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第三章 運命
第十五話「デヴォイ」
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第十五話「デヴォイ」
再びトリニティと、フィアー・マイアの戦闘場面。
「先輩、ヴォルドさん、しゃがんで下さい! 武器長化!」
シローが首のチェーンと腰のチェーンを少し長くし、先を投げる!
「何をする気だ、シロー? …そうか!」
「電流!」
地面に垂れた二本のチェーンを伝って電流が走る。
「きゃあ!」
「ううっ!」
周りを高速旋回していた二人は感電して全身が痺れる。すぐさま彼は電気の残るチェーンで彼女達をいとも簡単に捕らえる。
「どうします?」
「生かしておいたらまた襲って来るぞ。こいつら、『パラライザー』だろう?」
ラルフは少し考える。
「…逃がす。やはり女を殺すのは俺の性に合わん。」
「と言うと思ったぜ。」
逃がされた二人は、一度彼女らのアジトに戻って今までの状況を全て報告する必要があった。
「“選ばれし者”、結構少なかったね…。マイアは?」
「私にはそんな事はどうだっていいわ…。ソルジャーが一人でもいなくなれば、それに越したことはない。」
「違うよ~、本来の目的が。」
彼女らは二人のボスの部屋へ。青い髪の中年男性がそこには座っていた。
「おとーさん、強かったよ、トリニティ。やっぱり噂通り。」
グリニゲル=フォルナウス。秘密組織『パラライザー』を組織した男であり、フィアーとグィンの父にあたる。
「私はトリニティ以外、今回は全て始末しました。エルザレクドのギルドに関しては、残念ながら生存者は何名かいるようです。」
「ならば彼らは“選ばれし者”から外れたな。マイア、君はしかし、ギルドの民間人まで巻き込んだと聞く。我々の目的はより崇高なものだ。無駄な血は流してならん…。お前はどうだ、フィアー?」
「えっとね、あたし、デヴォイとかいう男にも負けちゃった。例の初任務でトリニティと組んだっていう男。」
フィアーが嬉しそうに続ける。
「強い男っていいよね。でも、前々から気になってたんだけど、選ばれた人達で一体何をするの、おとーさん? これって訊いちゃいけないところ?」
「それは…残念だが私も知らぬところだ…。全て“上”が決める事だ。トリニティの方には、“エルザレブ”を用意しておく。奴等に打ち勝てたなら、彼らは完璧な“選ばれし者”となる。特別待遇でな。二人とも下がってよい。」
二人が部屋を出てから、グリニゲルは自分の机のコンピューターを起動する。そして、パスワードを記入する。U、N、O…世界連合組織、『UNO』。
「どうした?」
モニターに現れたのは、シーマだ。画面越しにもその冷たさが伝わってくる。
恐ろしい女だ…彼は内心そう思う。
「デヴォイ=マクシミリアンという男についてだが…この男だ。何者だ?」
フィアーが隠し撮りしていたデヴォイの写真を、モニター中央のカメラに写した。
「これは…。グリニゲル、貴方はこの男を知らないの? かつて一度エイジスとバンにこの男の命を狙わせた事があるのよ。彼は、ルデール十二月革命時に最重要危険人物であると我々UNOに指定された…あなたも新聞でその名前は知っているでしょう、一撃で帝国軍を壊滅させたという人間兵器、“ウェポン”を。」
「何と…!」
そう、かつてフォルナウスがデヴォイに語ったあの過去の災厄である。
「この男が…この男がウェポン…分かった。」
グリニゲルは暗い笑みを浮かべた。
「どうする気?」
「妻の仇だ…一度捕まえて話を聞かなくてはならない。」
彼の妻がウェポンの砲撃によって亡くなっている事は以前述べられた通りである。
その話にシーマは頷く。
「こちらとしても、彼の捕獲という事はずっと考えていたわ。実は彼の父親という人がこちらにはいるものでね。彼の兄と姉もまた私達の側にいる…。」
「何?」
「彼を連れてきてちょうだい…彼は貴方の信仰する神…『光』を持つ者でもあるのよ。これはUNOからの命令でもあるわ。」
ふ…。だが、いくら“選ばれし者”であろうと、『光』を持つ者であろうと、生かすものか…。私が直接この手で、最も残酷な殺し方をしてやる…。グリニゲルはそう心に決めていた。
結局グリニゲルは、デヴォイの捕獲のため、マイア、フィアー、そして第三の刺客、ツバル、という男を差し向ける。彼の位置については、ウォッシュとイオという、二人のSNGが掴んでいる。
そうして、運命の時が来た。
デヴォイ達は、今回の『ルルガナンド』の壊滅という任務に成功し、マルガハマを経とうとしていた。
「デヴォイ!」
ウォッシュがギルドを去ろうとする彼を制止した。
「おい、味気ないな、もっと俺達と一緒に仕事しないか? お前の事が気に入っているんだ。」
「そうよ、あなたは私達から見たら弟みたいなものなんだから。」
すっかり好かれているなぁ…。
「でも、ごめん、俺、クライアントをハイツランド共和国まで送り届けるっていう任務があるんだ。」
「じゃあ、俺達もついていって構わないか?」
その申し出を断る理由は…特にない。害のない仲間なら、いて困ることはあるまい。彼は苦笑した。
「ああ、分かったよ。新生トリニティの誕生ってか。」
「私を忘れていませんか?」
フォルナウス!
