すずにひも

花咲マイコ

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5、ひも、目撃する

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 面接場所のこの部屋は扉がなく、通された入り口には控え室などあったけど、この部屋は死角に作ってあるらしくて、フロアからはこちらが気にならない位置にあるみたいだ。

 だから、僕がここに居ることにすずさんは気付かない。

 そして、僕はずずさんがいるテーブルを振り返って壁に隠れなから見みていると、長髪で背広を着た芸能人並に綺麗な男が現れて、すずさんのグラスにお酒を注いだ。
 それをすずさんはぐびッと飲む。
 すずさんの隣に座る時男の横顔をみた。
 その男は、僕とあまり年がかわらないように見えた。

 パッと見からでも20歳くらいに見える優男。

 すずさんより年下だ。

 大人の男が好みという分けではなかったらしい。
それに、その男がすずさんの恋人と決まったわけではない。

 なんだか、僕と同じように接してる感じがする。
 優しい女らしいすずさんじゃなくてがざつで、男らしいすずさんだ。

 だが、すずさんは目を擦るしぐさをすると男はすずさんの顔を優しく触り顔を自分の方にむかせるとキスをした!

 角度的にキスをしているように見えるだけかも知れない。
それにまだお店は開店していない様子だ。
 客はすずさん一人。

 しばらくして二人は顔を離し、こちらに顔を傾けたすずさんの表情はどことなく赤かった。
 それはつまり…角度的にではなく、本当にすずさんとキスをしたんだ!

 あの男こそ、恋人なのか!

 そう思うと、カッとなってしまって飛び出 そうとした時、

「きみ、よそ見をしてるんじゃないよ。面接に来たんだろう?」

 店長らしき男の人が僕の前の椅子に座っていて、声をかけてきた。

 ハッとして振り向くと、三十路を過ぎた様子のとっても、優し気で甘いマスクの大人の男が座っていた。

「履歴書を見せてくれないか?」

 声もとても色っぽく優しい雰囲気がある男の声だ。
そういわれても、履歴書なんて持ってるわけがない、

 すずさんが気になって後をつけるためにここまできた。

 そして、結果が分かったのだからこんな所にいる必要なんかない……

「あ…その…やっぱ、地道に働こうと思いますので失礼します!」

 と言い捨てて急いでホストバーを後にした。
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