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第四章 王立学院中等部三年生
261 ムーランの気持ち③
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Side:ムーラン15歳 秋
ヒューナイト王国に留学中のムーランは、アスラモリオンの事情にアシェルやアークエイドを巻き込んでしまったことを申し訳なく思いつつ。
それでも友人だと思っているアシェルに、このまま友人で居てくれるのか確認したのは数日前のことだ。
当初はすんなりと受け入れて貰えたことに安堵したが、それはそれ、これはこれである。
アークエイドへの恋心を完全に捨てきれたわけではなかった。
もちろんムーランには全く可能性が無いことも、惚れた相手の好きな女性がアシェルだったことも納得している。
アシェルは男前な言動が目立つが、とても綺麗だ。
身体つきだって、お子様体型のムーランと違って出るところはちゃんと出ていて。しなやかな筋肉の付いた長い手足も相まって、とても魅力的だ。羨ましいくらいに。
先日の会話からも分かる通り、アシェルはとても優しい。
それでいて、アークエイドを護れるだけの強さを持っている。ムーランなんて足元にも及ばないくらいの魔導士だ。
公式の場ではなく、あくまでもプライベートな訪問をしたし、同席していたのは同じく被害にあったアークエイドだけだった。
ムーランはこれでも、もっとなじられたり非難されたり。今後友人として過ごすことも拒絶されるだろうという覚悟を持って、あの日部屋を訪れたのだ。
それをしても問題にならない状況を作ったはずだった。
それがなんのお咎めも無かったのである。
アシェルがムーランとまだ友達だと思っていてくれたことは素直に嬉しい。
でも恋敵だという視点で見ると、もっとムーランのことを罵ってくれれば良いところばかりじゃなく、人間的な悪いところだってあるのだと。
婚約式までは、ムーランも少しは頑張ればどうにかなるだろうかと思う余地だって出来たのにとも思うのだ。
無理だと分かっていても、気持ちの整理がつくまでに淡い期待を抱いたままなのか。それとも絶望的なままなのかでは気分的に大きな差がある。
きっと去年までのムーランであれば、いくらアシェルのことを友達だと思っていても喚き散らし、当たり散らしただろう。
ムーランの気持ちを知っているのに、急に横取りしてきたと。
でも、ムーランはそうじゃないことを知っている。
むしろ横取りしようとしたのはムーランの方だ。その上、アークエイドの気持ちはずっとアシェルにあって、それが揺らぐことは無かった。
もやもやとした気持ちを発散することも出来ず、はぁ、と何度目か分からない溜め息を吐く。
「姫様。このところ溜息ばかりですな。アークエイド王子殿下との失恋が堪えているようですね。」
声を掛けてきたのは第二皇妃である母が懇意にしている、魔導士で術式研究者のユーウェンという男だった。
母が仲良くしているからか、幼い時からこうやってムーランのことも気にかけてくれる。
「ユーウェン……。当たり前でしょ。失恋したのよ。それもわたくしでは絶対に敵わないような相手と、仲睦まじくしてるんだもの。」
「その割には、以前のようにお怒りになられないのですね?」
ムーランが視線で着席を促せば目の前にユーウェンが座り、侍女たちが彼の分も紅茶を淹れる。
「そうしたいと思っても、わたくしがこのことに怒って暴れるのは筋違いだわ。それに……アシェルは本当に魅力的な女性なのよ。わたくしでは足元にも及ばないような女性に、ずっと昔から恋をしていたのよ?こんなの。敵う訳ないじゃない。」
「姫様も十分に魅力的だと思いますが……姫様も大人になられましたな。御幼少のみぎりより存じ上げている私としては、姫様の成長を嬉しく思いますよ。」
ユーウェンの眼がスッと細められた。
薄ら笑いのような顔しか見たことがないが、これがユーウェンの笑顔なのだろうか。
「成長……成長ね。本当に成長していたら、わたくしはきっとこのもやもやとした気持ちも、どうにかできたはずだわ。」
