あやかしと神様の昔語り

花咲マイコ

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九尾の復活

8☆神の依代の眷属

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 人の体をした光は狐に変化して白い狐の姿になる。
 実体化した眠る狐の菊は元は大妖怪の九尾狐だ。
 妖気の光を一瞬放つと、人の姿……愛おしい姿になる。
「橘……」
 輝きの消えた橘の体は薄い布を纏い、裸を隠して地に着くと、四つん這いで背伸びをしたあと膝を崩して座り、手を前について、胸の谷間が強調されて色っぽい。
 大きな真っ白な尻尾を揺らし、白い耳を震わせる。
 茶色の髪は白銀に輝く。
 白狐のあやかしになった橘は神聖な獣のようだ。
 瞬きをゆっくり一回してじっと威津那を見る。
 それは舐めまかしく、艶のある色気を放つ。
 
 威津那が忘れられない未来の夢で、いつも橘の白狐の姿になった時の姿の未来が目の前にある。
 男として興奮するよりも、体も無残な傷がなく綺麗な状態が確認できて安堵する。
 そんな呆然と立ち尽くし見つめる威津那に橘は意地悪な笑みを向けて素早く威津那のそばに瞬間移動して顔をキスするほどの近くまで寄せる。
 真っ白な橘の薄紅色の唇が三日月型にに、ニマリと笑う。
 その笑みは艶があり、橘の明るい笑みとは違った。
「橘….じゃないのか……?」
 威津那は再び絶望が胸を締め付ける。
(魂は黄泉に逝き、体を菊が乗っ取ったのだろうか……)

そんなことは許されない……許さない……

 辺りを囲む闇が一層濃くなる。
「魂が橘でなくては意味がない……」

 菊はゾッとして距離をとって、焦る。
「まて、橘は今は眠っているだけだ!」
「眠っている?」
 威津那は怪訝な顔をする。
「我と魂を一つにするために…それに休息も必要だろう……?」
 たとえ体の傷がなくなったとしても、橘が前向きな思考の持ち主といえど辛い思いをしたのは変わりはない。
 安心して眠らせてあげたい気持ちはある……だが……
「……確かに…だが…本当だろうな?」
 赤い瞳は威津那の素の鋭さ…黒御足の成せる表情……容赦のない威津那である。
 菊はそんな黒御足が正直怖い。
「眷属が嘘をつけるわけないだろ……不本意だが橘が好きになった男が黒御足の我の尻尾を奪った憎き相手だとしても契約は契約だ…それにお前はハルの神の依代…我は眷属として従うしかない」
 菊はハッキリと断言する。
「そうか……」
 威津那は、ほっとすると闇が消える。
あたりはもとの祭壇になったが、禍々しく血に塗られた祭壇は新品のごとく穢はなくなっていた。
 呪詛を見に備えたハルの神の依代のなせる技だった。
 呪詛を吸い取り消してなくしてしまう。
 それは意識すれば飲まれた黒ずくめの男の様にこの世から消してしまうほどの力だ。
 その力に祈り姫の加護を持つ季節には効かない。
 この場に残る敵は焔一人だった。
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