氷の王子様と微笑みの男装令嬢

芯夜

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第四章 王立学院中等部三年生

265 スクロール②

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Side:アシェル14歳 秋



ムーランに貰ったスクロールに魔力を通すと、聞いていた通り。

アシェルの目の前にはアシェルが思った楽しいことや嬉しいことが、映像として広がった。

記憶の中にある思い出が、一人称視点で目の前のスクリーンに投影されている感じだ。
それなのに、アシェルが居る風景と混じることは無く、映像は鮮明に見えている。

一番新しい記憶から順番に思い浮かべながら、目の前の映像を楽しむ。

ムーランはアシェルにとって嬉しいことや楽しいことはアークエイド関連だと思っていそうだが、最近ようやく“特別な好き”だったのだと気付いたのだ。
もちろん、アークエイドとのことだって楽しかった思い出だが、アシェルの記憶は色に溢れて輝いている。

アシェルが女だと打ち明け、更には記憶持ちだと打ち明けても、アシェルのことを否定しなかった幼馴染や友人達が居ることも。

王立学院で新しい友人が出来たことも、冒険者活動で知り合ったパーティーと仲良くなったことも。

幼馴染たちと出会ったことも、その『非公式お茶会』のことも。
そして家族が増えたことや、メイディーという愛情あふれる家に産まれたことも。

アシェルの人生全てが色づいていて、輝いている。少しくらい嫌な事があっても灰色の世界なんてどこにもない、大切で嬉しくて楽しい思い出なのだ。

「凄いなぁ。これ、ムーラン嬢やアーク達には何も見えてないの?こう……この辺りに映像が出てる感じなんだけど。」

「俺には何も見えてないな。」

「わたくしにもよ。」

「本当に個人用なんだ。でも、個人用だったとしても凄いよ。観光目的にも使えそうだけど、なんとなく覚えている事柄でもこうやって見えるなら、小さい時のこととか、亡くなった人を思い出して悼むためにも使えそうだよね。確かに魔力は流してないといけないけど、そんなに沢山吸われてる風でも無いし、アスラモリオンの国民なら誰でも使えちゃうんじゃないかな?それにしても、物凄く早送りに見えるのに、ちゃんとその時のことを思い出してる感じがするし、どういう理屈なのかな?でも、自分の記憶が見えていると思わせているだけなら、おかしくないのか。ってなると、確かに他人から見えるように視覚化するのは大変そうだなぁ。ただでさえ、記憶や精神の分野って難しいもんね。医学的にも解明できてないし。もしこういうのがあれば、心の傷の治療に……は、役に立たないか。なんだか、心の傷を抉って更に傷つけるだけな気がする。」

アシェルの思い出は映像として見えているという認識なのに、少し考察している間に、もうかなり幼い頃まで遡っていた。

「ふふっ。やっぱりこの頃の皆も可愛かったなぁ、子狼でもこもこのマリクも可愛い。」

「……アシェル。貴方、まだ思い出が見えているの?」

「見えてるよ?僕これでも記憶力は良いほうだから、思い出そうと思えばほとんど全部思い出せるんだよね。でも、こうやって自分の思い出が見えるって、なんだか不思議で面白いよね。僕の一生を、逆再生でもう一度体験している気分だよ。このスクロールが三日で使い捨てなんて勿体ないなぁ。描くのも大変だろうし、どうせなら使い捨てじゃ無くせば良いのに。」

アシェルが笑顔で言った言葉に、ムーランの顔がサァっと青ざめた。
そもそもの肌が青灰色なので分かりにくいが、間違いなく青ざめたと思う。

「アシェルっ!今すぐ魔力を流すのを止めなさい!思い出すのもっ!アークエイド様、アシェルが倒れるかもしれないわっ、支えて!!」

「ムーラン姉上はいますかっ!?」

ムーランが叫んだのと、息を切らしたモーリスが教室に駆け込んできたのは、ほぼ同時だった。

ムーランが何故叫んだのか分からず、もしかしてぼんやりとした記憶を思い出すのではなく、ハッキリとした記憶を見るのは、どこか身体に不調が出てしまうような術式だったのかと首を傾げた。