「気持ちの整理など、簡単につくようなものではございませんよ。前回だって、鬱憤を晴らしてようやく落ち着かれたでしょう?」
確かにムーランは、以前失恋して荒れに荒れた時。
惚れた男と婚約する女に、飛びっきりの嫌がらせをした。
ムーランは悲しくて仕方が無いのに、幸せそうな二人が許せなかった。
それでも二人を祝福するべきだとは分かっていて、納得できずに矛盾した心の向くまま当たり散らして、ユーウェンに渡されたスクロールを使ったのだ。
二人が困ったところにアプローチしてみて、男がなびけば良し。
そんなことなく、二人の絆が強ければキッパリ諦めようと。
そのことは二人の絆を強く深めるだけの結果になったし、ムーランとしては自分が割り込めないと身に染みて分かったし、一つの報復を果たしたことでイライラとした気持ちは納まりを見せた。
それにそのことが、その二人とムーランとの間で尾を引いている訳ではない。
そもそも使った術式の内容は、嫌がらせともお祝いとも取れる内容だった。
あくまでもムーランは嫌がらせの為に使ったのだが、あちらは何をどう思ったのかお祝いだと受け取ったのだ。
ただムーランが皇族とはいえ、相手も貴族。割と大きな問題になって、流石にムーランを溺愛するアーロンから怒られたのも事実だ。
「……そうね。確かにあれはスカッとしたし、あれのお陰で落ち着いたのも確かだわ。」
「そうでしょう、そうでしょう。私の描いたアレは、悪影響を及ぼしているようでそうではありませんからね。あくまでも一時的なものです。今回もお必要かと思って、ご用意したんですけれどね。」
そう言ったユーウェンは、スッと一枚の巻かれたスクロールを手渡してくる。
術式の研究が盛んで、授業にも取り入れられているアスラモリオン帝国の皇女でありながら、ムーランは多種多様な術式を覚えるのがとても苦手だ。
ムーランは頭を使うより、直感的に魔法を使う方である。
それにユーウェンの渡してくるスクロールは、研究発表や授業用の綺麗な術式ではない。
所謂ダミーと呼ばれている意味のない術式が本来の術式を隠してしまっていて、学のないムーランではさっぱり何が仕込まれているのかが分からない。
術式の大好きなモーリスであれば、この術式の中の本物が観えるのだろうか。
もしくは、そんなモーリスと対等に話すアシェルであれば。
「わたくしには、これに何が書かれているかなんて分からないわ。」
「以前と同じものですよ。姫様は身を以って、それが一時的なものであるとご存知でしょう?」
「そうね。でも……アシェルに使っても意味なんてないわよ。なんせアークエイド様は、御幼少の時にアシェルに出会った瞬間から片思いを続けていたらしいもの。アシェルに少しくらい拒絶されたって、きっとアークエイド様は耐え忍ばれるわ。アシェルを振り向かせるためならば、ご自身が苦行に耐えることも、努力をすることも厭わないような御方よ。」
最初は見た目に一目惚れした。
ヒューナイト王国の王族特有の艶やかな漆黒の髪。切れ長の瞳の冷たいサファイアブルーの瞳。
整った顔立ちは社交界の最中だと言うのに僅かにしか動かず、口数もとても少ない。
そんな貴族としても王族としてもあり得ない姿が。一部の貴族に陰口を叩かれながらも、全く気にせずに同じ態度を貫く姿が。
ムーランにはとても魅力的に見えた。
もちろん面食いなことを否定はしないが、周囲の悪意に晒されながら自分の意志を貫くのは難しい。貴族社会であれば常に周囲からの目と耳を気にして、自分というものを隠しながらお互いに仮面を被って笑みを交わすのだ。
アークエイドは貴族らしくない。かと言って、失礼というほどではなく動きは洗練されている。
どうしてもお近づきになりたいと思った。あの隣に立ちたいと思ったのだ。
それを父であるアーロン皇帝に、またヒューナイト王国の社交界に行かせてくれと。アークエイドに惚れたのだと、駄々を捏ねて我儘を言ったのが一連の事件の発端だ。
実際に傍に居て感じたのは、アークエイドがアークエイドらしく居られるのは幼馴染たちの影響が強いのだということ。
