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2. レエリナサウラと秘密結社 →数億年前地球 中世ヨーロッパ
第26話 二重スパイ まさみ
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「手荒な真似はしないでくれ。彼女は仲間だ。」
どこかでぼんやり帝の声がする。私は目をゆっくり開けた。
天井がとても低い。見たことのない天井だ。そもそも灯りが乏しく、うす橙色の灯りが仄暗く照らしていて部屋自体が暗い。
ここはどこだろう?
「帝、説明してもらえますか。」
聞いたことのない声だ。厳しい戒律を背景に思わせる何か年配の軍人のような、それも相当上の階級の者のような口ぶりだ。
私はゆっくりと最後の記憶を思い出そうとする。頭が痛い。確か、橘五右衛門が襲われたと聞いたのだ。そして橘五右衛門宅に侵入して・・・・
「私には敵がいる。それもいくつかの敵がいる。」
帝が低い声で話し始めた。
私はゆっくり頭を動かして、声がする方向に頭を向けようとする。
「最近、ある事件が起きた。あってはならないものだ。忍びと人間が偶然出会ってしまった。」
「しかもその忍びは多くの時間を人間と共に過ごしている。」
やはり帝だ。私は帝の若い秀麗なお顔をはっきり認識する。帝は疲れたご様子で椅子に座っていた。いつもの特別仕立ての衣装ではなく、城外にお忍びで出られる時の街の人と同じような群青色の既製服を着ている。
こんな重要機密事項を一体誰に話しているのか。マル秘もマル秘。帝国機密事項だ。
私は目を細めて、ぼんやりする視界をなんとか焦点をはっきりさせようとする。
「間宮実行(さねゆき)さん、その忍びはあなたの妹だ。」
「沙織が?人間に会っていると?」
帝が対面している何人かが息をのむ瞬間があった。
さっき話していた年配の軍人のような者と明らかに違った若い男の声だ。話の流れからして間宮沙織の兄の実行(さねゆき)に間違いないだろう。
「一体、どうやって?」
「ゲームだ。人類の3周目にランダムにタイムスリップするように設計された例の禁じられたゲームに、沙織さんは参加している。」
帝がゆっくり低い声で告げた。
「ちょっと待ってください!」
「帝。あのゲームはそもそも人間は生き残れない設計になっていたはずです。生き残れてゲームを続行できる人間が現れたということでしょうか。」
年配の軍人が問いただすように帝に言った。
「そうらしい。私も詳しくはわからないが、偶然にもガストロノムバックストッカー家の末裔と、ある21世紀の日本人の若者が出会ったらしい。」
「偶然の産物の結果として、生き残れてゲームを続行できる人間が現れたことは間違いない。」
沈黙が訪れた。
「そして私も先日、沙織さんと一緒にゲームに参加してしまった。その日本人にあった。思わず貴和豪一門の忍びかと勘違いしてしまった。見た目は貴和豪一門の忍びの特徴を備えているが、普通の日本人の若者だった。」
「帝!ゲームに参加されてしまったのですかっ!」
年配の軍人らしき声が悲痛の叫びのように聞こえる。
そうか。ついに、帝もゲームに参加してしまわれたのか。
私はそれは新事実として知った。では、先日うちの喫茶に来た時がそのゲーム参加の後だったのかもしれない。
私はあの時の沙織と帝の様子を思い出そうとした。どこか幸せそうな二人に見えて、私は嫉妬したのだった。
「沙織さんが命を狙われる。そのため、保護するために私のお妃候補に任命した。私の特権で、彼女に軍の警護をつけられるからだ。」
帝がそういうと、実行(さねゆき)がさっと立ち上がり、床にひれ伏す様子が見て取れた。土下座のようだ。
「大変申し訳ございません!妹のせいで、帝まで危険な目に遭われました。今や帝もお命を狙われていると理解いたしました。」
「いや、私までゲームに参加したのは敵も誤算だったと考えている。」
帝はそう言った。
「まさみ。気が付いたか?そうであろう、私がゲームに参加したのは知らなかったであろう?」
帝が優しい声で私に声をかける。私が意識を取り戻して話を聞いていたことに、帝はやはり気づいていたようだ。
皆が一斉にこちらを見る気配を感じる。
私はゆっくりと体を起こした。簡易なベッドのようなものに寝かされていたらしい。
「はい。帝がゲームに参加したのは敵は知りません。」
私はそう言った。
「彼女の名はまさみ。二重スパイだ。私の味方だ。」
帝が年配の軍人と沙織の兄の二人に言った。あれ、もう一人いた。
部屋の中には、橘五右衛門もいた。
「二重スパイ?」
「そうだ。土居田陸軍長官。彼女は私の味方だ。」
帝が年配の軍人に言った。
橘五右衛門が息を呑むのを私は確かに感じた。
これでもう一人、命を狙われる者が増えたということにならないか。私は先行きがどちらに転ぶか分からず、黙り込んだ。
どこかでぼんやり帝の声がする。私は目をゆっくり開けた。
天井がとても低い。見たことのない天井だ。そもそも灯りが乏しく、うす橙色の灯りが仄暗く照らしていて部屋自体が暗い。
ここはどこだろう?
