このやってられない世界で

みなせ

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 エルフかぁ。
 エルフ、ねぇ。
 そう言えば、アーサーはエルフとのハーフって言ってたっけ。
 あれ、でも、アーサーもだけど、ルテルにいたルキッシュの人たちも……
 気になりすぎて、アーサーをまじまじと観察してしまう。

「どうかしましたか?」
「……耳、とがってないよね」
「何、馬鹿なことを言っているんですか? 立てますか?」

 頷くと、アーサーは私を引っ張り起こした。

「待ってください、今椅子を用意します」

 そう言ってパンと手を叩くと、空いた空間にソファーとテーブルが現れた。
 テーブルの上にはお茶の用意もされている。

「座ってください。少し話しましょう。体は大丈夫ですね?」
「ちょっとあちこち痛いけど、大丈夫。私どうしたの?」
「ルキッシュは大地の力が強いんです」
「大地の力?」
「はい。大地が持っている力で、人で言うなら魔力でしょうか」

 また訳の分からないことを……あ、でも最近そんな話聞いたっけ。

「列車……」
「あぁ、そうです。フォルナトルでは動力源ですね。ラーシュ様の血を引いているので問題ないと思ったのですが……お嬢様はその力にあてられたようです」
「それって、大丈夫なの?」
「はい、この国に住む者……エルフの血には力への耐性があるんですよ。お嬢様ももう少しすれば問題なくなります」
「そうなの?」
「はい、もう変化自体は終わっているようですし」

 変化?

「気がついてませんでしたか? 瞳と髪の色が順応してます」
「髪の色?」

 言われて、自分の髪を前に持ってくる。

「し、しろい……」

 銀髪じゃない、絵具の白、純白。
 アーサーを見るとその髪は、白に近いグレ-だ。
 そして、なんだか長くなっている気がする。駅で見た人たちと同じように、腰までのストレートだ。
 私の髪も何故か長くなってるって言うか、今もなんか伸びてる……?

「アーサー、髪伸びた?」
「そっちですか? えぇ、そうですよ。順応力が高いほど伸びるし、白くなります。その調子だと、二・三日中には完全に変化が終わりますよ」
「二・三日もかかるの?」
「はい、この部屋は力の濃度を薄くしてありますし、お嬢様はルキッシュに来るのは初めてですからね。そのくらいみたほうがいいでしょう」
「……すぐ帰るつもりだったのに」
「すみませんが、帰すつもりはありません」

 はっきりと言われて、私はアーサーを睨みつけた。

「……何で?」
「そうですね。今のこの国にお嬢様が必要だからです」

 困ったようにそう言って、口を閉ざす。
 聞けば答えてくれるんだろうか?

「アーサー、……お父さんって、エルフなの?」
「……はい。近いうちに会っていただくことになっています」
「会うって、お父さん、生きてるの? 死んだんじゃないの?」
「……いえ……生きていらっしゃいます」

 言いにくそうな、言いたくなさそうな表情。

「どんな人?」
「強くて、優しい方です」
「どうして、教えてくれなかったの?」
「契約がありました」
「契約……? 誰と誰の契約なの?」
「フォルナトル王とラーシュ様との契約です」
「それって、どういう契約なの?」
「それは、私にも分かりません。ただ、ラーシュ様が倒れられたことで、ルキッシュ内に混乱が生じています。代行の者をたてるつもりでしたが、現在次代の候補者に選ばれている者がいません。そこで、血の強さからお嬢様をこちらに呼ぶことになったのです」
「お父さん、倒れたの?」

 会ったことも、見たこともないけど、そう言われると心配になる。

「はい、ふた月ほど前です。お休みになると言われ部屋に戻った後から目を覚まされていません」
「病気?」
「原因は不明ですが、今も眠り続けています。侍医の話では、いつ目を覚ますか分からないとのことでした」
「そう、なんだ」
「大丈夫ですか?」

 なんだろう、貧血かな。
 急にフワフワしてきた。
 でも、これだけは聞かなきゃ。

「アーサー、お父さんってルキッシュの王様なの?」
「そうですよ」
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