プライベートでも素っ気ない彼を受け入れて、細やかな表情の変化に気付き、言葉を交わしたわけではないのにアイコンタクトで互いの気持ちを汲み取りあっている。
アークエイドはムーランのせいで幼馴染と一緒に行動する機会が激減してしまっていたが、それでもふとした時の関りでソレが見えた。
ずっと付き従ってくれていたアシェルとアークエイドの間では、その無言の会話はとても多かった。
ムーランには細かい感情の変化は分からなかったが、アークエイドの元を臣下としての姿勢を崩さないアシェルが離れる時。とても名残惜しそうに視線が背中を追っていたのも知っている。
前と同じ意地悪をアシェルに仕掛けたところで、アークエイドはムーランを責めることはあっても、アシェルを諦めたりなんてしないだろう。
きっとこのスクロールの効果が切れるまでに何年もかかったとしても、彼なら待ち、振り向かせようと努力すると思うのだ。
「それはそれは……。姫様の気に入られたアークエイド王子殿下は、とても素晴らしい御仁のようですな。」
「……当たり前でしょ。わたくしが好きになった方よ。」
「別にそれを恋敵に使う必要は無いのですよ?むしろ姫様からのお話を時折お聞きしていたからこそ、今回は殿下にお使いいただくのがベストだと思って用意させていただいたんですから。」
「これをアークエイド様に?」
前回の意地悪から、てっきり今回もスクロールの対象は女性……つまりアシェルだと思っていた。
でもユーウェンは、これをアークエイドに使う為に準備したと言う。
首を傾げたムーランに、ユーウェンは自信満々に語り出す。
「何故?と思っておられるでしょうが、ヒューナイト王国の一目惚れ体質と愛情の強さはかなり有名ですからね。今まで積み上げてきた思い出も出会ってからと考えると、些細な事でも幸せだと感じたことだってとても多いでしょう。そうなると、そのスクロールで女性にアプローチしたところで効果が薄いのは目に見えています。となれば、どうすれば一番効果的か。殿下にスクロールの効果が出れば、ずっと殿下から好きだと言われ続けた女性はどう思いますかな?二人は想いを同じにしてから日が浅いですし、とても不安になるでしょうね。それに殿下の方も一目惚れという、血筋の強い影響を受けていない状態になるんですよ。その状態であれば、可愛らしい姫様が選ばれる可能性だって十二分にございます。姫様の恋を応援するためにも、このユーウェン。是非ともアークエイド王子殿下にご使用いただくことを推奨いたします。」
「血筋の影響……。そういえば人族は種族的な強い特徴が無い代わりに、そういう特殊な体質の続く家があるのよね。」
魔族であれば魔力を多く持っている。ドワーフは手先が器用だし、獣人は凄い身体能力を持っている。
エルフは独自の文化を持っていて分かりにくいが、森の民と言われるくらい自然との親和性が高く長生きする者が多い。
そんな特徴のある種族に囲まれながら、人族は人によって器用なモノや力の強いものが居るが、種族的な特徴は無い。
あえて言うのであれば、人族であれば多種族と交わり子供を作ることが出来ること。
それと王家を含む一部の貴族だけに受け継がれる色と、加護と呼ばれる一般人とは違う魔力回路。そしてメイディー公爵家のような特異体質。
確かに王家の一目惚れも、血筋由来の特異体質だと言われれば納得できた。
「使うかは分からないけれど、これは預かっておくわ。どうせ。前と同じで、使ったら貴方にも分かるんでしょう?」
ムーランがそのスクロールを『ストレージ』に仕舞いこんだのを見て、ユーウェンは満足気に薄ら笑いを浮かべる。
「えぇ、もちろんです。ソレは他所には出していない私だけの術式ですからね。姫様だからこそお渡ししているんですよ。」
ムーランには全く分からない感覚だが、例え同じ効果の出る術式だったとしても、そこに至るまでにどんな術式を組み込むかやトータルの燃費など。
様々なことを考え手を加えた術式を、研究者たちは自分のモノだと大事にする。
確かに学を深め、知恵を絞り、技術の粋を集めた術式は、作成者の知的財産なのだと分かる。
ただそれを、他人には出来るだけ見せたくないという感覚はよく分からなかった。
ユーウェン曰く、ダミーを散りばめた術式を読み取られることは術式研究者としての恥なんだそうだ。
素晴らしいものが出来たのであれば、共有して切磋琢磨すればいいのにと思ってしまう。
それをしているのが我が国の魔術開発室だ。
その点。ムーランには絶対に読み解けないと分かっているから、こうして何の躊躇いもなく自慢のスクロールを渡してくれるのだろう。
「いつも大事なものをわたくしに託してくれてありがとう。……そろそろ寝るわ。貴方も、わたくし達が学院に戻ればアスラモリオンへ発つのでしょう?お母様への手紙を託すから、今回も良くしてもらったと一言添えておくわ。」
「ははっ、この身に余る有り難き幸せ。それではお暇させていただきます。」
ユーウェンを見送り、集まってきた侍女達に身を任せお風呂に入れられ、身体を磨かれ、寝台へと入る。
成すがままに身を委ねながら、考えるのは今貰ったスクロールのことだ。
前に貰った時は、ユーウェンはムーランの為に大事なスクロールを譲ってくれたのだと思っていた。
でも今日感じたのは、ムーランを通して第二皇妃である母の覚えを目出度くするため。さらにあわよくば、母から皇帝である父に名が届けばというところだろうか。
確かモーリスの祖父である元魔術開発室の所長に、ユーウェンはかなりライバル意識を持っていたはずだ。
モーリスの祖父は魔導士であり優秀な術式研究者であったらしい。
ただ、その身分は平民だ。
対してユーウェンは、モーリスの祖父が亡くなりようやく魔術開発室所長になることが出来たものの、開発室に所属するまではかなり優秀だともてはやされていたという。
そしてアスラモリオン帝国の伯爵である。
かたや平民。かたや周囲から期待される貴族ということで、所長の座を何度も争ったという。
だが結局、モーリスの祖父は死ぬまで魔術開発室の所長で居続けた。
もしユーウェンが開発室に所属して、所長になる権利を得ることが出来る年数が経過した時点で所長になっていれば、アスラモリオン帝国の歴代最年少での所長となることが出来たのだ。
それについて恨み言を言っているのを、幼かったムーランは何度か聞いた事がある。
当時は平民より貴族が上に立つべきだと思っていたし、その発言に何の違和感も感じていなかった。
でも祖国を離れ、アシェルから根気よく常識を説かれた。
今までのムーランがどれだけ世間知らずで、どれだけ周囲に迷惑をかけて、そしてあれだけ邪険に扱っていたモーリスに心配や迷惑をかけていたのか。
ようやく理解したのだ。
理解したと言っても、感情が追い付かないことは多々ある。
それでも、国に居た時よりは淑女らしくなれたと思う。今日のユーウェンだって、恐らくムーランを利用して上を目指したいのだと感じることが出来た。
ただ、それを感じたからと言って、どうにか利用したり利用されるのを防ぐ術は未だに持ち合わせていない。
思考に沈んだまま全てのお世話が終わり、寝台へと潜る。
脳裏に浮かぶのは貰ったばかりのスクロールだ。
もやもやした気持ちは、スクロールを使って憂さ晴らしをしろと叫んでいる。
でも最近芽生えた常識的な自分が、ユーウェンの思惑通りに使ってはいけないと。大切な友人が傷つくようなことをしてはいけないと訴えかけている。
今まで公務以外では感情の赴くままに過ごしてきたムーランには、これだけ乖離した願望が自分の脳内で言い争いをするのは初めてのことだ。
「……受け取らなければ良かったわ……。」
手元になければこんな思考回路にはならなかっただろうか。
でも受け取ったのは自分だ。
ぎゅっと目を瞑り、昔母の歌ってくれた子守唄を思い出して無理やり気分転換を図る。
ユーウェンは、ムーランが王立学院に戻れば近くに居なくなるのだ。
使えとせっつかれることもないだろう。ならきっと、ムーランだって感情のままに余計なことをせずに済むはずだ。
頭の中で落としどころが付いた辺りで、ようやく睡魔が訪れた。
ヒューナイト王国に留学中のムーランは、アスラモリオンの事情にアシェルやアークエイドを巻き込んでしまったことを申し訳なく思いつつ。