一応魔力を流したまま、なるべく思い出さないように注意する。映像がゆっくりに感じるので、これで大丈夫だろうか。
既に映像は、メルティー達が邸へ来た時よりも前まで遡っている。

「アーク、魔力切るね。」

直ぐにアシェルを背中側から支えてくれたアークエイドの手に、ギュッと力が入ったのを感じて、アシェルはスクロールに流していた魔力を切った。

途端に、世界が真っ黒に染まるように、意識が落ちそうになるのを感じた。

(あぁ……僕はこの感覚を……。はコレを知っている……。)

自分の身体の中から何かが抜け落ちていく。

その抜け落ちたものは大切に箱に仕舞われていく。

ひとつ、また一つと。

記憶を仕舞った箱は扉に守られた。

簡単には開けることの出来ない扉に。



「アシェっ、アシェっ、大丈夫か?意識はあるか!?」

力の入りにくい身体をギュッと掴んで支えてくれているらしい人の悲痛な声に、頷いて意識があることを伝える。
知らない名前だが、肩を揺さぶられているし、これは自分に話しかけられているのだと分かる。

少し視界は暗くなったが、別に意識を失ったわけでは無いし、現状身体のどこかに不具合があるわけではない。
心配されるような状態ではないはずだ。

ただ、普段夢なんて見ないはずなのに、夢のようなおぼろげな記憶が増えているだけだ。
こんな夢を見たことがあっただろうか?

身体の力が戻ってきて、顔を上げる。

ここは自分の教室だと思うのに、何故そう感じるのかは分からない。
こんな大学生の教室みたいな空間は、見たことが無いはずだ。
教室と言えばこんな雛壇の長机ではなく、一人一人に机と椅子が用意されているのだから。

周囲を見渡せば、青灰色の肌の男女が口論をしていて、黒髪青眼の男が身体を支えてくれていて、緑っぽい髪とピンクっぽい髪、亜麻色の髪の女性が近くで心配そうにこちらを見ていて。浅葱色と言っただろうか、フワフワの髪の毛の男が泣きそうな顔でこちらを見ている。
それと犬耳にふさふさの尻尾を付けた男が、どうやら青灰色の肌の人間を威嚇しているように見える。
——ここはコスプレ会場なのだろうか。それにしては、みんな同じ制服を着ている。

自分はあの時死んだと思っていたのが実は夢で、咲と健斗がどこかに居るのだろうか。

それともこれは、咲と健斗に会いたかったという願望が見せている、二人に会えそうな状況の夢なのだろうか。
走馬灯というには、明らかに状況がおかしい。

もし夢か現実か理解してしまうと、例え幻だとしても咲と健斗に会えないのだろうか。
——そんなのは嫌すぎる。

例え幻でも良い。

喋れなくても、触れなくてもいい。

ただもう一度、もう二度と会えなくなる前に、二人の笑顔が見たかった。
——何故二度と会えないと思うのだろうか。やはり、職場での最後の記憶のせいだろうか。

キョロキョロと二人の姿を探す。

もし現実なら、きっと咲に付き合ってイベント会場に来ているのだ。
二人が近くに居ないはずがない。

もし夢なのだとしたら、少しくらいの願望を映し出してくれても良いのではないだろうか。

そう思うのに、どこにも二人の姿が見当たらない。

ここに居る人たちに聞けば、何か分かるだろうか。

「ねぇ……咲と健斗が……どこに居るか知らない?それと、立ち眩みは大丈夫。もう離して?」

何人かが息を呑んだのを感じる。

そんなにおかしい質問をしてしまっただろうか。

それとも咲はハンドルネームの方で聞くべきだっただろうか。
そういえば、名前をもじったハンドルネームなので問題はないだろうが、本来は本名を言ってしまうのはタブーだと言っていた。

