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第四章 王立学院中等部三年生
223 留学生の居る生活③
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Side:クリストファー15歳 春
「そもそもメイディーは無茶をする性質だろう。それを強制的に止めることが出来るように、我が家の跡取りだけが仕込まれる技術だよ。うちはコレってだけで、他がどうかは知らないけどね。死ぬほど大量に睡眠薬を飲まされた時には、長男で産まれたことを恨んだこともあるけど。まぁ、今ならそれを乗り越えて良かったと思うかな。……って流石に寝たかな。」
ようやくすぅすぅと寝息をたて始めたアシェルの身体を抱えて、誰かが来た時に押し倒せば、アシェルの寝込みを襲っているように見えるような場所へ移動する。
そして「『探査魔法』。」を使って、生徒会室に誰か来ないか見張る。
ミルトンは魔法よりも武術寄りの家なので、物凄く上手に魔法が使えるわけではない。だが人物の特定までは出来なくても、人数と到着のタイミングくらいは分かる。
ついでに場所をずらして魔法で温め直したアシェルの飲みかけの紅茶に、一番弱い睡眠薬の入ったカプセルを溶かしておく。
一番弱いと言っても、全量摂取すれば意識が朦朧として、血中濃度がしっかりあがるころには夢の中にいるくらいには効く睡眠薬だ。
カプセルは噛んで割れば口移しでも飲ませられるが、飲めるけれど熱いと感じるくらい高めの温度なら溶けてくれる。
そのカプセルの入ったシートも、そっとティーポットの陰に隠して置いておく。
アルフォードが居ないので直ぐに判る人間はいないだろうが、クリストファーがアシェルに薬を盛ったと明確に分からせるための小細工だ。
ミルトンの長男は、遊び人で悪役である必要がある。自治会の中の必要悪だ。
綺麗ごとばかりではない世界では、その方が円滑に進められることもあるのだ。
それに仮にアシェルが女だと公表した時に、同意の上で二人っきりになっていたと思われないようにしなくてはならない。二人っきりで男の前で寝ていたなど、醜聞以外の何物でもないのだから。
「はぁ……ほんと損な役回りだよね。せめて最初から知ってれば、嫌われないようにアプローチしたのに。あぁでも、それだと本気にならなかったかもだなぁ。……まぁ、シオンのことを知っても、嫌わないで仲良くしてくれてるだけ良しとするかな。」
ただでさえ細い身体だと思っていたのに、ほとんど何も食べていないのだろう。
手首も腰も、クリストファーが初めてアシェルに口付けをした時よりも細くなってしまっている。
寝不足で胃が受け付けないのか、それともストレスなのか。またはそのどちらもなのか。クリストファーには分からない。
男にしては細いのはメイディーの線の細さのせいかと思っていたが、女なら細くて当たり前だ。
あの時クリストファーが見た革の胸当ては、皮膚の保護ではなく胸潰しなのだろう。
あの時はメイディー直系の記憶に残れば良いと思っていたし、好みのタイプだったのであわよくば落とすところまでは楽しみたかったのだが、途中で邪魔が入って良かったと切実に思う。
流石に女性の肌を、あんな誰が来てもおかしくないところで晒させるわけにはいかない。
肌艶だって良く無いし、化粧も日に日に濃くなっていく。
最初は目元のクマを隠すだけのファンデーションが。次第にそこにコンシーラーまで使うようになって。今は顔色の悪さを隠すためか、色白な肌でもおかしくない程度にチークまで使っている。
かなりナチュラルに見えるように化粧をされているが、見る人が見ればすぐに気づくだろう。
何故あれだけいつも近くに居るアークエイドが気付いていないのか、不思議で仕方がない。
アシェルを起こしてしまわないように気をつけながら、クリストファーに体重を掛けさせたまま手や肩、背中をマッサージしていく。
無理やり寝かせた女性の身体を触るのは申し訳ないが、これで少しでも疲れが取れると良いなと思いながら。
別にいかがわしいことをしているわけではないのに、時折漏れる「んぅ。」というアシェルの艶っぽい声が、とても心臓に悪い。
男好きで有名ではあるが、クリストファーの恋愛対象は女性だ。
男性相手はあくまでも男好きだと見せる為のお芝居で、寝台に連れ込むまでの過程は楽しんでいるが、その先に興味はない。
シオンの場合は本当に男が好きなのか。それともただ、自分の武器で引っかけやすい相手が男だから男と遊んでいるのか分からないが。
飲ませた薬的には朝までぐっすりでもおかしくないのだが、メイディーの体質では夜には起きてしまうだろう。
それでも起きた時に少しでも顔色が良くなっていれば良いなと、マッサージを続ける。
