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第四章 王立学院中等部三年生
248 アシェルを狙うもの②
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Side:リリアーデ15歳 夏
リリアーデは一瞬でぐったりとしてしまったデュークを見て、取り乱していた。
ずっと看護師として働いていたリリアーデは、元気に見えてもあっけなく命が散ることを知っている。
デュークの顔色も、冷たくなって色の悪くなった指先も。浅い呼吸も何もかも。
それら一つ一つのサインが、デュークの死を予感させる。
アシェルが頑張ってくれているから大丈夫だと思うのに、身体の震えも涙も止まらない。
自分の半身の命が、目の前で消えてしまうのは怖い。
これでも沢山の命が散るところを見て来たのに、それがよく知る人物だというだけで平常心が保てなくなる。
それでもアシェルに看護師と言われて、気付く。
泣いている場合ではない。リリアーデにはやらなくてはいけない事がある。
リリアーデだから出来ることがある。
看護師が取り乱してしまったら、適切な処置を行えなかったら。
救えるはずの命が救えなくなるかもしれないのだ。
アシェルの苦しそうな表情が、惜しみなくデュークに魔力を割いてくれているのだと感じさせる。
ここでリリアーデが何もしないわけにはいかない。
ゴシゴシと目元を拭い、震えてしまいそうな殺気が満ちる中、デュークの身体を観察する。
涙は後から後から溢れてくるが、もうそれは無視だ。
呼吸は浅く、今にも止まりそうだ。
脈に触れようにも、手首にある橈骨動脈は触れても反応が無い。脚の付け根にある大腿動脈も駄目だ。
慌てて頸動脈に触れば、弱々しいながらも反応がある。
——血圧が下がりすぎている。
自室の扉を開け、大声で叫ぶ。
「セリア!セオドア!!寝室から掛布団持ってきて!丸めてデュークの足上げてちょうだい!」
扉の近くで様子を伺っていた、リリアーデの侍女とデュークの侍従は応接間の奥へと消える。
多分今の指示で伝わるはずだ。
まだ呼吸もしていて、心臓も動いている。
なら今リリアーデがすべきことは、捕液するためのルートを確保することだ。
投薬するにも血圧を無理やり上げるにも、捕液出来るルートがあるかどうかは大きい。
血圧が下がった血管では上手く針が入るかが分からない。
それでも、やるしかない。
「デューク、練習台になってもらった時より痛いわよ。いっぱい刺したって、後から文句言わないでよね。」
『ストレージ』から点滴用の針や点滴のセットを取り出して、駆血帯でデュークの腕を縛る。
その青白くなってしまった腕に針を刺す前に、デュークを傷つけた男を見る。
怒りに表情が歪んでいるが、動いたりは出来ないようだ。
こんな状況でも不審者を取り押さえてくれているアシェルに感謝しかない。
肘より先は血管が出なくて、肩を縛り直す。
そうしている間にデュークの血圧を少しでも上げるために、セリアとセオドアが丸めた布団をデュークの足の下にいれてくれた。
両腕がダメなら両脚だが、こうやって上げた脚は腕以上に血管の確保は難しいだろう。
緊張で震える手で、何度もデュークの肌に針を刺す。
辛うじて血管を探し当てることは出来るが、それでも針を刺しやすい血管とは言えない。
チアノーゼの出ている腕を縛りっぱなしには出来ないので、何度も縛り直したり、左右の腕を変えてみたりしながらだ。
「入ったわ……!!」
「リリアーデ様、こちらを。」
「ありがとう、セリア。……お願い、漏れないでよ。」
逆血を確認して手ごたえを感じた針先に、点滴を繋ぐ。
駆血帯を外し、ゆっくりと速度を調整するクレンメを上げれば、ぽたぽたと流れ出す。
全開にしてやればきちんと薬液は流れるし、針を入れた部分も腫れ上がったりはしない。
きちんと血管に薬液が流れている証拠だ。
「良かった……あとは固定……。ごめん、セリア。そこのテープの袋、開けてくれないかしら?準備し損ねているわ。」
「これくらいお安い御用です。固定は私が行いますので、リリアーデ様はデューク様の様子を。」
「ありがとう。」
一枚目の大きなシールが貼られたのを確認して、点滴はセリアに任せてしまう。
点滴の滴下を少し早めに調整して。
デュークの脈を確認する。
手首の動脈は分からないが、とりあえず脚の付け根は触れる。
でも、脈も弱いし、回数も少ない。不整もある。
こちらにはAEDのような、便利な機械は存在しない。
「デューク、頑張ってよ。気合入れて心臓動かしなさいっ!脈が止まったら心臓マッサージくらいしてあげるけど……肋骨折れたら、痛いのはデュークなんだからねっ。便利な魔法でも、骨折は治せないんだからっ。」
デュークはまだ意識があるのか。
リリアーデの握っている手に、少しだけ力を入れて反応を返してくれる。
喋る元気があれば、どうやって自力で心臓を動かすんだと怒られそうだ。
「……はぁ……はぁ……。リリィ。デューク、徐脈なの?血圧は?」
魔力枯渇気味で頭痛がするのだろう。頭を押さえたアシェルが顔を上げた。
もう一度脈を確認すれば、手首の脈も触れるようになっている。
「触診だけど、足を上げる前は60以上70未満。今は手首も触れるから、80以上あるわ。でも、脈は不整だし、徐脈よ。」
「気付け薬、点滴の側管から入れて。どっちでも使えるから。解毒はあと少しだから。大丈夫、デュークは助かるよ。……ベル。リリィに気付け薬渡して。それと、マナポーションも持ってきてくれる?出来たら後で飲めるように、水差しに水も用意して欲しい、」
「そうおっしゃられるかと思いまして、ホルスターごと持ってきております。水差しはダメですが、水筒をご用意しますのでお待ちくださいませ。」
アシェルがマナポーションを飲み、またデュークに口付ける傍ら。
リリアーデは渡された気付け薬を注射器に移し替え、点滴のルートの途中から投薬する。
薬のお陰か、程なくしてデュークの脈拍数は正常域まで回復して、弱々しかった脈圧も回復してくる。
上げていた足を下ろしても、急激に血圧が下がることもなかった。
一先ず、デュークのバイタルサインが落ち着いたことに安堵する。
チアノーゼを起こしていた指にも血色が戻ってきている。
リリアーデが握っている手にも、力を籠めて握り返してくれる。
「……解毒は済んだから、もう、大丈夫。あとでまた診るから、ジッとしてて。ベル、お水ちょうだい。」
「アシェ、ありがとう。本当にありがとうっ。」
顔を上げ、ごくごくと喉を潤したアシェルは小さく首を振った。
潜在消費までして、デュークを助けてくれたのだ。
「多分、アイツの狙いは僕だから。巻き込んじゃってごめんね。」
「ううん、アシェのせいじゃないわっ。ごめんね、アシェだって身体辛いのに、無理させてっ……。デューク、良かったぁ……。」
安心すると涙がとめどなく溢れてくる。
「……リリィ……、僕は大丈夫だから。落ち着いて……また、魔力漏れてる。」
弱々しいデュークの声が、それでもリリアーデを落ち着かせようと言葉を口にする。
「馬鹿っ、どうやって落ち着けって言うのよっ。自分が死にかけたことわかってるの!?それなのに、アシェの治療拒否しようとしてっ。デュークが死んじゃったら。私はどうしたら良いのよっ。デューク以外と結婚したりしないからねっ。デュークが居なくなったら、シルコットは取り潰しよっ。」
「はは……それは困るな。」
「他におかしいところはない?大丈夫なの??」
「大丈夫……アシェもリリィも、頑張ってくれたんだから。」
「本当に、本当ね?頑張って、魔力抑えるから……。変なとこあったら、ちゃんと言うのよ。無理しないで……。」
「うん……。」
ぎゅっとデュークの手を握り締めれば、デュークも握り返してくれた。
========
※グロ表現注意
Side:アシェル14歳 夏
デュークの治療を終え、潜在消費の衝動で乾く喉を潤す。
解毒は済んだので、あとはリリアーデに任せていても良いだろう。
——間に合って良かった。
今まで拘束して、魔法を散らしていただけの相手に向き直る。
「僕の大切なモノを壊そうとしたお前は許さない。何で僕を狙うの?どうしてデュークを傷つけたの?答えてくれる。」
ゆっくりと護衛の男に歩み寄れば、ますます鋭い目つきで睨まれる。
「僕は理由を言えって言ってるの。聞こえてないわけないよね?皇族の護衛をしてるのに、デュークを傷つけずに取り押さえることが出来ないわけないよね?」
『ストレージ』から取り出したブロードソードを首筋に添えて、ようやく男は口を開いた。
「主の指示だ。皇帝陛下の御心のままに!」
そのまま奥歯を噛みしめようとした男の顎を掴む。
自殺なんてさせない。
簡単に死なせはしない。
「君の主人は皇帝陛下じゃないでしょ?国王陛下……いや、その傍流ってところかな。誤魔化したまま死ぬなんて許さないよ。」
男の口に手を突っ込み、毒の仕込まれた奥歯を力任せに引き抜く。
苦痛に顔を歪め呻き声を上げているが、そんなものアシェルの知った事ではない。
『超音波』で判別した引き抜いた二本の歯を確認すれば、濃すぎる程の赤と青の薬液が仕込まれている。
それだけ確認して、床に投げ捨てる。
この特徴的な色の、二種類混ぜて初めて効果を発揮する毒も。
デュークを傷つけた剣に塗られている、甘酸っぱい匂いのする毒も。
どちらもドワーフが治める、ドーグラフト王国の辺境でしか生産されていないものだ。
素材自体が希少で、更にその精製方法も一部の地域にしか伝わっていない。
その地域を治めるのは、ドーグラフト王族の血縁者だ。国王になれなかった者が治めている。
自死する仕込みを見破られた男は、悔しそうに唇を噛みしめた。
喋ってくれる気はないらしい。
無駄な努力にも関わらず、また攻撃魔法がいくつも構築されていく。
「喋る気はないんだね?我慢比べでもするつもりかな。良いよ。付き合ってあげる。その代わり頑張って抵抗してくれないと、面白くなくて殺しちゃうかも。君が喋りたくなるのと、僕が飽きるの。どっちが先だろうね?」
口元にだけ笑みを浮かべたアシェルは、遠慮なく男の右肩に剣を突き刺す。
「とりあえず二つあるものは、片方無くても困らないよね。大丈夫。失血死なんてさせないから。まずは僕の大切なモノを傷つけた右腕は貰うね?」
アシェルの力では、身体強化を使っても骨まで一太刀で切り落とすのは難しい。
ぐりぐりと体重もかけながら、真っ赤に染まる肩を刻む。
ひっと息を呑む観客の声が聞こえるが、見たくないのなら目を背けるなり部屋に引っ込めばいい。
「呻いてる暇があったら、もう少し頑張ったら?魔法が疎かになってるよ。」
ようやく切り離せた右腕がゴトリと床に転がる。
そのまま『ファイア』で大きな血管だけ焼いて止血すれば、肉を焼いた独特の臭いが広がる。
痛みで失神しなかったのは、流石皇族の護衛を務めているだけのことはある。
そのまま転がった右腕の断面を、更に切り刻んでいく。
「あ、アシェルっ!もうそこまでで良いでしょう!?その男は、こちらで処分するわっ!アシェルがそんなことしなくて良いのよ!!」
震える声でムーランが叫んだ。
顔を上げれば、ガタガタと身体を震わせるムーランの姿が目に入る。
羽織ったガウンを握りしめ、どうにかアシェルに声をかけたのだろう。
その前には、背中に庇う様にして立つアークエイドの姿も。眼鏡をしていないのは、既に寝支度が済んでいたからだろう。
アークエイドもガウンを羽織って出てきている。
ほんの少しだけ、その光景が羨ましいと思ってしまう。
アシェルは守られるようなか弱い乙女ではないし、守られたい訳ではないが。それでも守られるくらいの方が、女の子らしいことは分かる。
流石に皇女様には衝撃すぎる光景かと思ったが、自分から殺気が駄々洩れだったということに気付く。
手は止めずにその殺気を抑えれば、明らかにムーランが安堵の表情になる。
「怖がらせてすみません。でも……こいつは僕の獲物だから。僕の大切なモノを傷つけたこいつを、他人の手で処分されるのはごめんです。」
「で、でも。そこまでしなくても……。」
ムーランからしたら、わざわざ切り落とした腕を傷つける意味が分からないのだろう。
アシェルはニコッと微笑む。
いつもの微笑みに見えるのに、その凄惨な光景には似つかわしくない微笑みを。
「これは後で腕をくっつけられないためにも必要な事です。傷口が綺麗であればあるほど、腕の良い治療師であればくっつけられますから。それに、ムーラン皇女に仕えているわけではないこいつは、誰に牙を剥くか分かりませんから。」
「それはどういう——。」
「少なくとも、アスラモリオン帝国の意志では動いていないということです。……こんなものかな。」
事態を上手く理解できていないムーランから目を逸らし、また男に向き直る。
「さぁ、もう腕は使い物にならないよ?次は何処が良いかな……腎臓……肺……眼でも良いかな。上から順番にいっとく?大丈夫。痛いと思うけど、これくらいじゃ死んだりしないから。でも、人を殺そうとしたんだもの。殺されても文句言えないよね。」
アシェルがその右眼にゆっくりと手を伸ばせば、男の顔が恐怖に歪み身動ぎしようとする。
