あやかしと神様の昔語り

花咲マイコ

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九尾の復活

7☆同化

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(真っ暗……ここは黄泉なの……?)
 橘の意識は目覚める。
 一瞬瞳を閉じただけなのに……
(まさか、私の望みは叶わなかったの?)
 と思うと、涙が溢れて後悔しかない。
 それにしても動かない……体もボロボロにされたままだ……
 言葉が喉から発せられない状態なのを気づくと、とても惨めな姿のままなのだと確信する。
 実体ではない魂の存在のはずなのに…

(まだ体は魂が繋がっているの……?)

 身体中の痛さは地獄のような感じが戻ってくると悔しさで涙が出るものの、頑張ったから、威津那が助けに来てくれた嬉しさを思い出し心を潤す。

 ……だけど、そんなんじゃ満足な人生とはいえない!

生きたいよ…もっと…もっと……

 悲しくて涙が出てきた。
 その涙をぺろりと舐められた。
 
《こんなにボロボロにされた子孫を見るのは忍びないな…かわいそうに……生きたいか…橘……》
 闇の中白く光る白狐が橘の涙を拭う。
《お前の望みはなんだ……我を受け入れるのならば、命を長引かせてやろう……》

 威津那と…共にありたい…離れたくない……威津那じゃなきゃヤダ……威津那と幸せになりたい……

《そうだな……そうだな…幸せにしてやる》
 そう言って橘の体の上に乗り体に水に沈むように入っていく……
《お前はウカともあのカラスの一族の男との瑞兆を生む神呪を受けている…残念ながら陛下のそばに侍る我の望みは叶わぬが……瑞兆を産み育てるまで生かしてやる……》
 そうだった…その未来は宿命だった…
 ここで死ぬ宿命ではなかった……
 そこまでは計算してなかった。
 忘れていた…ただ、菊が助けてくれるという確証だけだった。

《生き返る条件として記憶が曖昧になる……暴力された記憶はもちろん…威津那との思い出も消えてしまうこともある……それでも我を受け入れるか?》
 半分体に沈めて最後の問いをする。

「威津那とは離れられない宿命だもの…忘れても…思い出すし…寿命がある限りもっと幸せになってやるわ」
 橘の前向きな答えに、菊はふふっと笑い。
 声が出るようになったのは菊と同化をはじめているからだ。
 橘の声は迷いもなく自信に溢れている。
《お前の前向きな明るさはあの男を闇から救い出すのだろうな……》
 菊は苦笑する。
 先の未来がわかっているからだ。
「ええ。どんなことがあろうとも威津那を救ってみせるわ。」

《ならばお前を白狐として生まれ変わり幸せに暮らすが良い……》
 菊は橘体の中に沈み交わり、意識が眠る。
 それは新たな存在として生まれ変わり生きるために……

《我と魂が同化するまでしばらく眠れ…その間に我は威津那の眷属として奴を撃つ……!》

 我が目覚めたならば我が子孫とウカの孫の苦しみを存分に味合わせてやる….とほくそ笑んだ。

 菊は元は大妖怪……力を失われても身に余る力を使えることが嬉しく思うのだった。
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