ありがとうございます、メアリーお義母様。説明を聞くまで、あの植木鉢はただの飾りだと思ってました。」
アシェルがにこりと微笑んでお礼を言うと、メアリーがようやくほっと息を吐いた。
もしかして、どんどん質問されると思っていたのだろうか。
「アシェルのお役に立てたようで良かったわ。さぁ、婚約式が行われる儀式の間まで行きましょう。」
そういえばと周囲を見渡すと、大聖堂のメインホールにはアシェルとメアリーだけになっていた。
少しだけ先を歩くメアリーに、アシェルは付いていく。
「メルの婚約式のために来たのに、申し訳ありません。」
「良いのよ。旦那様もテイル家の皆様も、メイディーのことはよく知っていらっしゃるから。わたくしが残っていたのは、大聖堂に関してはわたくしが一番詳しいからだわ。道案内もだけれど、きっとわたくしならアシェルの疑問に答えられるだろうって旦那様は言っていたけれど……。何度も足を運んでいたわたくしが一番適任だったと言うだけで、特別詳しい訳ではないのよ。だからアシェルの疑問が、わたくしの答えられるもので良かったわ。」
「そうだったんですね。僕の為にすみません。」
「だから、アシェルは気にしなくて良いのよ。アシェルは家族に遠慮しすぎなのよ。……それはきっと、わたくしにも言えることだけれど。でも、この前アシェルの話を聞いて、旦那様に伝えるだけでなく、もっとわたくしも積極的に関わるべきだったと思ったわ。」
夫婦喧嘩で何か結論が出たのだろうか。
アシェルの話した内容は、きっとメアリーの思う教育方針とは違っていて、前世の記憶がさらにややこしくさせていたのだろう。
更にアベルはアシェルのメイディーらしさを抑えようとしてきたことが無いどころか、アシェルの考える限り、メイディーらしくなるための教育をされていた。
そしてアシェルはそれを嫌だと思ったことが無いし、自分の本質を磨いていただけだ。
もしアシェル達の知らないところで、アシェル達の為に色々と考えてアベルと話し合っていたのだとしたら、確かに喧嘩の原因にもなるだろう。
「メアリーお義母様も覚える事や、やらなくてはいけないことが沢山あったと思いますし。それこそ気になさる必要はないかと。」
「アシェルはわたくしのことも気遣ってくれるのね。……ごめんなさいね。きっと初めて会った時から、怯えさせてしまっているわよね。違うことは分かっているのに、わたくしにもどうにもできないの。——さぁ、着いたわ。この先が婚約式を行う儀式の間よ。」
後ろを歩くアシェルにはメアリーの表情は見えなかったが、きっと初めて会った時のことと、そしてドレスの時のことを謝られていることは分かった。
そして、そのことに悩んでいそうなことも。
メアリーの瞳に時々映り込む嫉妬の色が、何故宿るのかを知れるかと思ったのに。詳しい話を聞く前に会場についてしまったようだ。
メアリーとは初めてこんなに長く話したし、二人っきりだったのも初めてのことだ。
もしかしたら、今後メアリーと話す機会が増えれば、何故アシェルに嫉妬しているのか。その理由を知ることが出来るのだろうか。
神官たちが開いてくれた扉を潜ると、真っ白で中央に祭壇と思しき白い塊だけがある広い空間だった。
その白い塊の下だけが円形に高さがあって、雛段になっている。
儀式と言っていたし、あの雛段の上が婚約する二人と神官が立つ場所なのだろう。
何処に照明があるのか分からないが、全部が綺麗な真っ白な部屋はとても明るい。
白すぎて、僅かな光でも明るく感じているだけなのだろうか。
「あ、アシェ。この部屋は大丈夫かい?式自体はそんなに時間がかかるものじゃないんだけど。」
「もし嫌だったら、婚約式の間だけでも外に居るか?儀式の間があるのは知ってたけど、流石に中に入るのは初めてだから。分かってたらちゃんと教えておいたんだけど。」
アシェルがNMの毒に侵されていた時に、真っ白な部屋が嫌いだと言っていたからだろう。
アレリオンとアルフォードが心配して駆け寄ってきてくれた。
確かに一人でこの部屋に居ろと言われたら、とても不安で怖かっただろう。
病院の白さとも、薫が見ていた灰色の世界とも違う。
ただただ白すぎるだけの空間なのに、何故こんなにも不安になるのだろうか。
でも今日は、メルティーとマリクの大事な婚約式だ。流石に家族の一員として、婚約式に参加しないわけにはいかない。
誤算だったのが、部屋が白くて、式というよりも儀式らしいということだけだ。
アシェルは神様の前で公的文書を作って終わりとか、そういうものだと思っていたのだ。
「いえ、メルの大事な時に、僕だけ同席しないわけにはいきません。僕だけ外に出たら、事情を知らないニクス様やキルル様に心配をかけてしまうかもしれませんし。……ただ……手を……繋いでもらってても良いですか……?もし不謹慎なのだとしたら、近くに居て頂けるだけでも良いので。」
