異世界距離恋愛 (修正版)

ふくまめ

文字の大きさ
10 / 25

明日の予定

しおりを挟む
「…そういえば、明日なんだが。」
「え?」
「明日、俺仕事休みで。昨日言った知り合いに会う話、つけてあるから。」

カレーを完食して、皿を洗いながら新島さんに話しかけた。昨日急遽連絡した割に、電話の相手はすんなりと会うことを了承したのだった。決して暇な奴ではないと思うのだが…。まぁ昔からよく分からないところでやる気を出すタイプだったし、今回も好奇心が勝ったんだろうな。その好奇心の部分関して、新島さんに先に説明しておかなければ、と思ってのことだった。

「え、そんなすぐに…!ありがとう!」
「いやいいんだけど…。その、そいつ頭がいいのは確かなんだが、少し、いや結構変わり者で。」
「はぁ…?」
「…びっくりするかもしれないけど、悪い奴じゃないから。」
「…友達なんだ、郡司さん。」
「そういうわけじゃ…。」

確かに、俺じゃどうしようもなさそうな問題があった時なんかに連絡とったりはしてるが…。これが世間一般に言うところの仲の良さというものに該当するのかは疑問だ。というか、正直あれと同類にされるのは勘弁いただきたい。悪い奴ではない。それは間違いない。間違いないのだが…うん。

「まぁ、現状私にできることってかなり限られてるし。この状況に説明がつくかもしれないなら、行かない理由なんてないけど!」
「…ここに来た時から思ってたけど、本当に胆座ってるよな。」
「それ女性に向かって使う表現?バカにしてる?」
「いや、正直な感想。」
「はー、そうですか。…自分でも、驚きはしてもやけになろうとは思わないのは、なかなかだと思うわ。ただ理解が追いついてなくて、目の前のことに集中してるだけかもしれないけど。」
「…きっと、あいつが何か思いつくはずだから。」
「…うん。」

新島さんにとってはどんな人間なのかもわからない奴、しかも俺からの説明も現状怪しい奴判定に傾くような情報しかないってのに、そんな奴に話を聞きに行かなきゃなんないのは不安だろうな。…でもすまん。あいつが変人なのは本当のことなんだ。

「それで、私はどうすればいい?その会いに行く人って、ここの近くに住んでるの?」
「近所ではないな。電車で行く。昼前には出発したいからそのつもりで。」
「分かった。」
「…くれぐれも、平常心で頼む。」
「そこまで念を押されると逆に不安になってくるんだけど…。」
「…まぁ、大丈夫だろ。」
「ぜひそうであってほしいわ。…ってあぁぁ待って待って!」

台所の片付けも終わって、風呂の準備でもしようかと足を向けると、新島さんが急に目の前に躍り出て腕を広げる。あまりに必死な様子に思わずしっぽが逆立ってしまう。一体なんだというのか。

「あーえっと、その…郡司さんいない間、洗濯機を拝借しまして…。」
「…。」
「洗濯をさせてもらったんだけど、干す場所に困っちゃって…。浴室で乾燥させてもらってたの忘れてた!」
「あぁ…。」
「すぐに取り込んでくるから!ちょっと待ってて!」

そういえば、新島さんは出張から帰って来たばかりだと言ってたっけな。俺はあまり遠出するような経験はないが、旅先から帰ってきてすぐにすることといえば荷解きと洗濯であることは想像できる。…男の自分が手を貸すのもどうかと思うし、ここは大人しく待っているのが無難だろう。こういった細々とした部分は、他にもきっとあるのだろう。新島さんには何だかんだで不便な思いをさせているのだろうが、俺にはそれが思いつきすらもしない。こんな状況、稲荷先輩に知られたら来月までネタにされるのが想像できてしまう。…丸尾先輩に意見を求めるのが無難だな、今度聞いてみよう。

「お待たせしました!取り込んだから、お風呂どうぞー。」
「…おー。」

ゴソゴソと洗濯物らしき物をタオルでくるみながら新島さんはリビングへと戻ってきた。正直新島さんの方に先に風呂を勧めたい気持ちではあるんだが、俺がいると物の整理をするにも気を遣うだろうし、ありがたく先に入らせてもらうことにした。…ってここ俺の家なんだから遠慮するってのもなんだかな。そう思いながらも、今日は少しゆっくり浸かってくるか、なんて頭の隅で考えた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

なくなって気付く愛

戒月冷音
恋愛
生まれて死ぬまで…意味があるのかしら?

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...