氷の王子様と微笑みの男装令嬢

芯夜

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第四章 王立学院中等部三年生

286 家族公認荒療治③

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Side:イザベル14歳 秋



ぽぅっと光った扉が開き、イザベルは錬金小屋を訪れた。

部屋の中を満たす雄臭さに一瞬顔を顰め、未だに全身どろどろのまま寝息をたてるアシェルと、その足元で自身を慰めるアークエイドを確認する。

仕事中のイザベルは滾った男の一物を見ても、頬を染めたりはしなかった。
侍女とは本来主にとって調度品などと変わらないのだ。仕事中にこれくらいで頬を染めていては失格だろう。

アシェルの秘部はどろどろの白濁に覆われ、下着の代わりに秘部を隠している。

さすが当主であるアベルの——いや、以前アルフォード用にとアシェルが作った凶悪な媚薬をベースに、アベルと兄達が共同で作り上げたアシェル専用の媚薬である。
開発期間がアシェルが記憶を無くしてからだったのだが、ベースの参考資料があったからか。短期開発の割には、かなり極悪なものが出来上がっていたようだ。

それを少し弱めたらしいが、アークエイドにも薬瓶一本分飲ませたので、さすがに効きすぎたのだろう。

「失礼しました。……少し早かったでしょうか?」

「早い、早くないじゃない。媚薬を盛っただろ、俺達に。どれだけ強力なんだ。出しても出しても治まらないんだが。」

「旦那様とアレリオンお義兄様とアル様が共同で、アシェル様がアル様用に配合した媚薬を元に改良したものでございます。といっても、無臭に拘った為に効果や効果時間はアシェル様のものに劣るようですが。こちらが拮抗薬でございます。」

イザベルは『ストレージ』からとりだしたピンク色の薬瓶を、アークエイドに手渡した。

アークエイドは躊躇いなくそれに口をつける。
イザベルの説明に何の疑問を呈することもなく。

それを見て、恋人をオカズに、勝手に一人で自身を慰め続けるのも虚しそうだなと思ってしまった。

「拮抗薬は5分もすれば効果が表れる即効性だそうです。落ち着くまでの間、窓の掃除をさせていただきますね。それまでごゆっくりと。」

「興奮の伴わない欲情は疲れる。これで落ち着くなら、こちらも身支度をする。」

アークエイドは手早く身支度をして、二人で手分けして錬金小屋内に『クリーン』をかけ。
錬金小屋に備わっている換気の魔道具を動作させる。

イザベルは持ち込んだ大量のタオルと、火魔法の併用で少しだけ温度を上げた『ウォーター』で、丁寧にアシェルの中から白濁を掻き出す。

「……後ろでもなさいましたね?」

「……すまない。」

「流石に腸壁を傷つけそうです。……これでとりあえずは大丈夫でしょう。」

自浄作用を持つデリケートな膣内にクリーンを使うのは躊躇われるが、腸内なら大丈夫だろうと『クリーン』でお手軽に綺麗にしてしまう。

残っていてもトイレか、夜のお風呂で洗い流せばいいだろう。

身体に匂いが染みついていては困ると、全身にかけたクリーンとは別に、一度アシェルの全身を拭き上げる。

身体をひっくり返し、背面を拭き上げていると、アシェルが目を醒ましたようだ。

「んっ……あれ?ベル……??」

「はい。夕飯のお時間になりましたので、お呼びにあがりました。お加減は如何ですか?」

問われたアシェルは少し悩んで答えを出した。

「身体の疲れよりも、頭の方が疲れたかも。気が狂いそうだった。それより……どうして僕の紅茶やアークに媚薬を盛ったの?指示したのは誰?」

にっこりと笑ったアシェルに、イザベルは安堵すると同時に、怒りを含んだ笑顔であることに恐怖する。

下手に誤魔化しても更に怒らせるだけだと、心の中でアベルに謝りながらイザベルは口を割った。

「……旦那様でございます。きっと記憶が曖昧なアシェル様に、アークエイド様は遠慮なさるでしょうから。ですが、間違いなくアークエイド様と身体を重ねることは、多くの記憶と関わるだろうとの判断です。昨夜アークエイド様とのことを思い出しきれていないと不安そうでしたので、薬を使うように指示されました。お叱りでしたらいかようにも。」

深々と頭を下げたイザベルに、アシェルの「顔を上げて。」という声がした。

「僕の為ってことは分かったよ。確かに、かなり思い出した。少なくとも、この錬金小屋で前にアークと色々したことだって思い出したし。こんなことも忘れてたんだっていうのが思い出されてる最中。」

アシェルは思い出している記憶と忘れた記憶を誤魔化したままなので、すごく曖昧な答えを返したが、本当にポンポン記憶の欠片が飛び込んできている。

相変わらずプロポーズについては謎だが、少なくともアークエイドと肌を重ねていた時のことは思い出せているのだ。

全てか分からないが、アークエイドが朝まで抱くと言ったら本当に明け方まで抱き潰されていることも。
それが媚薬なしだと、アークエイドが満足しきる前にアシェルの方に限界が来てしまうことも。

たっぷり溶かされて、たっぷりおねだりして甘えていることも。
それらが全て、アシェルが満たされる行為であることも。

ついでに無駄におねだりしたことにも気付いた。
てっきりアシェルがおねだりの作法を間違えたために反応が無かったのかと思ったのだが、恐らく言葉の意味が分からずに固まっていただけではないかと思う。

どうしてもアークエイドのモノが欲しくておねだりしたが、アークエイドなら普通にお願いすればシてくれたはずなのだ。

「媚薬については、いつお気づきに?」

「意識が落ちる前かな。紅茶を飲んだ後と、アークとキスした後の魔力反応から媚薬だなって。僕に飲ませたのと、アークに飲ませたの。ちょっと違うでしょ?なんでそう思ったかは、また曖昧になってきてるし。じゃあどんな魔力反応だった?って言われても、もう覚えてないんだけど。意識が落ちる前に、間違いなくこれはフォアレン草を含んだ媚薬だって思ったんだ。それからそもそも、空調の魔道具がついてる錬金小屋が暑いわけないってことも。ついでに、アークに一杯食わされたと思った。」

さすがにここで二人がどんな会話をしていたのか分からないイザベルは、何のことだろうかと首を傾げる。

「くくっ、だが、興奮はしただろ?」

「本当に見られたと思ったんだからね?外から見えないって知ってて状況を楽しむのと、本当に見られるかもってするのじゃ違うんだからっ。」

どうやら、窓の一つが体液で汚れていたことについてらしい。

アシェルは頬を膨らませているが、アークエイドは笑っている。

アシェルが本気で怒っていないことが分かっているからだろう。
アシェルが頬を膨らませるのは、ちょっとは嫌な思いをしましたよ、というアピールだから。

本気で怒っている時は、お怒り気味な笑顔も通り越して、とても冷めた退屈そうな顔になる。
仮に笑みを浮かべたとしても、口元だけで全く笑っていないのだ。

きっといつもの笑顔しか見たことがない人間が見たら、本当に同一人物かと疑うような表情だろう。
それはメイディー直系たち全員に言えることだ。

「はぁ、まぁ今回は仕方ないけど。いくら僕が分かってないからって、アークにまで薬を盛るのは止めて。もしそれが必要な事なら。ちゃんと何を服用させるかの説明をしてからにしてくれる?ちゃんと護衛の役割を果たせない僕自身が一番悪いのは分かってるけど……。それでも、こんな風に騙し討ちみたいな形で使われるのは嫌だから。今後はこんなことしないって、約束して。」

「今回が特殊なだけで、アシェル様が嫌がるであろうことは承知しております。約束いたしますので、この話しはこの場で終わりにしていただけましたら。」

アベルはきっとアシェルが怒鳴り込んできても良いと思っていそうだとは思うが、出来れば二人が不仲になるようなきっかけにはなって欲しくない。

「分かってるよ。お父様に八つ当たりしたりしないから。もう服着ても良いの?良いなら着替えをちょうだい。」

「こちらを。」

イザベルが手渡した男装の着替えを、アシェルは一人で着替えてしまう。

本当はワンピースかドレスを着て欲しかったが、今夜も夕食はアシェルの部屋で良いと聞いているので、これ以上アシェルのご機嫌を損ねないためだ。

アークエイドとの情事は余程疲れたのだろうか。

今日のアシェルもうとうとしていて、夕食の後はもう寝るというアシェルを無理やりお風呂に突っ込んだ。

文句を言わないのを良いことにフルコースでお手入れをして、寝支度を終えたアシェルをアークエイドに預けて御前を下がる。

アークエイドがアシェルを見てくれる安心感とお手入れの達成感に満たされたイザベルは、この時は疲れからだろうとアシェルの眠気を気にしていなかった。

翌日からもアシェルが毎日。
睡眠を十分にとっているはずなのに、常に眠たそうに過ごすことになるとは思っていなかったのだ。
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