儀式の間と名付けられた部屋で執り行うくらいなのだから、厳かなものかもしれない。
そうなると手を繋いで参列など、小さな子供くらいしか許されないだろう。
それでも自分という存在が消えて無くなりそうな不安感に、優しい兄達を困らせるだけかもしれない我儘を言ってみる。
その我儘は聞き入れられ、左右から手を握られた。
優しい温もりに、少しだけ不安感が拭われた気がした。
「不謹慎なわけないだろう?遠慮なんてしなくて良いんだよ。」
「手を繋いでた方が落ち着くなら、その方が良いしな。ただ、無理はするなよ?」
「ありがとうございます。」
アシェルがにこりと微笑めば、ようやく二人は安心したようだ。
メルティーもマリクも白を基調とした正装をしていて、マリクは緊張しているのか耳も尻尾もピンと立っている。
メアリーはテイル夫妻に挨拶に行っていて、アベルは神官と何かを話しているようだった。
そのアベルが、何故かこちらへとやってくる。
「アシェ。気分が悪くなったりはしていないかい?」
不安ではあるが、どこか不調が出ているわけではない。
そのよく分からない質問に首を傾げていると、アベルが説明してくれる。
「神官から確認されたんだが、前世の記憶がハッキリと残っている記憶持ちほど、この空間は苦手みたいなんだ。授け子であれば、そんなことはないらしいんだけどね。毎年数名は病院に運ばれるようだし、私も患者から話を聞いた事がある。すっかり失念していたよ。アシェはしっかり記憶が残っているだろう?直ぐに倒れるほどではないかもしれないが、あまり顔色も良くない。」
顔色に関しては元々色白なため、この空間では余計に顔色が悪く見えているだけなのではないかと思う。
ただ、同じような記憶持ちが病院に運ばれるような状態になるという話は、アシェルを余計に不安にさせる。
「体調は問題ないです。ただ……不安感はあります。」
アシェルが素直に告げれば、アベルは「やっぱりそうか。」と呟いた。
「マリク殿は、アシェが記憶持ちだと知っているんだろう?それは神官やニクスとキルルに伝えてはダメかい?出来れば、アシェは婚約式の間は外で待っていたほうが良いと思うんだ。」
「話すのは、お父様が話した方が良いと判断されたなら構わないです。……でも、メルの婚約式です。僕だって、どなたかと婚約することになれば、ここで婚約式をするんですよね?だったら当事者の時に何かあるよりは、一度どんなものかを見ておくのは悪くないと思うのですが……。」
アシェルの言葉に、アベルは首を振る。
「いいや、記憶持ちの場合は儀式を行わない。婚約式はするが、当事者だったとしても記憶持ちは儀式に参加しないことになっているようだよ。ほんの僅かな記憶や、もう記憶が薄れてほとんど何も思い出せない場合を除いてね。」
神官と何かを話していたのは、その辺りのことを確認してくれていたのだろう。
わざわざ儀式をするほど婚約式は大切な事なのに、当事者であっても参加しないことになっているということは、それだけ今まで不具合があったということだろう。
メルティーの大切な節目なので参加したいという気持ちはあるが、無理やり参加してメルティーやマリク達に迷惑を掛けたくはなかった。
「僕が記憶持ちであることを話してくださって構いません。神官様が、僕は参加しない方が良いと言うのであれば、それに従います。」
「すまないね、アシェ。少し確認してくるから、待っていてくれるかい?もしここに居るのが辛いようなら、部屋の外に出ていても良いからね。」
アベルはまた神官の元へと戻っていく。
今度はテイル夫妻やメアリーも交えて、大人達で相談するようだ。
だが先程アベルから聞いた話を考えると、アシェルが婚約式に参加するのは難しいだろう。
「アシェ、大丈夫かい?」
アベルの話を聞いて、アレリオンやアルフォードも不安になったのだろう。
また心配そうに声を掛けられる。
「えぇ。お父様にも言いましたけど、現状どこかに不調が出ているわけじゃありませんから。でも、記憶持ちって案外不便なんですね。もし僕が参加できなかったら、婚約式がどんな感じだったかだけでも教えて貰えますか?」
「そんなの当たり前だろ。」
「……僕、結婚式まで参加できないってことは無いですよね?もし体調が悪くなる可能性があっても、メルやマリクの結婚式には出たいです。」
「それは心配しなくても良いと思うよ。王都で結婚式をする場合は、大聖堂のメインホールで行うから。最初に入った場所だね。あそこなら大丈夫そうだったかい?」
「えぇ、あそこは綺麗だなと思っただけでしたから。」
「なら心配は要らないな。父上達も話が終わったみたいだ。」
