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3☆狐のお姫様と複雑な思い
しおりを挟む舞踏会からは狐のお姫様は大粒の涙を零しながら帰ってきました。
「どうして、そんなにないている?話してくれ」
魔法使いは狐のお姫様の体を優しく撫でながら理由を聞き出しました。
狐のお姫様は落ち着くと、涙声で、しゃくりを上げながら、
「人間として未熟なことや、恥をかいてしまい王様に合わせる顔がないと泣いてしまいました。」
そして、また大粒の涙を零すのです。
魔法使いは、優しく涙を拭ってあげて、狐のお姫様の心が癒されるように体を撫でながら、
「ならば、人間としてのマナーを身につけることを教えてやる」
と、狐の姫君が失敗したと嘆く原因を克服させてあげることを考え言いました。
「魔法を使って踊れるようにして下さるのですか?」
魔法使いなのだから簡単に克服させてくれるのかしら?と思い口にしましたが、魔法使いは意地悪な風に口端をわざと持ち上げ笑って、
「魔法じゃなくて、私自ら手ほどきてやる…ありがたく思え」
そういうと、狐のお姫様に魔法のキスをして、人間にすると、素敵なお姫様になるためのレッスンを手ほどきするのでした。
まずは、上手に踊れるようにワルツ足の動かし方。
歩くことはできても踊ることは初めてでなかなかステップができません。
「ごめんなさい!また踏んでしまって…!」
拙い足取りは魔法使いの足を踏んでしまい焦りますが、意地悪で厳しい魔法使いは
「ペナルティで、キスを頂こうか?」
そう言って遠慮なく、王様に捧げるためのキスを奪います。
狐のお姫様はウーっ!と唸って魔法使いを睨みます。
「キスをされたくなかったら、早くステップを覚えることだな。ふふ。」
といじわるを言いながら、優しく根気よくステップを教えてくれました。
さらに、可愛らしい仕草、言葉いまで丁寧まで、真剣に丁寧に教えてくれました。
間違えるたびにキスをされるのを必死に防ぐために狐のお姫様も必死で真剣に魔法使いの教えを真剣に学ぶのでした。
魔法使いは狐のお姫様をいじめる貴族たちを見返してやりたいという気持ちもありました。
魔法を使えばそれなりに見えるはずですが、魔法は使わずに自らの手ほどきで姫と触れ合ううちに魔法使いの心の中にドキドキとときめく思いが募っていきました。
魔法使いはその思いを隠して狐の姫様を素敵なご令嬢に成長させました。
☆
そして、次の舞踏会では、魔法使いとの特訓のおかげで誰もが狐のお姫様から目を離せないほどの美しいワルツをするのです。
王様も狐のお姫様に目を奪われるほどでした。
王様は狐のお姫様の手を取ってワルツを踊っていただきました。
「この間は皆があなたを意地悪していたのに助けてあげられなくてすまなかった。」
王様はワルツを狐の姫様と踊りながらそうおっしゃりました。
王様にも謝ってもらうことはとても恐れおおいですが、
「私こそ身分をわきまえず、何も知らずに舞踏会に来てしまったのがいけなかったのです。」
その反省があってこそ一生懸命立派な人間の姫になるために魔法使いと練習したのです。
その練習のおかげで、今は王様に失礼にならないワルツができる事に満足し魔法使いに感謝しています。
「今はこうして王様に手を取っていただき、ワルツをしている事がとても幸せでございます」
「そうか、それなら私も嬉しいよ」
王様は優しく微笑みました。
その優しい笑顔が姫の胸をドキドキ、ふわふわさせてくれます。
さらに、今は、王様ととても近くでワルツを舞えて恐れ多くも幸せな時間をこのまま過ごせると思っていましたが、狐のお姫様の体からもくもくと煙が立ち込めて来ました。
これは、魔法が解ける合図です。
名残惜しいけれど、狐のお姫様は慌てて逃げるように舞踏会をあとにしてしまったのです。
☆
「王様とキスはできたのか?」
と意地悪な笑みで魔法使いは狐のお姫様に問いかけました。
その意地悪な笑みはこうなる事を知っていたかのようです。
更に本来の狐の姿をしているのですから、やはり分かっていて聞いたのです。
やっぱり意地悪な魔法使いです。
魔法使いに感謝はするけれど意地悪された事に怒りを感じます。
「王様と踊っている途中に煙が出てきて狐の姿に戻る前に逃げだしてしまいました…とても失礼な事をしてしまったのです…」
そのことを思い出すと、狐のお姫様は悲しくなって、また大粒の涙を流すのです。
泣き出す狐のお姫様に魔法使は困ってしまいます。
優しく頭をなでて慰めてくれます。
「なら、もう一度チャレンジしてみればいい…」
魔法使いは励ますようにそう言いますが表情は複雑そうでした。
「王様は私のことを失礼な姫と思われたかもしれないのに…」
今度こそ合わせる顔がありません。
「本物の人間になりたいのではないのか?そのくらいで泣いて諦めるようなものなのか?」
魔法使いとのキスと違い王様のキスを貰えば狐に戻ることはありません。
狐のお姫様の望みは叶うのです。
その思いを奮い立たせるように意地悪に言う魔法使いを狐のお姫様はムッと眉間にシワを寄せて睨み、
「もう一度人間にしてください!」
魔法使いは優しく狐のお姫様にキスをすると再び人間になることができました。
そのやさしいキスは心は勇気をくれると同時に、魔法使いの優しい気持ちが伝わってキスされて嬉しい気持ちが募って来る感覚におそわれるのです…
けれど、希望を叶えるためにはその気持ちはいけないものだとも感じ否定するのでした。
☆
狐のお姫様は諦めずに何度も王様にお会いするうちに狐のお姫様の健気な姿に王様も狐のお姫様を可愛く思っていました。
けれどそれは若い王様にも恋心と言えるものかわからない慈しみでした。
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