異世界距離恋愛 (修正版)

ふくまめ

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チラ裏の誓約書

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郡司さんはチラシとともに何の変哲もないように見えるボールペンと、なぜかカッターを持ってテーブルへと戻ってきた。すでに私とないんはテーブルに座っているが、私はいまだ誓約書がどんなものかちょっと分からずにいる。

「ねー本当に書くの?書かなきゃダメ?」
「ダメだ。」
「ちぇー。」
「あのー…私の感覚だと、誓約書ってもっとちゃんとした書類なんじゃないのかなって思うだけども。こんなチラシの裏で、大丈夫なの?」
「確かに、正式に役所なんかに提出するようなもんはもっとちゃんとしてる。まぁ、知り合いの間で取り決めるんだったら別に問題ない。」
「普通知り合いの間で誓約書なんて書かせないよ。」
「そうだな。普通は知り合いの家に勝手にゲート繋げたりしないからな。」
「むぅ…。」

少々不満げながらも、ナインは大人しくペンを持つ。チラシの裏は、特に何かが書かれているわけでもない。ここからどうするというのだろうか。

「まずは…そうだな。『もう家主の許可なくゲートを繋げることはしません』って書け。」
「はいはい…。」
「そんで、もし破ったら…『もし破った時は、コレクションがすべて爆発するものとする』」
「えぇ!?そんな殺生な!」
「勝手にゲート繋げなきゃいい話だろ。…その雰囲気だと、またやらかすつもりだったな。」
「…だって、遊びに来るのに便利だし…。」
「その便利に振り回されるこっちの身になれ。」

不満を漏らしながらも、ナインは郡司さんに言われた通りにペンを走らせる。ゲートを繋げないことを約束させるのは納得だけど…破った時のことまで書かせるのか。しかもその内容がコレクション爆発。…なんて恐ろしいことを考えつくの、郡司さん。恐るべし。

「…はい、書いた。書きましたよ!」
「…確かに。んじゃ俺も…。新島さん。」
「へ?…私も?」

書き終わったらしい書面を誓約書を確認した郡司さんは、すでに書かれているナインの署名の近くにサラサラと名前を書き込む。そのペンの運びを眺めていると、不意にペンを差し出してきた。これ、私も何か書くの?

「あれ、ユキさんも書くの?」
「あぁ。」
「あの…何を書けば?」
「名前でいい。俺の下あたりに。」
「はぁ…。」
「…健人、これってさぁ…。」
「新島さんもここの住人だし。」
「…ほぉーへぇー。」
「…なんだよ。」
「なんでもぉ?あ、ユキさん、それで大丈夫。」
「はーい。」

ただ名前を書くだけでいいというので、とりあえず言われた通りに記名する。内容をよく理解せずにサインするなんて危険なので、良い子は絶対まねしないように!今回が特別なだけだからね!
差し出した誓約書を再度確認した郡司さんは、ウンウンと満足げに頷いている。そして誓約書を再びナインの前へ。なぜかカッターを添えて。

「ちょっとちょっとちょっと!何考えてるの郡司さん。これカッターじゃない。ペンじゃないよ?」
「見れば分かる。っていうか、これが誓約書の仕上げなんだよ。」
「えぇ?」
「そうだそうだ!ユキさん、もっと言ってやって。」
「黙れ不法侵入者。いいから、早くやっちまえ」
「ちぇー。…ユキさん、この世界の誓約書は、重要なものになると条件を付される側の肉体の一部を提供する形式のものがあるんだ。…もちろん、こんな友人間では普通やらないんだけどね。一般的には誓約書に血液を垂らすことが多い。この場合は僕の血液ね。」
「えぇ…?」

正直ドン引きである。書類に血液を垂らす?正気か?拇印なんて文化は理解できるけども、今時本当に指を切って捺印するような人間いないでしょうし…。それに垂らすって何?書類に血痕が残っているって怖いんだけど。契約書類かと思ったら急にサスペンスじゃないの。

「はーい、じゃあ垂らしまーす。」
「え!?そんなお手軽に!?」

そんなこんなを考えている間に、ナインは指先をすっぱり切っていて、その切り口からぷくりと血の球が見える。それを誓約書に向けて垂らすと、サスペンスドラマで見るような血痕が…広がることもなく、音もたてずに吸い込まれていった。思わず凝視してしまうも、どこにも血の跡は見られず、それどころか赤みがかったような部分も見当たらない。

「異世界すごー…。」
「はい、これでいいでしょ?」
「あぁ。まぁこれに懲りたら、勝手な行動は慎むんだな。」
「だから、ユキさんをここに連れてきた神様を探すっていうのを言いに来たのに。」
「言いに来るにも方法ってもんがあるだろ。…帰りは通っていいから、向こうに着いたらすぐに閉じろよ。」
「はーい。んじゃユキさん、今度こそまたね。次来るときはお勧めのゲーム持ってくるよ!」
「うん、待ってる!」
「そこは神様と話をつけてきたって報告をしに来るって言えよ。嘘でもいいから。」

持ってきたゲーム機器を抱え、ナインはお風呂場のドアの向こうへと消えていった。ドアが閉まって数秒。郡司さんがそっとドアを開けると。そこにはここ数日で見慣れた浴室が広がっていた。その光景に、私たちはどちらともなくほっと息を吐いたのだった。
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