肩を支えてくれていた手が離れたのを確認して、もう一度聞き直そうと口を開きかけたところで、緑っぽい頭の女性に話しかけられた。

「ねぇ、わたくしのことわかるかしら?」

ふるふると首を横に振る。
咲に見せて貰ったことのある漫画の中には、該当するキャラクターはいなかったはずだ。

「ごめんなさい。知らないキャラクターだわ。」

「そう……貴女の名前は薫……で、合ってるかしら?」

今度の質問には縦に頷く。
咲の知り合いだろうか。まじまじと顔を見てみるが、こんな整った顔の知り合いは居ない。

「じゃあ、アシェルやメイディーっていう名前には聞き覚えがある?」

今度は首を横に。

そういう名前のキャラクターが出ている作品なのだろうか。

「そう……じゃあ、薫の名前がアシェルやアシェって思って聞いとってくれん?薫は何も話さんで、聞いとってくれたらいいけん。それと、最初の質問やけど、咲さんも健斗君もここにはおらんのよ……ごめんね。ちゃんと何でおらんのかも、後で説明するけん。あ、うちの名前は百合っちいうんよ、よろしくね。今からちょっと喧嘩することになるやろうき、もし怖かったら、うちの後ろに隠れとっていいばい。」

聞き覚えのある方言に、百合といった女性が、同郷かとても近い場所に住んでいる人だという事が分かる。
そのことが何も分からないこの状況の中で、とても心強く感じた。

状況が分からない今、薫が頼れるのはお姉さん肌に見える百合だけなのかもしれない。

少なくとも、薫が何故こんなところに居るのか。何故咲と健斗がいないのかの説明はしてもらえるだろう。
同郷のようだし、もしかしたら咲の言っていた先輩なのかもしれない。

「分かったわ、百合さん。」

「うちも薫っち呼び捨てなんやき、呼び捨てでいいばい。」

にこっと微笑んだ百合に、薫は頷いた。

「ムーラン皇女殿下、モーリス皇子殿下。そんなところで言い争ってないで、ここへ来て、ちゃんと説明してくれるかしら?これでもわたくし、魔力が暴走してしまいそうなくらい怒っているのよ。きっと周りの皆もね。」

腕を組んだ百合が、怒りを隠しもせずに青灰色の肌の男女に向かって言い放った。

皇女とか皇子とか魔力とか、今からお芝居でも始まるのだろうか。

少しだけ怒鳴り声にビックリしてしまい、ビクッと身体が動いてしまった。
百合はあんなに優しく声を掛けてくれたのに、嫌な気持ちにさせてしまわなかっただろうか。

百合は男女を睨みつけていて、こちらには気付いていないようだ。
そのことに安堵する。

だがピンクっぽい頭の女性は気付いたようで、近くに寄ってきて声を掛けてくれる。

「薫はん。大丈夫?なるべく分かるよう話すつもりやけど、出身が違うさかいに、言葉とかイントネーションが少し分かりにくかったらごめんな。うちの名前はオウカいいますねん。桜の花って書いて桜花や。人の怒鳴り声は怖いやろ?……うちも少し怖いねん。薫はんが嫌やないなら、手ぇ繋がせてもろてもええか?」

関西弁で話す彼女の名前は桜花というらしい。ウィッグだろうが、淡い金を帯びたピンク色の髪の毛のイメージによく似合っている。

薫が頷くと、桜花が嬉しそうに手を握ってくれた。
人の怒鳴り声が怖いのなら、薫たちと同じ境遇とまでは行かないまでも、かなり厳しい両親に育てられたのかもしれない。

その間に、気付けば青灰肌の男女対その他大勢という図式が出来上がっていた。
どうもお芝居ではなさそうだが、一体何で揉めているのだろうか。

「薫。ちょっとややこしくなるけん、今からアシェって呼ぶけんね?アシェルって呼ぶ人もおるけね。今からココに居る人たちの名前を教えるけん、覚えてくれん?名前が分からんと、話も意味が分からんと思うき。薫なら、一回聞いたら覚えれるやろ?」