それでも友人だと思っているアシェルに、このまま友人で居てくれるのか確認したのは数日前のことだ。
当初はすんなりと受け入れて貰えたことに安堵したが、それはそれ、これはこれである。
アークエイドへの恋心を完全に捨てきれたわけではなかった。
もちろんムーランには全く可能性が無いことも、惚れた相手の好きな女性がアシェルだったことも納得している。
アシェルは男前な言動が目立つが、とても綺麗だ。
身体つきだって、お子様体型のムーランと違って出るところはちゃんと出ていて。しなやかな筋肉の付いた長い手足も相まって、とても魅力的だ。羨ましいくらいに。
先日の会話からも分かる通り、アシェルはとても優しい。
それでいて、アークエイドを護れるだけの強さを持っている。ムーランなんて足元にも及ばないくらいの魔導士だ。
公式の場ではなく、あくまでもプライベートな訪問をしたし、同席していたのは同じく被害にあったアークエイドだけだった。
ムーランはこれでも、もっとなじられたり非難されたり。今後友人として過ごすことも拒絶されるだろうという覚悟を持って、あの日部屋を訪れたのだ。
それをしても問題にならない状況を作ったはずだった。
それがなんのお咎めも無かったのである。
アシェルがムーランとまだ友達だと思っていてくれたことは素直に嬉しい。
でも恋敵だという視点で見ると、もっとムーランのことを罵ってくれれば良いところばかりじゃなく、人間的な悪いところだってあるのだと。
婚約式までは、ムーランも少しは頑張ればどうにかなるだろうかと思う余地だって出来たのにとも思うのだ。
無理だと分かっていても、気持ちの整理がつくまでに淡い期待を抱いたままなのか。それとも絶望的なままなのかでは気分的に大きな差がある。
きっと去年までのムーランであれば、いくらアシェルのことを友達だと思っていても喚き散らし、当たり散らしただろう。
ムーランの気持ちを知っているのに、急に横取りしてきたと。
でも、ムーランはそうじゃないことを知っている。
むしろ横取りしようとしたのはムーランの方だ。その上、アークエイドの気持ちはずっとアシェルにあって、それが揺らぐことは無かった。
もやもやとした気持ちを発散することも出来ず、はぁ、と何度目か分からない溜め息を吐く。
「姫様。このところ溜息ばかりですな。アークエイド王子殿下との失恋が堪えているようですね。」
声を掛けてきたのは第二皇妃である母が懇意にしている、魔導士で術式研究者のユーウェンという男だった。
母が仲良くしているからか、幼い時からこうやってムーランのことも気にかけてくれる。
「ユーウェン……。当たり前でしょ。失恋したのよ。それもわたくしでは絶対に敵わないような相手と、仲睦まじくしてるんだもの。」
「その割には、以前のようにお怒りになられないのですね?」
ムーランが視線で着席を促せば目の前にユーウェンが座り、侍女たちが彼の分も紅茶を淹れる。
「そうしたいと思っても、わたくしがこのことに怒って暴れるのは筋違いだわ。それに……アシェルは本当に魅力的な女性なのよ。わたくしでは足元にも及ばないような女性に、ずっと昔から恋をしていたのよ?こんなの。敵う訳ないじゃない。」
「姫様も十分に魅力的だと思いますが……姫様も大人になられましたな。御幼少のみぎりより存じ上げている私としては、姫様の成長を嬉しく思いますよ。」
ユーウェンの眼がスッと細められた。
薄ら笑いのような顔しか見たことがないが、これがユーウェンの笑顔なのだろうか。
「成長……成長ね。本当に成長していたら、わたくしはきっとこのもやもやとした気持ちも、どうにかできたはずだわ。」
「気持ちの整理など、簡単につくようなものではございませんよ。前回だって、鬱憤を晴らしてようやく落ち着かれたでしょう?」
確かにムーランは、以前失恋して荒れに荒れた時。
惚れた男と婚約する女に、飛びっきりの嫌がらせをした。
ムーランは悲しくて仕方が無いのに、幸せそうな二人が許せなかった。
