超越ミミックの人類調教計画!~迷宮で宝を得るために異世界を変革させます~

二足のわらじ

文字の大きさ
72 / 172
規格外のスタンピード

70 宴と新たな障害

しおりを挟む
 冒険者ギルド 正午

「みな、よくやった。俺たちはスタンピードを乗り切った。多くの者が冒険者ギルドの、お前たち全員の力を知った。だがこれは始まりに過ぎない。今日は大いに飲み、食べろ。そして明日からも俺の役に立て。乾杯」

「乾杯!」

 全員が杯を掲げる。
 テーブルの上には山盛りの食事が並ぶ。
 そのほとんどがスタンピードで手に入った食材だ。

 今回は食材が豊富だったので、バイキング形式で好きなものを好きなだけ食べられるようにしている。

 もちろんメインの食材は…。

「ドラゴンのステーキが焼けたよ!素材の味を楽しむにはやっぱりこれに限るね。みんなご苦労だったね、たんと食いな!」

 威勢の良い声を張り上げるのは料理班長のエルダだ。

 ドラゴンの肉が山盛りの皿をテーブルに置く。

 見事な霜降り肉だ。
 あのいかつい白竜の肉とは思えないな。

 肉に群がるギルドメンバーに混ざり、ステーキを口に放り込む。

 噛むたびに旨味が溢れる。
 表面を強火で炙っただけの調理が、肉の旨味を最大限に引き出している。
 口の中で肉が溶けていく。
 思わず二枚目を食べてしまう。
 本能に訴える味だ。