「いや、お前、ソルジャーじゃないだろ。」
ナイス、ウォッシュ。そのツッコミは正解です。
そうして彼ら五人はシュミテット王国をそのまま南下する。大平原を歩きながら彼らは談笑していた。
「へえ…そんな経緯があったんだ。」
「ねえ、デヴォイ、この人嫌、私の頭の中を読んでくる。」
クレアが大変困った恥ずかしい顔で、デヴォイのコートを引っ張る。
「彼の能力だからな…おい、ウォッシュ、たいがいにしとけよ。洗い(ウォッシュ)流すぞ。っていうか、無駄に能力を使ったらいけないんじゃなかったか?」
「あ、すまない、あれは嘘だ。」
「でもやめておきなさい。」
おっ、たまにはフォルナウス、まともな事を言う。
「そうよ、兄さん、女の子には触れられたくない部分があるんだからね。まあ、誰だってそうだけど。」
「分かってるさ。」
イオがクレアに耳打ちする。
「ごめんね、この人、悪気はないんだけど、ね。これでも今回の任務では能力が大分役に立ったのよ。許してあげて、ね。」
イオがクレアの頬にキスをする。女同士でも何故か頬が紅くなる。
「全くなんちゅう兄妹だ…。」
デヴォイがそう呟いていた時だった。空の彼方からエンジン音が聞こえてきた。
「あれは…飛行スキー。大型だな…。」
ウォッシュがその姿を確認する。
飛行スキーが高度を下げて、やってくる。
「……ちっ!避けろ!」
そのままデヴォイ達のところへ突っ込んできた!
「とうっ!」
見覚えのある少女が…フィアーだ!
「パラライザーか!」
今回の刺客は三人らしく、クレアも避難する場所がない。
「安心しろ…俺のもう一つの能力で守ってやるよ。」
彼は厚い土の壁を生み出し、彼女の周りを囲む。詠唱なし…魔法ではない…? クレアはふと疑問を感じる。
「さて、四対三だ…。」
イオ、フォルナウスはフィアーを、ウォッシュはツバルを、デヴォイはマイアを相手にする。しかし実は四対三ではなく、本当は二対五という構図だという事にデヴォイとフォルナウスは気付いていない…。
「待って下さい!」
急にフォルナウスが叫ぶ。
「まさかあなたは…フィアー?」
「え?」
戦場に凪が起こる。
「兄貴?」
そのほんの数回のやりとりから状況を察したデヴォイが、叫ぶ。
「もういい、フォルナウス、君は一旦戦場から離れろ!」
彼なりの配慮だ。
「え、ええ、そうします。」
かなり動揺しているようだ。フィアーもまた同じく動揺し、他の戦いの邪魔にならない位置まで退く。
「さて、また再開しようか。」
ウォッシュの一言で、また戦場に風が吹く。
「はあっ!」
デヴォイはマイアに斬りかかる。しかし彼女は風のシールドで彼の動きを遅くして避けた。フードが再びとれる。
その時、彼女の顔を見た彼はその場に硬直する。彼にとって最重要である記憶の断片が、今甦る。
「マイア…?」
え…? この男…私の事を知っている…そんな馬鹿な…。え? この顔…。え? え? 嘘! そんな事はあり得ない。髪の毛の色だって違うし…でもあの鼻、口、サングラスの向こうに見える優しげなあの目は…あの面影は…。
「アデュー…?」
再びトリニティと、フィアー・マイアの戦闘場面。
「先輩、ヴォルドさん、しゃがんで下さい! 武器長化!」
シローが首のチェーンと腰のチェーンを少し長くし、先を投げる!