それでも二人を祝福するべきだとは分かっていて、納得できずに矛盾した心の向くまま当たり散らして、ユーウェンに渡されたスクロールを使ったのだ。
二人が困ったところにアプローチしてみて、男がなびけば良し。
そんなことなく、二人の絆が強ければキッパリ諦めようと。
そのことは二人の絆を強く深めるだけの結果になったし、ムーランとしては自分が割り込めないと身に染みて分かったし、一つの報復を果たしたことでイライラとした気持ちは納まりを見せた。
それにそのことが、その二人とムーランとの間で尾を引いている訳ではない。
そもそも使った術式の内容は、嫌がらせともお祝いとも取れる内容だった。
あくまでもムーランは嫌がらせの為に使ったのだが、あちらは何をどう思ったのかお祝いだと受け取ったのだ。
ただムーランが皇族とはいえ、相手も貴族。割と大きな問題になって、流石にムーランを溺愛するアーロンから怒られたのも事実だ。
「……そうね。確かにあれはスカッとしたし、あれのお陰で落ち着いたのも確かだわ。」
「そうでしょう、そうでしょう。私の描いたアレは、悪影響を及ぼしているようでそうではありませんからね。あくまでも一時的なものです。今回もお必要かと思って、ご用意したんですけれどね。」
そう言ったユーウェンは、スッと一枚の巻かれたスクロールを手渡してくる。
術式の研究が盛んで、授業にも取り入れられているアスラモリオン帝国の皇女でありながら、ムーランは多種多様な術式を覚えるのがとても苦手だ。
ムーランは頭を使うより、直感的に魔法を使う方である。
それにユーウェンの渡してくるスクロールは、研究発表や授業用の綺麗な術式ではない。
所謂ダミーと呼ばれている意味のない術式が本来の術式を隠してしまっていて、学のないムーランではさっぱり何が仕込まれているのかが分からない。
術式の大好きなモーリスであれば、この術式の中の本物が観えるのだろうか。
もしくは、そんなモーリスと対等に話すアシェルであれば。
「わたくしには、これに何が書かれているかなんて分からないわ。」
「以前と同じものですよ。姫様は身を以って、それが一時的なものであるとご存知でしょう?」
「そうね。でも……アシェルに使っても意味なんてないわよ。なんせアークエイド様は、御幼少の時にアシェルに出会った瞬間から片思いを続けていたらしいもの。アシェルに少しくらい拒絶されたって、きっとアークエイド様は耐え忍ばれるわ。アシェルを振り向かせるためならば、ご自身が苦行に耐えることも、努力をすることも厭わないような御方よ。」
最初は見た目に一目惚れした。
ヒューナイト王国の王族特有の艶やかな漆黒の髪。切れ長の瞳の冷たいサファイアブルーの瞳。
整った顔立ちは社交界の最中だと言うのに僅かにしか動かず、口数もとても少ない。
そんな貴族としても王族としてもあり得ない姿が。一部の貴族に陰口を叩かれながらも、全く気にせずに同じ態度を貫く姿が。
ムーランにはとても魅力的に見えた。
もちろん面食いなことを否定はしないが、周囲の悪意に晒されながら自分の意志を貫くのは難しい。貴族社会であれば常に周囲からの目と耳を気にして、自分というものを隠しながらお互いに仮面を被って笑みを交わすのだ。
アークエイドは貴族らしくない。かと言って、失礼というほどではなく動きは洗練されている。
どうしてもお近づきになりたいと思った。あの隣に立ちたいと思ったのだ。
それを父であるアーロン皇帝に、またヒューナイト王国の社交界に行かせてくれと。アークエイドに惚れたのだと、駄々を捏ねて我儘を言ったのが一連の事件の発端だ。
実際に傍に居て感じたのは、アークエイドがアークエイドらしく居られるのは幼馴染たちの影響が強いのだということ。
プライベートでも素っ気ない彼を受け入れて、細やかな表情の変化に気付き、言葉を交わしたわけではないのにアイコンタクトで互いの気持ちを汲み取りあっている。
アークエイドはムーランのせいで幼馴染と一緒に行動する機会が激減してしまっていたが、それでもふとした時の関りでソレが見えた。
ずっと付き従ってくれていたアシェルとアークエイドの間では、その無言の会話はとても多かった。
