腹ペコ吸血鬼と警察官

花咲マイコ

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5☆お仕事優先

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「チッ。タイミング悪すぎ……」
 健十郎さんは苛立ち不機嫌な顔をして素早く服を着てルイを放置して、急いで部屋を出ようとする。
「あ、あのっ…私はどうしたら……」
 このまま放置はちょっとひどいと思う。
 健十郎さんはこちらに戻ってきて不安そうな私におでこへキスをする。
「ごめん、ちょっといってくるだけだから、君は絶対にここにいて!」
「は、はい……」
 でもやはり不安そうな私の姿をもう一度見て、
「あーーーーー!やっぱ行きたくねぇけど!オレ一応警察だからなっ!事件は放置できないんだ……」
「……ですよね。い、いってらっしゃい…お仕事がんばってきて…」
 まるで夫婦みたいな…と思いながら言う。
 健十郎さんは顔を真っ赤にして出て行った。
 普段着は悪ぶっているけれど、本来は警察官だけあって真面目で仕事する人。
 と彼を評価してみる。
「好みかもかも……」
 と顔を赤くなっていると感じながら呟いた。

 悲鳴を聞きつけて部屋の外はガヤガヤしている。
 私はタオルを体に巻いて、ドアに耳を立てる。
 吸血鬼の私は普通の人間より耳がいい。
 外には出られないけれど、何が起きたのか気になる……
「今度はこのホテルかよ…」
「この頃殺人事件多くね?」
「一人だけなら、恨みってわかるけど…こう、何人もじゃ猟奇殺人って奴?」
「こわー…」
 という言葉を聞いて、私はゾッとする。
「なんで……簡単に人を殺せるのかしら……」
 心に思うよりも口に出していた。
 人を襲う吸血鬼のはずの私は猟奇殺人や人が傷つくことにすごい嫌悪感が湧く。
 全身が冷たくなるほどの……怒り……
「…………なぜかしら……?」
 ぎゅっと体を抱きしめて、ベッドに戻るとふらふらと大きなベッドに倒れ込んだ。
 そのまま夢の中の闇に落ちた。
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