60 / 63
60.愛し子を巡る国と神殿の陰謀(笑) 5
しおりを挟む新たな愛し子が見つかったのは、愛し子が消えて百年ほど後、滅びた国からはるか遠い地だった。
神殿が洗礼を続けるのは、民の不安を取り除くため。
愛し子を神殿で保護するのは、愛し子を守るため。
国が滅んだことで得られた教訓は、強固となった神殿同士のつながりによって、各国に波及していた。
神殿は決まり通り愛し子を保護し、傷つくことのないよう大切に、けれども神殿に逆らわぬように育てた。
民はお伽噺を信じ、女神とともに精霊にも祈りを捧げ、愛し子を敬った。
時が立ち、黒い雲と共に聖女が現れ、愛し子は神殿の望むまま加護を与えた。
その愛し子は、過分な加護や祝福を与えることはなかったが、人々に受け入れられ幸せに余生を過ごした。
しかし波乱なく国が救われ、一度聖女が現れば長く平和が続いたことで、人も神殿も国さえも安心したのだろう。
時が経つほどに当初の教訓も、お伽噺も力を失い、簡略化され改竄された。
そこには、国の思惑もあったようだ。
勇者として選ばれるのは、いつでも国の中枢に近い人物ばかり。
彼らは無条件に聖女を愛し、崇拝する。
聖女の伴侶となった彼らは、愛し子という存在により聖女の功績が霞むことを嫌がった。
愛し子が人々の興味をひかないことを良いことに、神殿での扱いに口出しをしたのだ。
たまたま穏やかな性格の愛し子が続いたのも悪かったのだろう。
その扱いは回を重ねるごとに悪くなった。
大切に保護し育てる筈が、聖職者の見習いか孤児の一人として厳しく育てられ、聖女に加護を与えた後は聖職者の一人として教会に縛られた。
それは、十四代目の愛し子が、自ら疑問を発するまで続けられた。
十四代目はよほど苛烈な性格だったのだろう。
黒い雲が現れるとともに、聖女への加護を拒否し、待遇改善を要求した。
国も神殿も初めは断わったようだが、町一つが火に包まれた事で、その要求を飲んだ。
愛し子は神殿で最高位を与えられ、その後は幸せに暮らした。
この後、神殿は国と適度な距離を保ち、愛し子は正しく育てられた。
それによって、人々に加護や祝福を与えることも多くなり、人々の暮らしは安定し雲が現れる期間はさらに長くなった。
しかし人はすぐに悪いことは忘れてしまう。
国が変われば、愛し子の待遇はまた悪くなる。
十七代目の愛し子は、ひどく神経質だったようだ。
神殿に引き取られてすぐから変わった言葉を使い、変わった思想を語ったという。
また神殿での暮らしに慣れず、時に癇癪をおこし、数ヶ月も部屋から出てこないこともあったらしい。
なんとか加護を得るために、取引きまでしている。
お伽噺を書きなおされ、人々への普及が約束された。
それは、そこそこの平和を世界にも愛し子にも与え、最後の愛し子が死ぬまで、続いた。
64
あなたにおすすめの小説
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
ざまぁされるための努力とかしたくない
こうやさい
ファンタジー
ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。
けどなんか環境違いすぎるんだけど?
例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。
作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。
中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。
……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。
転生幼女は幸せを得る。
泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−
召喚聖女の結論
こうやさい
ファンタジー
あたしは異世界に聖女として召喚された。
ある日、王子様の婚約者を見た途端――。
分かりづらい。説明しても理解される気がしない(おい)。
殿下が婚約破棄して結構なざまぁを受けてるのに描写かない。婚約破棄しなくても無事かどうかは謎だけど。
続きは冒頭の需要の少なさから判断して予約を取り消しました。今後投稿作業が出来ない時等用に待機させます。よって追加日時は未定です。詳しくは近況ボード(https://www.alphapolis.co.jp/diary/view/96929)で。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
URL of this novel:https://www.alphapolis.co.jp/novel/628331665/937590458
私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい
あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。
誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。
それが私の最後の記憶。
※わかっている、これはご都合主義!
※設定はゆるんゆるん
※実在しない
※全五話
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる