【完結】二番手聖女の私は失恋して片思い中の王子を慰めていたら、契約婚をすることになり、幸せな花嫁になりました

西野歌夏

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第一章 波乱と契約婚の花嫁生活幕開け

ニーズベリー城での最初の1日(2)

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 私は慌ててアガサの顔を困ったように見つめた。しかし、アガサはグッと身を寄せてきて私にささやいた。

「今のフランソワーズ様は完璧に準備が整っております。素敵です」

 私は顔が赤くなったが、覚悟を決めた。契約は契約だ。全うしなければならない。

「どうぞ」

 私は王子を出迎えるために立ち上がって部屋の扉の方に歩いて行った。

 私の声を聞いたスティーブン王子は部屋に入ってくるなり、ドアのそばに控えていた私を見つめて一瞬固まった。

 その後、なぜか真っ赤になり横を向いて何かをぼそっとつぶやいて、さらに真っ赤になった。

 私の格好がおかしいのかと思って、私は唇を噛み締めた。

「あの、こちらのお部屋をご用意いただきまして誠にありがとうございます。あかげさまで湯も浴びました」
「そ……そうか。良かった。衣装が間に合って良かった。とてもよく似合っている。侍女を務めている者はアガサという名だな?」

 スティーブン王子は慣れない褒め言葉を使われることに真っ赤になってらっしゃっているようだ。侍女のアガサの方を急にくるっと振り向いた。

「はい」

 アガサが返事をすると、スティーブン王子は予想もつかないことを言った。

「よくやった。とても似合っている。美しいし可愛いと思う。もっと多くの衣装が必要だ。この調子で揃えてくれ。私の妻となる人が心地よい暮らしができるととても嬉しい」

 スティーブン王子は顔から火が出そうなほど火照った顔で、アガサに言った。それを聞いたアガサは両手を振り絞らんばかりに固く握りしめて、感動した面持ちで、私とスティーブン王子の顔を忙しく見比べて、満足そうに微笑んだ。

「かしこまりました!殿下!」

 アガサを始め、そばにいた侍女たちは「きゃあっ!」と悲鳴が聞こえそうなぐらいに盛り上がっている。

 ――皆さん、残念ながらこれは演技なのよ。

 私は侍女たちに説明したかったが、契約婚のために王子に同調した。

「ありがたいですわ、本当に」

 恭しくお礼を言った。スティーブン王子は私の顔を見るとポッとまた顔を赤らめて、横を向いてしまわれた。

 ――どうされたのかしら。

 突然、すっとスティーブン王子が私に近寄り、私の顔をのぞき込んだ。王子の顔は赤く染め上がり、瞳がキラキラと煌めいていた。私の心臓はドクンと音を立てた。

 王子はポケットから何かの細長い箱を取り出して、その箱を開けて私に見せた。

「最初の贈り物だ、愛しいフランソワーズ」

 小さな細い箱の中にはダイヤのネックレスが入っていた。

 私の心臓は止まりそうだった。私の瞳を覗き込んだ王子は、私の唇をすっと指でなぞった。そのまま王子は私の唇に自分の唇を重ねた。惚けた表情になった私の表情に「たまらないな」とつぶやいた王子のささやき声が聞えた。

 王子は私の首にそのダイヤのネックレスをつけてくれた。エメラルドだ。

 王子の指が私の首筋にあたり、私は「ひゃっ」と声をあげて飛び上がってしまった。

 王子に触れられたところだけが熱く、くすぐったい。

 王子は私の反応に真っ赤になられて、動揺されたように思う。私たち二人の頭の中には、瞬時に王子が私の衣服を何もかも脱がせたあの時のことが脳裏に浮かんだに違いない。

「うん、とてもよく似合っている」

 王子はダイヤのネックレスをつけると、何か別のことを考えている様子で色っぽい表情でささやいた。それは一瞬の変化だった。動揺されたように思うのに、私がドギマギしているのが分かると、王子はグッと私のドギマギしている動揺に踏み込んできたのだ。

 私は王子の瞳を見つめた。彼が何を考えているのかさっぱり分からない。しかし、私は契約に従わなければならない。

「大変、ありがたく思います」

 私はあの何もかも脱がされて愛撫された時のことを頭から振り払いたいのに振り払えずに、心の動揺が出たままの表情で王子に微笑んだ。

 スティーブン王子が私の顎をそっと指で撫でた。

 あぁっんっ

 思わず声をあげてしまい、スティーブン王子は「まずい」と一言だけ言って、横を向かれた。

 赤くなって咳払いをされたスティーブン王子は、私に早口で説明した。


「最初の贈り物は、君の瞳に合わせて選んだものだ。とてもよく似合っているからこれからもつけて欲しい」
「わかりました」

 私は侍女たちが幸せそうな表情で、私とスティーブン王子のやりとりを見つめているのに気づいていたので、素直にうなずいた。

「そうだ、食事はまだですね?一緒に食べましょう」

 スティーブン王子は契約婚を真実のものにするために、私をしばらく解放する気はなさそうだ。

 私は落ち着かない心を弄ばされているようで胸がいっぱいだったが、侍女たちが「お二人仲がよろしいわっ」と浮き浮きした様子で目配せをし合っているのにも気づいており、仕方ないと王子にうなずいた。

「ええ、是非」

 スティーブン王子が私の手を取った時、電気が走ったようなときめきが全身を貫いてしまった。それは私が王子をお慕い申し上げているからだ。

 ――これは演技だと思って!

 私はハッとした顔で私を見つめたスティーブン王子にさりげなく微笑んで見せた。

 天国のような状況で、難易度が高い振る舞いを求められる状況に、私はめまいを感じた。

 これがずっと私に課せられた契約だとすると、続けられるか心配だ。いつか、私がスティーブン王子に恋してしまっていることが露呈してしまい、宮殿を追い出されてしまうのではないか。

 そうなったらもう、王子のそばにいる聖女に戻ることは不可能だろう。

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