「何をする気だ、シロー? …そうか!」
「電流!」
地面に垂れた二本のチェーンを伝って電流が走る。
「きゃあ!」
「ううっ!」
周りを高速旋回していた二人は感電して全身が痺れる。すぐさま彼は電気の残るチェーンで彼女達をいとも簡単に捕らえる。
「どうします?」
「生かしておいたらまた襲って来るぞ。こいつら、『パラライザー』だろう?」
ラルフは少し考える。
「…逃がす。やはり女を殺すのは俺の性に合わん。」
「と言うと思ったぜ。」
逃がされた二人は、一度彼女らのアジトに戻って今までの状況を全て報告する必要があった。
「“選ばれし者”、結構少なかったね…。マイアは?」
「私にはそんな事はどうだっていいわ…。ソルジャーが一人でもいなくなれば、それに越したことはない。」
「違うよ~、本来の目的が。」
彼女らは二人のボスの部屋へ。青い髪の中年男性がそこには座っていた。
「おとーさん、強かったよ、トリニティ。やっぱり噂通り。」
グリニゲル=フォルナウス。秘密組織『パラライザー』を組織した男であり、フィアーとグィンの父にあたる。
「私はトリニティ以外、今回は全て始末しました。エルザレクドのギルドに関しては、残念ながら生存者は何名かいるようです。」
「ならば彼らは“選ばれし者”から外れたな。マイア、君はしかし、ギルドの民間人まで巻き込んだと聞く。我々の目的はより崇高なものだ。無駄な血は流してならん…。お前はどうだ、フィアー?」
「えっとね、あたし、デヴォイとかいう男にも負けちゃった。例の初任務でトリニティと組んだっていう男。」
フィアーが嬉しそうに続ける。
「強い男っていいよね。でも、前々から気になってたんだけど、選ばれた人達で一体何をするの、おとーさん? これって訊いちゃいけないところ?」
「それは…残念だが私も知らぬところだ…。全て“上”が決める事だ。トリニティの方には、“エルザレブ”を用意しておく。奴等に打ち勝てたなら、彼らは完璧な“選ばれし者”となる。特別待遇でな。二人とも下がってよい。」
二人が部屋を出てから、グリニゲルは自分の机のコンピューターを起動する。そして、パスワードを記入する。U、N、O…世界連合組織、『UNO』。
「どうした?」
モニターに現れたのは、シーマだ。画面越しにもその冷たさが伝わってくる。
恐ろしい女だ…彼は内心そう思う。
「デヴォイ=マクシミリアンという男についてだが…この男だ。何者だ?」
フィアーが隠し撮りしていたデヴォイの写真を、モニター中央のカメラに写した。
「これは…。グリニゲル、貴方はこの男を知らないの? かつて一度エイジスとバンにこの男の命を狙わせた事があるのよ。彼は、ルデール十二月革命時に最重要危険人物であると我々UNOに指定された…あなたも新聞でその名前は知っているでしょう、一撃で帝国軍を壊滅させたという人間兵器、“ウェポン”を。」
「何と…!」
そう、かつてフォルナウスがデヴォイに語ったあの過去の災厄である。
「この男が…この男がウェポン…分かった。」
グリニゲルは暗い笑みを浮かべた。
「どうする気?」
「妻の仇だ…一度捕まえて話を聞かなくてはならない。」
彼の妻がウェポンの砲撃によって亡くなっている事は以前述べられた通りである。
その話にシーマは頷く。
「こちらとしても、彼の捕獲という事はずっと考えていたわ。実は彼の父親という人がこちらにはいるものでね。彼の兄と姉もまた私達の側にいる…。」
「何?」
「彼を連れてきてちょうだい…彼は貴方の信仰する神…『光』を持つ者でもあるのよ。これはUNOからの命令でもあるわ。」
ふ…。だが、いくら“選ばれし者”であろうと、『光』を持つ者であろうと、生かすものか…。私が直接この手で、最も残酷な殺し方をしてやる…。グリニゲルはそう心に決めていた。
結局グリニゲルは、デヴォイの捕獲のため、マイア、フィアー、そして第三の刺客、ツバル、という男を差し向ける。彼の位置については、ウォッシュとイオという、二人のSNGが掴んでいる。
そうして、運命の時が来た。
デヴォイ達は、今回の『ルルガナンド』の壊滅という任務に成功し、マルガハマを経とうとしていた。
「デヴォイ!」
ウォッシュがギルドを去ろうとする彼を制止した。
「おい、味気ないな、もっと俺達と一緒に仕事しないか? お前の事が気に入っているんだ。」
「そうよ、あなたは私達から見たら弟みたいなものなんだから。」
すっかり好かれているなぁ…。
「でも、ごめん、俺、クライアントをハイツランド共和国まで送り届けるっていう任務があるんだ。」
「じゃあ、俺達もついていって構わないか?」
その申し出を断る理由は…特にない。害のない仲間なら、いて困ることはあるまい。彼は苦笑した。
「ああ、分かったよ。新生トリニティの誕生ってか。」
「私を忘れていませんか?」
フォルナウス!