それでも口を割る気はないらしい。
固く閉じられた瞼をこじ開け、眼球に手をかける。
流石にこの痛みには耐えられないらしい男の、悲鳴のような叫び声が廊下に響き渡る。
グチュリと生温かい感触を感じながら、グッと眼球を引き抜く。
そして血塗れの目玉も床に投げ捨てる。
こちらは潰さなくても、視神経の回復まで出来るような治療師はそういないだろう。
「耳は表面だけ切り取っても、中までやらないとあんまり意味ないよね……やっぱり肺かな?ねぇ、まだ喋る気はないの?」
「……ばけ、もの……ぐぁっ!?」
不愉快な言葉を口にした男の胸に手を当て、魔力を流す。
「言うことはソレだけ?僕の質問には一切答えてないんだけど。クスクス、そんな怯えた眼で見なくても良いでしょ?さっきまでの殺意は何処に行ったの?ゆっくり締め上げて潰してあげようかと思ったけど……。喋る気がないんじゃ、やっぱり肺が一つ無くなったところで問題ないよね?」
グシャリと肺の潰れた手ごたえを感じる。
と同時に、男が鮮血を吐き出しながら咳き込む。
べっとりとその血を浴びながら、アシェルの笑みは崩れない。
「あーあ、汚れちゃった。……まぁ今更か。苦しいの?でも、まだ喋れるよね??」
「アシェ、やめろ!」
「……アークまで僕のこと止めるの?」
アークエイドは自分に向けられる冷たい視線を、しっかりと受け止めアシェルを見つめる。
殺気は抑えられたが、アシェルの目は全く笑っていないどころか、凍えそうな冷たさを湛えたままだ。
大切なモノを傷つけられたアシェルが、アークエイドの声で止まるかどうかは分からない。
それでも一番アシェルを止めることが出来る可能性があるとすれば、アークエイドが止めることだけだ。
このまま男が口を割らなければ、アシェルは可能な限り男を痛めつけた上で、その命を奪ってしまうだろう。
「当たり前だ。それ以上アシェが手を下す必要はない。アシェの気は済まないかもしれないが、それ以上はやり過ぎだ。」
「……どうして?こいつはデュークを傷つけて、殺そうとしたんだよ?情けをかけてやる必要なんてどこにもないよ。」
全くアークエイドの声が届いていないわけではない。
それでも、アシェルは理由に納得できないと言わんばかりに首を傾げた。
アシェルの表情が見えるアークエイドには、それが演技でも何でもなく。
本気で意味が分かっていない事が分かる。
メイディーが大切なモノを守る為に、最良で最凶の手段を躊躇いなく取る強さと、非情さも持ち合わせているとはよく言ったものだと思う。
今まで見ていたアシェルの行動が、可愛く思える程だ。
まさに今、アシェルは何の躊躇いも抵抗もなく、それが当然だと疑うことなく行動している。
「そいつに情けをかけるわけじゃない。アシェが手を汚す必要はないと言ってるんだ。それに、そいつの持つ情報に用がある。」
「何を知りたいの?僕が分かった事なら教えてあげる。だから、邪魔しないで。人間だと思うからダメなんだよ。悪いことをするなら、討伐対象の魔物と一緒だよね。……邪魔をするなら、アークが相手でも容赦しないから。」
「っ!アシェがどう思おうと、相手は人間だ。アシェに人殺しをさせたくない。」
「正当防衛のどこがダメなの?……魔法、一つくらい発動させておいた方が良かった?殺傷能力の高い魔法ばっかりだったんだけど。一つくらいだったら、言い訳に必要なら使わせてあげたのに。……ねぇ、このままじゃアークのお許しが出ないみたい。消さないであげるから、何か使って?でも、対象を僕以外にしたら許さないよ。」
何をどう考えれば、その結論に至ったのか。
アシェルは目の前でヒューヒューと虫の息の男に、笑顔で魔法を使えと指示をする。
これではどっちが悪役か分かったものではない。
そしてアークエイドの言葉では、アシェルの行動を止められない。
あの冷たい眼のアシェルをそのままにしたくないのに、今すぐ抱きしめること一つ出来ない。
アシェルを守りたくて遠ざけていたのに、結局アシェルの手を汚させてしまう状況になってしまったことに、力不足を痛感する。
「アシェっ!もういいわっ、もうやめてっ!!」
アシェルが望む行動をとってくれない男に、手を伸ばした時。
リリアーデの声が響いた。
涙声だが、リリアーデの声は良く響く。
「リリィ……。でも、こいつはデュークを殺そうとした。」
「でも、デュークは生きてるわっ!もう、もう大丈夫だから……お願い、もうやめて……。正当防衛でも、殺人は犯罪よ……アシェに人殺しになって欲しくないわっ。デュークのためなら、もう止めて……。もう、十分報復してもらったわ。そいつはもう、デュークには敵わないでしょ。腕もない、眼もないんじゃ、デュークの方が強いわ。だから、もう止めて……。アシェに人殺しなんてさせたくないの、わたくしもデュークも……。」
「……分かった。リリィがそう言うなら……リリィもデュークもここまででっていうなら。止める。二人に嫌な思いさせたくないから。……死なないように、止血だけするね。これ以上危害加えないって、ちゃんと約束するから。」
「えぇ……分かったわ。アシェが約束を破らないことは知ってるもの。疑ったりしないわ。」
大切なモノを傷つけたこいつは許せないが、リリアーデとデュークがこれで十分だと判断したのだ。
治療まではしないが、それでも傷ついて出血を続ける血管を、一つずつ止血していく。
それから魔力を流して、すぐには魔法を使えないように魔力回路をせき止めていく。
「……これで。死にはしない。魔法も使えないようにしておいた。あとは、アーク達に任せるね。……ベル、お水ちょうだい。」
治療を終えて男から距離を取れば、ダーガとクーフェが取り押さえに来てくれる。
その間にマナポーションと水で乾いた喉を潤す。
イザベルが『クリーン』をかけて、アシェルの身体を綺麗にしてくれる。
衝動とは厄介だ。
嫌な奴から流れる血液ですら、美味しそうに見えてしまうのだから。
「ダニエル……こんな状態でも、アシェの近くに行くのはダメなのか?」
「……少々お待ちください。アシェル殿から話を聞く必要もありますが……。こうなってしまったら、皇女と皇子にも説明が必要でしょうし、今のアシェル殿を放っておくほうが危険です。それに、皇帝陛下以外の思惑が絡んでいそうなことも問題です。……アシェル殿にも、説明は必要でしょう。」
「……巻き込みたくない。」
「今更です。行くんだったら、さっさと行ってきてください。昼間になってしまえば、殿下にはアシェル殿の状態が分からなくなるんですから。今回はあちらに非があるので、今夜のことだけは文句を言わせません。」
