鬼総長緒丹子の恋

花咲蝶ちょ

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3☆初デート失恋

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 一般参賀は、一ヶ月後。
 その時を思うと私はとても楽しみで仕方がなかった。

「明けましておめでとう今年もよろしくね。緒丹子ちゃん」
 誠さんは紺色の羽織着物を着ていた。
 その姿に私は顔が紅潮する
 二人きりの一般参賀のデートだと思ったのに……
「あなたが緒丹子ちゃんね?」
 誠さんと一緒に見知らぬ女が迎えにきてくれた。
「だ、誰だ?」
 か弱そうな今にも透けて溶けてしまいそうな十八歳のお姉さんだった。
 はっきり言って、日本人形のようなお姫様だと思う。
 武家の娘のような姫だと言われる私とは違うタイプだ。
 だが、異様に圧のかかった笑顔をこちらに向けてきた。
「わたくし、誠様の従姉妹で許嫁なんですの…よろしくね。」
 彼女は誇らしげに自慢げにそう言う。
「は……?」
「そうなんだ…決まったのは急遽二週間前なんだけどね」
 誠さんはどこかばつが悪そうな顔をしている。
「は?」
 私は頭の中が真っ白になって今の状況を理解すると、
「私いかない……」
 私は下を向いて涙を零す。
「もう知らない!でてけ!」
 鬼の本性の真っ赤な顔を露わにして威嚇して大声で怒鳴って玄関から追い出した。
 バタン!と戸を閉める。
「緒丹子ちゃん…ごめんね…」
 誠さんは玄関の扉越しに私がいることがわかるのか、そういって婚約者を連れて一般参賀に行った。
 胸に空気が空いたみたいに辛くて、
「うわああああああああ!新年早々失恋なんて最悪だよおおおお!」
 わんわん泣く私に両親は優しく慰めてくれて、父に至っては本性の鬼の姿で私の代わりに怒り狂って木魚がひび割れるほど二人の破局を仏に願ってくれた。


「女心を弄びやがって!この思い忘れるものかぁぁああ!」



 怒りが収まらない緒丹子は地獄の長になるほどに荒れた。

 現世でも暴走族の総長になるほどにこの思いの怒りや思いを消化できなかった…
 鬼は一途だ。感情が激しいのだ。仏のように心穏やかに微笑んでいたいものだが仏像のように心荒れ狂う事を表現してしまう。
 主にその荒れ狂う心は女心を弄んだ地獄の亡者どもを懲罰しまくった。
 現世では女をなめる暴走族や不良どもに制裁しまくる鬼の女総長という異名まで手に入れるほど荒れ狂った。

 父は私に同情してくれて太刀の一族許すまじ!になっている。
 いや、宮中の太刀のもの全て恨まなくてもいいんだけど……

 失恋した翌日、霧島悠と槐寿亜蘭が謝罪に来てくれた。
 本当にデートをさせたかった。
 婚約者になったばかりの彼女が嫉妬をして押しかけてきたと言うこと。
 榊誠が直接謝りに行っても火に油になるだろうから二人が謝りに来たようだ。
 榊の葉っぱを渡された。
 裏に「ごめんね」と書かれていた。

 グジャ!と握りつぶし違ったけど大事に取っておいた。

 もうそれも5年前で緒丹子は十五才になった。

 父は当時のことを思い出したのか、不意に不穏なことを言った。

「あの榊誠という緒丹子の初恋の男は元々鬼の呪いがかかっていたな……」
「何を今更なこと言ってんだよ…親父…」
「今頃あの世にいるかもしれんから緒丹子はそいつのこと忘れてこの世で暴れるのはいい加減にしろ。」
 榊誠はもう死んでしまった…と言うことか?と思うと胸が痛くなった。
 だけど、それは終わった恋だ…痛くなることなんて必要ない。
 それよりも父のさらりと言った事が引っかかる。
「は?何?鬼の呪い?ど、どう言うこと?」
「その鬼の呪いを解いてやろうかと思ったが、緒丹子を傷つけた男に容赦などいらんかなと無視してやったわ。」
 父は仏に帰依した、坊主のくせに容赦ない鬼だ。
「緒丹子を傷つけたのだから地獄に落ちてればいいのだがなぁ…」
 顎に手をやり吟味する様子に獄卒を率いていた伝説を持つ鬼の様子を窺える。
 今の今までそのことを黙っていた父の無言の執念にゾッとしながら、モヤモヤが晴れなくて深夜バイクを一人走らせた。
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