SNG ~その青年の進む道は救済か滅亡か~

上社玲衣

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第三章 運命

第十一話「再会」

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第十一話「再会」

 デヴォイ達は乗船する前に腹ごしらえをしようと思い、ファミリーレストランへ。
「君はお子様ランチね。」
「お子様扱いするな。」
 そんな会話をしていた時だった。
「うぇ、またあんたらかよ!」
 見上げるとウェイターはあのリッツだった。
「誰だっけ?」
 無理もない。俺もこのしょぼい顔に出会うまでは一瞬誰だか分からなかった。
「何してるんだ、こんなところで。」
「いや、何してるんだって、それはこっちのセリフだよ…じゃない、ですよ。」
 お客様相手なのでリッツは言葉遣いを変えた。
「俺の方は任務で、レクイードまでいくつもりだ。泥棒はやめたのか、君は。」
「あわわわわ、こんなところでそんな事話さないで下さいよ、しーっ、しーっ。まだ続けてますよ、俺の天職ですから。これは資金稼ぎ。言わないで下さいね、いい事を教えますから。」
 彼から聞くのはいつも不幸な話ばかりだ。
「…昨日、この街のネスツギルドが何者かに襲撃されたみたいです。騒ぎを聞いて駆けつけた俺っちとしては、同業のバンさんがいたのがショックだったっす、おっと、です。」
「本当か!?」
 まさか、あの後、調べようとしていたパラライザーそのものにぶち当たってしまうとは。フィアーか? それとも他にも刺客がいたのか? 確認しておこう。
「知り合いですか?」
「ああ、ちょっとした、な。今どこにいる?」
「近くの総合病院に運ばれてます。命に別状はないですが、全治一週間の重傷でした。」
「ありがとう、ではこれから見舞いに行くよ。」
 
 病院にて。ギルドにいた人達は同じ大部屋に収容されていた。容体の思わしくない者だけ、個室に容れられていた。
「面会謝絶…というほどでもないか。」
「おかげさまでね。」
 エイジスとバンは、大部屋だ。バンの方は寝ているのでエイジスの相手をしている。包帯で体中を巻いていた。綺麗な肌もきっと傷だらけになってその下にあるんだろう。
「フィアーか?」
 声をひそめてデヴォイは早速切り出した。
「いえ、顔は確認出来なかったけど…違ったわ。背丈がもう少し高かったし、風の魔法を…使っていたわ。」
 あまり体力が回復していないようだ。喋り方が辿々しい。
「この街には既に何人かパラライザーが張っていると考えた方がいいな。」
「…ええ。あなた達も気をつけた方がいいわ。彼らは無差別で来ているから…クライアントも危険に晒される。…船に乗るのなら、すぐにした方がいいわ…。」
「ありがとう、すまない。」
 
 昼の便は見舞いに行っている間に出航してしまっていたので、その日の最終便に乗って二人はレクイードの首都フィルデールへ。
 日が沈み、陸地はもう見えなくなってきた。
「上に行かない?」
 クレアに誘われ、夕食後、星空の綺麗な甲板へ。
「そういえば…船に乗るのって初めてかも知れないな、俺。」
「私もよ、ずっと大陸暮らしだったもんね。」
「実は私もです。」
 うわぁぁぁあああ!
「フォルナウス!」
 クレアも咄嗟に俺の後ろに隠れる。
「心配なさらないで下さい、私にはあなた方と戦う理由はもうありませんよ。決着はあの時着きましたから。」
 デヴォイの放った十二の光。人のものとは思えぬあの力。フォルナウスは魔法の力とは考えなかったが、逃げ出して敗北を認めた事には変わりはない。
「かといって諦めたわけではありません。私はあくまでも魔導師として、絶対無二の存在になるつもりです。」
「ふん、好きに言ってな。で、君は何の用でレクイードへ?」
 敵意の無い相手には敵対しない。デヴォイはそう決めた。
「首都フィルデールに、魔導師としての腕を試される、『試練の塔』というものがありまして。私はそこで自分の実力を確かめ、そしてさらに上げてみたい。もう、背を向けて逃げるなどという屈辱を味わわない為にも。あなたはどうします? あくまで魔法の力のみでどこまでいけるか試してみませんか?」
 こ・い・つ…何だかんだ言って、決着は本当はまだ着いてないんだな。
「そういう競い方もあるが…しかし一応任務の方を先に遂行しなくてはならないもんでな、この子の為に。」
「そうですか、残念です。」
 まだ時間もあったので、デヴォイは話題を変えてみた。
「そういえば、フォルナウス、君はどこの人なんだ?」
「生まれはルデールです。革命前の、ですけど。」
「革命?」
 何のことか全くデヴォイには理解できなかった。クレアがフォルナウスにデヴォイの記憶についての事情を話した。
「私も実際ルデールの革命の事についてはあまり話したくはないのですが…母を失っていますから。」
 クレアも、他国の話に興味がないとはいえ、近年の大きな歴史的事件であったので、いくらかその内容については覚えている。
 今から九年前の十二月の事である。それまで、フィラデラ帝国の首都であった、ルデールにて、絶対帝王政を強いていた帝国の圧政に耐えられず、民衆側の革命軍が蜂起した。後の世に言う“ルデール十二月革命”である。初めは革命軍が圧倒的な劣勢であったが、革命軍側の最終人間兵器、通称“ウェポン”によって、城は一瞬にして崩壊し、帝王その他首脳は死に、首都の帝国軍もその大半を失って、民衆側の勝利となった。その後、フィラデラ帝国は共和政へと政治システムを変え、サピエント共和国となった。
 その時、上流家庭の出で城内に住居を構えていたフォルナウス一家は、避難している途中にウェポンの砲撃によって、母を失った。父と、彼グィン、そして小さな妹は革命後、首都を離れた。その後しばらく隣国で暮らしてはいたが、長男であるグィンは一流の魔導師として大成する為、家族の元を離れた。今家族がどうしているかは知らない。
 デヴォイもクレアも、その話を聞いた後はしばらく何も言えなかった。

 フィルデールに着いた後、フォルナウスとは別れ、デヴォイ達は目的地である、ローズ峡谷へと向かう。視界が一面真っ白という二人には初めての世界だ。
「この旅で私も大分体力はついたから、山越えも楽かとは思っていたけど…。」
 やはり最北端の国だけあって、寒い…。という事はもうない、デヴォイのコートにかけてある防寒防水魔法コーティングはクレアにもかけてある。険しい雪山をアイゼンで進むのが大変なのだ。目的地はまだまだ先だ。
 本当にこんなところに薬草なんて生えているのか? という疑問が頭をもたげない事はない。しかし、書物は信じないと。
「八光草ってのは、一目で分かるものなのか?」
「ええ、夜になればその名の通り八色に輝く綺麗な薬草よ。大抵の魔法効果を打ち消す強力な薬ではあるわ、万能薬ではないけど。」
 クレアが失敗して作ってしまった、全く新種の『若返り薬』に効く保証は、勿論どこにもないが、でもお互いその事は口にしなかった。今は目の前にある希望に頼るのみ。その為の旅なのだから。

 獣の遠吠えというものは山ではよく耳にするものだけれども、近くでうなり声を聞くという事は、少なくとも聞く者の命が危険に晒されているという事を示している。特にその姿を目の前で確認した時には。
 デヴォイ達は、峡谷の入り口に差し掛かった時、とてつもない数のモンスター達と遭遇してしまった。
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