「すまない。」
どちらが臣下なのか分からないやり取りをしたアークエイドは、喉を潤す冷たい瞳のままのアシェルに近づく。
その間にダニエルはムーランとモーリスを集め、簡単な説明に回る。
それに真っ先に反応したのは、リリアーデだった。
「アーク……良いの?話しは聞こえてたけれど……。アシェ、連れていかれたりしないわよね?」
「そんなことさせない。」
「……何の話してるの?あいつがどこの手のやつか聞きに来たのかと思ったんだけど。」
「リリィは聞いたんだな。アシェにも、ちゃんと説明する。その前に、何故アスラモリオンの手のものじゃないと判断した?そこを聞きたい。」
アシェルにはよく分からない会話だが、ちゃんと説明があるのならその説明を待つだけだ。
「毒。あれはヒューナイトでもアスラモリオンでも手に入らない。デュークに使われた毒も、アイツが自死用に歯に仕込んでいた毒にも。……少し待ってて。ベル。毒の付着したやつ入れた袋と、ジップロック三枚用意して。」
「かしこまりました。」
イザベルに手渡されたジップロックに、捨てていた歯を一つずつ包み。
汚染されたタオルも一枚、ジップロックに詰め替える。
そして取り押さえられた男の持っていた剣と鞘を、ダーガとクーフェに断りを入れて受け取る。
「これが証拠。アイツの剣は絶対に抜かないで。いくら色んな毒に耐性をつけていても、アークじゃ死んじゃうから。剣を見せるならお父様かアン兄様に。でも、お父様の方が確実。それと、分けたから大丈夫だと思うけど、歯に仕込まれてる毒は絶対に混ぜないで。そっちも猛毒だから。」
淡々と言葉を口にしながら、アシェルがまとめた毒のついたセットは、もう一人の近衛へと渡る。
「……二つの国が関与してないのは分かった。その出どころを聞いても?」
「説明してあげるけど、僕にも話があるんでしょ?先にデュークの診察させて。最低限解毒はしたけど、まだ残ってるから。……ダニエル殿が何か話してるし、必要なら僕の部屋に入れて良いから。リリィ、デュークを僕の部屋に運んでも良い?とりあえず、床じゃなくてソファに寝かせたい。支柱棒持ってきて。」
「えぇ。お願い。一応バイタルも安定しているみたいだし、意識もしっかりしてるわ。少し身体に力は入りにくそうだけれど……。」
「うん、まだ麻痺毒が残ってるんだ。呼吸抑制が出ないタイプとはいえ、完全に解毒できてなくてごめんね。」
「ううん、構わないわ。アシェだって辛いのにごめんね。」
「気にしないで。僕が近くに居る時で良かった。」
デュークを抱え、応接間のソファに横たえる。
頭元にはリリアーデが座って、デュークに膝枕をしてくれた。
衝動暴発しないように水分をとって、デュークの手を取る。
口渇感は酷いが、喉の渇きを耐えれば良いだけだ。
人畜無害な衝動で良かったと切実に思う。
「アシェ……潜在消費してるのに、それじゃ効率悪いんでしょ?デュークにキスしてくれて構わないわ。」
「でも……。」
「治療でしょ?わたくしの潜在消費でキスしてもらうのと一緒だわ。」
「……止めとく。僕の衝動は口渇感だから……デュークの唾液が美味しいって思っちゃう。衝動に引っ張られると、治療どころじゃないから。」
潜在消費してなければ嬉しい申し出だが、魔力を使いすぎてどうにか衝動を抑え込むので精一杯なのだ。
特に体液は微量ながら持ち主の魔力が混じっている。
喉を潤す甘い液体に夢中にならないとは言い切れない。
「それは……困るわね。それに、美味しいって思う感覚も、引っ張られそうになる感覚も分かるわ。……負担をかけちゃってごめんね。」
「気にしないで。あともう少しだから。」
「アシェ……時間経過で回復するなら、僕はこのままでいい。解毒に沢山魔力を使ってもらったのに、これ以上使う必要はない。」
治療直後よりもしっかりした声でデュークが治療を止めるが、それではアシェルの気が済まない。
「僕が治療したいからするだけ。無理はしないから、大人しく治療を受けて。」
握った手から魔力を流し込めば、不快感にデュークの眉根が寄る。
「アシェもリリィも……潜在消費は無理してるってことを理解してくれ……。」
「別に使えるものだし、無理なんてしてないよ。下手に魔力枯渇状態で止めたほうが辛いかも。」
「分かるわ。でも結局、回復しかけの時に倦怠感や頭痛が襲ってきて、早く回復してって思うんだけれどね。」
「あぁ、それは分かるかも。でも、一旦潜在消費しちゃった方が回復が早いよね。魔力が回復しやすくなってる気がする。」
「回復手段が増えるからかしら?でも、アシェはマナポーションでしょ?わたくしの場合、マナポーションだけより辛い時間は少なくなるけど。」
「その代わり僕は、魔力をごっそり持って行かれるけどな。」
「だって、デュークの魔力は美味しいんだもの。あんなに良い匂いさせておいて、我慢しろって言う方が拷問だわ。」
「僕はマナポーションだけど、なんか効きが良い気がするんだよね。そう感じるだけかもしれないけど。……はい、オシマイ。もう動けると思うけど、今夜は安静にしてて。かなり身体への負担も強い毒だから。」
「すまない。」
「ありがとう、アシェ。もう大丈夫だから、リラックスしてちょうだい。」
こうして雑談している間も、アシェルの声は先程までのようなどこか冷たさを感じる声だった。
瞳も冷え切ってしまっていて、笑みを浮かべても口元しか動いていない。
「リラックス……してるつもり。いつもみたいに、笑えてない?」
アシェルの問いにリリアーデもデュークも頷くが、アシェルとしてはいつも通りのつもりだった。
ペタペタと顔を触りながら笑ってみるが、何が違うのかが分からない。
心配させたくないのだが、アシェルは潜在消費の口渇感以外、どこにも異常はないのだ。
「……分かんない。」
「きっと疲れてるんだわ。気にしないでちょうだい。それと……アークが何をどこまで話すつもりか分からないけど、ちゃんと話は聞いてあげて。あと、話を聞いてもさっきみたいな無茶しないって約束して欲しいの。」
何かを知っていそうなリリアーデが、さっきのことを引き合いに出してアシェルにわざわざ約束をさせる。
それが指す意味は一つしかないだろう。
「それは……誰か大切なモノに手を出してるって事?それなら——。」
「約束してちょうだい。じゃないと、アークが話すつもりでも。わたくしは、アシェに聞かせるのは反対だわ。」
「分かった……約束する。もうアークとの約束を破っちゃった僕じゃ、信じて貰えないかもしれないけど……。」