百合の優しい声にこくんと頷く。
記憶力は良いほうなので、名前を覚えるのは問題ない。
——相手の姿形が変わらない限りは。

髪型や化粧、眼鏡などで印象を変えられると分からなくなる可能性はある。

百合はやはり咲の先輩なのだろうか。
薫は面識が無いのに、薫の記憶力が良いことを知っているようだ。

「うちはリリアーデかリリィ。アシェはリリィっち呼んでくれたら良いきね。んで、桜花はパトリシアかパティ。パティっち呼んであげて。他は近い人から名前言うね。二つ名前言う人は、後から言う方が愛称やけん。アシェはそっちで呼んであげて。さっき支えとったんがアークエイドかアーク。その次がメルティーかメル。シオン。ケモ耳の人はマリク。んで、肌の色が違う二人は、女の方がムーランで、男の方がモーリス。一応他所の国の皇族やけど。喧嘩売ってきたんはあっちやし、敬語を使う必要も、敬称を付ける必要もないきね。……多かったけど、覚えれた?」

設定とは言えこんなにリアリティ溢れるお芝居をしていて、他所の国の皇族なのに、不敬罪とかで捕まったりしないのだろうか。
コスプレ仲間なので無礼講ということなのだろうか。そういう雰囲気ではないように見えるのだが。
それに喧嘩と言っていた。何があったのだろうか。

よく分からない状況だが、名前は分かったので頷く。

ロールプレイなのかもしれない。今から薫はアシェルという名前だ。
その名前は。聞き覚えが無いはずなのに、どこかしっくりくる気がする。

「で、さっさと説明してくれるかしら?わたくしも怒っているのだけれど、正直なところ。アークとマリクに八つ裂きにされていないだけ、感謝したほうが良いと思うわよ?もし変なことしようとしたら、間違いなくマリクがその首を狙いに行くわ、とだけ言っておくわね。」

「……アシェルに……アシェルに渡したスクロールは、ちゃんと説明した通りのものよ。魔力を流しながら意識した思い出が、見えるようになる術式。使ったことは無いけれど、そう聞いているわ。アークエイド様とのことを思い出したらって言ったわ。ただ、アシェルには一つだけ言ってないこともあるの……。」

しゅんと肩を落ち込ませたムーランに、リリアーデは「で?」と冷淡に続きを促す。

「……これはそうやって意識して見た記憶を、一時的に封印するものなはずだわ。もし昔に使った事があるものと同じなら。あの時は半日で記憶が戻ったから、それくらいで戻ると思うのだけれど……。」

「つまり、今アシェの記憶は一時的に封じられてるって事ね?何を忘れさせたかったのか知らないけど、アシェに何を思い出せって言ったの?貴方たちには分からないかもしれないけど、今のアシェには……今のアシェにはアシェルだったって記憶が一つも残っていないのよ!?一体何をしたっていうのよっ!折角楽しく生活をしてたのにっ。もうすぐアークと婚約する話だって出たのにっ。例え記憶が戻るとしても、何でアシェに辛い記憶ばっかり残したのよっ!!」

涙を流しながら怒鳴るリリアーデに、ムーランは何かにかちんと来たのだろう。
あちらも怒鳴り返してくる。

怒鳴り声は怖いが、これはどう考えても名前がアシェルだと言われた薫は、聞いておかなければいけない話だ。
記憶とか術式とかはよく分からないが。

「何でって……わたくしだってアシェルが、こんな風に別人みたいになってしまうなんて思ってなかったわっ。ただちょっとアークエイド様との思い出を封じ込めて、少し仲違いをさせたかっただけだものっ。王族が一目惚れ体質だってことは理解したわ。殿下に説明を受けて、本当はずっとアシェルを女だと知っていたことも聞いたわ。でもっ。わたくしがどれだけ好きと伝えても、女だからという理由で遠ざけられてたのよ!?それにアシェルはずっとわたくしのことを騙していたのよっ。友達だと思っていたのに……公けの発表の前に打ち明けてくれたっていいじゃないっ。二人の婚約の邪魔くらいしたくもなるわっ。そう……ただちょっと嫌がらせをして、二人を慌てさせたかったのよ……。それなのに、まさかアシェルが一生を遡って思い出そうとするなんて……思わなかったのよ……こんなことになるなんて……。」