ムーランには細かい感情の変化は分からなかったが、アークエイドの元を臣下としての姿勢を崩さないアシェルが離れる時。とても名残惜しそうに視線が背中を追っていたのも知っている。
前と同じ意地悪をアシェルに仕掛けたところで、アークエイドはムーランを責めることはあっても、アシェルを諦めたりなんてしないだろう。
きっとこのスクロールの効果が切れるまでに何年もかかったとしても、彼なら待ち、振り向かせようと努力すると思うのだ。
「それはそれは……。姫様の気に入られたアークエイド王子殿下は、とても素晴らしい御仁のようですな。」
「……当たり前でしょ。わたくしが好きになった方よ。」
「別にそれを恋敵に使う必要は無いのですよ?むしろ姫様からのお話を時折お聞きしていたからこそ、今回は殿下にお使いいただくのがベストだと思って用意させていただいたんですから。」
「これをアークエイド様に?」
前回の意地悪から、てっきり今回もスクロールの対象は女性……つまりアシェルだと思っていた。
でもユーウェンは、これをアークエイドに使う為に準備したと言う。
首を傾げたムーランに、ユーウェンは自信満々に語り出す。
「何故?と思っておられるでしょうが、ヒューナイト王国の一目惚れ体質と愛情の強さはかなり有名ですからね。今まで積み上げてきた思い出も出会ってからと考えると、些細な事でも幸せだと感じたことだってとても多いでしょう。そうなると、そのスクロールで女性にアプローチしたところで効果が薄いのは目に見えています。となれば、どうすれば一番効果的か。殿下にスクロールの効果が出れば、ずっと殿下から好きだと言われ続けた女性はどう思いますかな?二人は想いを同じにしてから日が浅いですし、とても不安になるでしょうね。それに殿下の方も一目惚れという、血筋の強い影響を受けていない状態になるんですよ。その状態であれば、可愛らしい姫様が選ばれる可能性だって十二分にございます。姫様の恋を応援するためにも、このユーウェン。是非ともアークエイド王子殿下にご使用いただくことを推奨いたします。」
「血筋の影響……。そういえば人族は種族的な強い特徴が無い代わりに、そういう特殊な体質の続く家があるのよね。」
魔族であれば魔力を多く持っている。ドワーフは手先が器用だし、獣人は凄い身体能力を持っている。
エルフは独自の文化を持っていて分かりにくいが、森の民と言われるくらい自然との親和性が高く長生きする者が多い。
そんな特徴のある種族に囲まれながら、人族は人によって器用なモノや力の強いものが居るが、種族的な特徴は無い。
あえて言うのであれば、人族であれば多種族と交わり子供を作ることが出来ること。
それと王家を含む一部の貴族だけに受け継がれる色と、加護と呼ばれる一般人とは違う魔力回路。そしてメイディー公爵家のような特異体質。
確かに王家の一目惚れも、血筋由来の特異体質だと言われれば納得できた。
「使うかは分からないけれど、これは預かっておくわ。どうせ。前と同じで、使ったら貴方にも分かるんでしょう?」
ムーランがそのスクロールを『ストレージ』に仕舞いこんだのを見て、ユーウェンは満足気に薄ら笑いを浮かべる。
「えぇ、もちろんです。ソレは他所には出していない私だけの術式ですからね。姫様だからこそお渡ししているんですよ。」
ムーランには全く分からない感覚だが、例え同じ効果の出る術式だったとしても、そこに至るまでにどんな術式を組み込むかやトータルの燃費など。
様々なことを考え手を加えた術式を、研究者たちは自分のモノだと大事にする。
確かに学を深め、知恵を絞り、技術の粋を集めた術式は、作成者の知的財産なのだと分かる。
ただそれを、他人には出来るだけ見せたくないという感覚はよく分からなかった。
ユーウェン曰く、ダミーを散りばめた術式を読み取られることは術式研究者としての恥なんだそうだ。
素晴らしいものが出来たのであれば、共有して切磋琢磨すればいいのにと思ってしまう。
それをしているのが我が国の魔術開発室だ。
その点。ムーランには絶対に読み解けないと分かっているから、こうして何の躊躇いもなく自慢のスクロールを渡してくれるのだろう。
