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第二章
27話
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「オルコックさんはどうなの?誰か気になる男性はいらっしゃる?」
最終的に私は聞く専門に徹していたリリーちゃんに話を振った。そうだ!彼女こそゲーム内ではヒロインなのだからこういった話に一番縁がありそうだ。それに一応攻略対象であるルカルド様とペアだし、何かあってもおかしくないはず。
「私は……いない、ですね」
「え、本当に?」
帰ってきた答えがあまりにも意外で、取り繕うこともなくそのままの言葉が出てしまった。
「はい、特にいらっしゃらないです。……そもそも私を好きになってくださる方もいらっしゃらないでしょうし……」
「そんなことないと思うけれど……ルカルド様は?ペアでしょう?」
そう話を振ってみると彼女は苦い顔をした。
「仲良くなれたら、とは思ったのですが、どうやら私は嫌われているみたいで……」
「どうしてそう思ったの?」
「顔は笑っていらっしゃるけれど、目が……」
「……それっていつもじゃない?」
ふとルカルド様の日頃の様子を思い出して呟くと、リリーちゃんはキョトンとした顔になった。
「そ、そうなんですか?」
ラズリアさんも驚いたように聞いてきた。彼女は普段からルカルド様と特に接点がないから知らなかったらしい。
「えぇ、だいぶ昔から。そうよね、メルル?」
「……私はあまり、気づきませんでした…」
どうやらメルルも心当たりがないようだ。あら?もしかして、腹黒を見せているのは私とリリーちゃんにだけということ?だとしたらリリーちゃんったら結構ルカルド様との心の距離が近づいているのではないかしら?私に関してはおそらく兄の婚約者だからだし。これは今後が楽しみね。
それから私たちは夜深くまでたくさんおしゃべりをしてそのまま眠ってしまった。話しているうちにリリーちゃんの顔色も段々良くなったように見える。今日のパジャマパーティーは大成功かもしれない。
「……ん?い、痛い…」
ふと目を覚ますと辺りはまだ暗かった。どうやらソファに座ったまま眠ってしまっていたらしく、体が固まってしまってあちこちが痛む。向かいに座るメルルとラズリアさんもきっと明日の朝同じ症状に悩むだろうけれどぐっすりと可愛らしい寝顔で眠っているので起こす気にはなれなかった。あら?そういえば……
「オルコックさん…?」
小さく声が漏れる。私の隣に座っていたはずのリリーちゃんがいなくなっているのだ。「澱み」は確か闇を好むもの。つまり今この時間は特に動きやすい時間帯かもしれない。だとしたら今一人でいるリリーちゃんは相当危ない状況なはず。……探しに行こう。行けるところは限られているからきっとすぐに会えるだろうし。
私は静かな寝息を立てる二人を起こさないようにそっとドアを閉めて外に出た。さて、リリーちゃんはどこに行ってしまったのか。寮の自室……はないわね。今日は私の部屋に泊まるからと言って他の3人は寮母さんに鍵を預けてある。こんな夜更けにわざわざ寮母さんのお部屋に行って起こして部屋の鍵を手に入れる、というのは少し考えにくい。となると、学院内は立ち入りできないし、寮の庭園くらいになるわね。
それから少し歩いて、庭園まで来た。この庭園は男子寮と女子寮を繋ぐ形で作られている。真っ暗で何も見えないのではないかと心配したけれどそうでもないみたいだ。所々に灯りがあって物や人の識別はできる。ベンチがいくつか並んでいて、あとは基本的に美しい花々が咲き誇る場所なので、人がいるとしたらまずベンチだろう。
ベンチのあるところを探していくと、ようやく人を見つけた。でも、よく見てみると二人いるらしい。一人は女性で一人は男性。……あれは、もしかしてリリーちゃんとルカルド様?