「帝、説明してもらえますか。」
聞いたことのない声だ。厳しい戒律を背景に思わせる何か年配の軍人のような、それも相当上の階級の者のような口ぶりだ。
私はゆっくりと最後の記憶を思い出そうとする。頭が痛い。確か、橘五右衛門が襲われたと聞いたのだ。そして橘五右衛門宅に侵入して・・・・
「私には敵がいる。それもいくつかの敵がいる。」
帝が低い声で話し始めた。
私はゆっくり頭を動かして、声がする方向に頭を向けようとする。
「最近、ある事件が起きた。あってはならないものだ。忍びと人間が偶然出会ってしまった。」
「しかもその忍びは多くの時間を人間と共に過ごしている。」
やはり帝だ。私は帝の若い秀麗なお顔をはっきり認識する。帝は疲れたご様子で椅子に座っていた。いつもの特別仕立ての衣装ではなく、城外にお忍びで出られる時の街の人と同じような群青色の既製服を着ている。
こんな重要機密事項を一体誰に話しているのか。マル秘もマル秘。帝国機密事項だ。
私は目を細めて、ぼんやりする視界をなんとか焦点をはっきりさせようとする。
「間宮実行(さねゆき)さん、その忍びはあなたの妹だ。」
「沙織が?人間に会っていると?」
帝が対面している何人かが息をのむ瞬間があった。
さっき話していた年配の軍人のような者と明らかに違った若い男の声だ。話の流れからして間宮沙織の兄の実行(さねゆき)に間違いないだろう。
「一体、どうやって?」
「ゲームだ。人類の3周目にランダムにタイムスリップするように設計された例の禁じられたゲームに、沙織さんは参加している。」
帝がゆっくり低い声で告げた。
「ちょっと待ってください!」
「帝。あのゲームはそもそも人間は生き残れない設計になっていたはずです。生き残れてゲームを続行できる人間が現れたということでしょうか。」
年配の軍人が問いただすように帝に言った。
「そうらしい。私も詳しくはわからないが、偶然にもガストロノムバックストッカー家の末裔と、ある21世紀の日本人の若者が出会ったらしい。」
「偶然の産物の結果として、生き残れてゲームを続行できる人間が現れたことは間違いない。」
沈黙が訪れた。
「そして私も先日、沙織さんと一緒にゲームに参加してしまった。その日本人にあった。思わず貴和豪一門の忍びかと勘違いしてしまった。見た目は貴和豪一門の忍びの特徴を備えているが、普通の日本人の若者だった。」
「帝!ゲームに参加されてしまったのですかっ!」
年配の軍人らしき声が悲痛の叫びのように聞こえる。
そうか。ついに、帝もゲームに参加してしまわれたのか。
私はそれは新事実として知った。では、先日うちの喫茶に来た時がそのゲーム参加の後だったのかもしれない。
私はあの時の沙織と帝の様子を思い出そうとした。どこか幸せそうな二人に見えて、私は嫉妬したのだった。
「沙織さんが命を狙われる。そのため、保護するために私のお妃候補に任命した。私の特権で、彼女に軍の警護をつけられるからだ。」
帝がそういうと、実行(さねゆき)がさっと立ち上がり、床にひれ伏す様子が見て取れた。土下座のようだ。
「大変申し訳ございません!妹のせいで、帝まで危険な目に遭われました。今や帝もお命を狙われていると理解いたしました。」
「いや、私までゲームに参加したのは敵も誤算だったと考えている。」
帝はそう言った。
「まさみ。気が付いたか?そうであろう、私がゲームに参加したのは知らなかったであろう?」
帝が優しい声で私に声をかける。私が意識を取り戻して話を聞いていたことに、帝はやはり気づいていたようだ。
皆が一斉にこちらを見る気配を感じる。
私はゆっくりと体を起こした。簡易なベッドのようなものに寝かされていたらしい。
「はい。帝がゲームに参加したのは敵は知りません。」
私はそう言った。
「彼女の名はまさみ。二重スパイだ。私の味方だ。」
帝が年配の軍人と沙織の兄の二人に言った。あれ、もう一人いた。
部屋の中には、橘五右衛門もいた。
「二重スパイ?」
「そうだ。土居田陸軍長官。彼女は私の味方だ。」
帝が年配の軍人に言った。
橘五右衛門が息を呑むのを私は確かに感じた。
これでもう一人、命を狙われる者が増えたということにならないか。私は先行きがどちらに転ぶか分からず、黙り込んだ。
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