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その後、町を散策しながら周囲を観察した。
配置されている騎士や潜入している工作員らしい人物はリサからするとすぐにわかるが、彼らがしっかりと溶け込んでいることはよくわかった。
ラリーにしても夫の振りを完璧にこなしていて、誰も偽装だとは思わないだろう。
そしてリサは風魔法で周囲の音を的確に拾いながら、ラリーの後をついていった。
「リサ。これ、お前に似合うと思うんだ」
ラリーは奴隷商達がよく出入りする店の向かいにある雑貨屋の店先で商品を手に取り、リサへ声をかけた。
その手に握られているのは、赤い石を中心に細かい装飾が特徴的な髪飾りだった。
「私に?」
「愛しい妻にプレゼントの一つも贈らない情けない夫になりたくないからな」
そう言って店主にお金を払い、その髪飾りをリサの髪に付けた。
「うん、良く似合う」
「ありがとう、ラリー」
笑顔を浮かべ、彼の頬にキスをした。
頬にキスをすることは友人同士の間でも親愛の情を込めてよくすることだが、ラリーはあまり慣れていない様で少し戸惑っている様だ。その姿がリサには新鮮でなんだか揶揄いたくなってしまう。
そんなやり取りをしながらもさりげなく周囲に目を配り、該当者に辺りを付けその行動に注視した。
リサの耳には彼らの会話がしっかりと届いていたのだが、その耳にした事に対して行動しようとするとラリーに反対されることもわかっていた。
そう考えて、あえて何も言わずにラリーに「今日は宿に戻ってゆっくり飲もう」と告げた。
その提案を快諾したラリーは彼女の手を取り宿へ戻った。仲睦まじく見えるように。
そして言葉通り、二人でゆっくりとグラスを傾ける時間を取った。
配置されている騎士や潜入している工作員らしい人物はリサからするとすぐにわかるが、彼らがしっかりと溶け込んでいることはよくわかった。
ラリーにしても夫の振りを完璧にこなしていて、誰も偽装だとは思わないだろう。
そしてリサは風魔法で周囲の音を的確に拾いながら、ラリーの後をついていった。
「リサ。これ、お前に似合うと思うんだ」
ラリーは奴隷商達がよく出入りする店の向かいにある雑貨屋の店先で商品を手に取り、リサへ声をかけた。
その手に握られているのは、赤い石を中心に細かい装飾が特徴的な髪飾りだった。
「私に?」
「愛しい妻にプレゼントの一つも贈らない情けない夫になりたくないからな」
そう言って店主にお金を払い、その髪飾りをリサの髪に付けた。
「うん、良く似合う」
「ありがとう、ラリー」
笑顔を浮かべ、彼の頬にキスをした。
頬にキスをすることは友人同士の間でも親愛の情を込めてよくすることだが、ラリーはあまり慣れていない様で少し戸惑っている様だ。その姿がリサには新鮮でなんだか揶揄いたくなってしまう。
そんなやり取りをしながらもさりげなく周囲に目を配り、該当者に辺りを付けその行動に注視した。
リサの耳には彼らの会話がしっかりと届いていたのだが、その耳にした事に対して行動しようとするとラリーに反対されることもわかっていた。
そう考えて、あえて何も言わずにラリーに「今日は宿に戻ってゆっくり飲もう」と告げた。
その提案を快諾したラリーは彼女の手を取り宿へ戻った。仲睦まじく見えるように。
そして言葉通り、二人でゆっくりとグラスを傾ける時間を取った。
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