ベンチに二人で座って何か話しているらしい。内容が聞こえる距離まで近づくのは何だか憚られて、少しだけ離れたところから二人の様子を窺った。
「こんな夜中に…二人で何を?」
それから少ししてリリーちゃんがルカルド様の肩に頭を預けた。どうやら眠ってしまったらしい。そう思ったのだけれど、すぐに頭は持ち上がった。そしてその顔をルカルド様が覗いたと思ったらルカルドはその場にバサッと倒れてしまった。
「っ…!……ルカルド様?」
信じられない光景に私は驚き、それでも自然と二人の方に駆け寄っていた。何が起きているのかこの目で確かめたかったのだ。まずルカルド様に近づいて様子を見ると、息はしているのでどうやら気を失っているらしい。
「ねぇ、オルコックさん……?これは一体……」
そう言いながら彼女の顔を見ると見たことのない表情をしていた。愛らしい顔には似合わないいやらしくニヤリと笑った表情をしている。
「これは都合が良い」
彼女は小さく呟いて笑った。そして次の瞬間、私は闇に飲まれてしまった。
最終的に私は聞く専門に徹していたリリーちゃんに話を振った。そうだ!彼女こそゲーム内ではヒロインなのだからこういった話に一番縁がありそうだ。それに一応攻略対象であるルカルド様とペアだし、何かあってもおかしくないはず。
「私は……いない、ですね」
「え、本当に?」
帰ってきた答えがあまりにも意外で、取り繕うこともなくそのままの言葉が出てしまった。
「はい、特にいらっしゃらないです。……そもそも私を好きになってくださる方もいらっしゃらないでしょうし……」
「そんなことないと思うけれど……ルカルド様は?ペアでしょう?」
そう話を振ってみると彼女は苦い顔をした。
「仲良くなれたら、とは思ったのですが、どうやら私は嫌われているみたいで……」
「どうしてそう思ったの?」
「顔は笑っていらっしゃるけれど、目が……」
「……それっていつもじゃない?」
ふとルカルド様の日頃の様子を思い出して呟くと、リリーちゃんはキョトンとした顔になった。
「そ、そうなんですか?」
ラズリアさんも驚いたように聞いてきた。彼女は普段からルカルド様と特に接点がないから知らなかったらしい。
「えぇ、だいぶ昔から。そうよね、メルル?」
「……私はあまり、気づきませんでした…」
どうやらメルルも心当たりがないようだ。あら?もしかして、腹黒を見せているのは私とリリーちゃんにだけということ?だとしたらリリーちゃんったら結構ルカルド様との心の距離が近づいているのではないかしら?私に関してはおそらく兄の婚約者だからだし。これは今後が楽しみね。
それから私たちは夜深くまでたくさんおしゃべりをしてそのまま眠ってしまった。話しているうちにリリーちゃんの顔色も段々良くなったように見える。今日のパジャマパーティーは大成功かもしれない。
「……ん?い、痛い…」
ふと目を覚ますと辺りはまだ暗かった。どうやらソファに座ったまま眠ってしまっていたらしく、体が固まってしまってあちこちが痛む。向かいに座るメルルとラズリアさんもきっと明日の朝同じ症状に悩むだろうけれどぐっすりと可愛らしい寝顔で眠っているので起こす気にはなれなかった。あら?そういえば……
「オルコックさん…?」
小さく声が漏れる。私の隣に座っていたはずのリリーちゃんがいなくなっているのだ。「澱み」は確か闇を好むもの。つまり今この時間は特に動きやすい時間帯かもしれない。だとしたら今一人でいるリリーちゃんは相当危ない状況なはず。……探しに行こう。行けるところは限られているからきっとすぐに会えるだろうし。
私は静かな寝息を立てる二人を起こさないようにそっとドアを閉めて外に出た。さて、リリーちゃんはどこに行ってしまったのか。寮の自室……はないわね。今日は私の部屋に泊まるからと言って他の3人は寮母さんに鍵を預けてある。こんな夜更けにわざわざ寮母さんのお部屋に行って起こして部屋の鍵を手に入れる、というのは少し考えにくい。となると、学院内は立ち入りできないし、寮の庭園くらいになるわね。
それから少し歩いて、庭園まで来た。この庭園は男子寮と女子寮を繋ぐ形で作られている。真っ暗で何も見えないのではないかと心配したけれどそうでもないみたいだ。所々に灯りがあって物や人の識別はできる。ベンチがいくつか並んでいて、あとは基本的に美しい花々が咲き誇る場所なので、人がいるとしたらまずベンチだろう。
ベンチのあるところを探していくと、ようやく人を見つけた。でも、よく見てみると二人いるらしい。一人は女性で一人は男性。……あれは、もしかしてリリーちゃんとルカルド様?
ベンチに二人で座って何か話しているらしい。内容が聞こえる距離まで近づくのは何だか憚られて、少しだけ離れたところから二人の様子を窺った。
「こんな夜中に…二人で何を?」
それから少ししてリリーちゃんがルカルド様の肩に頭を預けた。どうやら眠ってしまったらしい。そう思ったのだけれど、すぐに頭は持ち上がった。そしてその顔をルカルド様が覗いたと思ったらルカルドはその場にバサッと倒れてしまった。
「っ…!……ルカルド様?」
信じられない光景に私は驚き、それでも自然と二人の方に駆け寄っていた。何が起きているのかこの目で確かめたかったのだ。まずルカルド様に近づいて様子を見ると、息はしているのでどうやら気を失っているらしい。
「ねぇ、オルコックさん……?これは一体……」
そう言いながら彼女の顔を見ると見たことのない表情をしていた。愛らしい顔には似合わないいやらしくニヤリと笑った表情をしている。
「これは都合が良い」
彼女は小さく呟いて笑った。そして次の瞬間、私は闇に飲まれてしまった。
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