そうやってマッサージを続けていると、ようやくクリストファーの探査魔法に反応があった。
一人でも二人でもなく、予想外の三人だ。
とりあえずは保護者に、アシェルを部屋まで連れて帰ってもらえればいい。きっと侍女に連絡も取ってくれるだろう。
アスラモリオンの皇子も一緒なのだろうかと考えながら、アシェルの身体を優しくソファに横たえる。
それからその身体に覆いかぶさった。
ソファのアームレストのお陰で、アシェルにキスをしているように見えるはずだ。
殴られるのは覚悟の上である。
首を刎ねられて即死じゃないことを願うばかりだ。
生徒会室の扉が開いた。
その音で初めて誰かが来たことに気付いたかのように、クリストファーは顔を上げる。
「誰だい?邪魔しないでほしいんだけどなぁ。」
クリストファーの視線の先に居たのは、リリアーデにデューク。そして何故か弟のシオンまで一緒だった。
想定外のメンバーと、弟の笑みの消えた怒りの表情に、クリストファーは咄嗟に「『障壁』。」を唱えた。
それでも頬を殴られた衝撃は吸収しきれなくて、壁際まで吹き飛ばされる。吸収しきれなかった衝撃が全身を襲う。
間違いなく身体強化を使って、本気で殴ってきている。
その殴ってきたシオンは、アシェルとクリストファーの間に立ち塞がった。
その間にアシェルに駆け寄った双子が寝衣の乱れが無いかや、アシェルの状態を確認しているようだ。それからデュークだけが生徒会室を出て行く。
残ったリリアーデの位置から、魔法が得意ではないクリストファーにも分かる程の魔力の乱れを感じる。怒りでコントロールできていない魔力が、出口を求めて漏れているのだろう。
正直なところ、アークエイドに見つかるよりも厄介な相手に見つかってしまったと思う。
「兄様。アシェル様にナニをしてたんですか?」
「ナニって……見ての通りなんだけどね。」
「真面目に答えてください。アレ、父様が飲んでる睡眠薬ですよね?……アシェル様にナニをしたんですか?」
流石にシオンは直ぐに気づいたらしい。
にこりともせずに『ストレージ』からブロードソードを取り出した。
剣の腕ではまだまだ負けるつもりはないが、それは平常時だ。
少なからずクリストファー自身にも睡眠薬は効いているので、今殺り合えば間違いなくクリストファーが負ける。
押収されて確認されるくらいの時間はあると思っていたので、誤算である。
アシェルの状態に気付いている弟達に、睡眠薬を盛ったのが悪意を持ってだと思ってもらうには、少し大げさに言い訳を用意しなくてはいけない。
間違ってもシオンに、ミルトンの役割を知られるわけにはいかないのだ。
「なんだ、シオンは気付いてるじゃないか。アシェル君に睡眠薬を飲んでもらっただけだよ。」
「アシェル様がこんな昼間に。アークエイド様の護衛をほったらかして、自分から睡眠薬を飲むわけがないですよね。……質問を変えます。どうやってアシェル様に睡眠薬を飲ませたんですか?それと、眠らせたアシェル様を襲っているように見えました。何をしたんですか?」
「それを教えると、手の内を明かしてしまうようで嫌だなぁ。僕には僕の楽しみ方があるんだから。シオンだってそうだろう?」
とぼけてみせたが、首筋にひんやりとした切っ先が添えられる。
これ以上誤魔化せば、躊躇いなくその刃は首を切り裂くだろう。
シオンは本気でアシェルのことを慕っている。家族以外でようやく素のシオンを受け入れてくれる人が居たのだ。きっと男とか女とか、そんなことは関係ないだろう。
これがアシェルの同意の上か、まだアシェルの意識があればここまで怒らせることは無かったのだろう。
シオンの奥に、デュークがイザベルを連れて戻ってきたのが見える。
それからデュークはアシェルには背を向けて、扉から余計な人が入ってこないかの確認にあたるようだ。
——恐らく幼馴染である彼らは知っているのだろう。
「とぼけないでください、兄様。僕の質問の意味が分かりませんでしたか?」
「はぁ……アシェル君の紅茶に薬が入ってるよ。僕の方が先にここに着いたから、アシェル君は僕が紅茶を淹れるところは見てないしね。それにまだキスまでしかしてないよ。折角これからって時に、邪魔が入ったからね。」
「邪魔だって……?兄様、自分が何をしたのかっ!」
「シオン君。アシェの着衣の乱れは無いし、本当に寝てるだけよ。それ以上怒る必要はないわ。」
殴り掛かってきそうなシオンを、リリアーデが止めた。
気付けば魔力の乱れも感じない。
首筋に当てられた切っ先が降り、シオンはアシェルの元へと駆け寄る。
一先ず、弟に殺されるという未来は回避できたようだ。
近付くのは許されないだろうから、立ち上がってそのまま壁にもたれる。
