だって私、悪役令嬢なんですもの(笑)

みなせ

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60.愛し子を巡る国と神殿の陰謀(笑) 5

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 新たな愛し子が見つかったのは、愛し子が消えて百年ほど後、滅びた国からはるか遠い地だった。

 神殿が洗礼を続けるのは、民の不安を取り除くため。
 愛し子を神殿で保護するのは、愛し子を守るため。

 国が滅んだことで得られた教訓は、強固となった神殿同士のつながりによって、各国に波及していた。

 神殿は決まり通り愛し子を保護し、傷つくことのないよう大切に、けれども神殿に逆らわぬように育てた。
 民はお伽噺を信じ、女神とともに精霊にも祈りを捧げ、愛し子を敬った。
 時が立ち、黒い雲と共に聖女が現れ、愛し子は神殿の望むまま加護を与えた。
 その愛し子は、過分な加護や祝福を与えることはなかったが、人々に受け入れられ幸せに余生を過ごした。

 しかし波乱なく国が救われ、一度聖女が現れば長く平和が続いたことで、人も神殿も国さえも安心したのだろう。
 時が経つほどに当初の教訓も、お伽噺も力を失い、簡略化され改竄された。


 そこには、国の思惑もあったようだ。

 勇者として選ばれるのは、いつでも国の中枢に近い人物ばかり。
 彼らは無条件に聖女を愛し、崇拝する。
 聖女の伴侶となった彼らは、愛し子という存在により聖女の功績が霞むことを嫌がった。
 愛し子が人々の興味をひかないことを良いことに、神殿での扱いに口出しをしたのだ。


 たまたま穏やかな性格の愛し子が続いたのも悪かったのだろう。
 その扱いは回を重ねるごとに悪くなった。
 大切に保護し育てる筈が、聖職者の見習いか孤児の一人として厳しく育てられ、聖女に加護を与えた後は聖職者の一人として教会に縛られた。


 それは、十四代目の愛し子が、自ら疑問を発するまで続けられた。


 十四代目はよほど苛烈な性格だったのだろう。
 黒い雲が現れるとともに、聖女への加護を拒否し、待遇改善を要求した。
 国も神殿も初めは断わったようだが、町一つが火に包まれた事で、その要求を飲んだ。
 愛し子は神殿で最高位を与えられ、その後は幸せに暮らした。


 この後、神殿は国と適度な距離を保ち、愛し子は正しく育てられた。
 それによって、人々に加護や祝福を与えることも多くなり、人々の暮らしは安定し雲が現れる期間はさらに長くなった。


 しかし人はすぐに悪いことは忘れてしまう。
 国が変われば、愛し子の待遇はまた悪くなる。


 十七代目の愛し子は、ひどく神経質だったようだ。
 神殿に引き取られてすぐから変わった言葉を使い、変わった思想を語ったという。
 また神殿での暮らしに慣れず、時に癇癪をおこし、数ヶ月も部屋から出てこないこともあったらしい。
 なんとか加護を得るために、取引きまでしている。
 お伽噺を書きなおされ、人々への普及が約束された。

 それは、そこそこの平和を世界にも愛し子にも与え、最後の愛し子が死ぬまで、続いた。




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