アルフォードの言葉に大人達の方を見れば、神官も伴ってこちらへとやってくる。
メルティーとマリクは司祭役となる神官と打ち合わせをしているようで、既に雛壇の上に居た。
「メイディーのご子息様が記憶持ちとのことですが、どなたでしょうか?」
「僕です。」
神官の問いに名乗りをあげれば、神官が目の前へとやってくる。
「非常に申し訳ないのですが、ほとんど完璧に前世の記憶をお持ちだと聞きました。何が起こるか分からないため、婚約式への参加を辞退していただかなくてはいけないのです。」
「父からそう聞きました。無理を言うつもりもありません。」
「ご理解いただきありがとうございます。それともう一つ。儀式に必要になりますので、こちらに血を一滴だけ、頂いでも良いでしょうか?」
どんな儀式内容なのか分からないが、家族の血が必要らしい。
神官の言葉に頷いて差し出された針で人差し指に穴を開け、そこから垂れてきた血の雫を、水のようなものが張られた銀椀の中へ落とす。
儀式だと言っているし、聖杯だったりするのだろうか。
「ありがとうございます。後程もう一人神官が参りますので、控室へとご案内いたしますね。」
「いえ、こちらこそありがとうございます。」
神官と二人、お互いに頭を下げ合って、神官は案内人を呼ぶためか儀式の間を出て行った。
「アシェル。あたしたちにまで教えてくれてありがとうね。ただ、今も無理をしていたりはしないかい?」
「キルル様、今は特になんともありません。ありがとうございます。でも、折角の婚約式に水を差してしまって申し訳ありません。」
「アシェル殿が気にすることではないよ。身体の方が大事だからね。これから親戚になるのだし、遠慮や我慢はしなくて良いからね。それと今度、アシェル殿のいた世界ではどんな魔道具があったのか教えてくれるかい?面白そうなものがあれば、新商品として開発できるかもしれないからね。」
商魂逞しいニクスに、ふふっと笑いが零れる。
二人はアシェルが記憶持ちだと知っても、今までと変わりなかった。
神官も記憶持ちがという話をするくらいだし、書物に残っていないだけで、案外記憶持ちだと言うことは隠すような事でもないのかもしれないと思えてくる。
特に【シーズンズ】で行われる会話は、記憶持ちだとばらしてしまった方が楽しくお喋りできるのかもしれない。
「ニクス様も、ありがとうございます。魔法が存在しなかったので魔道具とは少し違いますが、僕の話が役に立ちそうであれば喜んで。」
「約束だよ。あぁ、どんなものがあったのか、今から楽しみだなぁ。」
ニクスの青灰色で細い尻尾が、ゆらゆらと楽しそうに揺れている。
本当に獣人の気持ちは、獣的身体的特徴に如実に現れるようだ。
「ニクス。お前だけズルくないか?私だって、アシェの話をもっと聞きたいのに。」
「なんだ。アベルだって一緒に聞けばいいじゃないか。何度も話させるより、その方が効率的だろう?」
「それもそうだね。アシェ、ニクスに話をする時は、私も同席して構わないかい?」
「えぇ、勿論です。」
そんないつもと変わりない様子のアベルとニクスに、二人の妻はどんな時もマイペースねと苦笑する。
アシェルの元へ案内の神官がやってきて、アシェルは一人退室した。
綺麗で清潔感のある控室に通され、紅茶や茶菓子まで振舞われる。
案内してくれた神官によると少なからず記憶持ちは居て、それを隠して儀式に参加するとパニック症状を起こしたり、酷いと意識を失ったりするらしい。
原因は分からないが、そういった症状を起こす者には決まって前世の記憶があり、大聖堂側もそれを未然に防ぐために確認をしているそうだ。
それでも本人の申告が無く、家族にも打ち明けていない場合が多いので、年に何人も病院送りになるそうだ。
もし仮に記憶持ちが当事者だったとしても、先程のように血を分けて貰って、このように控室待機になるらしい。
案内してくれた後にそう丁寧な説明を受けて、無理に参加しなくて良かったと思ってしまう。
幸せなはずの婚約式で家族が倒れるなど、最悪な記憶になってしまうだろう。
婚約式の儀式自体は30分程度で終わった。
あの聖杯のようなものに本人や家族が血を垂らすだけで、あとは婚約の意志の確認や祝詞のようなものを唱えて終了したらしい。
恐らくだが、その血を垂らす行為に何か意味があるのだろう。
メルティーとマリクには退室したことを伝えていなかったので、婚約式後に謝罪しておいた。
二人ともアシェルの身体の方が大事だからと笑って許してくれた。
そして無事に婚約式が済んだので、各地の貴族たちへメルティーとマリクの婚約が伝わった。
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