というよりも、出来れば動きたくないし、早く寝台で休みたい。部屋に戻るとしても、もう一度拮抗薬を内服する必要があるだろう。
「先輩。アシェのティーカップはどちらですか?」
「扉に近いほうのカップだよ。」
持ち帰って成分を確認するのかと思って教えたのだが、聞いてきたリリアーデは「デューク、もしもの時はよろしくね。」と一言かけて、そのティーカップを傾けた。
先程睡眠薬を入れていると話したばかりなのに、何故躊躇いもなくそれを口にできるのか、全く訳が分からない。
「リリィ!?お前バカなのか!?早く吐きだせっ!」
「……リリアーデ嬢。せめてソファに座ったほうが良い。メイディーへの効きは悪くても、普通ならもう意識が朦朧として寝てしまってもおかしくない薬だ。倒れてしまうよ。」
リリアーデは残っていた紅茶を全て飲み干してしまっている。
デュークが駆け寄ってくれたので大丈夫だと思うが、立ったまま飲むような代物ではない。
「あら、お気遣いいただきありがとうございます。確かに割と即効性のある強めの睡眠薬みたいね。でも……ってところかしら。確かに今横になればぐっすり眠れるかも?とは思うけど、わたくしにはこれくらい問題なさそうね。はぁ……前世に限らず、こっちでも睡眠薬は効きにくいのかしら。まぁでも、横になれば眠れそうって思うだけマシね。」
睡眠薬への耐性に前世は関係ないと思うのだが、リリアーデは一人で納得してしまった。
含みを持たせた言い方をしたのは、クリストファーの思惑に気付いているのだろうか。
それからリリアーデは出しておいた薬のシートを片手に、睡眠薬の影響など全く受けていない足取りでこちらへ歩いてくる。
「クリストファー先輩。コレ、貰っても良いかしら?わたくしに効きそうな睡眠薬って、物凄く貴重なのよね。それに、もう1シート持ってらっしゃるでしょう?そちらもいただける?——アシェが混入に気付かないわけないし、この程度で効くわけないもの。——」
この程度というほど弱くはない薬なのだが、確かにアシェルに効かせるには弱すぎる薬だ。
「——シオンにはばらさないでくれ。——うーん。仕方ないか。お望み通り残りの薬もあげるよ。ただ、いくら効きが悪いといっても、歩いて戻るのはお勧めしないね。これでもかなり強いほうなんだよ?アシェル君が寝ちゃうくらいには。——魔力を乱してやる必要はあるけどね。——メイディーじゃないリリアーデ嬢がまとめて飲むのも良く無いし、飲むなら1カプセルだけを寝台の上で飲むようにしてね。倒れて怪我して、僕の渡した薬のせいだと言われても困ってしまうから。」
「そうなのね、分かったわ。寝れない時に試しに飲んでみるわね。用法用量は守るから安心してちょうだい。それと……起きたアシェに怒られたら、甘んじてそれを受けて頂戴ね。命までは取られないと思うけど、怒ってないとは限らないから。もし次に同じようなことをクリストファー先輩がしたら、その時はわたくしも容赦しないわ。シオン君も。あとは起きたアシェに任せましょう。アシェは無事だったんだから、それで良いでしょう?」
恐らくだが、次に薬を盛る時はリリアーデがやってくれるのだろう。
一部本気で自分用に使おうと思っているのかもしれないが、状況を理解したように見えるのにクリストファーはこれ以上手を出すなと言ってきたのだ。
「……リリアーデ様がそうおっしゃるのなら……。でも、兄様。僕は兄様を許したわけじゃありませんからね?次にアシェル様に同じようなことをしたら、その首はいただきます。同意のない相手を無理やり寝かせて襲うなんて、人として最低のことですから。」
「肝に銘じておくよ。」
あとはどうやってアシェルを連れて帰るかを話している。
少しぼんやりする頭で、それを黙って聞いていた。
この中で魔法が一番上手いのがリリアーデで、次がイザベルのようだ。
アシェルとそれを抱えた人間に上手く認識阻害と気配遮断をかけたまま、不審者扱いされずに寮まで戻れるだろうかと相談しているようだ。
普段ならここまで神経質にならないのだろうが、恐らく王族と皇族の見えない護衛達対策だろう。
コンコンと生徒会室の扉が叩かれた。
本命の保護者かと一瞬思うが、生徒会役員のアークエイドがノックをするわけがない。
「失礼します。アシェル・メイディー殿はいらっしゃいますでしょうか?」
ハッキリと通る男性の声だ。
少なくともクリストファーに聞き覚えは無い。
「どちら様でしょうか?用件は中で伺いますね。」
シオンが先程までとは違う、可愛らしい微笑みと声で応対を始める。
わざわざ扉を開けに行ったのは、扉付近から先へは進ませないためだろう。
だがシオンが扉を開いた先には誰もおらず、シオンは首を傾げながら扉を閉めた。
パタンと扉が音を立てて閉まると、いつの間にか白騎士の男が生徒会室の扉の前に居た。