「デュークの為に約束を破らせちゃってごめんね。大丈夫、アークも分かってくれるわ。」
アシェルが頷いたタイミングで、コンコンと扉が叩かれた。
リリアーデは一瞬でぐったりとしてしまったデュークを見て、取り乱していた。
ずっと看護師として働いていたリリアーデは、元気に見えてもあっけなく命が散ることを知っている。
デュークの顔色も、冷たくなって色の悪くなった指先も。浅い呼吸も何もかも。
それら一つ一つのサインが、デュークの死を予感させる。
アシェルが頑張ってくれているから大丈夫だと思うのに、身体の震えも涙も止まらない。
自分の半身の命が、目の前で消えてしまうのは怖い。
これでも沢山の命が散るところを見て来たのに、それがよく知る人物だというだけで平常心が保てなくなる。
それでもアシェルに看護師と言われて、気付く。
泣いている場合ではない。リリアーデにはやらなくてはいけない事がある。
リリアーデだから出来ることがある。
看護師が取り乱してしまったら、適切な処置を行えなかったら。
救えるはずの命が救えなくなるかもしれないのだ。
アシェルの苦しそうな表情が、惜しみなくデュークに魔力を割いてくれているのだと感じさせる。
ここでリリアーデが何もしないわけにはいかない。
ゴシゴシと目元を拭い、震えてしまいそうな殺気が満ちる中、デュークの身体を観察する。
涙は後から後から溢れてくるが、もうそれは無視だ。
呼吸は浅く、今にも止まりそうだ。
脈に触れようにも、手首にある橈骨動脈は触れても反応が無い。脚の付け根にある大腿動脈も駄目だ。
慌てて頸動脈に触れば、弱々しいながらも反応がある。
——血圧が下がりすぎている。
自室の扉を開け、大声で叫ぶ。
「セリア!セオドア!!寝室から掛布団持ってきて!丸めてデュークの足上げてちょうだい!」
扉の近くで様子を伺っていた、リリアーデの侍女とデュークの侍従は応接間の奥へと消える。
多分今の指示で伝わるはずだ。
まだ呼吸もしていて、心臓も動いている。
なら今リリアーデがすべきことは、捕液するためのルートを確保することだ。
投薬するにも血圧を無理やり上げるにも、捕液出来るルートがあるかどうかは大きい。
血圧が下がった血管では上手く針が入るかが分からない。
それでも、やるしかない。
「デューク、練習台になってもらった時より痛いわよ。いっぱい刺したって、後から文句言わないでよね。」
『ストレージ』から点滴用の針や点滴のセットを取り出して、駆血帯でデュークの腕を縛る。
その青白くなってしまった腕に針を刺す前に、デュークを傷つけた男を見る。
怒りに表情が歪んでいるが、動いたりは出来ないようだ。
こんな状況でも不審者を取り押さえてくれているアシェルに感謝しかない。
肘より先は血管が出なくて、肩を縛り直す。
そうしている間にデュークの血圧を少しでも上げるために、セリアとセオドアが丸めた布団をデュークの足の下にいれてくれた。
両腕がダメなら両脚だが、こうやって上げた脚は腕以上に血管の確保は難しいだろう。
緊張で震える手で、何度もデュークの肌に針を刺す。
辛うじて血管を探し当てることは出来るが、それでも針を刺しやすい血管とは言えない。
チアノーゼの出ている腕を縛りっぱなしには出来ないので、何度も縛り直したり、左右の腕を変えてみたりしながらだ。
「入ったわ……!!」
「リリアーデ様、こちらを。」
「ありがとう、セリア。……お願い、漏れないでよ。」
逆血を確認して手ごたえを感じた針先に、点滴を繋ぐ。
駆血帯を外し、ゆっくりと速度を調整するクレンメを上げれば、ぽたぽたと流れ出す。
全開にしてやればきちんと薬液は流れるし、針を入れた部分も腫れ上がったりはしない。
きちんと血管に薬液が流れている証拠だ。
「良かった……あとは固定……。ごめん、セリア。そこのテープの袋、開けてくれないかしら?準備し損ねているわ。」
「これくらいお安い御用です。固定は私が行いますので、リリアーデ様はデューク様の様子を。」
「ありがとう。」
一枚目の大きなシールが貼られたのを確認して、点滴はセリアに任せてしまう。
点滴の滴下を少し早めに調整して。
デュークの脈を確認する。
手首の動脈は分からないが、とりあえず脚の付け根は触れる。
でも、脈も弱いし、回数も少ない。不整もある。
こちらにはAEDのような、便利な機械は存在しない。
「デューク、頑張ってよ。気合入れて心臓動かしなさいっ!脈が止まったら心臓マッサージくらいしてあげるけど……肋骨折れたら、痛いのはデュークなんだからねっ。便利な魔法でも、骨折は治せないんだからっ。」
デュークはまだ意識があるのか。
リリアーデの握っている手に、少しだけ力を入れて反応を返してくれる。
喋る元気があれば、どうやって自力で心臓を動かすんだと怒られそうだ。
「……はぁ……はぁ……。リリィ。デューク、徐脈なの?血圧は?」
魔力枯渇気味で頭痛がするのだろう。頭を押さえたアシェルが顔を上げた。
もう一度脈を確認すれば、手首の脈も触れるようになっている。
「触診だけど、足を上げる前は60以上70未満。今は手首も触れるから、80以上あるわ。でも、脈は不整だし、徐脈よ。」
「気付け薬、点滴の側管から入れて。どっちでも使えるから。解毒はあと少しだから。大丈夫、デュークは助かるよ。……ベル。リリィに気付け薬渡して。それと、マナポーションも持ってきてくれる?出来たら後で飲めるように、水差しに水も用意して欲しい、」
「そうおっしゃられるかと思いまして、ホルスターごと持ってきております。水差しはダメですが、水筒をご用意しますのでお待ちくださいませ。」
アシェルがマナポーションを飲み、またデュークに口付ける傍ら。
リリアーデは渡された気付け薬を注射器に移し替え、点滴のルートの途中から投薬する。
薬のお陰か、程なくしてデュークの脈拍数は正常域まで回復して、弱々しかった脈圧も回復してくる。
上げていた足を下ろしても、急激に血圧が下がることもなかった。
一先ず、デュークのバイタルサインが落ち着いたことに安堵する。
チアノーゼを起こしていた指にも血色が戻ってきている。
リリアーデが握っている手にも、力を籠めて握り返してくれる。
「……解毒は済んだから、もう、大丈夫。あとでまた診るから、ジッとしてて。ベル、お水ちょうだい。」
「アシェ、ありがとう。本当にありがとうっ。」
顔を上げ、ごくごくと喉を潤したアシェルは小さく首を振った。
潜在消費までして、デュークを助けてくれたのだ。
「多分、アイツの狙いは僕だから。巻き込んじゃってごめんね。」
「ううん、アシェのせいじゃないわっ。ごめんね、アシェだって身体辛いのに、無理させてっ……。デューク、良かったぁ……。」
