【完結】婚約者に忘れられていた私

稲垣桜

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13 婚約の解消を

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「思い出したようだね」


 真っ青な顔をしているフランクに冷たい声でそう告げたウェインは、彼らの目の前に婚約の契約書を広げて見せた。それを目にしたフランクは、さらに顔色を悪くしているようで、何を言おうかと口をパクパクさせていた。


「なんでも、6年前に『国境の部隊から帰ってきたら結婚しよう』と約束したらしいですね。それなのに、二カ月以上前に帰ってきているのに連絡もないとは」

「いや……それは…」

「それに、先日の夜会では他の女性をエスコートして、更に『彼女は恋人です。自分には婚約者はいない』といったそうですな」


 その事実を知らなかったフランクは、青白い顔から真逆の真っ赤な顔になってエドウィンを見て、大声で怒鳴りつけた。


「エドウィン!お前、何をしているんだ?恋人?それは誰だ!」

「え……いや…」

「タウナー伯爵、あなたも今の今まで忘れていたご様子。それなのに息子に全ての責任があるとおっしゃるのですか?まぁ、我が家としては、父には悪いがこの婚約は破棄とさせていただく。もちろん、そちら有責ということでかまわないですかな?」

「いや…だが、本人が言ったという証拠はないのでは?それでは認められません。私どもとしてはこのまま継続を…」

「今更何を。どれだけ娘をバカにすれば気が済むのだ。今まで散々放置していたくせに、交流も持たないまま何年たっていると思っている!」


 そして険悪な雰囲気になった時に、部屋のドアがノックされた。



「お父様、お話は終わりましたか?」

 部屋に入ってきた当事者の顔を見たエドウィンは目を見開いて、まるでお化けを見たようなそんな顔をしている。


 失礼な人だわ。




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