アークエイドの見えない護衛の一人だろう。
「お姿を見せるのが遅くなってしまって申し訳ございません。ヒューナイト王国、アークエイド・ナイトレイ第二王子殿下の近衛騎士を務めているダニエルと申します。いつもの時間になってもアシェル殿がお戻りになられないので、どこかでお倒れになっているのではないかと思って探しにまいりました。……あぁ、殿下は何もご存知ありませんので、一時的に護衛を離れているのは内密にお願いしますね。私が個人的にアシェル殿を探しに来たことが知られたら、大人げない殿下に嫉妬されてしまいますから。」
敬礼して真面目に自己紹介と理由を話したと思ったら、最後には人の良い笑みを浮かべ親しみやすさを与えてきた。
かなり社交慣れしているので、貴族出身だろう。
だが近衛騎士は基本的に家名を名乗らないし、探ってはいけないことになっている。知っていても言わないのがマナーだ。
恐らくこの家の出身だろうなという当たりはつけているが、近衛騎士としてこの場にいるダニエルは聞かれても誤魔化すだけだろう。
「ダニエル様は確かにアークエイド様の護衛です。わたくしも顔合わせはしておりますので、間違いないですわ。」
イザベルの補足に続いて、リリアーデが口を開いた。
「ダニエル様がアークに隠していてアークが何も知らないのは、アシェがそれを望んだからかしら?」
「ダニエルで結構です。はっきりとお聞きしたことはございませんが、私はそう受け取っております。そもそも、殿下がお気づきになっていないことがおかしいのですけれどね。ご自身の公務で忙しいのは分かりますが、どうやら二年間の平穏な学院生活で、平和ボケされてしまったようです。さて、本来私は皆様に見えてはいけないものなので、ご提案です。私がアシェル殿をお部屋まで運ばせていただくのはどうでしょう?イザベル様がいらっしゃれば問題ありませんし、お部屋の前まででも構いません。アシェル殿がお目覚めになられましたら、本日は我々が対応することと、手を出すようであれば、本日のことをご報告するとお伝えください。折角お休みになられていますし、これで大人しくなられるはずですから。」
「何故運ぼうとしていたことを知っている。」
「皆様はもう少し警戒心を持たれるべきですよ。廊下に居ればお話は聞こえておりましたし、我々を感知できないのであれば不用意に扉を開けるべきではありません。特に王族・皇族、それぞれの見えない護衛、それからメイディー直系で陰の護衛と言われるアシェル殿。誰かを名指しで指名された場合はお気を付けください。私のように本当に知り合いであれば良いですが、今年は例年とは違いますから。南から余計なものが沢山飛んできていて、こちらとしてはいい迷惑なんですがね。」
随分と情報をばら撒く近衛騎士だ。
ここに居るメンバーは情報を漏らさないと確信しているのかもしれないが、そうであるならば少なくともクリストファーとシオンの居ないところで話すべきだと思う。
どう考えても、ただの侯爵家で知人でしかないミルトン家が聴いていい話ではない。
それに口ぶり的に、クリストファーの演技も見抜かれていそうだ。
そもそも、いつから生徒会室の前に居たのかという問題もある。
クリストファーの視線に気づいたのか、ダニエルがこちらに向かって微笑みかけてくる。
「今回の任にあたり、クリストファー殿がご存知の情報までは私も知っておりますよ。誰がどこまでご存知なのかもね。」
「別に僕は何も言ってないよ。少し信用しすぎだとは思ったけれどね。」
「ご忠告ありがとうございます。」
つまりは全て聞いていたということだ。
クリストファーももう少し周囲に注意を配らなくてはいけない。
結局ダニエルがアシェルを抱えて見えなくなり。少し気だるげなリリアーデはデュークに強制的に抱えられ、イザベルに見えなくしてもらったようだ。
それぞれ生徒会室を出て行く中、シオンだけが立ち止まる。
「兄様……今回のこと。何か弁明があるのならば聞いておきます。」
「別に見たままだよ。アークエイド君の注意が離れている今なら、アシェル君を手に入れられるんじゃないかと思っただけさ。」
「そうですか。……僕は兄様を軽蔑したくないので、二度とこんな真似はしないでください。では。」
今度こそシオンも出て行って、広い生徒会室に一人になる。
「ほんと……損な役回りだよね。」
そうは思っても、シオンはミルトンを継ぐ訳ではないのだから、やっぱり教えてあげるわけにはいかない。
家族思いのシオンのことだから、教えてしまったらきっとミルトンの役割に拘ってしまうだろう。
せっかくアシェルと仲が良いのだから、余計なことは考えずにシオンを理解してくれる友人達との友情を育んでほしい。
