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2章 霊憑きの髪飾り
14.
しおりを挟む「なんでも?」
疑わしげに目を細める紅焔を、藍玉はじっと見つめている。曇りのない澄んだ眼差しは、嘘偽りを口にしているようには見えない。彼女が本当に、誤魔化しも虚言もなく、紅焔の問いに答えるつもりだということだ。
願ってもない申し出に、一瞬で頭の中を無数の問いが飛び交う。
悪霊を消し飛ばすほどの、彼女のすさまじい力は一体何か。
どうやって、その力を身に着けたのか。
香家の娘である藍玉に、なぜそんな力があるのか。
聞きたいこと、知りたいことが山とある。だけど質問を許されたのはひとつだけだ。
ゆえに紅焔は、ひとりの男としてではなく、大国を統べる皇帝として彼女に問うことを選んだ。
「そなたはなぜ、この都に来た? 妃となり、後宮に入った目的はなんだ?」
ざっと強い風が木々を揺らした。
初めて会話を交わした夜のように、ピリリと張りつめた緊張が二人の間を駆け抜ける。ややあって、藍玉は慎重に言葉を選ぶようにして答えた。
「人を、探しています」
「人を……」
予想外の返答に、紅焔は言葉に詰まった。
形ばかりの妻として夫に軽んじられても、後宮に残って探したい相手。それほど彼女にとって重要な人物ということだ。
(……婚儀の前に彼女の周辺は調べさせたが、皆健在で、失踪などもしていない。血の繋がる家族でもなく、そこまでして探したい相手とは一体誰だ?)
もしかして、彼女の不思議な力に関係する人物だろうか。
――もしくは、彼女が心から慕う人物か。
(だから彼女は、俺が『愛するつもりはない』と暴言を吐いた時に、好都合だと答えたのか?)
そう考えた途端、これまで感じたことのないような、ざらりと不快な心地が胸を満たした。この感情はなんだろう。苦く、胃の腑が重くなるような……。そう顔をしかめる紅焔をどうとらえたのか、藍玉は小さく首を振った。
「そう難しい顔をなさる必要はありません。旦那さまが案じるような、共に謀反を企む相手だとか、一緒に国家転覆を目論む協力者だとかではありません」
「君は、俺が君に、どんなイメージを持ってる想定なんだ」
「そもそも、捕らえたくても捕らえられる相手ではありません。霊を繋いでおける牢は、この世に存在しませんから」
藍玉の言葉に、紅焔はハッとして顔をあげる。
それをまっすぐに見返して、藍玉は鈴の音色のような声でそっと告げた。
「そうですよ、旦那さま。私の探し人は、とうの昔に死んでいるのです」
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