安心すると涙がとめどなく溢れてくる。
「……リリィ……、僕は大丈夫だから。落ち着いて……また、魔力漏れてる。」
弱々しいデュークの声が、それでもリリアーデを落ち着かせようと言葉を口にする。
「馬鹿っ、どうやって落ち着けって言うのよっ。自分が死にかけたことわかってるの!?それなのに、アシェの治療拒否しようとしてっ。デュークが死んじゃったら。私はどうしたら良いのよっ。デューク以外と結婚したりしないからねっ。デュークが居なくなったら、シルコットは取り潰しよっ。」
「はは……それは困るな。」
「他におかしいところはない?大丈夫なの??」
「大丈夫……アシェもリリィも、頑張ってくれたんだから。」
「本当に、本当ね?頑張って、魔力抑えるから……。変なとこあったら、ちゃんと言うのよ。無理しないで……。」
「うん……。」
ぎゅっとデュークの手を握り締めれば、デュークも握り返してくれた。
========
※グロ表現注意
Side:アシェル14歳 夏
デュークの治療を終え、潜在消費の衝動で乾く喉を潤す。
解毒は済んだので、あとはリリアーデに任せていても良いだろう。
——間に合って良かった。
今まで拘束して、魔法を散らしていただけの相手に向き直る。
「僕の大切なモノを壊そうとしたお前は許さない。何で僕を狙うの?どうしてデュークを傷つけたの?答えてくれる。」
ゆっくりと護衛の男に歩み寄れば、ますます鋭い目つきで睨まれる。
「僕は理由を言えって言ってるの。聞こえてないわけないよね?皇族の護衛をしてるのに、デュークを傷つけずに取り押さえることが出来ないわけないよね?」
『ストレージ』から取り出したブロードソードを首筋に添えて、ようやく男は口を開いた。
「主の指示だ。皇帝陛下の御心のままに!」
そのまま奥歯を噛みしめようとした男の顎を掴む。
自殺なんてさせない。
簡単に死なせはしない。
「君の主人は皇帝陛下じゃないでしょ?国王陛下……いや、その傍流ってところかな。誤魔化したまま死ぬなんて許さないよ。」
男の口に手を突っ込み、毒の仕込まれた奥歯を力任せに引き抜く。
苦痛に顔を歪め呻き声を上げているが、そんなものアシェルの知った事ではない。
『超音波』で判別した引き抜いた二本の歯を確認すれば、濃すぎる程の赤と青の薬液が仕込まれている。
それだけ確認して、床に投げ捨てる。
この特徴的な色の、二種類混ぜて初めて効果を発揮する毒も。
デュークを傷つけた剣に塗られている、甘酸っぱい匂いのする毒も。
どちらもドワーフが治める、ドーグラフト王国の辺境でしか生産されていないものだ。
素材自体が希少で、更にその精製方法も一部の地域にしか伝わっていない。
その地域を治めるのは、ドーグラフト王族の血縁者だ。国王になれなかった者が治めている。
自死する仕込みを見破られた男は、悔しそうに唇を噛みしめた。
喋ってくれる気はないらしい。
無駄な努力にも関わらず、また攻撃魔法がいくつも構築されていく。
「喋る気はないんだね?我慢比べでもするつもりかな。良いよ。付き合ってあげる。その代わり頑張って抵抗してくれないと、面白くなくて殺しちゃうかも。君が喋りたくなるのと、僕が飽きるの。どっちが先だろうね?」
口元にだけ笑みを浮かべたアシェルは、遠慮なく男の右肩に剣を突き刺す。
「とりあえず二つあるものは、片方無くても困らないよね。大丈夫。失血死なんてさせないから。まずは僕の大切なモノを傷つけた右腕は貰うね?」
アシェルの力では、身体強化を使っても骨まで一太刀で切り落とすのは難しい。
ぐりぐりと体重もかけながら、真っ赤に染まる肩を刻む。
ひっと息を呑む観客の声が聞こえるが、見たくないのなら目を背けるなり部屋に引っ込めばいい。
「呻いてる暇があったら、もう少し頑張ったら?魔法が疎かになってるよ。」
ようやく切り離せた右腕がゴトリと床に転がる。
そのまま『ファイア』で大きな血管だけ焼いて止血すれば、肉を焼いた独特の臭いが広がる。
痛みで失神しなかったのは、流石皇族の護衛を務めているだけのことはある。
そのまま転がった右腕の断面を、更に切り刻んでいく。
「あ、アシェルっ!もうそこまでで良いでしょう!?その男は、こちらで処分するわっ!アシェルがそんなことしなくて良いのよ!!」
震える声でムーランが叫んだ。
顔を上げれば、ガタガタと身体を震わせるムーランの姿が目に入る。
羽織ったガウンを握りしめ、どうにかアシェルに声をかけたのだろう。
その前には、背中に庇う様にして立つアークエイドの姿も。眼鏡をしていないのは、既に寝支度が済んでいたからだろう。
アークエイドもガウンを羽織って出てきている。
ほんの少しだけ、その光景が羨ましいと思ってしまう。
アシェルは守られるようなか弱い乙女ではないし、守られたい訳ではないが。それでも守られるくらいの方が、女の子らしいことは分かる。
流石に皇女様には衝撃すぎる光景かと思ったが、自分から殺気が駄々洩れだったということに気付く。
手は止めずにその殺気を抑えれば、明らかにムーランが安堵の表情になる。
「怖がらせてすみません。でも……こいつは僕の獲物だから。僕の大切なモノを傷つけたこいつを、他人の手で処分されるのはごめんです。」
「で、でも。そこまでしなくても……。」
ムーランからしたら、わざわざ切り落とした腕を傷つける意味が分からないのだろう。
アシェルはニコッと微笑む。
いつもの微笑みに見えるのに、その凄惨な光景には似つかわしくない微笑みを。
「これは後で腕をくっつけられないためにも必要な事です。傷口が綺麗であればあるほど、腕の良い治療師であればくっつけられますから。それに、ムーラン皇女に仕えているわけではないこいつは、誰に牙を剥くか分かりませんから。」
「それはどういう——。」
「少なくとも、アスラモリオン帝国の意志では動いていないということです。……こんなものかな。」
事態を上手く理解できていないムーランから目を逸らし、また男に向き直る。
「さぁ、もう腕は使い物にならないよ?次は何処が良いかな……腎臓……肺……眼でも良いかな。上から順番にいっとく?大丈夫。痛いと思うけど、これくらいじゃ死んだりしないから。でも、人を殺そうとしたんだもの。殺されても文句言えないよね。」
アシェルがその右眼にゆっくりと手を伸ばせば、男の顔が恐怖に歪み身動ぎしようとする。
それでも口を割る気はないらしい。
固く閉じられた瞼をこじ開け、眼球に手をかける。
流石にこの痛みには耐えられないらしい男の、悲鳴のような叫び声が廊下に響き渡る。