シオンが他人に甘えて愛情を貰おうとするようになったのは、少なからず訓練をしていたクリストファーに母親が付きっきりになってしまったせいでもあるのだから。
「そもそもメイディーは無茶をする性質だろう。それを強制的に止めることが出来るように、我が家の跡取りだけが仕込まれる技術だよ。うちはコレってだけで、他がどうかは知らないけどね。死ぬほど大量に睡眠薬を飲まされた時には、長男で産まれたことを恨んだこともあるけど。まぁ、今ならそれを乗り越えて良かったと思うかな。……って流石に寝たかな。」
ようやくすぅすぅと寝息をたて始めたアシェルの身体を抱えて、誰かが来た時に押し倒せば、アシェルの寝込みを襲っているように見えるような場所へ移動する。
そして「『探査魔法』。」を使って、生徒会室に誰か来ないか見張る。
ミルトンは魔法よりも武術寄りの家なので、物凄く上手に魔法が使えるわけではない。だが人物の特定までは出来なくても、人数と到着のタイミングくらいは分かる。
ついでに場所をずらして魔法で温め直したアシェルの飲みかけの紅茶に、一番弱い睡眠薬の入ったカプセルを溶かしておく。
一番弱いと言っても、全量摂取すれば意識が朦朧として、血中濃度がしっかりあがるころには夢の中にいるくらいには効く睡眠薬だ。
カプセルは噛んで割れば口移しでも飲ませられるが、飲めるけれど熱いと感じるくらい高めの温度なら溶けてくれる。
そのカプセルの入ったシートも、そっとティーポットの陰に隠して置いておく。
アルフォードが居ないので直ぐに判る人間はいないだろうが、クリストファーがアシェルに薬を盛ったと明確に分からせるための小細工だ。
ミルトンの長男は、遊び人で悪役である必要がある。自治会の中の必要悪だ。
綺麗ごとばかりではない世界では、その方が円滑に進められることもあるのだ。
それに仮にアシェルが女だと公表した時に、同意の上で二人っきりになっていたと思われないようにしなくてはならない。二人っきりで男の前で寝ていたなど、醜聞以外の何物でもないのだから。
「はぁ……ほんと損な役回りだよね。せめて最初から知ってれば、嫌われないようにアプローチしたのに。あぁでも、それだと本気にならなかったかもだなぁ。……まぁ、シオンのことを知っても、嫌わないで仲良くしてくれてるだけ良しとするかな。」
ただでさえ細い身体だと思っていたのに、ほとんど何も食べていないのだろう。
手首も腰も、クリストファーが初めてアシェルに口付けをした時よりも細くなってしまっている。
寝不足で胃が受け付けないのか、それともストレスなのか。またはそのどちらもなのか。クリストファーには分からない。
男にしては細いのはメイディーの線の細さのせいかと思っていたが、女なら細くて当たり前だ。
あの時クリストファーが見た革の胸当ては、皮膚の保護ではなく胸潰しなのだろう。
あの時はメイディー直系の記憶に残れば良いと思っていたし、好みのタイプだったのであわよくば落とすところまでは楽しみたかったのだが、途中で邪魔が入って良かったと切実に思う。
流石に女性の肌を、あんな誰が来てもおかしくないところで晒させるわけにはいかない。
肌艶だって良く無いし、化粧も日に日に濃くなっていく。
最初は目元のクマを隠すだけのファンデーションが。次第にそこにコンシーラーまで使うようになって。今は顔色の悪さを隠すためか、色白な肌でもおかしくない程度にチークまで使っている。
かなりナチュラルに見えるように化粧をされているが、見る人が見ればすぐに気づくだろう。
何故あれだけいつも近くに居るアークエイドが気付いていないのか、不思議で仕方がない。
アシェルを起こしてしまわないように気をつけながら、クリストファーに体重を掛けさせたまま手や肩、背中をマッサージしていく。
無理やり寝かせた女性の身体を触るのは申し訳ないが、これで少しでも疲れが取れると良いなと思いながら。
別にいかがわしいことをしているわけではないのに、時折漏れる「んぅ。」というアシェルの艶っぽい声が、とても心臓に悪い。
男好きで有名ではあるが、クリストファーの恋愛対象は女性だ。
男性相手はあくまでも男好きだと見せる為のお芝居で、寝台に連れ込むまでの過程は楽しんでいるが、その先に興味はない。
シオンの場合は本当に男が好きなのか。それともただ、自分の武器で引っかけやすい相手が男だから男と遊んでいるのか分からないが。
飲ませた薬的には朝までぐっすりでもおかしくないのだが、メイディーの体質では夜には起きてしまうだろう。
それでも起きた時に少しでも顔色が良くなっていれば良いなと、マッサージを続ける。
そうやってマッサージを続けていると、ようやくクリストファーの探査魔法に反応があった。
一人でも二人でもなく、予想外の三人だ。