「いつも大事なものをわたくしに託してくれてありがとう。……そろそろ寝るわ。貴方も、わたくし達が学院に戻ればアスラモリオンへ発つのでしょう?お母様への手紙を託すから、今回も良くしてもらったと一言添えておくわ。」
「ははっ、この身に余る有り難き幸せ。それではお暇させていただきます。」
ユーウェンを見送り、集まってきた侍女達に身を任せお風呂に入れられ、身体を磨かれ、寝台へと入る。
成すがままに身を委ねながら、考えるのは今貰ったスクロールのことだ。
前に貰った時は、ユーウェンはムーランの為に大事なスクロールを譲ってくれたのだと思っていた。
でも今日感じたのは、ムーランを通して第二皇妃である母の覚えを目出度くするため。さらにあわよくば、母から皇帝である父に名が届けばというところだろうか。
確かモーリスの祖父である元魔術開発室の所長に、ユーウェンはかなりライバル意識を持っていたはずだ。
モーリスの祖父は魔導士であり優秀な術式研究者であったらしい。
ただ、その身分は平民だ。
対してユーウェンは、モーリスの祖父が亡くなりようやく魔術開発室所長になることが出来たものの、開発室に所属するまではかなり優秀だともてはやされていたという。
そしてアスラモリオン帝国の伯爵である。
かたや平民。かたや周囲から期待される貴族ということで、所長の座を何度も争ったという。
だが結局、モーリスの祖父は死ぬまで魔術開発室の所長で居続けた。
もしユーウェンが開発室に所属して、所長になる権利を得ることが出来る年数が経過した時点で所長になっていれば、アスラモリオン帝国の歴代最年少での所長となることが出来たのだ。
それについて恨み言を言っているのを、幼かったムーランは何度か聞いた事がある。
当時は平民より貴族が上に立つべきだと思っていたし、その発言に何の違和感も感じていなかった。
でも祖国を離れ、アシェルから根気よく常識を説かれた。
今までのムーランがどれだけ世間知らずで、どれだけ周囲に迷惑をかけて、そしてあれだけ邪険に扱っていたモーリスに心配や迷惑をかけていたのか。
ようやく理解したのだ。
理解したと言っても、感情が追い付かないことは多々ある。
それでも、国に居た時よりは淑女らしくなれたと思う。今日のユーウェンだって、恐らくムーランを利用して上を目指したいのだと感じることが出来た。
ただ、それを感じたからと言って、どうにか利用したり利用されるのを防ぐ術は未だに持ち合わせていない。
思考に沈んだまま全てのお世話が終わり、寝台へと潜る。
脳裏に浮かぶのは貰ったばかりのスクロールだ。
もやもやした気持ちは、スクロールを使って憂さ晴らしをしろと叫んでいる。
でも最近芽生えた常識的な自分が、ユーウェンの思惑通りに使ってはいけないと。大切な友人が傷つくようなことをしてはいけないと訴えかけている。
今まで公務以外では感情の赴くままに過ごしてきたムーランには、これだけ乖離した願望が自分の脳内で言い争いをするのは初めてのことだ。
「……受け取らなければ良かったわ……。」
手元になければこんな思考回路にはならなかっただろうか。
でも受け取ったのは自分だ。
ぎゅっと目を瞑り、昔母の歌ってくれた子守唄を思い出して無理やり気分転換を図る。
ユーウェンは、ムーランが王立学院に戻れば近くに居なくなるのだ。
使えとせっつかれることもないだろう。ならきっと、ムーランだって感情のままに余計なことをせずに済むはずだ。
頭の中で落としどころが付いた辺りで、ようやく睡魔が訪れた。
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【ご報告】
2月28日より、第五章の連載を再開いたします。毎週金・土・日の20時に更新予定です。
また、誤字脱字の修正および一部表現の見直しを行いました。ただし、記載内容の趣旨に大きな変更はございません。
引き続きよろしくお願いいたします。
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