 珍しい肉をこうも完璧に調理するとは。
 エルダは優秀だ。

「うひゃー、エルちゃんこれ、これ、白竜の肉やんか。今時こんなん王族でも食べれへんで。…激うまやぁぁぁあ!しーちゃんも食べ…ってはや!」

 はぐはぐはぐはぐ。

 あまりの美味さに叫び出すベルと、猛烈な勢いで肉を掻き込んでいくシオン。

「いやー、しかししーちゃんはほんま強いな。でもドラゴンの口の中に飛び込んだ時は心臓止まるかと思うたで」

「はぐはぐはぐ、はい、実際一回は心臓が止まりました。はぐはぐ、白竜美味しいです。なんだか、特別に美味しい気がします」

「ははは、しーちゃんも冗談言うんやな。もうお皿空っぽやんか。ウチがおかわり取ってきたるわ」

 ベルがシオンの世話を焼いている。相変わらず仲が良いみたいだ。良いことだ。

「あ、トシゾウはんもお疲れさん。しーちゃんやたらと機嫌ええけどなんかあったん?」

 席を立ったベルが俺に気付き、声をかけてくる。

「うむ、まあな」

「ほほぅ?こら後でしーちゃんに問い詰めなあかんな。トシゾウはんはあんましからかい甲斐がないからな」

「ギルドメンバーはマスターである俺の所有物だ。所有物にからかわれるようでは話にならん」

「さよか。トシゾウはんはブレへんな。あ、今のうちにこれ渡しとくわ」

「これは…。スタンピードの収支報告か。大幅な黒字だな」

「戦闘班がアホほど魔物仕留めてくれたからな。特に白竜の素材はでかいで。一応見込みで計上しとるけど、実際はもっと黒字が拡大する予定や」

「そうか、ベルは役に立つな。正確で素早い仕事だ。これを元手に商業班の事業を拡大しろ」

「がってんしょうちのすけや!スタンピードが終わってからがウチらの本業や。任せといてや!」

 ベルが山盛りの料理を持って席へ戻っていく。

 ベルの言う通り、スタンピードはあくまでも冒険者ギルドの宣伝が目的だ。
 これからは各班に新たな仕事を割り振り、仕事を広げていく。

 全ては迷宮に人と価値ある宝を溢れさせるため。俺の目的のためだ。


「酒だ、酒が樽であるぞ!…うーまーいーぞぉぉぉぉお!ほら、お前さんたちも飲まんかい!」

「おぉ、ドワーフのおっさん、悪いねぇ。役得役得」

「ドルフ軍団長、一応仕事中ですぜ。王に言いつけますよ」

「うっせぇビクター。たまには息抜きも必要なんだよ。お前もちゃっかり肉食ってるじゃねぇか」

「だってこんな肉、俺の給料じゃ一生かかっても食えないですからね。そりゃ食いますって」

 いつもの漫才コンビも、ギルドメンバーに混じってわいわいやっていた。

 あの辺りは汗臭い男のノリというか。
 前世の居酒屋で騒いでいるやつらはあんな感じだったなと思い出す。

 とりあえず酒を与えておけばなんとかなるやつらだな。わかりやすくて良い。


「ほう、これがドラゴンの肉ですか。天にも昇る味ですな。これが宿で出せれば良いのですが、さすがに厳しそうですか」

「ほんとだ、すごく美味しいね。それにこの絶妙な調理、シェフを引き抜いてもいいかな?」

「ほっほっほ、トシゾウ殿のシェフを奪おうとするとは、さすがですな」

「ラザロ、見つけたぞ!姫様まで!ワシがどれほど探し回ったか…」

「ダストン殿は相変わらずの苦労性ですな。ドラゴンの肉はいかがですかな?疲れが取れますぞ」

「誰のせいで苦労しとると思っとるんじゃ!…はぁ、疲れたわい。ワシにも肉をくれ」

 こっちも漫才をやっているのは同じだが、どことなく上流階級の香りがするのが面白い。

 あいつらって人族の重鎮だよな。大丈夫なのか人族。

 あとから聞いた話だが、冒険者ギルドの活躍があまりにも大きかったのをいいことに、視察や交渉と理由をつけて、他の仕事を部下に放り投げて遊びに来ていたようだ。

 ゴールデンウィークに視察旅行する政治家みたいだな。
 人族の考えることはどこでも同じらしい。

 まぁこいつらは前線できっちり仕事をこなしていた。
 これで部下の評判は上々のようだ。器用な奴らである。


 俺は宴会の様子を見つつ、料理を用意して席に着いた。

 同じテーブルでシオンが肉を勢いよく食べている。
 ベルは商業班が集まっているテーブルに移ったようだ。

「シオン、美味いか」

「あ、ご主人様。はい、とても美味しいです」

 唇が肉の油でテカテカしている。かわいい。

「それに、味もすごく美味しいのですが、なんだかそれだけではないような気がするんです」

 肉へ視線を向けながら首をかしげるシオン。
 シオンは不思議がっているが、俺には理由がよくわかる。

「そうか。それはおそらく、シオンが自分で仕留めた獲物だからだろう。自分の力で手に入れたものには特別な価値が宿るのだ。苦労すればするほど、それは特別なものになる」

「私が仕留めたから。…なんだか、納得しました。これが狩りの興奮で勝利の美酒。私が仕留めた肉をみんなと食べているから、特別に感じるんですね…」

「…ん、うむ。まぁ、そうだな」

 どちらかというと、思考が狼の群れのそれである。
 ニュアンスが違う気がするが、まるっきり違うわけでもないので肯定しておく。

 俺は宝を集めることが生きがいだが、その過程も大切なものだと思っている。

 シオンの様子に、なんとなく蒐集の楽しみを共有できた気がしたのだが。

 シオンのそれは少し違うのかもしれない。
 獲物を口にくわえて群れに運ぶシオンを想像した。たのもしかわいい。

「閣下、恐れ入りました。60層相当の魔物を単独で討伐されるとは。閣下を侮っていた私をどうかお許しください」

 そう言って頭を下げるのは戦闘班長のコウエンだ。
 後ろには戦闘班を連れている。

「何を言っている。コウエンの忠言は貴重だ。今後も意見を聞かせてくれ」

「恐縮です」

「スタンピードの立役者はお前たちだ。胸を張れ。これからもギルドの剣であり、盾であれ」

「はっ!戦闘班一同、今後も変わらぬ忠誠を誓います」

 コウエンと戦闘班が胸に手を当てる。
 虎種流の敬礼が、いつの間にやら戦闘班全員の敬礼になったらしい。

 伝統はこうやって作られていくんだろうなーとトシゾウは思った。

 こうして今日も宴は和やかに過ぎていく…、かに思われた。


「お前ら!ここは大商人ロボス様の土地だ!さっさと立ち去れ!」

 威圧的な声がギルドに響く。

 宴とは、往々にしてちょっとした諍いも起こるものだ。これもまた、結構なことである。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる

書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。 鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。 だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。 その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。 俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。 ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。 なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

処理中です...