グチュリと生温かい感触を感じながら、グッと眼球を引き抜く。
そして血塗れの目玉も床に投げ捨てる。
こちらは潰さなくても、視神経の回復まで出来るような治療師はそういないだろう。
「耳は表面だけ切り取っても、中までやらないとあんまり意味ないよね……やっぱり肺かな?ねぇ、まだ喋る気はないの?」
「……ばけ、もの……ぐぁっ!?」
不愉快な言葉を口にした男の胸に手を当て、魔力を流す。
「言うことはソレだけ?僕の質問には一切答えてないんだけど。クスクス、そんな怯えた眼で見なくても良いでしょ?さっきまでの殺意は何処に行ったの?ゆっくり締め上げて潰してあげようかと思ったけど……。喋る気がないんじゃ、やっぱり肺が一つ無くなったところで問題ないよね?」
グシャリと肺の潰れた手ごたえを感じる。
と同時に、男が鮮血を吐き出しながら咳き込む。
べっとりとその血を浴びながら、アシェルの笑みは崩れない。
「あーあ、汚れちゃった。……まぁ今更か。苦しいの?でも、まだ喋れるよね??」
「アシェ、やめろ!」
「……アークまで僕のこと止めるの?」
アークエイドは自分に向けられる冷たい視線を、しっかりと受け止めアシェルを見つめる。
殺気は抑えられたが、アシェルの目は全く笑っていないどころか、凍えそうな冷たさを湛えたままだ。
大切なモノを傷つけられたアシェルが、アークエイドの声で止まるかどうかは分からない。
それでも一番アシェルを止めることが出来る可能性があるとすれば、アークエイドが止めることだけだ。
このまま男が口を割らなければ、アシェルは可能な限り男を痛めつけた上で、その命を奪ってしまうだろう。
「当たり前だ。それ以上アシェが手を下す必要はない。アシェの気は済まないかもしれないが、それ以上はやり過ぎだ。」
「……どうして?こいつはデュークを傷つけて、殺そうとしたんだよ?情けをかけてやる必要なんてどこにもないよ。」
全くアークエイドの声が届いていないわけではない。
それでも、アシェルは理由に納得できないと言わんばかりに首を傾げた。
アシェルの表情が見えるアークエイドには、それが演技でも何でもなく。
本気で意味が分かっていない事が分かる。
メイディーが大切なモノを守る為に、最良で最凶の手段を躊躇いなく取る強さと、非情さも持ち合わせているとはよく言ったものだと思う。
今まで見ていたアシェルの行動が、可愛く思える程だ。
まさに今、アシェルは何の躊躇いも抵抗もなく、それが当然だと疑うことなく行動している。
「そいつに情けをかけるわけじゃない。アシェが手を汚す必要はないと言ってるんだ。それに、そいつの持つ情報に用がある。」
「何を知りたいの?僕が分かった事なら教えてあげる。だから、邪魔しないで。人間だと思うからダメなんだよ。悪いことをするなら、討伐対象の魔物と一緒だよね。……邪魔をするなら、アークが相手でも容赦しないから。」
「っ!アシェがどう思おうと、相手は人間だ。アシェに人殺しをさせたくない。」
「正当防衛のどこがダメなの?……魔法、一つくらい発動させておいた方が良かった?殺傷能力の高い魔法ばっかりだったんだけど。一つくらいだったら、言い訳に必要なら使わせてあげたのに。……ねぇ、このままじゃアークのお許しが出ないみたい。消さないであげるから、何か使って?でも、対象を僕以外にしたら許さないよ。」
何をどう考えれば、その結論に至ったのか。
アシェルは目の前でヒューヒューと虫の息の男に、笑顔で魔法を使えと指示をする。
これではどっちが悪役か分かったものではない。
そしてアークエイドの言葉では、アシェルの行動を止められない。
あの冷たい眼のアシェルをそのままにしたくないのに、今すぐ抱きしめること一つ出来ない。
アシェルを守りたくて遠ざけていたのに、結局アシェルの手を汚させてしまう状況になってしまったことに、力不足を痛感する。
「アシェっ!もういいわっ、もうやめてっ!!」
アシェルが望む行動をとってくれない男に、手を伸ばした時。
リリアーデの声が響いた。
涙声だが、リリアーデの声は良く響く。
「リリィ……。でも、こいつはデュークを殺そうとした。」
「でも、デュークは生きてるわっ!もう、もう大丈夫だから……お願い、もうやめて……。正当防衛でも、殺人は犯罪よ……アシェに人殺しになって欲しくないわっ。デュークのためなら、もう止めて……。もう、十分報復してもらったわ。そいつはもう、デュークには敵わないでしょ。腕もない、眼もないんじゃ、デュークの方が強いわ。だから、もう止めて……。アシェに人殺しなんてさせたくないの、わたくしもデュークも……。」
「……分かった。リリィがそう言うなら……リリィもデュークもここまででっていうなら。止める。二人に嫌な思いさせたくないから。……死なないように、止血だけするね。これ以上危害加えないって、ちゃんと約束するから。」
「えぇ……分かったわ。アシェが約束を破らないことは知ってるもの。疑ったりしないわ。」
大切なモノを傷つけたこいつは許せないが、リリアーデとデュークがこれで十分だと判断したのだ。
治療まではしないが、それでも傷ついて出血を続ける血管を、一つずつ止血していく。
それから魔力を流して、すぐには魔法を使えないように魔力回路をせき止めていく。
「……これで。死にはしない。魔法も使えないようにしておいた。あとは、アーク達に任せるね。……ベル、お水ちょうだい。」
治療を終えて男から距離を取れば、ダーガとクーフェが取り押さえに来てくれる。
その間にマナポーションと水で乾いた喉を潤す。
イザベルが『クリーン』をかけて、アシェルの身体を綺麗にしてくれる。
衝動とは厄介だ。
嫌な奴から流れる血液ですら、美味しそうに見えてしまうのだから。
「ダニエル……こんな状態でも、アシェの近くに行くのはダメなのか?」
「……少々お待ちください。アシェル殿から話を聞く必要もありますが……。こうなってしまったら、皇女と皇子にも説明が必要でしょうし、今のアシェル殿を放っておくほうが危険です。それに、皇帝陛下以外の思惑が絡んでいそうなことも問題です。……アシェル殿にも、説明は必要でしょう。」
「……巻き込みたくない。」
「今更です。行くんだったら、さっさと行ってきてください。昼間になってしまえば、殿下にはアシェル殿の状態が分からなくなるんですから。今回はあちらに非があるので、今夜のことだけは文句を言わせません。」
「すまない。」
どちらが臣下なのか分からないやり取りをしたアークエイドは、喉を潤す冷たい瞳のままのアシェルに近づく。
その間にダニエルはムーランとモーリスを集め、簡単な説明に回る。
