このやってられない世界で

みなせ

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 お昼ごはんの代案は、ミランダにはしぶしぶ、ローニャには嬉々として受け入れられた。
 およばれするならおしゃれをするねと盛り上がったと言うのに、試験終了と同時に現れたカークの

「せっかくだから一緒に帰りましょう」

 なんて余計なひと言のせいで、制服のまま同じ馬車で邸に戻り、そのままお茶会に突入してしまった。
 カークはにこにこしているけど、二人はひきつった顔で固まっていて、なかなか話をする状態にならない。

「カーク、ちょっと席外して。少ししたら呼ぶから」

 我慢できなくなって、私は隣に座るカークにそう言った。

「それは出来ない」
「カークがいると話が出来ないし、アリーダさんがいるから大丈夫だよ」
「そう言う問題じゃない」
「あのっ!」

 こそこそと二人で話していると、急にローニャが声を上げた。

「お気遣い頂かなくても大丈夫です。私たちこんな立派なお屋敷に入るのは初めてで、少し緊張しているだけですから……」

 ローニャらしくない固い言い方に緊張が現れている。ローニャは、まっすぐカークを見て、続ける。

「あの、それで、せっかくなので聞いていいですか? キーラ……様とはどうやって知り合ったんですか?」
「へ?」

 私の口から変な声が漏れた。
 まさかローニャの口からそんな言葉が出てくるとは思わなかったんだよ。

「それは……」

 カークが戸惑っている気配がする。
 ちらりとそちらを見ると、目が合った。気不味そうなその表情に、私は自分でも意地悪だなって笑いを浮かべる。

――――女子会に混ざりたいなんて言うからだよ!

心の声が聞こえたのか、カークが目を細めた。

「友達の紹介だよ」
「友達、ですか?」

 ローニャが、不思議そうに聞き返す。

「実はね、私はキーラのことをずっと昔から知っていた。でもキーラは私のことを知らなかった。学園に入れば、キーラと知り合えると思っていたけど、なかなかそうはならなくて、でも、最近共通の友達が出来て、その紹介で知り合った」

 うーん、なんかごく普通にいい感じにまとめてますけど……私とアナタの出会いってそんなんでしたっけ?
 リーナの後ろにひっついていた過去はどうなるんです?

「共通の友達って、リーナ様ですか?」

 私と同じ疑問を持ったのか、ミランダが会話に参加した。
 でも、泣きそうなのは何でだろう?

「いや、違う人だ」

――――えぇ、違う人ですとも! 何より紹介じゃないし、それにリーナは私の友達じゃありません。

 カークの答えに、内心でそう重ねる。でも、言わないよ。

「そうだったんですね」

 もう緊張感なんてどこにもない間延びした口調で、ローニャはそう頷いた。

「ずっと不思議だったんです。どうして殿下が学園に通われていたのか……でも、ようやく分かりました」
「理解してもらえて嬉しいよ」

 カークがほほ笑む。

「では、この話は外でしてもいいでしょうか?」
「あぁ。かまわない」
「ありがとうございます」
 
 え、ちょっと待ってよ。どう言うことよ。
 困惑顔の私に、ローニャが気付いた。

「王家のパーティーを目指す女子には死活問題なんですよ」
「あ」

 そうか、カークのために我慢している人たちがいるんだった。
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