【完結】SS級の冒険者の私は身分を隠してのんびり過ごします

稲垣桜

文字の大きさ
32 / 63

31 ラリー side

しおりを挟む
 この日、俺は再度、兄上達に呼び出された。

 昨日、リサとのことを認めてもらう代わりに、どんなことでもすると言ってしまったのだから仕方ないのだが。
 まあ、言ったことに後悔はしていない。だからこそ、もっと詰めた話をするために時間をかけてじっくりと話し合う必要があった。

 話し合っている中で、兄上も宰相もリサの正体がエリザベスだということを知っていると知り、二人とも彼女を王家へ引き込むのも悪くないと考えていると気が付いた。
 だが、自由なリサを堅苦しい世界に閉じ込めたくはない。そう思うと、どうにかして自分に有利な条件で彼女とのことを認めさせようと、出来る限り有利な状況を維持しつつじっくりと話し合った。

 宰相は俺に国の要職に就くようにと詰め寄ってきたが、もちろんそれを突っぱねる。王宮に留まるより、今までのように国内の状況を調べて回る方がいいと訴えた。

 そう、リサとなら結果を出せるだろう。
 リサとならその日々も楽しいだろう。

 そして二人で過ごした日々に思いを馳せた。



 日も暮れ始めた頃にようやく話が終わり、今日こそはリサと一緒に食事ができると屋敷に戻ったが何処にもリサの姿がなかった。
 侍女が言うには、王太子のジークフリートが先触れなしにリサを訪ねてきて、色々とリサに暴言を吐いたらしい。
 内容は聞いたが、リサの正体を知らないあの甥は余計なことを言ったものだ。

 だが、誰が何と言おうと俺はリサがいればそれでいい。


 それなのに、彼女の部屋のテーブルには俺宛ての手紙が残されていた。


『あなたの邪魔にはなりたくないわ。愛している』


 そう書かれた手紙を読んで目の前が真っ暗になった。



 俺はすぐにガレーヌのギルドへと向かった。
 リサの正体を知っているのは国王と宰相、騎士団長、それと滞在地区のギルド長だけだという話だった。だからガレーヌのギルド長のグレンはリサの事を知っていたのだ。

 もしリサがガレーヌに戻ったのならグレンに聞けばわかるだろう。そんな安直な考えが浮かんだ。
 戻っているなら連絡があるかもしれないと、それに一縷の望みをかけていたのだ。

 そしてすぐにガレーヌに向かい、ギルド長に会った。
 だが、この日の昼にリサが来て町を離れると告げたと聞かされた。そして何処へ行くとも何をするとも聞いていないと。



 グレンに教えてもらった彼女が住んでいた家に向かったものの、そこは人のいる気配がなかった。



 俺の判断ミスで最愛の人を失ってしまった。


 このまま永遠に会えないのか??


 どうしたらリサに会える?


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!

お好み焼き
恋愛
ずっと辛かった。幼き頃から努力を重ね、ずっとお慕いしていたアーカイム様の婚約者になった後も、アーカイム様はわたくしの従姉妹のマーガレットしか見ていなかったから。だから精霊王様に頼んだ。アーカイム様をお慕いするわたくしを全て消して下さい、と。 ……。 …………。 「レオくぅーん!いま会いに行きます!」

えっ私人間だったんです?

ハートリオ
恋愛
生まれた時から王女アルデアの【魔力】として生き、16年。 魔力持ちとして帝国から呼ばれたアルデアと共に帝国を訪れ、気が進まないまま歓迎パーティーへ付いて行く【魔力】。 頭からスッポリと灰色ベールを被っている【魔力】は皇太子ファルコに疑惑の目を向けられて…

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

男装の騎士に心を奪われる予定の婚約者がいる私の憂鬱

恋愛
私は10歳の時にファンタジー小説のライバル令嬢だと気付いた。 婚約者の王太子殿下は男装の騎士に心を奪われ私との婚約を解消する予定だ。 前世も辛い失恋経験のある私は自信が無いから王太子から逃げたい。 だって、二人のラブラブなんて想像するのも辛いもの。 私は今世も勉強を頑張ります。だって知識は裏切らないから。 傷付くのが怖くて臆病なヒロインが、傷付く前にヒーローを避けようと頑張る物語です。 王道ありがちストーリー。ご都合主義満載。 ハッピーエンドは確実です。 ※ヒーローはヒロインを振り向かせようと一生懸命なのですが、悲しいことに避けられてしまいます。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

処理中です...