とりあえずは保護者に、アシェルを部屋まで連れて帰ってもらえればいい。きっと侍女に連絡も取ってくれるだろう。
アスラモリオンの皇子も一緒なのだろうかと考えながら、アシェルの身体を優しくソファに横たえる。
それからその身体に覆いかぶさった。
ソファのアームレストのお陰で、アシェルにキスをしているように見えるはずだ。
殴られるのは覚悟の上である。
首を刎ねられて即死じゃないことを願うばかりだ。
生徒会室の扉が開いた。
その音で初めて誰かが来たことに気付いたかのように、クリストファーは顔を上げる。
「誰だい?邪魔しないでほしいんだけどなぁ。」
クリストファーの視線の先に居たのは、リリアーデにデューク。そして何故か弟のシオンまで一緒だった。
想定外のメンバーと、弟の笑みの消えた怒りの表情に、クリストファーは咄嗟に「『障壁』。」を唱えた。
それでも頬を殴られた衝撃は吸収しきれなくて、壁際まで吹き飛ばされる。吸収しきれなかった衝撃が全身を襲う。
間違いなく身体強化を使って、本気で殴ってきている。
その殴ってきたシオンは、アシェルとクリストファーの間に立ち塞がった。
その間にアシェルに駆け寄った双子が寝衣の乱れが無いかや、アシェルの状態を確認しているようだ。それからデュークだけが生徒会室を出て行く。
残ったリリアーデの位置から、魔法が得意ではないクリストファーにも分かる程の魔力の乱れを感じる。怒りでコントロールできていない魔力が、出口を求めて漏れているのだろう。
正直なところ、アークエイドに見つかるよりも厄介な相手に見つかってしまったと思う。
「兄様。アシェル様にナニをしてたんですか?」
「ナニって……見ての通りなんだけどね。」
「真面目に答えてください。アレ、父様が飲んでる睡眠薬ですよね?……アシェル様にナニをしたんですか?」
流石にシオンは直ぐに気づいたらしい。
にこりともせずに『ストレージ』からブロードソードを取り出した。
剣の腕ではまだまだ負けるつもりはないが、それは平常時だ。
少なからずクリストファー自身にも睡眠薬は効いているので、今殺り合えば間違いなくクリストファーが負ける。
押収されて確認されるくらいの時間はあると思っていたので、誤算である。
アシェルの状態に気付いている弟達に、睡眠薬を盛ったのが悪意を持ってだと思ってもらうには、少し大げさに言い訳を用意しなくてはいけない。
間違ってもシオンに、ミルトンの役割を知られるわけにはいかないのだ。
「なんだ、シオンは気付いてるじゃないか。アシェル君に睡眠薬を飲んでもらっただけだよ。」
「アシェル様がこんな昼間に。アークエイド様の護衛をほったらかして、自分から睡眠薬を飲むわけがないですよね。……質問を変えます。どうやってアシェル様に睡眠薬を飲ませたんですか?それと、眠らせたアシェル様を襲っているように見えました。何をしたんですか?」
「それを教えると、手の内を明かしてしまうようで嫌だなぁ。僕には僕の楽しみ方があるんだから。シオンだってそうだろう?」
とぼけてみせたが、首筋にひんやりとした切っ先が添えられる。
これ以上誤魔化せば、躊躇いなくその刃は首を切り裂くだろう。
シオンは本気でアシェルのことを慕っている。家族以外でようやく素のシオンを受け入れてくれる人が居たのだ。きっと男とか女とか、そんなことは関係ないだろう。
これがアシェルの同意の上か、まだアシェルの意識があればここまで怒らせることは無かったのだろう。
シオンの奥に、デュークがイザベルを連れて戻ってきたのが見える。
それからデュークはアシェルには背を向けて、扉から余計な人が入ってこないかの確認にあたるようだ。
——恐らく幼馴染である彼らは知っているのだろう。
「とぼけないでください、兄様。僕の質問の意味が分かりませんでしたか?」
「はぁ……アシェル君の紅茶に薬が入ってるよ。僕の方が先にここに着いたから、アシェル君は僕が紅茶を淹れるところは見てないしね。それにまだキスまでしかしてないよ。折角これからって時に、邪魔が入ったからね。」
「邪魔だって……?兄様、自分が何をしたのかっ!」
「シオン君。アシェの着衣の乱れは無いし、本当に寝てるだけよ。それ以上怒る必要はないわ。」
殴り掛かってきそうなシオンを、リリアーデが止めた。
気付けば魔力の乱れも感じない。
首筋に当てられた切っ先が降り、シオンはアシェルの元へと駆け寄る。
一先ず、弟に殺されるという未来は回避できたようだ。
近付くのは許されないだろうから、立ち上がってそのまま壁にもたれる。
というよりも、出来れば動きたくないし、早く寝台で休みたい。部屋に戻るとしても、もう一度拮抗薬を内服する必要があるだろう。
「先輩。アシェのティーカップはどちらですか?」
「扉に近いほうのカップだよ。」