「いや、お前、ソルジャーじゃないだろ。」
ナイス、ウォッシュ。そのツッコミは正解です。
そうして彼ら五人はシュミテット王国をそのまま南下する。大平原を歩きながら彼らは談笑していた。
「へえ…そんな経緯があったんだ。」
「ねえ、デヴォイ、この人嫌、私の頭の中を読んでくる。」
クレアが大変困った恥ずかしい顔で、デヴォイのコートを引っ張る。
「彼の能力だからな…おい、ウォッシュ、たいがいにしとけよ。洗い(ウォッシュ)流すぞ。っていうか、無駄に能力を使ったらいけないんじゃなかったか?」
「あ、すまない、あれは嘘だ。」
「でもやめておきなさい。」
おっ、たまにはフォルナウス、まともな事を言う。
「そうよ、兄さん、女の子には触れられたくない部分があるんだからね。まあ、誰だってそうだけど。」
「分かってるさ。」
イオがクレアに耳打ちする。
「ごめんね、この人、悪気はないんだけど、ね。これでも今回の任務では能力が大分役に立ったのよ。許してあげて、ね。」
イオがクレアの頬にキスをする。女同士でも何故か頬が紅くなる。
「全くなんちゅう兄妹だ…。」
デヴォイがそう呟いていた時だった。空の彼方からエンジン音が聞こえてきた。
「あれは…飛行スキー。大型だな…。」
ウォッシュがその姿を確認する。
飛行スキーが高度を下げて、やってくる。
「……ちっ!避けろ!」
そのままデヴォイ達のところへ突っ込んできた!
「とうっ!」
見覚えのある少女が…フィアーだ!
「パラライザーか!」
今回の刺客は三人らしく、クレアも避難する場所がない。
「安心しろ…俺のもう一つの能力で守ってやるよ。」
彼は厚い土の壁を生み出し、彼女の周りを囲む。詠唱なし…魔法ではない…? クレアはふと疑問を感じる。
「さて、四対三だ…。」
イオ、フォルナウスはフィアーを、ウォッシュはツバルを、デヴォイはマイアを相手にする。しかし実は四対三ではなく、本当は二対五という構図だという事にデヴォイとフォルナウスは気付いていない…。
「待って下さい!」
急にフォルナウスが叫ぶ。
「まさかあなたは…フィアー?」
「え?」
戦場に凪が起こる。
「兄貴?」
そのほんの数回のやりとりから状況を察したデヴォイが、叫ぶ。
「もういい、フォルナウス、君は一旦戦場から離れろ!」
彼なりの配慮だ。
「え、ええ、そうします。」
かなり動揺しているようだ。フィアーもまた同じく動揺し、他の戦いの邪魔にならない位置まで退く。
「さて、また再開しようか。」
ウォッシュの一言で、また戦場に風が吹く。
「はあっ!」
デヴォイはマイアに斬りかかる。しかし彼女は風のシールドで彼の動きを遅くして避けた。フードが再びとれる。
その時、彼女の顔を見た彼はその場に硬直する。彼にとって最重要である記憶の断片が、今甦る。
「マイア…?」
え…? この男…私の事を知っている…そんな馬鹿な…。え? この顔…。え? え? 嘘! そんな事はあり得ない。髪の毛の色だって違うし…でもあの鼻、口、サングラスの向こうに見える優しげなあの目は…あの面影は…。
「アデュー…?」
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