それに真っ先に反応したのは、リリアーデだった。
「アーク……良いの?話しは聞こえてたけれど……。アシェ、連れていかれたりしないわよね?」
「そんなことさせない。」
「……何の話してるの?あいつがどこの手のやつか聞きに来たのかと思ったんだけど。」
「リリィは聞いたんだな。アシェにも、ちゃんと説明する。その前に、何故アスラモリオンの手のものじゃないと判断した?そこを聞きたい。」
アシェルにはよく分からない会話だが、ちゃんと説明があるのならその説明を待つだけだ。
「毒。あれはヒューナイトでもアスラモリオンでも手に入らない。デュークに使われた毒も、アイツが自死用に歯に仕込んでいた毒にも。……少し待ってて。ベル。毒の付着したやつ入れた袋と、ジップロック三枚用意して。」
「かしこまりました。」
イザベルに手渡されたジップロックに、捨てていた歯を一つずつ包み。
汚染されたタオルも一枚、ジップロックに詰め替える。
そして取り押さえられた男の持っていた剣と鞘を、ダーガとクーフェに断りを入れて受け取る。
「これが証拠。アイツの剣は絶対に抜かないで。いくら色んな毒に耐性をつけていても、アークじゃ死んじゃうから。剣を見せるならお父様かアン兄様に。でも、お父様の方が確実。それと、分けたから大丈夫だと思うけど、歯に仕込まれてる毒は絶対に混ぜないで。そっちも猛毒だから。」
淡々と言葉を口にしながら、アシェルがまとめた毒のついたセットは、もう一人の近衛へと渡る。
「……二つの国が関与してないのは分かった。その出どころを聞いても?」
「説明してあげるけど、僕にも話があるんでしょ?先にデュークの診察させて。最低限解毒はしたけど、まだ残ってるから。……ダニエル殿が何か話してるし、必要なら僕の部屋に入れて良いから。リリィ、デュークを僕の部屋に運んでも良い?とりあえず、床じゃなくてソファに寝かせたい。支柱棒持ってきて。」
「えぇ。お願い。一応バイタルも安定しているみたいだし、意識もしっかりしてるわ。少し身体に力は入りにくそうだけれど……。」
「うん、まだ麻痺毒が残ってるんだ。呼吸抑制が出ないタイプとはいえ、完全に解毒できてなくてごめんね。」
「ううん、構わないわ。アシェだって辛いのにごめんね。」
「気にしないで。僕が近くに居る時で良かった。」
デュークを抱え、応接間のソファに横たえる。
頭元にはリリアーデが座って、デュークに膝枕をしてくれた。
衝動暴発しないように水分をとって、デュークの手を取る。
口渇感は酷いが、喉の渇きを耐えれば良いだけだ。
人畜無害な衝動で良かったと切実に思う。
「アシェ……潜在消費してるのに、それじゃ効率悪いんでしょ?デュークにキスしてくれて構わないわ。」
「でも……。」
「治療でしょ?わたくしの潜在消費でキスしてもらうのと一緒だわ。」
「……止めとく。僕の衝動は口渇感だから……デュークの唾液が美味しいって思っちゃう。衝動に引っ張られると、治療どころじゃないから。」
潜在消費してなければ嬉しい申し出だが、魔力を使いすぎてどうにか衝動を抑え込むので精一杯なのだ。
特に体液は微量ながら持ち主の魔力が混じっている。
喉を潤す甘い液体に夢中にならないとは言い切れない。
「それは……困るわね。それに、美味しいって思う感覚も、引っ張られそうになる感覚も分かるわ。……負担をかけちゃってごめんね。」
「気にしないで。あともう少しだから。」
「アシェ……時間経過で回復するなら、僕はこのままでいい。解毒に沢山魔力を使ってもらったのに、これ以上使う必要はない。」
治療直後よりもしっかりした声でデュークが治療を止めるが、それではアシェルの気が済まない。
「僕が治療したいからするだけ。無理はしないから、大人しく治療を受けて。」
握った手から魔力を流し込めば、不快感にデュークの眉根が寄る。
「アシェもリリィも……潜在消費は無理してるってことを理解してくれ……。」
「別に使えるものだし、無理なんてしてないよ。下手に魔力枯渇状態で止めたほうが辛いかも。」
「分かるわ。でも結局、回復しかけの時に倦怠感や頭痛が襲ってきて、早く回復してって思うんだけれどね。」
「あぁ、それは分かるかも。でも、一旦潜在消費しちゃった方が回復が早いよね。魔力が回復しやすくなってる気がする。」
「回復手段が増えるからかしら?でも、アシェはマナポーションでしょ?わたくしの場合、マナポーションだけより辛い時間は少なくなるけど。」
「その代わり僕は、魔力をごっそり持って行かれるけどな。」
「だって、デュークの魔力は美味しいんだもの。あんなに良い匂いさせておいて、我慢しろって言う方が拷問だわ。」
「僕はマナポーションだけど、なんか効きが良い気がするんだよね。そう感じるだけかもしれないけど。……はい、オシマイ。もう動けると思うけど、今夜は安静にしてて。かなり身体への負担も強い毒だから。」
「すまない。」
「ありがとう、アシェ。もう大丈夫だから、リラックスしてちょうだい。」
こうして雑談している間も、アシェルの声は先程までのようなどこか冷たさを感じる声だった。
瞳も冷え切ってしまっていて、笑みを浮かべても口元しか動いていない。
「リラックス……してるつもり。いつもみたいに、笑えてない?」
アシェルの問いにリリアーデもデュークも頷くが、アシェルとしてはいつも通りのつもりだった。
ペタペタと顔を触りながら笑ってみるが、何が違うのかが分からない。
心配させたくないのだが、アシェルは潜在消費の口渇感以外、どこにも異常はないのだ。
「……分かんない。」
「きっと疲れてるんだわ。気にしないでちょうだい。それと……アークが何をどこまで話すつもりか分からないけど、ちゃんと話は聞いてあげて。あと、話を聞いてもさっきみたいな無茶しないって約束して欲しいの。」
何かを知っていそうなリリアーデが、さっきのことを引き合いに出してアシェルにわざわざ約束をさせる。
それが指す意味は一つしかないだろう。
「それは……誰か大切なモノに手を出してるって事?それなら——。」
「約束してちょうだい。じゃないと、アークが話すつもりでも。わたくしは、アシェに聞かせるのは反対だわ。」
「分かった……約束する。もうアークとの約束を破っちゃった僕じゃ、信じて貰えないかもしれないけど……。」
「デュークの為に約束を破らせちゃってごめんね。大丈夫、アークも分かってくれるわ。」
アシェルが頷いたタイミングで、コンコンと扉が叩かれた。
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