持ち帰って成分を確認するのかと思って教えたのだが、聞いてきたリリアーデは「デューク、もしもの時はよろしくね。」と一言かけて、そのティーカップを傾けた。
先程睡眠薬を入れていると話したばかりなのに、何故躊躇いもなくそれを口にできるのか、全く訳が分からない。
「リリィ!?お前バカなのか!?早く吐きだせっ!」
「……リリアーデ嬢。せめてソファに座ったほうが良い。メイディーへの効きは悪くても、普通ならもう意識が朦朧として寝てしまってもおかしくない薬だ。倒れてしまうよ。」
リリアーデは残っていた紅茶を全て飲み干してしまっている。
デュークが駆け寄ってくれたので大丈夫だと思うが、立ったまま飲むような代物ではない。
「あら、お気遣いいただきありがとうございます。確かに割と即効性のある強めの睡眠薬みたいね。でも……ってところかしら。確かに今横になればぐっすり眠れるかも?とは思うけど、わたくしにはこれくらい問題なさそうね。はぁ……前世に限らず、こっちでも睡眠薬は効きにくいのかしら。まぁでも、横になれば眠れそうって思うだけマシね。」
睡眠薬への耐性に前世は関係ないと思うのだが、リリアーデは一人で納得してしまった。
含みを持たせた言い方をしたのは、クリストファーの思惑に気付いているのだろうか。
それからリリアーデは出しておいた薬のシートを片手に、睡眠薬の影響など全く受けていない足取りでこちらへ歩いてくる。
「クリストファー先輩。コレ、貰っても良いかしら?わたくしに効きそうな睡眠薬って、物凄く貴重なのよね。それに、もう1シート持ってらっしゃるでしょう?そちらもいただける?——アシェが混入に気付かないわけないし、この程度で効くわけないもの。——」
この程度というほど弱くはない薬なのだが、確かにアシェルに効かせるには弱すぎる薬だ。
「——シオンにはばらさないでくれ。——うーん。仕方ないか。お望み通り残りの薬もあげるよ。ただ、いくら効きが悪いといっても、歩いて戻るのはお勧めしないね。これでもかなり強いほうなんだよ?アシェル君が寝ちゃうくらいには。——魔力を乱してやる必要はあるけどね。——メイディーじゃないリリアーデ嬢がまとめて飲むのも良く無いし、飲むなら1カプセルだけを寝台の上で飲むようにしてね。倒れて怪我して、僕の渡した薬のせいだと言われても困ってしまうから。」
「そうなのね、分かったわ。寝れない時に試しに飲んでみるわね。用法用量は守るから安心してちょうだい。それと……起きたアシェに怒られたら、甘んじてそれを受けて頂戴ね。命までは取られないと思うけど、怒ってないとは限らないから。もし次に同じようなことをクリストファー先輩がしたら、その時はわたくしも容赦しないわ。シオン君も。あとは起きたアシェに任せましょう。アシェは無事だったんだから、それで良いでしょう?」
恐らくだが、次に薬を盛る時はリリアーデがやってくれるのだろう。
一部本気で自分用に使おうと思っているのかもしれないが、状況を理解したように見えるのにクリストファーはこれ以上手を出すなと言ってきたのだ。
「……リリアーデ様がそうおっしゃるのなら……。でも、兄様。僕は兄様を許したわけじゃありませんからね?次にアシェル様に同じようなことをしたら、その首はいただきます。同意のない相手を無理やり寝かせて襲うなんて、人として最低のことですから。」
「肝に銘じておくよ。」
あとはどうやってアシェルを連れて帰るかを話している。
少しぼんやりする頭で、それを黙って聞いていた。
この中で魔法が一番上手いのがリリアーデで、次がイザベルのようだ。
アシェルとそれを抱えた人間に上手く認識阻害と気配遮断をかけたまま、不審者扱いされずに寮まで戻れるだろうかと相談しているようだ。
普段ならここまで神経質にならないのだろうが、恐らく王族と皇族の見えない護衛達対策だろう。
コンコンと生徒会室の扉が叩かれた。
本命の保護者かと一瞬思うが、生徒会役員のアークエイドがノックをするわけがない。
「失礼します。アシェル・メイディー殿はいらっしゃいますでしょうか?」
ハッキリと通る男性の声だ。
少なくともクリストファーに聞き覚えは無い。
「どちら様でしょうか?用件は中で伺いますね。」
シオンが先程までとは違う、可愛らしい微笑みと声で応対を始める。
わざわざ扉を開けに行ったのは、扉付近から先へは進ませないためだろう。
だがシオンが扉を開いた先には誰もおらず、シオンは首を傾げながら扉を閉めた。
パタンと扉が音を立てて閉まると、いつの間にか白騎士の男が生徒会室の扉の前に居た。
アークエイドの見えない護衛の一人だろう。