ムーランは怒鳴ったかと思ったら、グスグスと泣きながら床に崩れ落ちてしまった。

「姉上っ。いくら嫉妬したからといって、こんな術式に頼ってはいけないと、前に散々話したはずですよ。それに今回はかなり不味い……。誰か、アシェル殿の使ったスクロールの場所を知りませんか?」

どうやら弟らしいモーリスが、アークエイドが床から拾い上げた紙切れに目を通していく。

「どこだ……どこに時間が載っている?あぁ、くそっ。ダミーが多すぎる!でも、術式が消える前に見つけないと……。」

「モーリス殿。何が不味いのかまず説明してくれ。アシェがブツブツ言っていた内容で良ければ、その後に伝える。」

冷ややかなアークエイドの声に、モーリスが顔を上げて少し迷った。
それでも何かを話すことに決めたようだ。

「姉上が昔のような術式を使ったのが分かったのは、亡くなった祖父が、姉上の周りで特定の反応が出た時にだけ呼応する魔道具を作ってくれていたんだ。このスクロールを描いた男は、第二皇妃が懇意にしている術式開発者だ。もしかしたら、また同じことが起こるかもしれないからと……。その魔道具が割れた。本当なら光るだけのはずなのに割れてしまったということは、祖父曰くその術式を禁忌とされる相手に使った時だけだ。……アシェル殿は何らかの形で、精神や記憶に干渉する闇魔法を使われた事があるはずだ。それも、どの国でも禁術扱いされるレベルの強いものを。」

やっぱり何の話をしているのか分からないが、それが自分自身に関わる話だということは分かる。
どうやらそのアシェルは記憶を封印されてしまって、薫という他の人間の意識が中に入ってしまっているということなのだろうか。

よく見れば視線は高いし、どうやら自分は銀髪のロングヘアのようだ。どうりで頭が重たいはずである。

「っ!!モーリス殿、それは何故禁忌なんだ?どういう影響が出る可能性がある??間違いなくアシェは禁術を受けた事がある。居合わせたから間違いない。それと……自身で一度記憶に関しての魔法を使っている。術式など何も知らない頃だが、封印がかなり強力だったことを考えると、禁術レベルのものを使っていたとしてもおかしくないくらいなんだ。」

「本当ですかっ!?一度でも危ういのに、二度の可能性もあるなんて……。本来この術式は、姉上が言っていたように一時的に記憶を封印するもので、少し周囲は混乱しますけど本当に悪戯みたいなものなんです。ちゃんと時間が来れば全て思い出しますし、これを使って見た風景はちゃんと覚えています。だから、一時的な嫌がらせではあるけど、幸せなことを思い浮かべるのであれば、実質。薄れていた楽しい思い出を思い出させるだけの代物なんです。姉上は好いた男と婚約する女への嫌がらせのためだとしか言い張りませんし、少なからずそう思ってるとは思うんですけどね。ただ、禁忌に触れていた場合は……制限時間が訪れても、記憶が上手く戻るか……。この術式の封印自体は弱いものだから、きっかけがあれば思い出すと思うけれど……戻るとしても、本来のように時間が来れば全てを一気に思い出す形じゃないはずだ。多分、ゆっくりと時間をかけて思い出す必要があると思う。まずは制限時間が過ぎたころに、どこまで思い出したかの確認が必要だと思う。どうしても無理やり思い出させるのなら、それこそ禁術を使うことになるし、身体への負担が大きすぎる。」

アークエイドはモーリスの言葉を聞いて、ムーランは本当に嫌がらせをしつつも、性格的に素直にお祝いを言えないので、お祝い代わりにこの術式を使わせたかったのではないかと思った。
少なからず、本人の言っていた理由が根底にあったとしても。

自分勝手で破天荒な性格のムーランだが、なんだかんだ言って根は素直な少女だ。
だからこそアシェルは、自分で何の術式かはっきりと分からなかったにも拘らず、なんの躊躇いもなく魔力を通したのだから。

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