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59.愛し子を巡る国と神殿の陰謀(笑) 4
しおりを挟む愛し子が生まれるって事は、人の気持ちが荒んでるってことなのよね。
心がそんなに綺麗じゃなくても、普通に生活していればそうそう強い悪意なんて抱くことはないと思うの。
相手に嫉妬したり、憎んだりすることになんとなく罪悪を感じて自制する。
けど、人が多くなれば、良い人ばかりじゃなく、悪い人も集まってくる。
その振れ幅が大きければ大きいほど、なんとなくいがみあってしまう。
良い人がいつまでも良い人とは限らないから。
それは神殿でも同じこと。
神様に仕えているから、心が必ずしも綺麗ってこともないでしょ?
悪意が無ければ黒い雲は発生しない。
神殿もそのことを分かっているのに、何の対処も出来ずに何度も何度も雲を発生させてる。
9冊目の神殿に住んでいた愛し子が姿を消したのは、聖女様が一人目の子を生んだ後。
その直前に勇者の怒声が聞こえたと報告があったみたいだけど、その真偽は確かめず、愛し子が消えたことも発表しなかった。
運よく人々は、一つの国が長い時間をかけて滅びたことで、黒い雲に対して“正しく”恐怖を覚えたみたい。
同時にその恐怖は、人々の心に漠然とした不安も生んで、そのおかげで、人々は“正しく”生きることを実践しはじめたらしいわ。
けど、時間が経つにつれ、その窮屈さに不満も抱いた。
愛し子が姿を隠すことがなければ―――国は滅びなかったのではないか、
自分たちがこのような不自由を知ることはなかったのではないか、ってね。
それに異を唱えたのが愛し子の重要性を一番知っている聖女。
聖女に選ばれても、愛し子から加護をもらえなければ、魔を払うことは出来ないんだから、当然よね。
この時の聖女が、例のお伽噺を文字にして、神殿に布教することを求めたみたい。
神殿も、愛し子に対する恐れと不満を解消するべきだと思ってはいたのね。
もともと女神信仰だった神殿に、精霊信仰と同時にお伽噺を経典に加えた。
そして、次に愛し子が見つかったときは、神殿で必ず保護し、【大事に】育てることにした。
外の世界の苦しみで、その心を壊さないように……
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