「お姿を見せるのが遅くなってしまって申し訳ございません。ヒューナイト王国、アークエイド・ナイトレイ第二王子殿下の近衛騎士を務めているダニエルと申します。いつもの時間になってもアシェル殿がお戻りになられないので、どこかでお倒れになっているのではないかと思って探しにまいりました。……あぁ、殿下は何もご存知ありませんので、一時的に護衛を離れているのは内密にお願いしますね。私が個人的にアシェル殿を探しに来たことが知られたら、大人げない殿下に嫉妬されてしまいますから。」
敬礼して真面目に自己紹介と理由を話したと思ったら、最後には人の良い笑みを浮かべ親しみやすさを与えてきた。
かなり社交慣れしているので、貴族出身だろう。
だが近衛騎士は基本的に家名を名乗らないし、探ってはいけないことになっている。知っていても言わないのがマナーだ。
恐らくこの家の出身だろうなという当たりはつけているが、近衛騎士としてこの場にいるダニエルは聞かれても誤魔化すだけだろう。
「ダニエル様は確かにアークエイド様の護衛です。わたくしも顔合わせはしておりますので、間違いないですわ。」
イザベルの補足に続いて、リリアーデが口を開いた。
「ダニエル様がアークに隠していてアークが何も知らないのは、アシェがそれを望んだからかしら?」
「ダニエルで結構です。はっきりとお聞きしたことはございませんが、私はそう受け取っております。そもそも、殿下がお気づきになっていないことがおかしいのですけれどね。ご自身の公務で忙しいのは分かりますが、どうやら二年間の平穏な学院生活で、平和ボケされてしまったようです。さて、本来私は皆様に見えてはいけないものなので、ご提案です。私がアシェル殿をお部屋まで運ばせていただくのはどうでしょう?イザベル様がいらっしゃれば問題ありませんし、お部屋の前まででも構いません。アシェル殿がお目覚めになられましたら、本日は我々が対応することと、手を出すようであれば、本日のことをご報告するとお伝えください。折角お休みになられていますし、これで大人しくなられるはずですから。」
「何故運ぼうとしていたことを知っている。」
「皆様はもう少し警戒心を持たれるべきですよ。廊下に居ればお話は聞こえておりましたし、我々を感知できないのであれば不用意に扉を開けるべきではありません。特に王族・皇族、それぞれの見えない護衛、それからメイディー直系で陰の護衛と言われるアシェル殿。誰かを名指しで指名された場合はお気を付けください。私のように本当に知り合いであれば良いですが、今年は例年とは違いますから。南から余計なものが沢山飛んできていて、こちらとしてはいい迷惑なんですがね。」
随分と情報をばら撒く近衛騎士だ。
ここに居るメンバーは情報を漏らさないと確信しているのかもしれないが、そうであるならば少なくともクリストファーとシオンの居ないところで話すべきだと思う。
どう考えても、ただの侯爵家で知人でしかないミルトン家が聴いていい話ではない。
それに口ぶり的に、クリストファーの演技も見抜かれていそうだ。
そもそも、いつから生徒会室の前に居たのかという問題もある。
クリストファーの視線に気づいたのか、ダニエルがこちらに向かって微笑みかけてくる。
「今回の任にあたり、クリストファー殿がご存知の情報までは私も知っておりますよ。誰がどこまでご存知なのかもね。」
「別に僕は何も言ってないよ。少し信用しすぎだとは思ったけれどね。」
「ご忠告ありがとうございます。」
つまりは全て聞いていたということだ。
クリストファーももう少し周囲に注意を配らなくてはいけない。
結局ダニエルがアシェルを抱えて見えなくなり。少し気だるげなリリアーデはデュークに強制的に抱えられ、イザベルに見えなくしてもらったようだ。
それぞれ生徒会室を出て行く中、シオンだけが立ち止まる。
「兄様……今回のこと。何か弁明があるのならば聞いておきます。」
「別に見たままだよ。アークエイド君の注意が離れている今なら、アシェル君を手に入れられるんじゃないかと思っただけさ。」
「そうですか。……僕は兄様を軽蔑したくないので、二度とこんな真似はしないでください。では。」
今度こそシオンも出て行って、広い生徒会室に一人になる。
「ほんと……損な役回りだよね。」
そうは思っても、シオンはミルトンを継ぐ訳ではないのだから、やっぱり教えてあげるわけにはいかない。
家族思いのシオンのことだから、教えてしまったらきっとミルトンの役割に拘ってしまうだろう。
せっかくアシェルと仲が良いのだから、余計なことは考えずにシオンを理解してくれる友人達との友情を育んでほしい。
シオンが他人に甘えて愛情を貰おうとするようになったのは、少なからず訓練をしていたクリストファーに母親が付きっきりになってしまったせいでもあるのだから。
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